ALBUMS 80 - 71


順位 アルバム名 アーティスト YEAR
80 (WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY ? Oasis 1995
79 VIVID Living Colour 1988
78 MAMA SAID Lenny Kravitz 1991
77 PARKLIFE Blur 1994
76 SUPERUNKNOWN Soundgarden 1994
75 HOTEL CALIFORNIA The Eagles 1976
74 YNGWIE J. MALMSTEEN'S RISING FORCE Yngwie J. Malmsteen 1988
73 SEVEN SISTERS Meja 1999
72 1987 Whitesnake 1987
71 SIGNIFICANT OTHER Limp Bizkit 1999



80. (WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY ? - Oasis


 右のジャケット写真は、ロンドンのSOHO地区にある Berwick Street という通りです。左端に映っているのが Selectadisc というお店。私も毎日のように出かけて、中古新入荷のディスクをサクサクと漁ったものです。このストリートこそ、街の音楽好きが集うレコード屋集中エリア。右に左に軒を並べて。ああ懐かしき1995-1996のロンドン。

 音楽雑誌で持ち上げるスタイルがどうにも苦手だった僕は、デビュー作の "DEFINITELY MAYBE" が大評判になっていたことは知っていましたが、ほとんど気にしていませんでした。95年3月にかの地に渡るまで聴いたこともなかったような。しかし行ってみてビックリ。恐るべき浸透度。街角で男の子や女の子たちが鼻歌を歌いながら歩いているのです。"Live Forever" なんかを。ヒット曲を口ずさんでるだけだと思えば別に日本でも珍しい光景ではないのかもしれませんが、当時はちょっと驚いたものです。

 折りしも BRITPOP なるキーワードで英国ロック/ポップバンドが一気に盛りあがろうとしていた時期。マスコミも煽りに煽ってこのアルバムのリリースを盛り上げました。自分もすっかり乗せられて、会社帰りにこの Berwick Street にある行きつけの "Mr. CD" というお店で10ポンドで購入し、すぐにCDウォークマンに放り込んで聴きました。まさにジャケット写真のとおりに、道の真ん中を歩きながら。頭の中に1曲目 "Hello" のザクザクした音が流れてきた時の感覚を、今でも忘れません。日が暮れてきたSOHOを目にしながら耳に飛び込んでくる "Wonderwall" "Don't Look Back In Anger" のメロディーラインに身体が震えました。もっとも耳に残ったのはむしろラフな作りの "She's Electric" の方だったり。

 決して突出したバンドだとは思いません。でも、リアムのぶっきらぼうなヴォーカルの存在感は何ものにも代え難いし、少なくともこのアルバムまでは、ノエルのどこか懐かしげな「一緒に歌える」メロディセンスも大したものかと。



79. VIVID - Living Colour


 切迫度という点では次作 "TIME'S UP" の方がはるかにメーター振り切ってますが、純粋な楽曲の良さを評価してこのファーストを取り上げます。

 何しろ衝撃的だったわけです。ブラックが本気でロック、それもハードロックを演ったらどうなるか。そもそもホワイトは身体的運動能力において、ブラックに勝てない部分がある。「生」で戦ったらかなわない相手と向き合うにあたり、ホワイトはギターやベースの音楽信号を電気的に増幅し、歪んだ大音量で理論武装した「ハードロック」なる様式を完成させたわけです。どうだ、これなら勝てるまいと。

 …まあ、それも88年までのことでした。「じゃあ、いっちょそのハードロックっちゅうのをやってみるか?」と立ち上がった4人の黒い男たちによって、ホワイトの牙城は粉々に打ち砕かれたワケです。このアルバムが出た頃、『黒いツェッペリン』とかなんとか言われてたような。でも実際に聴いてみると、いわゆる様式美としてのHRはここにはありません。そりゃそうだ。それじゃ何の意味もないわけで。このディスクに詰まってるのは、ブラックが内側に悶々と抱えてきた長年の想いを一気に爆発させた轟音ミクスチャーと、その残響にそこはかとなく漂う悲壮な解放感。ホワイトの側からファンク等の黒人音楽にアプローチした Red Hot Chili Peppers の成し遂げたミクスチャーとは明らかに違う何か。

 シーンを席巻した強烈な個性の自分たち自身を歌っているかのような "Cult of Personality" が代表曲でしょうが、"Middle Man" "Which Way To America" も印象深し。特に後者は、高い理想を掲げつつも混迷し続ける米国社会をブラックの観点から強烈に斬りまくり、聴いてるだけでめちゃくちゃ血中アドレナリン濃度が高まります。マジで。

 アーティスト名とアルバムタイトルが縁語になっている、極めて美しい例のひとつ。



78. MAMA SAID - Lenny Kravitz


 世に偽物は数多くあれど。ヤツこそはニセモノの中のニセモノ。間違いないよ。

 まあ1stの "LET LOVE RULE" の時は、どうせコイツ洒落で済ませる気だろうとタカを括っていたのです。ところが続いて届けられたこの2ndには困りました。ちょっとこの人、マジでヤバいかもしんない。誰か助けてやってくれ。…と誰も思わなかったのかどうか、誰も助けることなくその後もコツコツ勘違いアルバムをリリースし続け、5作目 "5" からは "Fly Away" が全世界的に大ブレイク。困ったものです。

 それはさておき、このアルバムには一貫性が感じられて好きです。例によって60s〜70sフレイヴァなんだけど、1stに顕著だった暑苦しさがやや薄れ、ストリングスやホーン、メロトロンを多用したメロウな音作りが印象的。特にUS盤のオープニングを飾る "Fields of Joy" の素晴らしくポジティブでドラマティックな展開には、何回聴いても鳥肌が立ちます。Guns N' Roses の Slash に弾かせたギターソロも非常によく練られていて。続く "Always On The Run" や、US盤ではずっと後ろに出てくる "What The .... Are We Saying" での胡散臭さ、いかがわしさはご愛嬌として聞き流し、むしろ "What Comes Around Goes Around" "The Difference Is Why", "Flowers For Zoe" といった抑制の効いた静謐な楽曲にこそ聴くべき点が多い。

 あと、これは Lenny のアルバム全てについて言えることですが、一番のお気に入りは、実は彼自身が叩いているドラムスなんですね。決して巧くはありませんが、微妙なタイミングのずれ具合といい、あまりにも型どおりのフィルインといい、プロのドラマーには出せない何とも言えない味があって。ライヴで連れて来る Cindy Blackman の太鼓も、アレはアレでいいんですけど。

 やっぱり自分は "It Ain't Over 'Til It's Over"(US#2/91) が Earth, Wind & Fire の "That's The Way of The World" (US#12/75) のパクリだってことに気づくのに何年もかかっちゃうような世代なわけで。90年代にリアルタイムで70年代音楽をに触れられる機会は、それはそれで貴重だったってことです。ハイ。



77. PARKLIFE - Blur


 「ブリット・ポップは死んだ」。デーモン・アルバーン談。

 おいおいちょっと待ってくれよ、殺す前にそれが何だったのかちゃんと教えてくれよ。人それぞれいろいろな想いを抱いていることでしょうけれど、自分にとってはやっぱりこのアルバム。"PARKLIFE"

 Blur はある時点までは非常に意識的に「英国らしさ」を追求してきたバンドだと思います。それも、かの地の sense of humour たっぷりに、ひねくれたスタンスでやってくれたものですから、自分なんか全然分かりませんでした。少なくとも東京に住んでいる間は。

 95年3月にロンドンに住むことになって。
 行ってみたら当然、このアルバムががんがん街で流れているわけです。仕方なく買ってみる。CDウォークマンに放り込んで街を歩いてみて驚きました。あまりにも街の風景にマッチしている… 「サウンドトラック」という言葉の真の意味を、まざまざと思い知らされたワケです。

 思うに音楽にはその効果を最大限に発揮できるシチュエーションというものがあって。それは例えば女の子と2人きりのシーンであったり、失恋して落ちこんでいる心情であったり、朝起きて気合いを入れる局面であったり、雨の日であったりするわけですが。そしてある種の音楽には、イギリスのあの暗い冬の空の下や、短くも輝ける夏の日々に極端にマッチするものがあるように思えるのです。これは完全に経験則なので説明不可。たとえばあんなに苦手だった The Smiths / Morrissey の音や声をあれほど好きになって帰って来るなんて、我ながら今でも信じられないくらい。でも間違いなく、あの街で聴くことにより違った受け止め方ができる音楽というものがある。

 タイトル曲 "Parklife" で語りの部分のナレーションをしているのは、映画「さらば青春の光(QUADROPHENIA)」の主演男優、Phil Daniels。さりげなく「英国」「The Who」などの意匠を織り込みつつ、アルバム全体に箱庭ポップとしてのブリティッシュネスをぎっしり詰め込んだ大傑作。最初から最後までアイディア満載で気を抜ける部分がないくらい。

 "End of A Century""Trouble In The Message Centre""This Is A Low" も大好きだけれど、やっぱり "Tracy Jacks" の発音は「とらいせい じゃ〜っくす♪」じゃなくっちゃね。



76. SUPERUNKNOWN - Soundgarden


 ここで「グランジ」について語るつもりはありませんが、90年代にアメリカのロックを大きく変えたムーヴメントであったことは記憶されてもよいでしょう。80年代の軟派なロック(好きなんですけど…)へのオルタナティブとして台頭してきた Nirvana や Pearl Jam, Alice In Chains そしてこの Soundgarden などをひと括りにした分類はあまりにも強引過ぎましたね。各バンドの志向するベクトルは全然違ってましたし、もっと言えばこの Soundgarden もアルバム毎に違うといってもいいくらいでしたから。

 そんなわけで "SUPERUNKNOWN"。日本盤帯には『震撼するしかない!』という迷?コピーがついていました。まあ今にして思えば、「『震撼するしかない!』とか書いとくしかない! 他に言葉浮かばんし!」という担当者の嘆きが垣間見える素晴らしいコピーだと読むことも可能ではありますが。

 それはともかく、SUB POPから音源をリリースしていた彼らが、メジャーシーンでも話題になり始めたのはこの前作の "BADMOTORFINGER" あたりか。ウネリまくる Black Sabbath 的なギターリフの一方で、ハードコア/PUNKの色合いも濃かった同作に馴染みきれなかった自分も、70年代ハードロックっぽい豪快な仕上がりを見せたこの "SUPERUNKNOWN" にはずぶずぶにハマりました。

 芸達者なメンバー4人(Chris Cornell, Kim Thayil, Ben Shepherd, Matt Cameron)ですが、この作品ではやはり Chris Cornell のヴォーカルが圧巻です。聴き手の魂を鷲掴みにしてぐいぐい揺さぶるようなその「声」を中心に据えて、周囲を彩る Kim Thayil のギターもますます映えているような。「歌モノ」の極致はやっぱり "Black Hole Sun" でしょう。あざといまでの悲しげなメロディを「セルアウトだ」と評するのは簡単なことですが、これだけの楽曲を書き、歌える時期というのは Chris Cornell にとっても限られていたわけで、むしろこの後急速に失速するバンドの最後の輝きとして愛でたいところ。

 冒頭の "Let Me Drown" のウネるリフに溺れ、"My Wave" の5拍子リフにリズムを取り損ね、バラード(?) "Fell On Black Days" にどこまでも深く落ち込み、彼ら流のアリーナロック "Superunknown" を大合唱。Ben Shepherd の繊細な感性を感じさせる "Head Down" に心を熱くして "Black Hole Sun" へとたどり着く前半部は非常にキレイに流れるのですが、アルバムの後半部はひたすら混沌とした印象。何回も何回も聴きこんでいるアルバムなのに、曲名を言われてもメロディが出てこないものがたくさんあったりして。そういうカオスっぽさまで狙って作り込んだのだとしたら、それはそれで震撼するしかないですけど。



75. HOTEL CALIFORNIA - The Eagles


 このアルバムに対して、『アメリカという幻影に終止符を打った不朽の名作』とか『ロックを葬り去った永遠の名盤』とか、よくわかんない手垢の付いたフレーズで賛美するレビュウは、正直言ってちょっと苦手。もうやめませんか? 僕もそういうのは書きませんから。

 いや一応理解はしますよ。70年代後半のアメリカの挫折感みたいなものを、極めてコンセプチュアルに描き出した作品という意義は。アートワークのビバリーヒルズホテル写真も、まさに没落の一瞬を捉えた素晴らしいフォトだと思いますしね。でもこういう極めて同時代性の強い作品(1976年リリース)を83年頃に初めて聴いてみても、同じような衝撃を受けることはもともと不可能なわけで。各種時代背景をさておくにしても、素晴らしく良くできた作品なのは確かですけれど。

 人間には能力以上の力を出せる瞬間があるようです。例えば、オリンピックのような舞台において、それまで練習でも全然出せなかったタイムが簡単に出てしまったりします。実はそれも短に潜在的な「能力」を発揮しただけで、練習時の方が抑圧されていたのだと言われればそうなのですが、要は本人でもビックリするくらいすごい結果が出ることがあるってこと。で、多分イーグルスのメンバーにとって、このアルバムもそうした作品だったのではないかと。制作途中から「おいおいヤベーよ、こりゃすごいモノを作ってるぜオレ達…」という意識があったかどうかはともかく、気がついたら自分たちの手に負えないくらい巨大なモンスターが立ち上がってしまったような。

 ある意味それは運命だったのかもしれませんし、この時の5人のメンバーの意識が極めて鋭く交感し合った結果であったのかもしれません。一体どこに行きつくんだろう、と思わせるタイトル曲 "Hotel California" の深刻な敗北宣言(こそが勝利宣言だという聴き方もありましょうが)から、エンディングで夢の終焉を再確認するような "The Last Resort" まで、収められた各曲のクオリティの高さとその配置には、まさに神懸かり的なものを感じずにはいられません。

 …あああ。こうやっててこのアルバムのレビュウはいつも手垢の付いた「不朽の名作」方面へなだれ込んでいくんだよなあ。悔しい。この後も少しだけ活動を続けるイーグルスですが、はっきり言って自分たちの創造したモンスターに生きたまま食われてしまいました。実に美しい死にざまだったと言わざるを得ません。

 で、密かに一番気に入ってるのは、B面1曲目の "Wasted Time (Reprise)" のストリングスアレンジだったりして。胸がキュンとする、甘酸っぱくもホロ苦い夏の想い出。



74. YNGWIE J. MALMSTEEN'S RISING FORCE - Yngwie J. Malmsteen


 好き嫌いが両極端に分かれてしまう人です。巨人ファンとアンチ巨人ファンのようなものか? しかし、アンチが多いということはそれだけ注目を集めている証拠でもあり。気にならないアーティストは道端の石ころのように目にも留まりませんから。

 アルバム毎に若干の路線変更はありますが、基本的に一貫したネオ・クラシカル路線。ディミニッシュ・スケールでひたすら早弾きしまくるそのスタイルは、当時のハードロック/ヘヴィメタル界に大旋風を巻き起こし、多くのフォロワーを産みました。そのほとんどが消えたり、路線変更していく中、唯ひとりイングヴェイだけは生き残り、他国はともかく日本では一定の枚数を売り続けている訳です。

 賛否両論ありましょうが、この1stだけは聴いてみてもいいんじゃないかと。実際、その後もずっとライヴの定番であり続ける楽曲、例えば "Far Beyond The Sun" "Black Star" などの名曲が満載で、瑞々しさとクオリティの高さが両立しているアルバムだと思います。2曲の歌モノ "Now Your Ships Are Burned" "So Above, So Below" でここぞとばかりに素晴らしいハイトーンを聴かせる Jeff Scott Soto は、その後もいろいろなところで活躍するヴォーカリスト。この2曲も、まさに名唱。

 周りにだれもいないのを確かめてから、部屋でこっそり聴きたい、プチ恥ずかしい1枚。
 え? 僕? もちろん聴いてますよ。こっそりとね…



73. SEVEN SISTERS - Meja


 "How Crazy Are You?" がラジオでかかりまくり、日本盤が80万枚以上(?)の大ヒットになったのを横目に、「北欧ブームとかに乗せられて、適当に買ってんじゃないよーん」とか醒めていた自分でしたが、何気なく新宿区立図書館で借りてみたこのアルバムには、正直言ってやられました。

 オープニングを飾る "Lay Me Down" のあまりにも完璧な爽やか攻撃に、負けたのですよ。

♪Lay me down like a river tonight
 Rush into me, rush into the sea
 Lay me down in the naked moonlight
 Quiet the currents that run inside of me
 Lay me down, lay me down...


 Meja のヴォーカルは無理や力みがなくて、とてもナチュラル。邪気のない微笑みに、俺はやられてしまったのです。北欧ブームにはあんなに食傷気味だったのに。

 このアルバムにはそうした完成度の高いポップスが満載。耳当たりが良いので、何回でもリピートして聴いてしまいます。大ヒットした "All 'Bout The Money" ではやや社会的な歌詞にも挑戦。コーラスの「ドゥンドゥンドゥルルンルン」みたいなフレーズが強烈に耳に残る、フックたっぷりの楽曲ではありますが、別に社会的な方面には手を出さなくてもよかったんじゃないの?という気も。ラヴソングだけで十分だったと思うのです。彼女自身が 1st アルバムで歌ったように、Fun Club of Love の1会員としてね。

 まあその辺を差し引いても、十分に素晴らしいアルバムです。全ての女性ヴォーカルファンにオススメ。確かに引っかかるものが少ない、人畜無害な音楽ではあります。でもそれが北欧であり、メイヤなんだからさ。ね。



72. 1987 - Whitesnake


 タイトルを見て「おや?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが。

 「1987」はUK盤のタイトル。US盤は「WHITESNAKE」、日本盤は「サーペンス・アルバス(白蛇の紋章)」。確かにジャケには SERPENS ALBUS とあるのだけれど、白昼堂々と「ホワイトスネイクの『サーペンス・アルバ』ってカッコいいよネ!」などと語りかけられると、どう対処していいかわからなくなってしまうので、これまで誤解してきた皆さんはぜひこの機会に覚えませう。たまには役立つ WINTER WONDERLAND。

 実は一時期ガチガチなCDコレクションをしていて。つまりUSのアーティストはUS盤で、UKのアーティストはUK盤で買わなくちゃ、みたいな。それぞれの国で売られているフォーマットで買ってこそ、そのアーティストに対するリスペクトだとか思ってたんですね。今にして思えば高いUK盤にずいぶんお金を注ぎこんだものです。チキショー。しかしこのアルバムに関して言えば、曲順から収録曲から全然違いますので、別物と言ってもいいかもしれません。いやむしろいろんな意味で、UK盤でなくてはならないディスクだと思います。

 1曲目は誰が何と言おうと "Still of The Night" でなくてはならんのですよ。ところが、US盤では信じられないことに、"Crying In The Rain" で幕を開けるのです。ダメダメダメです! "Crying..." はもちろん悪いバラードではありません。それどころか、誰にも知られぬよう雨の中で熱き涙を流す、漢
(おとこ) David Coverdale の面目躍如といった素晴らしい楽曲です。ですがしかし、これはやはりスピードチューンに疲れた5曲目あたりでようやく登場してほしいわけですよ。UK盤のとおりに。同様に、奇跡的な全米#1ヒットになった "Here I Go Again" にしても、中途半端に4曲目に登場するUS盤ではなく、怒涛の充実楽曲を見せつけた締め括りに、漢(おとこ)の決意表明としてラストに歌い上げてほしいのですよ。(この際UK盤で "Here I Go Again 87" の後に出てくる "You're Gonna Break My Heart Again" はボーナストラックと見なす方向で)

 Mike Stone と Keith Olsen の制作によるビッグなサウンドは典型的な80年代メタルですが、それもまたをかし。でもって、実はこの次の大失敗作 "SLIP OF THE TONGUE" を超・偏愛しているという事実はここだけのヒ・ミ・ツ。



71. SIGNIFICANT OTHER - Limp Bizkit


 Limp Bizkit というアーティスト名は知っていましたが、George Michael  の "Faith" をふざけてカヴァーしているバンド程度の認識しかなくて、アルバム "THREE DOLLER BILLS Y'ALL" がロングセラーになってはいても、なかなか買って聴こうとは思わなかったのですね。特にヘヴィな音が苦手になっていた時期ということもあり。しかしさすがにこの2ndが全米初登場1位になり、シーン全体が一気に流動化し始めるのを目の当たりにして、やむなく聴きました…  それでもお金を払う気になれず、まずは千代田区立図書館でレンタルして。

 いやービックリしましたよ!

 何かこう、説明できないっすね。理屈をいろいろこねくり回そうとしたんですけど、全然だめです。血湧き肉踊る。凄まじい音圧、凄まじいグルーヴ。各々が極めて完成された楽曲群と、ほとんど曲間を空けずに絶妙のDJプレイの如くシークエンスされた構成美。ヒップホップとヘヴィロックを融合してみましたなんていう単純な次元じゃなくて、ものすごく複雑なパズルのピースをかっちりはめ込んだような隙のなさを感じてしまいます。正直言って歌詞のテーマには共感しにくいのですが、ひょっとすると世代的なものもあるのかな? ティーンエイジャーでこのアルバムに触れることのできた人たちが感じる/感じたであろう切迫感を想像すると、震えがきます。楽曲と演奏と声だけでこれだけ聴かせるアルバムがそこらに転がっていたとはあまりにも不覚で、自らの不見識を大いに恥じた次第。

 ヘヴィな "Nookie" 系のサウンドにはもちろん頭振りまくりましたが、実は "Re-arranged" の抑制されたトーン、特にイントロ部分を何回もリピートして聴きまくったのが最終的に大いにハマった要因のひとつだったりして。



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