Diary -Jan (2) 2002-


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31 Jan 2001
Thursday

 かなりインパクトのあるランチを食べました。それはもーやんカレー
 新宿のカレー好きなら、きっと聞いたことのあるお店だと思います。

 ランチはカレー食べ放題。ルーは大きく2種類。「ビーフほほ肉煮込みカレー」 と 「ポーク肩ロース煮込みカレー」 で、これとは別に激辛ルーが用意されており、適宜ミックスして辛さを調節します。激辛ルーは本当に死ぬほど激辛なので要注意! ライスだけでなく焼きうどんがあるのと、ふかしたジャガイモが食べ放題なのもちょっと特徴的。

 一見フツーのルーだけど、ひと口食べてみれば分かる。「濃い!」
 とにかくじっくり煮込んであるのです。お店によれば何と約2週間!もじっくり煮込み寝かせたとのこと。原型は一切留めていませんが、この中には玉ねぎ・人参・セロリ・りんご・バナナ・トマト・ニンニクなどの野菜がふんだんに使われています。野菜から出たソースがたっぷりなのです。さらに24種類のスパイスがブレンドされ、最後にコラーゲンたっぷりの牛と豚のフォン(だし汁)でのばしたという逸品。

 「だまされたと思って」 と誘われて行ったお店でしたが、モノの見事にハマりました。本当にものすごく美味しいカレー! 唯一の難点は、あまりにもディープなその味が少々胃にもたれる点。でもこれは美味しすぎてつい食べすぎるせいかもしれません。一度行くとしばらくカレーは見たくもなくなりますが、再び火がつくと並んででも食べたくなる、そんなカレー屋さん。

 ところで、このお店に連れて行ってもらった人によると、「カレー食べ歩き」 という趣味があるらしい。確かにちょっといいかもしれない。野菜も肉も、スパイスも入っていて身体に悪い食べ物じゃないし、大抵どの街に行ってもありますし。もっと言えば、日本だけじゃなくてほとんど世界中のどの街にもカレー屋さんくらいありそうだ。しかも国や街によって全然違うタイプのやつが。面白そう!

***

 でもやっぱり自分にとっては 「ラーメン食べ歩き」 の方が馴染み深いかなあ。ご存知のお方も多いと思いますが、有名なラーメン日記サイトをご紹介しておきます。ここまで来ると何か「業」のようなモノを感じる、とよちゅんさんのものすごいラーメン記録。ほとんど毎日のように、しかし至って淡々と食べかつ記していらっしゃるところが氏の氏たる所以。脱帽です。



30 Jan 2001
Wednesday

 ソルトレーク冬季五輪が近い。

 ところが、NHKで盛んに放映している五輪CMの様子がおかしい。MISIA の歌をバックに、橋の上に男の子と女の子が立っている。ノリとしてはむしろ中学生日記の数年後とか、ちゅらさん北国ヴァージョンに近い。女の子がおもむろに語り出す。「…4年ぶりだね。あれから、どうしてた?」 「…いろいろとね」

 どうやら男の方は照れ屋らしい。女の子もなかなか次の言葉が出てこない。すると、空から白いものがチラホラと。「…あ。雪だ」 女の子はこういう場面で降る雪に弱いものと相場が決まっている。ロマンティックが止まらなくなった彼女に、彼は 「はい、これ」 とニットの帽子を差し出す。プレゼントだ。

 彼女はおずおずと受け取ると、早速かぶってみる。「…あったかーい…」 目を閉じて彼のプレゼントの暖かさに感じ入った彼女、今度はキラキラした目を輝かせて言うのだ。「私もね、プレゼントがあるの!」 彼女が彼の手を引くようにして、2人は画面右側に走って消える。CM終了。


 …おいおいおい!
 このCMどういうことなんだよ。これヤバイだろちょっと。子供もいっぱい見てんだよNHK。全国で子供に問い詰められ困リ果てる親続出。「ねえママ、『私のプレゼント』 って何のこと〜?」 「ねえママ、この人たちどこに走って行っちゃったの〜?」 「ねえママ、どうして帽子をプレゼントしたの〜?」

 「私のプレゼント」 って、それどう考えても「彼女自身」ってことだろ? 画面右側に隠されているのはラブホ "SALTLAKE" の看板なのか? 「帽子」がコ●ドームのメタファーであることはフロイトを引用しなくても自明だろう。男の子がかぶるのでなく、女の子に手渡したところはヒネリが効いてるけど。


 …効いてない。効いてないよ全然!

 正直ヤバい! ヤバすぎるよNHK!



 などと、大騒ぎしてる人たちもちょっとどうかと思う今日この頃。



29 Jan 2001
Tuesday

 朝日新聞の2ちゃんねる化というべきか、元来2ちゃん的であった朝日の本領発揮というべきか。とにかく今一番ホットなコーナーは、朝日の朝刊テレビ欄だ。下の方にある1月20日の日記にまず目を通していただいた上で、昨日の朝刊テレビ欄下部の 「はがき通信」 をお読みいただきたい。

 "反論したい"
 17日付の「『名探偵コナン』が嫌いだ」に対し、新一(コナン)のために反論したい。新一の推理はちょっと強引かもしれないが、彼は犯罪を憎む心を持って行動しているのです。えらそうな態度も可愛いコナン君が解説すると和らぐと思うのですが、いかがでしょうか。 (神奈川県・小● 真弓・主婦・38歳)

 …。
 可愛いコナン君。彼のために反論する、主婦38歳。
 あああ。

 と思ったら、今日の天声人語にもやられた。1月24日の日記で取り上げた 「モー我慢できない」 が再びネタにされている! 曰く、「モー我慢できない」 と牛の気持ちを代弁して書いたら、読者からは 「笑い事ではない」 とお叱りの手紙をいただいた。ただ、牛の立場というのも考えてみたい、というのだ。転んでもタダでは起きない彼のしたたかなコラムニストぶり。「ラベルを頼りにして生活しているこの表示社会で、ラベルを信用できなくなるのは、何ともつらい」 と締め括る彼だが、かつて朝日新聞が珊瑚礁にイニシャル文字を彫り込んでヤラセ写真を公開し、自社のラベルの信用が地に堕ちたことを意識して書いているのだとすれば、ちょっとカコイイ。

 それにしても2段構えのオチを周到に用意する朝日には負ける。
 「係り結びの法則」 を覚えているだろうか? 古文で習ったアレだ。「〜こそ…すれ」 あるいは 「〜ぞ…なむ」 なんていうアレだ。Aという形で係ったらBという形で結ぶ。全ては予定調和として様式美を構成する。これをネタと呼ばずして何と呼ぶ。自作自演と呼ばずして何と呼ぶ。自作自演かどうかはさておき、テレビ欄下の 「はがき通信」 の投稿募集や、ハガキの宛先を見かけたことがないというのはどういうことか。ていうかEメールで送りたいのでメルアド教えてくださいという声はないのか。担当者が 「はがき」 フェチなのか。

 コナン騒動は一段落したようだが、朝日は自信を持って次のネタを送り込んできた。数日後、いかなる反論が掲載されるか目が離せない。本日の 「はがき通信」 から抜粋して、今日のテキストを締め括ることとしよう。

 "珍解答が面白い"
 土曜日の楽しみは昼のNHKニュースの後の 「生活笑百科」。…(中略)… この番組は見逃せない。ハナから常識的でない珍解答者の上沼恵美子の存在は大きい。 (千葉県・三●田 良子・主婦・54歳)



27 Jan 2001
Sunday

 今週末の2月2日(土)からシネセゾン渋谷で公開される映画をレビュウしておこう。
 『アモーレス・ぺロス』

 自分が観たのはもう1年以上前、2000年の東京国際映画祭。グランプリ受賞作として渋谷公会堂で観たが、あまりの衝撃に、観終わった後しばらく立ち上がれなかったことを告白しておく。監督はメキシコ人のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。この 『アモーレス・ぺロス』 が長編第1作。

 とにかく重厚で濃密。これがラテンの血なのか。
 舞台のメキシコシティは、猥雑で活気に満ちている。監督が言うところの 「あの都市の、内臓の匂い」 が立ち上ってくるような凄まじい映像。シティのある交差点で、暴走する車が別の車に激突する緊迫したシーンで幕を開け、画面はいきなり血に染まる。事故に巻き込まれた人々にまつわる3つのストーリィ。三者三様の命が、愛が、この事故を接点に激しく交錯する。

 具体的には、(1) 兄嫁に思いを寄せ、2人で街を出るため闘犬で稼ぐ青年オクタビオ、(2) 不倫相手と暮らし始めたばかりのトップモデル、(3) 家族も過去も捨て、殺し屋として生きるホームレスの老人。これらが巧みに組み合わされ描かれる。監督と脚本家が 「3年間で36回書き直した」 という渾身のスクリプトは、2時間半近くある上映時間を全く感じさせない。緻密な構成と圧倒的な映像。

 ストーリィ (1) の主人公、兄嫁を慕う青年オクタビオは、Supergrass のギャズと、元 Faith No More のマイク・パットンを足して2で割ったようなルックス。本能のままに突き進む兄嫁とのセックスシーンも印象的だが、何より強烈なのは彼が入れ込むメキシコシティの闘犬。兄が大事にしていた犬を勝手に持ち出して連戦連勝するが、次第に狂暴になる犬とともにオクタビオの心も大胆に、野蛮になっていく。犬がギラギラした目で相手を噛み殺さんとする激しい闘犬シーンの映像の生々しさといったらない。そして彼を待つ悲惨な結末も。

 第2ストーリィで描かれる、幸福の絶頂から奈落の底に転落するカップルの姿にも考えさせられるが、個人的に唸らされたのは第3ストーリィ。現場近くを歩いていて事故に遭遇し、オクタビオの犬を連れ帰って助けた老人エル・チーボ。彼が遥か昔に棄てたはずの家族への思いを募らせて、自分の娘の部屋に侵入して涙を流すシーンには、心の底に隠しておいた部分を鷲づかみにされてガシガシに揺さぶられるような気分にさせられる。なぜなら彼は再び踵を返して、二度と娘に会えない世界に旅立っていくのだから。

 苦い映画だ。痛い映画だ。
 3つの愛が描かれながら、そのどれもが、救われない。絶対的に、救われない。
 人生はハリウッドの映画と違って、ハッピーエンディングにはならない。人生そのものが宿命的にアンハッピーなものである以上、僕らはもがきながら現実社会の1日1日を生きていくしかない。映画に描かれた主人公はそれぞれ、これからどういう人生を送るのだろう。出演俳優が語るように、人は人生の因果から逃れられない。そのことを痛烈に教える映画だ。

 『アモーレス・ぺロス』 には、"LOVE'S A BITCH" という英訳題がついていた。
 救われない3つの愛。4つめを抱えている人にこそ、観てもらいたい映画。



26 Jan 2001
Saturday

買い物特別全権委任大使:冬くんの物欲日記
『抹茶ムースポッキー』


 「食欲日記」 の方が正確だという説もありますが。一応、題字も抹茶色を意識して多少は気を遣ってみたんであまり細かいこと言わないように。

 江崎グリコムースポッキーと言えば、ここ数年の大ヒット作だ。オリジナルのチョコから、ホワイト、ストロベリーとバリエーションを広げ、爆発的な人気を保持している。そんなムースポッキーに新しい仲間が加わったとくれば、試食せずにはいられない。セブンイレブン等では\147前後。しかし近所の某スーパーで\120前後で山積みになっているのを発見し、秘密裏に入手成功。

 まずはそのパッケージの美しさに圧倒される。
 決して派手過ぎず、しかし力強い鮮やかなグリーン。それはイエスの 『危機』 のジャケットの美しさに優るとも劣らない。箱の中には5本入り小袋×3。その1つを手に取り、開封するや否や立ちのぼる渋い抹茶の薫り。胸一杯に吸いこめば、心癒されるとはこのことか。う〜ん。

 …あ。ウソです。薫りは漂いません念のため。当たり前ですが。

 しかし実際の話、口に含んでみれば甘さ控えめの抹茶味がふんわり広がるあの食感。キメ細かい抹茶クリームの泡が優しくポッキーを包み、口の中でとろけるあの食感。クセになります。ファンになります。思わず13人のうちで誰が一番いいかについて激論交わしちゃいます。例えば紺野あさ美のボケ具合が最高だとか、なっち整形し過ぎだよとか。

 …いつの間にモー娘。になってるんだよ!

 まあいいか。ご存知のように現在ポッキーはモーニング娘。を大々的に起用してCMキャンペーン展開中。それがペイする広告戦略と言えるのかどうははさておくとしても、特にムースポッキーについてメンバーひとりずつ主演のヴァージョンを作る過剰さには驚かされる。それだけ力を入れている商品ということだろうし、実際のところお薦めの一品だ。一部地域では未発売。悪しからず。



25 Jan 2001
Friday

 「サヨナラって苦手でさ。だからそういうの無しで行っちゃおうかなって」

 ああ、分かる。痛切に分かる。ラリーがやってることは、僕がやってきたことそのままだから。これまで付き合った相手に正面から別れを告げたことは、多分ない。決定的な場面には、いつだって背を向けてきた。アリーが夢に見たとおり、僕は書き置きだけ残して去る男。素人にはお薦め出来ない。もちろんアリーにも。

 第4シーズンの 『アリー my ラブ』 もいよいよ佳境。同じベッドで寝起きする仲になったアリーとラリー(=Robert Downey Jr.)。ラリーの元奥さんとは先週までのストーリィですっかりふっ切れたけれど、今週は何とラリーの息子、サムが尋ねてくる。両親を精神的苦痛で訴えたい、と。両親が別れることにより、子供は決定的な精神的苦痛を受ける、と。サムは言う。「ママは自分の部屋で泣いているんだよ。今度はパパが泣く番だ

 僕は経験上、別れるべき両親が別れずに無理して一緒にいることの方が子供に与える精神的な傷は大きいと信じている。だからサムの言い分には100%賛成するわけではないけれど、脚本家がサムに言わせるセリフにはいちいちぐさっときた。「いつもうまくいってるフリばかり。パパは僕が泣いてることを忘れる方法をもう見つけた」

 アリーは涙の決断をする。ラリーをデトロイトに行かせてしまう。元妻と子供の住むデトロイトに。必ず帰ってくる、と約束して発つラリー。でも遠距離恋愛が決して実らないことを僕らは経験上知っている。特に、行った先に昔の恋人がいたりする場合には。どうしてアリーのぶつかる恋愛は、いつもこんな恋ばかりなのだろう。どうして僕は、そんなアリーの心に深く感情移入してしまうのだろう。

 今シーズンに関しては、ラリー・ポール/ロバート・ダウニー・Jr. の存在が大きかった。今さらながらそれを強く感じる。シャツとタイの色合わせがいつもお洒落で、知的で機転が利く男。クールにキメる台詞回しも、時折見せるはにかんだ表情も、アリーのお相手としてはかなり完璧に近かったはず。アリーにとっても、僕らにとっても、極めて印象的なキャラクターになった。デトロイトから帰ってくる日、あるいはアリーがデトロイトに出かける日。もう少しだけ、2人が心通わせる様子を見ていたい。

***

 ダンサーのサム・アダムスとネル、マークとシンディというサイドストーリィもそれぞれうまく組み込まれていた。特にネルの力いっぱいのスマイルは最高。たとえ一時の火遊びであっても。

 でも一番強烈だったのは、サム・アダムスが訴えた元恋人/ダンスパートナー、イネス・コルテス側の弁護士で。ビバリーヒルズ高校/青春白書の、ウォルシュ家のパパ(ジェームズ・エクハウス)が出てきてビクーリ。来週はバリー・マニロウが、7週間後にはスティングがゲスト出演予定。本人役で歌うんじゃなくて、何かセリフがあるといいのだけれど…。いやそれは高望みってものか。スティング曰く 「愛してるなら、その人を自由にしてあげなきゃ」。御意。アリーもラリーを自由にしてあげたのだから。



24 Jan 2001
Thursday

 受験生のみんな、センター試験も終わっていよいよ追いこみの季節だね!

 今年のセンター試験には僕らもちょっと度肝を抜かれたよ。何といってもついにドラえもんが登場したからね。でもドラえもんが登場したこと自体より、問題そのものが面白すぎて涙出てきたよ。総合理科にしとくにはもったいない、むしろ現代文の問題として捉えたいポイント満載だよ。

 まずさとしが開口一番、「スモールライトって、とても便利そうな道具だね」
 ところがこの後をいくら読んでも、なぜ便利なのか、さとしはスモールライトを何に使おうとしてるのか、まったく書かれてないんだよ。さとし何も考えずにしゃべってるんだね! カッコいいよ!

 さらに 「原子そのものを小さくすることなんてできるの?」 と至極まっとうにツッコむめぐみに、「そりゃ、未来の話だからね」 と返すさとし。おいおい未来にはホントに原子そのものを小さくできるのかよ! 根拠LESS にお気楽回答するさとしに、めぐみがさらにツッコむのは心情的に納得できるよ!

 しかし淡々と理屈で攻めるめぐみ、キミも可愛くないね! ボケる機転が利かないさとしが 「わかったよ。でも、めぐみって夢のない人だね」 とかなり寒いオチに達した瞬間、解答する気力を一気に失ったみんなの気持ちを僕らも追体験したよ!

 そんなキミたちには、現代文的に最高に美しいオチを勉強してもらいたいな! 受験生なら必読の、朝日新聞 天声人語だよ。今日の天声人語は読んだかい? 雪印食品の牛肉すり替え事件ネタだよ。「想像するだけでも異様な光景だ。13.8トンもの牛肉の詰め替え作業をする。」 という情景描写のイントロといい、昨年の雪印乳業の食中毒事件に触れる配慮といい、食品会社を信用する気になれない消費者心理の代弁といい、ほとんど非の打ち所のない構成だよ!

 最後のオチを除いてはね!


 「『モー我慢できない』。牛にしてもそんな気持ちになるのではないか。」


 …小論文を書く時は、最後のマス目まで埋めない方がいい場合があるらしい。
 寒い駄洒落オチで採点者の心証を害するのだけは、やめておけ。これ最強の忠告。



23 Jan 2001
Wednesday

 いよいよ本格的にニューヨーク出張が取りやめになってしまった。
 内部決定の取り消し作業や、外部へのお詫び状その他後始末に追われる日々。特に金が絡む問題は面倒だ。例えばNYの最高級ホテルのスイートルームを直前キャンセルしたとして、キャンセル料なりデポジットなりを 「なかったこと」 にする交渉を想像していただきたい。そりゃ無理というものだ。

 もちろん遊びに行けるわけじゃないし、行ったら行ったで間違いなく殺人的なスケジュールと緊張感の中で1週間を過ごさねばならなかった。その点ではホッとしているところもある。しかし人事異動まで発令され、僕ら数人が専担になって準備した会議出席を、さしたる理由もなくあっさりキャンセルするその手法には、疑問なしとしない。

 言いたいことは山ほどあるけれど、所詮僕らはチェスの駒に過ぎない。そしてまた忠実なチェスの駒であることの対価として給与を貰っている事実も否定できない。個々のチェスの駒が独自の思考を持ち、勝手な方向に動き始めたらそのゲームには絶対に勝てないということだ。しかも勝ったり負けたりするのはキングではなく、そのゲームの運営費を支出している(あるいは徴収されている)観客たちだ。観客たちにはキングを選ぶ権利があり、チェスの駒も事実上観客たちに雇われている。この構造の下では、チェスの駒は観客たちに選ばれたキングの指示に忠実に従い、右と言えば右へ、左と言えば左へ進むことのみが許される。くどいようだけれど、許すのは観客たちだ。キングではない。

 もっとも、何も考えずにキングの指示に従い続けるか、従いながらもその指示の妥当性について考えるかの違いは大きい。特に、自らがチェスの駒でありながら観客のひとりでもあるような二重身分者である場合には。



22 Jan 2001
Tuesday

 ゴキブリは好きですか? じゃあ芋虫はどうですか?
 虫と人間が共生することは本当にできないのか?
 決定的な対立の前に、一人の少女が立ち上がった!

 …ん? 『風の谷のナウシカ』 のレビュウじゃなかった。虫と人間の共生を試みるナウシカの、むしろ対極に位置する 『スターシップ・トゥルーパーズ』(Starship Troopers、1998) を観ました。

 まさに怪作。一発で大好きな映画に。

 前から見たい見たい見たいと思っていて、ようやく年末にテレビで見ることができたのです。原作はハインラインの名作SFで邦題 『宇宙の戦士』 で知られます。ベトナム戦争〜朝鮮戦争の流れを受けて書かれたストーリィには、好戦的だとか右寄りだとかの批判も。しかし強化服(パワード・スーツ)を着て宇宙戦争に乗り出し、闘いながら成長していく若者の物語が後に 『機動戦士ガンダム』 に与えた影響は計り知れず。

 ところがポール・バーホーベン監督の映画化は物凄い。何が凄いかというと、周辺設定や古い学園青春モノ的な人間関係などの描写はひたすら薄っぺらく、胡散臭く。で、すべての労力を膨大な数の昆虫型エイリアンとの戦闘シーンの特撮に注ぎ込む。

 この交戦シーンの演出たるや凄まじいもので、米国では「R」指定が付いたほどのぐちゃぐちゃな残酷描写。マシンガンで手榴弾で攻撃しまくる肉弾戦。ほとんど絶え間なく首が飛び、胴体がえぐれ、血しぶきが上がる壮絶な映像。明確な意思を持たず、ただひたすら襲ってくる巨大な虫たちに食いちぎられる人間たちを眺めていると、何だかもう笑っちゃうしかないという感じ。

 これほど大量の虫たちと人間との戦いを、CGを駆使して描き切った映画は過去に類を見ない。極端な話、そこだけを楽しむべき映画とも言えます。もちろん、映画の途中にたびたび挿入される軍の広報映像もある意味シニカルな笑いを誘ってくれはします。虫型エイリアンたちに襲われる地球を描きながら 『だから君も今すぐ兵士になって虫をやっつけよう!』 なーんていう宣伝文句。実際のところ戦時中には大真面目でその手の国威発揚が行われるわけで、パロディをもって強烈にアンチテーゼを発している、と。

 それでもやっぱり、誰がどう見ても湯水の如く金を注ぎ込んで作ったとしか思えない、手抜きゼロのSFXとCGに、ひたすら圧倒されて口をあんぐり開けて放心するのが正解みたい。過剰なまでの血と暴力は、時にバカみたいに爽やかで非現実的に感じられる。それが戦争の本質なのだとしたら、バーホーベン監督の狙いは見事に達成されたという他ありません。

 パワフルでカッコいい女性キャラ、Dina Meyer 演じる Dizzy Flores に惹かれました。彼女は主人公である Johnny Rico に密かに想いを寄せており、紆余曲折を経て戦場でついに結ばれるシーンではこちらもハッピーになります。それもつかの間、虫に殺されてしまう残虐なシーンにかなり泣く。愛だけでは救われない。愛は勝つという幻想の崩壊。そんな当たり前のことさえも、僕はどうやら忘れかけていたらしい。



21 Jan 2001
Monday

 それはちょっと残念なお知らせ。

***

故川谷拓三さんの息子を、麻薬取締法容疑で逮捕
 
近畿厚生局麻薬取締部は20日、自宅などに大麻や覚せい剤を隠し持っていたとして、東京都調布市仙川町、俳優仁科貴容疑者(31)を大麻取締法違反(所持)などの疑いで逮捕した。仁科容疑者は、俳優の故・川谷拓三さんの長男。調べでは、仁科容疑者は、同法違反の罪に問われ、大阪地裁で実刑判決を受けたタレントの加千須ユージン被告(29)と共謀し、大麻約3・5グラムと覚せい剤約0・3グラムを所持していた疑い。家宅捜索の結果、自宅から大麻約1・3グラムが見つかった。調べに対し、仁科容疑者は「家にあった大麻は人から預かっただけ」などと容疑を否認しているという。仁科容疑者は96年に俳優としてデビューし、00年にはNHK朝の連続テレビ小説「オードリー」に出演した。

***

 2001年11月2日の日記にも書いたけど、仁科 貴の演技はやっぱり良い。親父の川谷 拓三は日本が誇る俳優のひとり。川谷ほどのカリスマじゃないにせよ、正直者で損しがちな男を演じれば天下一品。そんな仁科が大麻だよ。「人から預かっただけ」なら許されると思っていたのか。それともホントにハメられたのか。正直者で損しがちな男を地で行ってしまったのか。加千須ユージン被告(29)って誰だよ? とりあえず斧に気をつけろ。

 残念だ。こんな夜には日清 どん兵衛に限る。川谷 拓三&山城 新伍の軽妙なCMを思い出しつつ、熱いきつねをすする夜。仁科の住所「調布市仙川町」がうちのすぐそばであることが気になって仕方ないことは内緒にする方向で。



20 Jan 2001
Sunday

 久々に感動した。
 「感動した!」 by 小泉 純一郎 どころの騒ぎではない。まずは数日前の朝日新聞テレビ欄 『はがき通信』 の投書をお読みいただきたい。

 "腹立たしい態度"
 私は「名探偵コナン」(月曜、日本)が嫌いだ。新一(コナン)がほとんど自分の考えで犯人に仕立て上げていく。犯人というのは慎重な捜査裁判で明らかになっていくもので、高校生が勝手に決めて良いものではない新一のえらそうな態度が腹立たしく感じるのだが、いかがなものか。 (埼玉県・沼● 隆・26歳)


 …26歳の立派なオトナがこんなこと言ってることの方が、いかがなものか。

 こういうことを日頃頭の中で考えて腹を立てている人がいる。それだけでもかなりヤバい状況だが、さらに郵便局からハガキを購入し、文章を練って投書にしたため、ポストに投函までする人がいる。郵便料を払って投函されたからには、この投書をしっかり集配する郵便配達人がいる。社に届いたからにはちゃんと目を通し、テレビ番組への意見・不満と分類し、朝刊テレビ面への掲載を決定する朝日新聞社員がいる。原稿を仕上げ、レイアウトを整理してテレビ面の体裁を整える朝日新聞社員もいる。テレビ面の印刷の刷り具合を確認すべくざっと目を通す印刷所職員もいる。

 かくの如きいくつものチェックポイントを通過して、この如何ともし難い投書を掲載した朝日新聞朝刊が僕の前にある。感動せずにいられようか。これが何万部も刷られて各家庭に届けられたのである。沼田 ●・26歳、今確かにキミの思いは遂げられた。

 なぜ途中の過程で誰にも止められなかったのか。あるいは誰も止めようなどとは思わなかったのか。ひょっとして名探偵コナンに腹を立てる26歳のオトナというのは、社会的には極めて正当な意見の主張者として公認されているものなのか。僕の方がオカシイのか。一体全体、世の中はどうなっているのか。


 いくらチェックポイントがあってもこういう結果は起きる。いわんやウェブサイト内における細かい誤字脱字やデータ引用の誤りをや。とか何とか自分のサイトに我田引水的にオチを付けつつ、朝日のこんなセンスが好きでやめられなかったりするんだよね〜とか白状しておこう。



19 Jan 2001
Saturday

「ていうかさ、結婚式出てみてどうよ?」
「どうって、別に普通だよ」
「だけどさ、馬鹿みてえとか思わね? あんなの全部儀式に過ぎねえじゃん?」
「まあねー。チャペルで式に参列するのって初めてだったんだけど、これがバージンロードですって言われても(笑)。急にケント・デリカットみてーな外国人神父が出てきてアヤシゲな日本語で 『誓イマスカ?』 とか言い出すのは確かにどうかと思う」
「そうそう。あのオルガン弾いてる女の子とか、賛美歌歌ってた女の子もバイトだぜ。金もらってお仕事してブランド品のバッグとか買ってるわけよ。祝福するつもりなんかこれっぽっちもなく」
「そんなこと言い出したらキリがないだろ。オレはむしろ披露宴の司会のお姉さんのあのわざとらしい語り、あれを何とかしてほしいわけよ」
「次はここで必ずこう言うぞ、って先読めまくるしな」
「『新婦は男の子顔負けのやんちゃな少女時代だったそうです』 とかな」
「まあ儀式だからしょうがねえけど」
「先が読めてこそ儀式か」
「そうそう。ここでアラン・ホワイトのドラムソロが入るぞとかな」
「その "儀式" じゃねえよ。しかも今のネタ2人くらいしかウケてねえよ」
「でもさ、今日もそうだったんだけど、新婦のお父さんが泣きまくる、あれ何だろうね?」
「何だろうね? まあオレ子供いないしよく分かんねえよ」
「子供いたとするじゃん。で女の子だったとするじゃん。25歳くらいまで育ったとしてさ、明日から結婚して他の男と暮らし始めると。そこで泣きまくるってさ、相手の男に対して失礼ぽくね?」
「別に相手の男が嫌いだから渡したくないっていう涙じゃないだろ」
「しかし人間は遅いな」
「何が?」
「だってネコとかさ、確かに子供生んだらそりゃ可愛がるぜ。でもひとたび乳離れしたらもう基本的にお互い独立した個体じゃん。自分の子供が誰とセックスしようがメソメソしないぜネコは。いわんや25歳の娘をや」
「飛躍した比喩だなー。でも確かに人間はその辺ぶっ壊れてる生き物だから」
「今日の2人もパソ婚だったな」
「何だよぱそこんって」
「つーかネゲット?」
「ああ、『パソ婚』 ね。きっかけはネットの掲示板だったらしいし」
「きっかけなんて何でもいいんだよなきっと」
「何か強引にまとめに入ってないかお前?」
「おう。儀式だろうとなんだろうと、2人が幸せでありさえすればいいんだよ。もし儀式がいやならテメーが式挙げなきゃいいだけの話だし」
「だよな。ついでに婚姻届とかも要らねー」
「事実婚マンセー」
「届けたいやつは届ける。選択肢が多いほど万人が幸福を得る機会が増大する」
「せっかくまとめに入ったのにまた広げるのかよ」
「要は今日の2人は幸せそのものだったってことよ」
「確かに。2次会定番のビンゴは今回も1列も揃わなかったけどなオレ」
「…」



18 Jan 2001
Friday

 それじゃ今夜の Ally McBeal はどうだったかというと、チャビー・チェッカーが出てきて "The Twist" (US#1/62) を歌ったりなんかして。もっとも僕らの世代だと、88年に Fat Boys (with Chubby Checker) 名義で全米16位まで上がった "The Twist (Yo Twist!)" の印象の方が強かったりする。

 アリーは外見で人を判断することに疑問を感じるのだけれど、実際にはアリー/キャリスタ・フロックハートはとてもキュートな女性なわけで。しかもアリー(の役柄)に限って言えばハーバードのロースクール出という設定だから、彼女が 「外見で人の価値を決めないで!」 なんて声高に叫べば叫ぶほど、偽善者然とした雰囲気を醸し出してしまう。特にエレインにとっては。

 エレインの役どころの重要性については何度か触れた。少なくとも僕にとってはとても重要なキャラ。彼女はアリーたちと違って、司法試験どころか大学も出ていないアシスタントにすぎず、何より本人がそのことをコンプレックスに思ってる。でもウジウジせず、妙ちくりんな発明をしてみたり、今日のストーリィのようにダンスコンテストに命を賭けて優勝してみたりして、常にポジティブに生きようとしてる。見ているこちらが痛いくらいに。そう、痛いのだよ。とても。そしていとおしい。

 ラストシーンでラリー/ロバート・ダウニー・Jr がエレインに投げるセリフが、またいいのなんの。ツイストコンテスト優勝のトロフィーを撫でてうっとりする彼女に 「キミはそれ以上の女性だよ」 という趣旨の言葉をかけるのだけれど、さすがに今シーズンはゴールデングローブ賞の最優秀助演男優賞を獲っただけあるスムースな演技。最後にひとり事務所に残ってトロフィーにキスするエレインの気持ちもよく分かる。

***

 …分かったフリをするなんて、剣呑ですな
 いやまったく剣呑であると言わざるを得ませんな。

***

 明日は友達の結婚式に出るのでもう寝ます。ゲームクリエイターである彼がこんなヒット作を飛ばした時にはびっくりしたものです。才能ある友人を持つのは、時として悔しいけれど、全体としてはやっぱり嬉しいこと。幸せであるように…



17 Jan 2001
Thursday

 NHK土曜夜の海外ドラマロズウェル 星の恋人たちを見始めてからしばらく経つ。最初は気に留めていなかったのだけれど、毎週見るようになると、自然と自分の生活に組み込まれてくる。それが連続ドラマというもの。

 実は宇宙から落ちてきた異星人である男女3人の高校生。そしてそれをとりまく普通の高校生たち。当然の如くそこに芽生える恋愛。異星人としての自分たちのルーツを探ろうとする彼ら。FBIを交え、さまざまなトラブルが発生してストーリィは展開する。

 役者は若者ばかりだけれど、それぞれに個性があってなかなか見せてくれるし、アメリカのティーンのファッションや、ロズウェルの街のセットなんかも見ているだけでかなり面白い。モダンロック系のヒット曲がバックに流れているシーンも多く、実際にアメリカの高校生がどんなロックを聴いているのかも垣間見える。何より嬉しかったのは、週末の楽しみがひとつ増えたこと。仕事が忙しい週だって、週末にアリーとロズウェルとダーマ&グレッグがあると思えばこそ乗りきれる。

 そんな小さな楽しみをひとつふたつ持っておくのは、きっと悪いことじゃない。



16 Jan 2001
Wednesday

 誰からも声をかけられることなくベンチを暖め続けるのは切ないことか?
 … 否。

 僕は中高一貫の学校で、ずっとバスケットボール部に所属してました。たまたま自分の前後数年間に強力な選手が集まっていて、県大会でベスト4を争うような、下手したらインターハイに出ちゃいそうなチームでした。ということは即ち、僕のようなプレイヤーは全然試合で使ってもらえないってこと。結局高校3年の夏の大会までずっとベンチウォーマー

 でも僕はちっとも気にならない。むしろレギュラーメンバーのおかげで遠征試合や地方大会についていくことができ、あちこちの街を歩けたのは良い思い出です。バスケットは5人で1チームだけど、5人のスタメンだけでは練習試合もできないし。僕らベンチウォーマーが相手になり、こぼれ球を拾い、彼らに1本でもたくさんシュートさせることによってチームは勝てたのだから、それでいい。たくさんの思い出と、スポーツ好きになるチャンスをどうもありがとう。素直にそう思える。

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 映画 『スペース・ジャム』 (Space Jam, 1996) を見ました。

 他愛もない子供向け映画だとおっしゃるかもしれません。本物のマイケル・ジョーダンが、ワーナー・ブラザーズの Loony Tunes のキャラたちが実写/アニメ入り混じってバスケットボールをプレイする世界。バッグズ・バニーのファンなら必見。

 もちろんそれだけじゃなくて。今シーズンNBA現役プレイヤーに復帰して大活躍中のマイケル・ジョーダンの主演映画、という点からもかなり楽しめます。大学に入ってNBAを目指したいと思っていた少年時代から、実際にNBAで頂点を極め、さらに大リーグに転身した彼の背景を踏まえた作り。野球では泣かず飛ばずのマイケルが、ひょんなことからバッグズ・バニーたちと一緒にバスケットボールの試合に出ることに。相手は他の星からやってきたモンスターたち。さあ、マイケルは再びバスケットに情熱を燃やすのか?

 『スペース・ジャム』の中で抜群に可愛いのがローラ・バニー! バッグズの恋人役で出てくる雌ウサギキャラで、クールに構えてカッコいいプレイを連発、お嬢ちゃん扱いする相手モンスターに一泡吹かせての決めゼリフは "Don't ever call me "DOLL"!" マジ萌えます。

 映画のサントラのレビュウはコチラです。




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