12 May 1995
さてさて、5月のイギリスを縦断した素晴らしすぎる組み合わせのツアー、Thunder + SKIN + b.l.o.w. のロンドン公演を見てまいりましたので簡単にご報告。
しかし、何といっても Thunder に SKIN
に
b.l.o.w. ですよ。b.l.o.w. が ex-Little
Angels
の流れを汲むことを思えば、ブリティッシュロックの一番美味しいところを切りとってパッケージしたようなツアーではありませんか。グラスゴー出身ということで多少毛色は違いますが、これに
GUN あたりを加えればまさにUKハードロックの現在が手に取るように分かるショウになったことでしょう。(GUN
のロンドン公演は5月20日に見に行く予定)
会場は Hammersmith Apollo。NHKホールの2倍くらいはありそう。一足先にマンチェスターでこのツアーを見たと言う友人から「定刻よりちょっと早めに始まるよ」と忠告を受けていたのに仕事が片付かなくて、チケットにある開演時間の15分前に会場に到着すると、既に b.l.o.w. の演奏が始まっちゃってました。
先にEP "MAN AND GOAT ALIKE" やシングルをリリースしている彼らですが、黒人ヴォーカリストの泥臭い
blues/funk 色を巧みに取りこんだ独特のロックを展開。かなり面白い存在になりそうですが、残念ながら
Little Angels を期待しちゃいけません。逆にレニー・クラヴィッツあたりを聴ける方ならかなりオススメですね。
約30分のステージを終えると、この大きなホールもどんどん埋まっていきます。ステージ上の巨大なバンドロゴマークのバックドロップを背に登場した SKIN に対する観客の声援はものすごいものがありました。このバンドのヴォーカル、Neville
McDonald は本当にステージ映えする男ですからね〜。ダイナミックなアクションで会場を煽る煽る。オープニングの
"Money" から一気にぶっ飛ばし、途中、現在レコーディング中の新作からの新曲
"One Mission" なども挟みながら、ラストの "Unbelievable" まで持っていきます。この曲ではほとんど完璧ともいえるコール&レスポンスで会場全体がひとつになり、僕もサビの大合唱に加わってしまいました。しかしたったアルバム1枚でここまで客に認知されるバンドになるとは、末恐ろしいものがあります。素晴らしい!
いよいよ真打ち、Thunder の登場です。
オープニングテーマは Queen の "We Will Rock You"。もちろんここロンドンで知らない者はいない曲です。観客総立ち、大合唱、リズムに合わせての手拍子が沸き起こります。そんな中、急にステージの幕が上がって
Harry のドラムスがビートを叩き出します。1曲目は "She's So Fine"。SKIN の時も観客は十分歌ってると思っていたのですが、Thunder
の格は全然違いました。ものすごい合唱ぶり。しかも、今夜のショウはレコーディングしているというではありませんか! BBCでのオンエアになるのか、シングルB面になるのか分かりませんが、自分の手拍子や合唱が残ると思うと、ついオーディエンスとしても力が入ってしまいます。
途中アコースティックなパートを挟んだり、語りを入れたり、いい曲をたくさん持ってるバンドはショウを如何様にでもアレンジできるので強いですよね〜。あっという間にアンコールへ。1曲目は
Harry James がフロントに出てきてアコースティック・ギターを抱えての
"A Better Man"。お茶目な彼ですが、最後のコーラスを1人で歌わされ、歌も上手なところをアピール。お客さんにも大ウケでした。そしてオーラスは "Dirty Love"。サビのコーラスを1階席と2階席に分けて歌わせ、「どっちの声がデカイか、ちゃんとレコーディングに残るんだから気合い入れていけよ!」と煽られて、もう声が枯れるくらいに歌いまくりの夜でした。
ヒーロー不在が叫ばれたりもするブリティッシュ・ロック界ですが、なんのなんの。この夜を見た限り、大英帝国に異状なし、です。それどころかますます面白くなっていきそうな手応えが十分感じられた、とても充実した夜でした。
August 2001 追記
今思い出してもいいラインナップ、素晴らしいライヴでした。
ですがしかし、ご存知のように2001年現在、上記3バンドはいずれも存在しません。栄枯盛衰、奢れる者は久しからず。いや別に
Thunder が奢ってたとはちっとも思いませんけどね。むしろ過小評価されてたくらいで。ただ、どんなアーティストも商売として音楽をやるからには、マーケットとレコード会社と自分たちの音楽性との間でうまく折り合いをつけていかなくちゃいかないわけで。
まあ Thunder は可哀想な面もありましたが、特に日本という国において、熱心で温かい多くのファンに恵まれたことは幸せなことだったといえるでしょう。そして僕らの心の中にも、いつまでも彼らの曲が流れ続けるのです。自分の場合、それは間違いなく
"River of Pain" であるわけなのだけれど。
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