SONGS 40 - 31
順位 | 曲名 | アーティスト | チャート順位 |
40 | Our House | Madness | US#7/83 |
39 | Green-Tinted Sixties Mind | Mr. Big | UK#72/92 |
38 | Tell Me Where You're Going | Silje | UK#55/90 |
37 | Babooshka | Kate Bush | UK#5/80 |
36 | Nobody Does It Better | Carly Simon | US#2/77 |
35 | Thunderstruck | AC/DC | UK#13/90 |
34 | Your Love Is Driving Me Crazy | Sammy Hagar | US#13/83 |
33 | Centerfold | The J. Geils Band | US#1/82 |
32 | Move On Up | Curtis Mayfield | UK#12/71 |
31 | Don't Stop Believin' | Journey | US#9/81 |
40. Our House - Madness マッドネスといえば英国労働者階級を代表するスカ・バンド。全英チャートを紐解けば、78年の結成以来ざっと数えても30曲を超えるヒット曲、全英1位の "House of Fun" を始めとして実に15曲以上のトップ10ヒットを持つ国民的なグループです。しかし、こと全米チャートとなるとトップ40ヒットはわずかに2曲で、この "Our House" と "It Must Be Love"(US#33/83) だけということに。 当時全米での権利を持っていたのが Geffen レコードであることからも想像がつくように(類例:Wang Chung)、要するにブリティッシュ・インベイジョンのブームに乗って一発当てようぜ的な戦略に乗せられてしまったのではないか。イレギュラーな大ヒットのせいで、バンド本来の諧謔精神に満ちた批評センスがどこまで伝わったかはアヤシイところです。 とはいえ、軽快なピアノとトレードマークのホーンセクションに導かれて勢いのいいイントロが鳴り始めると、そんなこと一気にどうでもよくなってしまう。黒っぽいゴリゴリしたベースラインと、対照的に爽やかなストリングス。「通りの真ん中にある僕たちの家」 の日常をヴォーカルの Suggs が独特の声で歌います。誰でもすぐ一緒に歌えるコーラス、短いながらも印象的なギター/サックス掛け合いのソロ・ブレイク。わずか3分20秒に凝縮されたアレンジの妙に思わずニヤリです。MTVでヘヴィローテーションだったコミカルなビデオも良かったね。 39. Green-Tinted Sixties Mind - Mr. Big 日本で絶大な人気を誇った彼ら、"Mr. Big in Japan" なんて揶揄されてましたが、良い曲は本当に良い。アルバムは1stから "HEY MAN" あたりまでは相当熱心に聴きました。個人的にはバラードよりアップやミドルの楽曲が好きで、中でもこの "Sixties Mind" への思い入れは格別です。 エリック・マーティンの声は確かに素晴らしいけれど、ソングライターとしてはやはりポール・ギルバートの方が好き。この曲はポール単独の楽曲ですが、この他にも "Nothin' But Love" や "Stay Together" など、耳に残った曲をチェックすると大抵ポールの作品でした。コード進行の自然さとコーラスのフックの強さがずば抜けているライターだと思います。 この曲も、いきなりトリッキーなギタープレイで幕を開けてびっくりさせますが、本領を発揮するのはむしろヴァースからフックにつながる熱いコード展開であり、コーラスパートの分厚さでしょう。ギターソロも音数を絞り、ビリー・シーンのベースと合わせて重厚なコード進行を聴かせてくれます。ノスタルジックなコーラスを繰り返した後に配置されるのが、イントロで聴かれた印象的なギターのフレーズ。コーラス後にイントロのリフを挿入し、イントロとアウトロを対称的に構成する美しいアレンジ、実はポール・ギルバート楽曲のお決まりパターンだったりするのですが、やはり聴く度に胸の深いところを揺さぶられる名曲。イントロはケータイの着メロにもオススメ。 38. Tell Me Where You're Going - Silje ノルウェーから吹き込む一陣の爽やかな風。Silje と書いてセリアと読む。89年、J-WAVE で頻繁にエアプレイされた爽やかな女性ヴォーカル曲。透明感溢れるアコースティックな北欧ポップに、一発でとりこになりました。アルバムを買ってみると彼女が敬愛するというパット・メセニーがギターで参加している曲も。 「どこに行くのか教えて、私も一緒についていくから」。 無防備で、相手への盲目的な信頼を全面に打ち出したこの曲のコーラスはとても心に残ります。演奏はちょっとブラジル的なニュアンスを感じさせるサンバっぽいフュージョン。ほんの少しだけハスキーで、無邪気なセリアの声を聴いていると、何だか心が温かくなってくる。ポーランドのバーシアもそうでしたが、東欧や北欧の女性ヴォーカリストがブラジル音楽につながっていく様子はとてもエキゾチックで、興味深いものです。 90年春に中野サンプラザで行われた来日公演を、たまたま招待券をいただいて観に行くことができました。シンプルなバックバンドと、飾りっけのないステージ。観客席も半分埋まっているかどうかというサンプラザで歌うセリアの嬉しそうな表情といったら! 彼女の誠実さ、何よりも「歌うこと」そのものを愛し、楽しんでいる様子がまっすぐに伝わってきて、胸が熱くなりました。本作の後は、ヒット曲量産を求めるレコード会社と対立。結局彼女はアルバム3枚程度を残して表舞台から去りましたが、その後も小さなレーベルからノルウェー語で歌うアルバムや本格的なジャズ作品などを地道に発表しているみたいです。 37. Babooshka - Kate Bush この曲は、自分にとって 「禁断ソング」 のひとつ。その数は決して多くはありません。他には例えば U2 の "Love Is Blindness" とか、トーリ・エイモスの "Leather" とか。これらの曲が流れると、僕の思考は完全停止、頭の中は真っ白に。時には涙も流れるけれど、論理的説明などできやしない。ある意味ほとんど条件反射。バブーシュカ。 天が二物も三物も与えてしまった才女、ケイト・ブッシュ。傑作 "NEVER FOR EVER" の冒頭を飾るこの曲は、夫を疑う妻が偽名で夫宛に手紙を送り、さらには変装して彼を呼び出し、実際に落ち合うという物語。謎めいたシチュエーションを彩るメロディのゴージャスなことといったら! ファンタジックにしてパラノイアック、コケティッシュにして完全にイッちゃってる。彼女の声があればどんな駄曲でもたちどころに宝石の如く輝く、という事実はさておくとして、この曲の妖しさは桁違い。バブーシュカ。 次第にリズム志向になっていく後期ケイトも否定はしませんが、おそらくピアノで作曲していたであろう初期のメロディアスな楽曲に惹かれることが多いです。バックを固めた豪華メンバー、Stuart Elliott、Ian Bairnson、 Max Middleton、Morris Pert といった錚々たる仕事人たちの演奏も素晴らしい。思えばデイヴ・ギルモアにせよピーター・ゲイブリエルにせよ、男たちは才能ある女性=ケイトのもとに呼び寄せられていくようで。つまり、ある意味ケイト・ブッシュ自身がバブーシュカ。 36. Nobody Does It Better - Carly Simon 映画『007/私を愛したスパイ』の主題歌。007シリーズの魅力は、ある種「寅さん」的な完全予定調和のストーリィ展開(謎の美女、ボンド危機一髪、無事脱出&大団円…)とともに、その映画音楽にもあります。カーリー・サイモンが歌ったのはシリーズ10作目で、原題の "The Spy Who Loved Me" は歌詞にも織り込まれています。自作曲ではなく、作詞:キャロル・ベイヤー・セイガー、作曲:マーヴィン・ハムリッシュという豪華チームによるバラード。都会的でお洒落なメロディ展開が印象的で、カーリーにとっては "You're So Vain" (US#1/73) 以降では最高の全米2位まで上昇しています。 僕は基本的にポジティヴなラヴソングが大好きです。この曲のフックも、聴くたびに心にじーんときます。 ♪Nobody does it better Makes me feel sad for the rest Nobody does it half as good as you Baby you're the best 「貴方以上に私をうまく愛せる人はいない」。特に、"Baby, you're the best..." と繰り返すエンディング部分の高揚感といったら。本来、一生が終わる瞬間になってみないと順番が付けられないはずのものですが、それでも "Best" という最上級を迷いなく用いることができる。恋したことがある人なら、きっと身体で理解できる感覚でしょう。007トリビュート企画アルバムでこの歌をカヴァーしたエイミー・マンにもその感覚はあったはず。僕は聴くことができませんでしたが、95年暮れのレディオヘッドの欧州ツアーでは、トム・ヨークが好んで取り上げていたそうです。なんて彼の声にぴったりの曲なんだろう。 35. Thunderstruck - AC/DC 不変の美学、であります。同じ芸で何十年も食いつなぐ。これ簡単なようで相当難しい。たいていの人は「飽きられるのでは?」と不安に駆られ、求められてもいない方向に足を踏み出しては市場からバツを食らうのです。そこへ行くとAC/DCの頑固さは本当にすごい。基本的にどのディスクのどこを切っても、ほぼ期待通りの音が鳴っています。アンガス・ヤングのあのギターリフと、ダミ声のヴォーカル。 この曲は、高速のリズムを刻むギターのイントロが一瞬意表を突きますが、ブライアン・ジョンソンが "Thunder!" の掛け声を入れるあたりになると、すっかり引き込まれてしまっているのに気づくでしょう。プロモビデオを見ればお分かりのとおり、観客がいっせいにヘッドバンギングし始める曲でもあります。というより、せずにいられない凄まじいグルーヴを持っている。ライヴにも欠かせないレパートリーで、94年の伝説的な英ドニントンでのモンスターズ・オブ・ロックのトリを務めた際の劇的なオープニングをはじめ、近年のツアーでも前半の要として演奏されています。 個人的には、元 The Firm のクリス・スレイドの太鼓が最高。ソリッドでシャープで、まるで彼のスキンヘッドをそのまま音にしたかのような迫力あるドラミング。また、AC/DCといえばアンガスばかり注目されがちですが、実は要所を締めているのは、兄マルコムが補強する重厚なリフの方だったりします。とにかく勝手に身体が動き出す。その意味で、この曲をライヴのオープニングテーマに使って観客の興奮を一気に高めていた Thunder はセンス良かったなあ。会場全体が曲に合わせて "Thunder! Thunder!" と叫ぶ様には、リサイクル魂あふれる英国人のセンス・オブ・ユーモアを感じずにはいられませんでした。 34. Your Love Is Driving Me Crazy - Sammy Hagar サミー・ヘイガーのソロ名義としては最大の全米ヒット(最高13位)。アメリカン・ハードロックの王道を行く彼、ストレートでカラッと爽やかなロックが身上です。この曲もシンプルなイントロからすぐにヴァースに入り、あっという間に曲タイトルを歌い上げるキャッチーなコーラス部分にたどり着きます。「産業ロック」と言ってもよいくらいの造りで、ドライヴのBGMなんかには最高ですね。 大体サミー・ヘイガーという人は、モントローズのリードヴォーカルとしてデビューした時から一貫して陽の当たる道を歩いてきたような印象があります。70年代後半から80年代半ばまでのソロ時代も着実に人気とセールスを積み上げ、遂に請われてヴァン・ヘイレンに加入。あのデイヴ・リー・ロスの後を引き受けるなんて、常人の心臓では考えられない暴挙という気もしますが、いともあっさりこなして、サミーファン+VHファンのセールス相乗効果も挙げた稀有なメンバー交代劇でありました。 ひとつ残念なのは、どうやらサミー・ヘイガー自身はこの曲をあまり気に入っていないようだということ。近年のライヴセットリストにも見かけないし、ゲフィン時代のベスト盤 "UNBOXED" でも見事に外されていました。リリース当時、とにかく全米大ヒットシングルが欲しくて書いた、キャッチー過ぎるナンバーだったのか。成熟した大人のハードロックを歌う今のサミーにとっては、メロディも歌詞も青臭過ぎるということなのか。いい曲なのに、ちょっともったいない。 33. Centerfold - The J. Geils Band 『堕ちた天使』。僕が洋楽に劇的にはまるきっかけになった曲です。#179のポール・デイヴィス "Cool Night" のところでも書いた、1982年大晦日のNHK-FM特番(渋谷陽一)を録音したテープの中でも圧倒的に光っていました。まさに「一度聴いたら忘れられない曲」と言っていいでしょう。 軽快なイントロを2度繰り返すと、ピーター・ウルフの "Come on !" のひと声で一気になだれこみ、ビート感溢れる演奏の上で野性的なヴォーカルがしなやかに跳ね回ります。「なーなーななーなーなー♪」と曲中で何度も繰り返されるコーラスの覚えやすさといったら。あまりにもキャッチーなその作風は、B級っぽい泥臭さが売りだった往年のバンドのファンからは不評だったみたい。でも、よく聴くとカウンターでクールなフレーズを弾きまくるハモンドや弾力的なベースの動きに、彼らのソウル魂を感じることは十分に可能。「産業」型J・ガイルズ・バンドここに極まれり。 演奏も然ることながら、この曲を語る際に避けて通れないのが歌詞。Centerfold とは何か。それは雑誌の中央見開きのピンナップページのこと。エッチ雑誌では女の子が「全開」になって微笑んでるショットだったりします。そこに高校時代の憧れの女の子が載っていたりなんかしたらもう、ピーター・ウルフじゃなくたって誰でも超ビックリするよね。ってなコミカルで想像しやすいシチュエーションを歌ってみせて大成功。いったん終わると見せかけた楽曲は "All right? All right? One, two, three, four!" の掛け声で再び動き出し、フェードアウトしながら最後にメインリフの口笛だけが残るというアレンジ。どこまでも良くできた完璧な全米#1シングルなのでした。 32. Move On Up - Curtis Mayfield カーティスに出会ったのはかなり遅くて。リアルタイムの接触はほとんどなし、ジェフ・ベックがロッド・スチュワートに歌わせた "People Get Ready" (US#48/85) のカヴァーや、ポール・ウェラーが好んでこの "Move On Up" をライヴ演奏している、という程度の知識。ところが95年にロンドンに行ってみると、FMや街角でしばしば流れているのです。アシッド・ジャズ/レア・グルーヴのブームに乗って自分もかじってみたところ、独特のワウ・ギターの気持ちいいカッティングにすっかりKO。差別問題や人類愛をテーマに繊細なファルセットを聴かせる彼の魅力に、あっという間に引き込まれました。 この曲のホーンによる元気なリフは、きっと皆さんも聴いたことがあるでしょう。僕はどんなに落ち込んだ夜でも、この曲のイントロが流れてくれば必ず明け方まで持ちこたえられる自信がある。揺れるコンガのリズムとストリングスに包まれて、カーティスがファルセットで僕らを力づけます。 ♪Take nothing less - not even second best And do not obey - you must have your say You can pass the test 自分の夢に向かって、目的地を目指してしっかり進もう。周りはきっといつか理解してくれるさ。さあ、泣くのはおやめ。きっとうまくいくから。そう元気付けてくれたカーティスは、99年に帰らぬ人となりましたが、彼の音楽は変わることなく僕の部屋に流れ続けています。 31. Don't Stop Believin' - Journey ジャーニーと本格的に出会ったのは82年の "Open Arms" (US#2) で、大げさなバラードだなあと思ったものです。その次に意識したのは83年の "Separate Ways (Worlds Apart)"(US#8) で、これまた異様に大げさなロックだなあと思いました。要するに極端な2曲に先に出会ってしまったらしい。そんなわけで彼らの魅力を正当に評価できるようになるには多少時間がかかりました。 「産業ロック」という言葉に象徴されるように、彼らのサウンドには隙がありません。爽快なロックと泣きのバラードをバランスよく配置し、部屋でステレオに向かって聴くよりは車でハイウェイを飛ばしながら聴くために「作られ」たもの。この曲は彼らのレパートリーの中ではポジティヴなメッセージを持つ部類に入ります。夜の街にうごめく人々の姿を描写しながら、彼らの胸の内でしっかりと灯される希望の火。「自分の気持ちを信じ続けろ」と歌うスティーヴ・ペリー。ジョナサン・ケインのピアノによるイントロも、夜から明け方に向かう時間帯を想起させて非常に印象的です。いわんや我慢しきれず遠くから切り込んでくるようなニール・ショーンのギターをや。 ちなみに、アップだと "Any Way You Want It"、淡々系だと "Who's Cryin' Now"、しみじみバラードだと "Faithfully"、そして泣き系だと "Send Her My Love" がお気に入りです。要するにどれも大好きな曲ばかりってこと。今ではジャーニーの音楽がない世界を想像するのは難しいくらいです。 |
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