190. Everybody Wants To RuleThe World - Tears For Fears
何といってもグループ名がいい。得体の知れぬ恐怖に涙がにじむ幼年期の気持ちを、韻を踏みながら綺麗にまとめて。好きな曲はたくさんありますが、何回聴いても爽やかな、そして力強い気持ちになれるのはやっぱりこれかな。
Curt Smith はソングライターとしては決して才能豊かではありませんし、実際この曲の作曲にも関わっていませんが、Roland
Orzabal ばかりが歌うと重苦しくなってしまうことはちゃんと認識されているようで、これや "Advice For The Young At Heart" などは Curt に歌わせて正解でしょ?
歌詞が取り沙汰されたグループでもあります。この曲もまたいろいろと解釈できる歌詞ではありますが、ブリッジの
♪There's a room where the light won't find
you
Holding hands while the walls come
tumbling
down
When they do I'll be right behind
you'
というくだりが(核)戦争の情景を想像させました。冷戦、という時代を反映した作品だったのかなあ。
リズムギターでギターソロを構成した編曲の巧みさもお見事。そしてブレイク後に力強く歌われる終章の歌詞にはいつも胸が熱くなります。
'I can't stand this indecision ヴィジョンの欠如した
Married with a lack of vision 優柔不断な態度には我慢できない
Everybody wants to rule the world 誰もが世界を支配したがってる
Say that you'll never never never need
it そんなもの要らないって言っちまえよ
One headline why believe it ? 見出しなんか信じるんじゃない
Everybody wants to rule the world 誰もが世界を支配したがってる
All for freedom and for pleasure 全ては自由と喜びのため
Nothing ever lasts forever 永遠に続くものなんてありはしない
Everybody wants to rule the world...' 誰もが世界を支配したがってる…
この曲はグループ内では「軽すぎる」としてアルバムにも収録されない予定だったと言われます。アメリカ向けのシングル曲候補が必要だと考えていたプロデューサーが「ぜひ」と説得して録音されたとか。それがこうしてクラシックになり、今でもラジオでかかりつづけているのですから、歴史は本当に分からないものです。
189. Best of My Love - The Emotions
落ち込む失恋ソングなんて聴きたくないや。いつだってポジティブなラヴソング、聴いてて恥ずかしくなるくらいラブラブな歌詞の方がいいや。だって、人を好きになること以上に素敵な体験なんて、どこにもないと思うから。
この全米#1ヒットだって、両想いになれた喜びを、身もフタもなく思いっきり歌っちゃったディスコです。いいじゃないですか、それでいいんです。聴いてるだけでウキウキしてしまう、力強くもキュートなヴォーカル。誰でも思わず口ずさんでしまうコーラス。だって恋愛がうまくいってるときは、世界中に向かってノロケたくなるものでしょ?
The Emotions は姉妹グループで、もとはゴスペルグループ。歴史は古くて、ポピュラーに転向したのが1968年。以降、84年までの間に30曲ものR&Bヒットを放ちますが、ポップヒットは9曲、トップ10クラスはわずか2曲で、そのうち1曲は
Earth, Wind & Fire と組んだ "Boogie Wonderland" (US#6/79) だったりします。その意味では、#1×5週間のこの
"Best of My Love" のヒットぶりは突出していて、これもまた誰からも愛されるシンプルでよく出来た楽曲の魅力かな、と。
188. Roll With It - Steve Winwood
「♪人生が手に負えなくなってきたら / 逆らわずにうまくやり過ごせ / 大丈夫、きっと切り抜けられるさ」
そんなお気楽な元気付けソング。これまた大好きな部類です。彼のようなソウルフルな声で、力強く歌いかけられれば、どんなに落ち込んでいても「そうかな。まあ、いっちょやってみっか」ってな気にもなるってもんです。
個人的に好きなのはドラムス。確か
Steve
自身が叩いているクレジットだったような記憶あり。特にイントロの、大昔から何百曲となく同じフレーズがあるはずの「ドン
タタッタッ!」というリズムは、チューニングといいタメといい、絶妙の味わいです。あとはやっぱりバックで地味に自己主張しつづけるハモンドオルガンの音色かなぁ。終盤にちょっと暴れるところもいい感じ。
リアルタイムは "Higher Love" (US#1/86) からで、"The Finer Things" (US#8/87), "Back In The High Life Again" (US#13/87), "Valerie" (US#9/87 の方) などなど、好きな曲目白押し。
"While You See A Chance" (US#7/81) は「ベストヒットUSA」の第1回放送のチャートに入っていた曲なのではなかったかな? のちに何周年記念かのスペシャルで見たことがあるようなオボロゲな記憶が。確か1位は
John Lennon "Woman" だったようななかったような…
187. Sledgehammer - Peter Gabriel
ここではあえて逆説的にこいつをリストに。やっぱりリアルタイム最初の
Peter だけに、衝撃が大きかったんですよ。今や古典となったビデオクリップも、ただただ圧倒されながら、何度もビデオを繰り返し再生したものです。
あらゆる意味で彼「らしくない」曲なのであって、本来なら
"Here Comes The Flood" とか "Solsbury Hill"、 あるいは "Games Without Frontiers"、悪くても "Shock The Monkey" あたりを取り上げるべきなのだろうけど、ここでは敢えてこれを。だって誰がこんなホーン入りの、キャッチーなコーラス入りの曲を想像できたでしょう。しかも「♪僕はキミの大ハンマーになりたい」ときたもんだ。こんなセクシュアルな比喩が飛び出すなんて、曲が出来上がって一番ビックリしたのは案外本人なのでは。
こうして聴くと実は彼、60sなソウルミュージックも好きなのかなぁ、と。ホーンセクションだけじゃなくて、ヴォーカルの乗り方も徹底的に後ろに傾いていて、こりゃ相当マジです。でもね、この黒々とした雰囲気は、Tony
Levin 先生のベースラインに負うところ大、ってのがワタクシの持論。聴けば聴くほど不思議なベースメロディなんですわ。
92年の "US" もオトナがじっくり聴きこめるいいアルバムだったけれど、以後は地味な活動に戻ってしまった
Peter、そろそろ新作を出していただけませんでしょうかねー。彼の "SO" と Genesis "INVISIBLE TOUCH", そして GTR (Steve Hackett) の "GTR" がアルバムチャートで同時に上位に並んだりして、ひどくプログレッシヴだった86年の夏が懐かしい。
186. Little Lies - Fleetwood Mac
まさに、ひと粒で何度も美味しい曲。さすがに何百回も聴いたので飽きてきましたが、よく出来た編曲であることには変わりありません。
Mac の魅力をどこに見出すか、は人によって様々でしょうけれど、私の場合は
Christine McVie の落ち着いた声と上品なキーボードタッチが核にあって、それを取り巻くように
Stevie Nicks のガラガラ声やちょっと偏執狂っぽい
Lindsey Buckingham のコーラスが配置され、土台をしっかり支えるタイトなリズムセクションが淡々とプレイする様子に一番惹かれるようです。…って、この曲そのまんまですね。もっとも、メンバー間の複雑かつ目を覆いたくなるような男女カンケイに魅力を感じることもまた、不可能ではありません(^^;)。
Christine の歌詞は言葉数が少なくて、抽象的なイメージが多いように思います。短めのヴァースからすぐにコーラスに突入するのも特徴的かも。ソロだとその辺が薄味過ぎて物足りないこともありますが、この曲についてはコーラスで左右からかぶさってくる
Stevie と Lindsey の毒気溢れるヴォーカルが大いに魅力を引き立てているような。
もちろん Christine モノ以外にもお気に入り多数。"Don't Stop", "Gypsy",
"Hold Me", "Big Love",
"You Make Loving Fun", "Rhiannon",
"Sara", "Seven Wonders"
などなど。どんなにメンバーが歳をとってもいいから、一度ライヴで見たいグループの1つでもあります。
185. Dance Hall Days - Wang Chung
「エーヴリバディ ワン・チャン トゥナイッ♪」 いやあよかった。やっぱ "Everybody Have Fun Tonight" (US#2/86) は至上最強のパーティチューンの1つでしょ。アルバム
"MOSAIC" の王道ポップ路線の完成度の高さは認めるけれど、あれ1枚で「ああ、一発屋のデュオでしょ?」とか言われるのは許せんぜよ。"To Live And Die In L.A." (US#41/85) も聴いてよね。
…じゃなくて、84年の "POINTS ON THE CURVE" (『航跡』) にたっぷり詰まってる、まだ世間ずれする前の英国らしいシンセポップも聴いてほしいから。この頃はデュオじゃなくてトリオだし。でもその前は5〜6人組だったらしい。ABCも似たような減り方しましたっけ。元は
Huang Chung と名乗っていた彼ら、怪しげなオリエンタルイメージで売り出したわけですが、イマイチ鳴かず飛ばず。この "Dance Hall Days" も Huang Chung 時代に Arista からリリースしているようですが、ダメだったみたい。
「ダンスホール」なんて行ったことないけれど、なんだか懐かしくていい感じ。
僕も、キミも、僕らの友達もみんなが、真実を信じ、行い、共有できたあの頃。それがダンスホールの日々。個人的には3番の歌詞のラストで何回も繰り返される次のフレーズが好き。
"♪And you need her and she needs you...."
184. A Night To Remember - Shalamar
どこにも隙のないダンストラックを挙げよと言われれば、この曲もその1つに挙げずにはいられません。単なるディスコヒットにしておくのはもったいないくらい、とにかくよく出来てます。
個人的な Shalamar リアルタイムは "Dead Giveaway" (US#22/83) からなもんで、その後も "Dancing In The Sheets" (US#17/18) だとか "Amnesia" (US#73/84) くらいしかポップヒットがないわけです。だから
Jody Watley がソロデビューした時も元
Shalamar
っていうのがピンと来なかったし、それより昔はカッコいいヒット曲がたくさんあるグループだとは全然知らなかったのでした。もともと
SOUL TRAIN 出身のグループですが、Solar
レーベルに移ってからは安定したダンスヒットを量産。男女ヴォーカリストを抱えるメリットも十分に活かしたコーラスワークもキレイです。
どうしようもなくカッコいいギターカッティングのイントロ。Jody
Watley から順番にリードを取っていくヴォーカルのノリもいいし、"surrender"
"remember" "tender"
と韻を踏んでいく歌詞も好き。何より、お互い愛し合う男女が「今夜を忘れられない夜にしよう/しましょう」と歌いかけるコーラスが大好き。UK#5/82
の大ヒットなのに、全米ではトップ40にも入れなかったなんて信じられないくらい。"Second Time Around" "There
It Is" "Full of Fire"
など好きな曲はたくさんありますが、"I Can Make You Feel Good" (UK#7/82) のKavana のカヴァーもよかったね、なんて。
183. You Get What You Give - New Radicals
初めて聴いた瞬間からもう、懐かしかった。80年代好きにはたまらない音とコードだったと思いませんか? ほとんどメロディ1個で強引に1曲聴かせるこの技量、もう少しこの名前でアルバムを作らせてみたかったよ、Gregg
Alexander くん。
暗くて希望のない時代に生まれたキッズたちに向けて、"♪Don't let go / you got the music
in you / Don't give up / you got the
reason
to live" と歌いかける、無防備なまでにポジティヴなメッセージソング。Beck
や Hanson, Courtney Love や Marilyn Manson
を斬って捨てたエンディングの歌詞も印象的でした。
その声は、ダリル・ホールのようでもあり、トッド・ラングレンのようでもあり。ダリルがトッドから多大な影響を受け、アルバム『ウォー・ベイビーズ』を制作してもらってることも不思議な縁? 決して大ヒットにはならなかった同作のトンガった精神性を、あえて99年に持ちこんだのがこの
Gregg Alexander と言っては無理があるかな。
182. The Other Woman - Ray Parker, Jr.
誰が何と言おうと、Ray はサイコーだ。この曲は洋楽聴き始めの小学6年生の冬にカセットに録音し、ずいぶん繰り返して聴いた思い出の曲。"I'm
in love (I'm in love)" "My
life
was fine (Life was fine)" と女性コーラスが追っかける作りがひどくキャッチーで、耳に残るヒットでした。でも6年生にはちょっとヤバイ歌詞だったやね。
もともとセッション・ギタリストだけあって、センスがよろしいのです。Stevie
Wonder や Barry White や、そうそう
Boz Scaggs
なんかにも参加しているのです。Boz なんて、バックは全部
Toto で、ギターは全部ルカサーだろうなんて思ってませんか? AOR名盤
"MIDDLE MAN" での実にさりげない、しかし的確な Ray Parker,
Jr. のリズムギターをぜひ再評価していただきたく。
ギターに留まらず、基本的にマルチミュージシャン。Raydio
解散後は完全に1人宅録モードで、この曲なんかもドラム(イントロ最高!)/ベース/ギター/ピアノ/シンセ/バックコーラスと、サックスなどを除きほとんど1人で仕上げてます。
ちょいと遊びのつもりで引っ掛けた女の子が大変な子で、すっかりぶっ飛ばされたというストーリーを色男よろしく語る。どれくらいスゴイ子っていうと、
"♪Makes me wanna grab my guitar
/
And play with it all night long"
と歌って、かっこいいギターソロに入るわけです。いやあ、まったくもってよく出来てるやね。Ray
ソロ名義の作品もいいけど、Ollie &
Jelly
も在籍した Raydio 時代のファンクぶりぶりな音もオススメなり。
181. TSOP (The Sound of Philadelphia) - MFSB f/ The Three Degrees
Gamble & Huff という名前にピンときた貴方はきっとフィリー・ソウル好き。そして「ファラデルフィアの音」という名のこの曲もきっと心のBGM。
フィリー・ソウル、うまく表現できないのですが、洗練されてます。例えばモータウンの音と比べた場合の話。流麗なストリングスといい、華麗なコーラスアレンジといい、安定したリズムセクションといい、格段にソフィスティケイトされちゃってます。伝説のシグマ・サウンドで生み出された傑作の数々は、今でも色褪せることなく輝いてます。
ご存知『ソウル・トレインのテーマ』、30〜40人のスタジオミュージシャンやアレンジャーなどからなる音楽集団を
MFSB (Mother, Father, Brother, Sister) と銘打って録音したこの曲は全米1位にして、彼ら名義での唯一のトップ40ヒット。ついでにアダルト・コンテンポラリーとR&Bチャートでも1位。まさに一世を風靡したわけです。
聴いてるだけでウキウキしてくる軽快なビートとストリングスメロディ、そして何といってもインストに華を添える
Three Degrees のコーラス。そうか、これがフィリーの音なんだ!って感じ。辛いことがあった日や、落ち込んでる時こそ聴きたいっすね。
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