Soundtrack
SPACE JAM
1996 Warner Bros. |
1. Fly Like An Eagle - Seal 2. The Winner - Coolio 3. Space Jam - Quad City DJ's 4. I Believe I Can Fly - R. Kelly 5. Hit 'Em High - B. Real, Busta Rhymes, Coolio, LL Cool J & Method Man 6. I Found My Smile Again - D'Angelo 7. For You I Will - Monica 8. Upside Down - Salt-N-Pepa 9. Givin' U All That I've Got - Robin S. |
10. Basketball Jones - Barry White
And Chris
Rock 11. I Turn To You - All-4-One 12. All Of My Days - R. Kelly Featuring Changing Faces And Jay-Z 13. That's The Way - Spin Doctors Featuring Biz Markie 14. Buggin' - Bugs Bunny |
R&B/ヒップホップを中心に錚々たるメンツを揃えたサントラ盤。 似たようなタイプのアルバムは他にもたくさんありますが、歌モノに偏っていたりコア過ぎるラップばかりだったりして、バランスのよいディスクは多くありません。でもこれは特にお勧め。バラエティに富んだアーティストと楽曲が、絶妙の曲順で並べられた素晴らしいショウケース。リリース時に大喜びして輸入CDショップで買ってきたあの日の感動は今聴いても色褪せず、むしろ細部にわたって楽しみが増えてきた感すらあります。 オープニングは Seal の "Fly Like An Eagle"。Steve Miller の77年全米2位の大ヒットのカヴァーですね。95年の全米1位 "Kiss From A Rose" で勢いに乗っていた Seal の「クールなのに熱い」ハスキーなヴォーカルを楽しめます。シャープなトラックとの相性も最高。フェードアウト前のアドリブ部では、全米での初ヒット "Crazy" (US#7/91) のフレーズも引用してすっかり自分のフィールドに持ちこみます。実はこの曲では極めて貴重な共演が行われているのですが、それは後で触れるとしましょう。 ヒップホップ畑からは、何と言っても "Hit 'Em High" での大競演が聴きもの。B. Real, Busta Rhymes, Coolio, LL Cool J、Method Man というメンツからはちょっと時代も感じますが、小細工なしの直球勝負ゴリ押しマイクリレーが痛快。映画の中でもバスケットボールの激しい試合シーンで効果的に使われており、おどろおどろしさを盛り上げるナンバーです。その陰で霞みがちではありますが、Coolio の "The Winner" や Salt-N-Pepa の "Upside Down" もそれぞれ「らしさ」が溢れるいい楽曲。前者は Curtis Mayfield 使い、後者はもちろん Diana Ross 使い。あくまでも僕にとっての評価基準ですが、ヒップホップは分かりやすさ&楽しさが身上。この2曲はその基準をバッチリ満たす好トラックです。 ダンスものとしては、まず93年に "Show Me Love" を全米5位まで押し上げた Robin S. が久しぶりに新曲を提供。これがなかなかカッコいいハウスで侮れません。そして96年に "C'Mon N' Ride It (The Train)" を全米3位と大ヒットさせた Quad City DJ's のノリノリの映画タイトル曲 "Space Jam" で躍りまくり。Quad City DJ's は実態が掴みにくいスタジオ系「産業」ダンスグループですが、単純に楽しいダンスグルーヴを作らせると実にいい仕事をします。 R&B系歌モノもお忘れなく。人種混成コーラスチーム All-4-One の "I Turn To You" と、天才的ティーン歌手 Monica の "For You I Will" はいずれも泣く子も黙る Diane Warren 大先生の楽曲。しかも前者の制作は Jam & Lewis、後者は David Foster とくればもう全洋楽ファンのハートを鷲掴みです。実際にはやっぱり可愛い方が売れてしまうわけで、シングルヒットしたのは Monica ちゃんの方だったりしたわけですけど。David Foster 先生がこの頃ブラックものバラードのプロデュースで次々と大当たりを出して小銭を稼いでいらっしゃったのも今となっては懐かしい思い出か。 R. Kelly は "12 PLAY" アルバムなどでエロエロ路線爆走坊主という印象がありましたが、このサントラではちょっとイメージチェンジしています。まずは4週間全米2位のメガヒットになった "I Believe I Can Fly"。タイトル通り、強烈にポジティヴなメッセージソングですが、分厚いゴスペルコーラスを配して感動的に仕上げました。多少くどい部分もありますが、今聴いても素直に「良い曲だ」と思えます。もう1曲は秘蔵っ子 Changing Faces をフィーチャーするとともに、当時はまだ駆け出しだった Jay-Z を使った "All of My Days"。Jay-Z の Y の上にウムラウトみたいに「‥」が付いている頃、といえば分かってもらえるかな? そのJay-Z がこのサントラではもう1曲意外な仕事をしています。えっ? 曲目リストに Jay-Z の名前が見当たらない? まあまあ焦らずに最後まで読んでくださいな。 さてさて、この他にも Barry White を引っ張り出してみたり、場違いぶりが最強すぎてコメントのしようがない Spin Doctors f/Biz Markie の "That's The Way" (KC & The Sunshine Band のカヴァー。ださカッコ良い!)などなど聴きものは尽きませんが。何と言っても。この人を差し置いてサントラを終わることはできないという。人が。 そう、D'Angelo! その後のブラックミュージック界に深刻な影響を与え続けるマイルストーン的傑作、"BROWN SUGAR" をリリースして一躍時代の寵児となった D'Angelo は、その後すぐに 2nd アルバムをリリースせずに、しばらく各種サントラに新曲を提供するなどして焦らせる作戦に出ました。ここに収録された "I Found My Smile Again" もそのひとつで、僕らファンはリリースの度にサントラを買わされては D'Angelo のトラックを有り難そうにリピートしてプレイしたものです。浮遊感溢れるフワフワしたトラックの上で、幾重にも重ねたファルセットが舞う期待どおりの1曲。ところでバックのオルガンに聴き覚えはないか? このサントラのどこかで? そう、Seal の "Fly Like An Eagle"! クレジットを確認すると、バッチリ 「Keys: Armando Colon and D'Angelo」とあるではありませんか。オールタイム級に好きなシンガー、Seal のバックで D'Angelo がオルガンを弾いている! そう思って聴き返すとますますカッコいいアレンジ。ボリューム抑えめながら、縦横無尽に暴れている D'Angelo のハモンドオルガンの音色だけ聴いていても楽しめてしまうのです。2人の共演は何よりも嬉しいプレゼントでした。 さてアルバムの最後を締め括るのは、何と Bugs Bunny(の声優さん)がラップする "Buggin'"。他に Daffy Duck や Porky Pig の声も参加しています。で、どうしてこんなどうでも良さげな曲に言及するかといえば… 作詞クレジットを見てみましょう。Lyrics by Shawn Carter、すなわち Jay-Z その人なのであります! バッグズ・バニーのラップパートを書いてあげる Jay-Z! 今となっては信じられない話ですが、当時の Jay-Z がいかに仕事を選ばず何でも引き受けていたかを示すエピソードとして極めて象徴的な1曲。コアな Jay-Z ファンならこの曲のためにサントラを買っても惜しくない、というくらい貴重なトラックです。いやあんまり本気にされても困っちゃうんですけど。 お気に入りベスト3 1. Fly Like An Eagle - Seal 2. Space Jam - Quad City DJ's 3. For You I Will - Monica . |