26 July 1995
"NO QUARTER" リリース後の全米ツアーが大好評の Jimmy Page
& Robert Plant、勢いをそのままロンドンに持ち込んだウェンブリー・アリーナ公演をアリーナ席6列目で見ることができました。ごく簡単に感想を列挙。
★ 全米ツアーに含まれていた "Shake My Tree"、"Lullaby"、"Light My Fire" などの非 Zeppelin 楽曲を完全排除。徹頭徹尾
Led Zeppelin ナンバーで固めたセットリストになりました。
★ 特に印象的だった演奏は "The Song Remains The Same"、"Four Sticks"、"Whole Lotta Love" あたり。特に「胸いっぱいの愛を」におけるジミー・ペイジのテルミン演奏は、何だかんだ言ってもオーディエンスが猛烈に盛り上がるパートです。自分自身初めて見たのですが、見世物というかギミックとしては非常に面白いと思いました。
★ エジプシャン・アンサンブルによるヴァイオリン演奏とパーカッションはやはり素晴らしい。生音で聴くと尚更です。西洋音楽の権化とも言うべき(ハード)ロックの限界を軽々と飛び越える進行、展開に、頭では分かっていてもやはり目から鱗が落ちるような新鮮な驚きを覚えます。エジプシャン・アンサンブルに加え、別編成でオーケストラ部隊が揃っており、ステージ後方は人口密度が相当高い状態になってました。
★ ロバート・プラントの高音部は僕にとっては聴いていてかなり辛いレベルでした。"Black Dog" なんてヴァース部分ですらオクターブ下にフェイクせざるを得ないくらい。ただ、パフォーマンス自体にはとても元気があり、マイクスタンドを振り上げる姿には、その後みんなが彼から盗んだ往年のカッコよさをまざまざと見せつけられました。
★ バックメンバーで最も注目すべきはやはり
Michael Lee のドラムス。素晴らしいの一言に尽きる! シンプルなドラムセットを、大きなモーションから一心不乱に鋭くヒットしまくる様子は、天国のボーナムが乗り移ったが如し。"Four Sticks" での両手2本ずつのスティック捌きも堂々としたもの。ほんと、思わずマイケル・リー関連音源を全部集めようかなという気にさせるくらいに良いプレイの連続でした。
★ ステージには絶え間なくお香が焚かれていて、前の席にいた自分はお線香臭くなってしまいました。その煙を扇風機でステージ側に吹き付けているわけですが、ジミー・ペイジは弾きながらその扇風機前にやってきて風を受けている姿がよく見受けられました。すごく暑い夜だったのです。
★ 前座の Rusted Roots はアメリカの泥臭系パーカッション系ロックバンド(?)。全米1位の
Hootie & The Blowfish 辺りにも通じるサウンドだと思いますが、この
Rusted Roots も90位前後に上昇中で既に20万枚以上売っている模様。要注目ですね。
といったところ。実は当日、自分の体調が完全でなかったこともあって、存分にのめり込むことができず、ロバートのヴォーカルが出ていなかった部分がかなりマイナス印象になってしまったのですが、日が経つにつれ「凄いものを見せてもらった……カモシレナイ」というじわわ〜んという鈍い感動に変わりつつあります。まさか95年になって、御大ジミー・ペイジご本人の繰り出す
"Whole Lotta Love" のあのリフに合わせて思いきり頭を振ることができたなんて、幸せ以外の何ものでもないですから。テルミンの周りで手を振りかざしながら、観客の注目を一身に集めていた彼の満足げな表情は忘れられません。他にも、"Rumble On" や "Since I've Been Loving You" あたりは強烈に良い演奏だったと思いました。
…でもやっぱりあれはツェッペリンではなかった。確かにマイケル・リーのドラムスは頑張っていたけど、当然ボンゾの音ではありえない。バンド全体として「絶対に
Led Zeppelin ではない何か別もの」だったのは確かです。例えばもっとも印象的な演奏を見せてくれた一人、hurdy
gurdy なる不思議な楽器をプレイしたナイジェル・イートン(29歳!)に至っては、「生まれてこの方
Led Zeppelin の曲など1曲も聴いたことがない」と豪語し、ロバート・プラントの
"FATE OF NATIONS" アルバムに参加したときには「なんだ、ロバート・パーマーとの仕事かと思ってました」と漏らし、ジミー・ペイジに向かって「Zoso
ってどういう意味があるんですか?」と尋ねて場を凍らせたという伝説があるくらいですから…
なぜ彼らが安易に Led Zeppelin の看板を掲げることなく
Page & Plant のブランドで新たにリリースしたのか、その理由がライヴを見てよくわかりました。あれで
ZEP 名乗ってたら逆に不満爆発のツアーだったかもしれません。
November 2002 追記
96年初頭に来日公演も行って、多くのツェッペリン・ファンを喜ばせた彼ら。その後1枚オリジナルアルバムを発表しますが、結局そこまでという形になっています。ロック界最大の遺産のひとつですから、今後も何かの機会につけ商売上手な輩たちが仕掛けてくるのでしょうが、まともに演奏を見られるという意味では、90年代半ばまでが限界だったのではないかという気がしています。見ることができて幸運でした。
個人的には、ウェンブリーに行くまでの地下鉄の中をぎっしり埋めていた、往年のZEPファンと思しきヒッピーぽい格好の年配の男女たち(もちろん絞り染めのZEP
Tシャツ着用)と、喫煙可能な会場内に漂いまくっていたハッパのキツい匂いが印象に残っています。
|