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artist : LEAH KUNKEL
title : 『 LEAH KUNKEL 』
release : 1979年3月
label : COLUMBIA
tracks ( cd ) : (1)STEP RIGHT UP (2)UNDER THE JAMAICAN MOON 【ジャマイカの月の下で】 (3)SOUVENIR OF THE CIRCUS 【サーカスの贈り物】 (4)IF I BUILD MY WHOLE WORLD AROUND YOU 【あなたと私の世界】 (5)DOWN THE BACKSTAIRS OF MY LIFE (6)LOSING IN LOVE 【また恋を失って】 (7)STEP OUT (8)DON'T LEAVE THESE GOOD BYE (9)I'VE GOT TO GET A MESSAGE TO YOU 【獄中の手紙】 (10)FOOL AT HEART
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(5) / side B...(6)〜(10)
members : LEAH KUNKEL,vocal,background vocals,additional harmonies,acoustic & electric piano,handclaps ; STEPHEN LUKATHER,electric guitars ; STEPHEN BISHOP,acoustic guitars,background vocals ; ANDREW GOLD,acoustic guitars ; DAN DUGMORE,electric guitars ; DOUG LIVINGSTON,acoustic guitar ; DANNY KORTCHMAR,electric guitar ; JOHN JARVIS,acoustic & electric piano ; CRAIG DOERGE,acoustic & electric piano,clavinet,moog synthesizer,arp string synthesizer,Yamaha organ ; WILLIAM D. SMITH,acoustic piano,organ,background vocals,harmony ; JAMES NEWTON HOWARD,acoustic & electric piano ; LELAND SKLAR,bass ; RUSS KUNKEL,drums,congas ; LENNY CASTRO,additional percussion ; JOE FARRELL,sax ; JIM HORN ,alto sax,flutes ; JACKSON BROWNE,background vocals ; PENNY NICHOLS,background vocals ; ROSEMARY BUTLER,background vocals ; RENEE ARMAND,chorus harmonies ; VAL GARAY,handclaps ; MATTHEW McCAULEY,strings.
producer : VAL GARAY & RUSS KUNKEL
related website : 『 www.coyotesisters.com 』(リア・カンケルのバンド〜コヨーテ・シスターズの公式サイト)、『 THE OFFICIAL CASS ELLIOT WEB SITE 』(リア・カンケルの姉〜キャス・エリオットの公式サイト)




 本作にはゲストとしてスティーヴ・ルカサーやスティーヴン・ビショップ、ジャクソン・ブラウン、ダニー・コーチマー、アンドリュー・ゴールド他著名なミュージシャンが多数参加していて、さり気なくも素晴らしい演奏を繰り広げているわけだが、その豪華なゲスト陣の中で「オヤッ?」と思う名前がある。あの名セッション・ドラマー〜ラス・カンケルである。彼は本作の共同プロデューサーでもあるのだが、その苗字を見てもらえば分かるように本作の主役〜リア・カンケルとは夫婦だったのである (後に離婚) 。そして更に驚くことに彼女はあのフォーク&ソフト・ロック・グループ〜ママズ&パパズの“ママ・キャス”ことキャス・エリオットの妹なのだ。豪華なゲスト陣がこぞって参加しているのは、こういった人脈の中に大分前から身を置いていた彼女だからなのだろう。ではプロフィールはこのぐらいにして、早速1曲目から聴いていくことにしよう。


(1)STEP RIGHT UP  ▲tracks
 「自分のようになって欲しくはないから、恋に破れた人はどうぞ私の泣き顔を見にきて」と励ます(1)。「何もそこまでしなくても...」とは思うが、いい曲には違いない。慰めるようなエレピやフルートで始まり、徐々に爽やかにそして力強く立ち上がっていくかのような展開に心打たれる。シンガー/ソングライターのピーター・マッキャンの作。


(2)UNDER THE JAMAICAN MOON 【ジャマイカの月の下で】  ▲tracks
 “AORを代表する名曲”といっても過言ではない、スティーヴン・ビショップとの共作の(2)。コメントでも書いた通り、ニック・デカロの“AORを代表する名盤”〜 『 ITALIAN GRAFFTI 』 の冒頭を飾る曲。あちらは流麗なストリングスやハーモニーがフィーチャーされていて、ひたすらジェントルかつムーディーなアレンジだが、本盤ではよく動くベースを中心として、幾分ビートを強調したアレンジ。「UNDER THE JAMAICAN MOON」という歌詞の手前でスライドしてくるベースがとても印象に残る。終わりの方では一瞬トロピカルなパーカッションが入ったりもする。イントロ他でフィーチャーされているジョー・ファレルのサックスが、 『 ITALIAN GRAFFTI 』 とは違った意味でムーディーだ。僕個人としては、エンディングのギター・ソロがちょっとだけ耳につく 『 ITALIAN GRAFFTI 』 ヴァージョンより本作ヴァージョンの方が気に入っている。ま、こちらの方を先に聴いてしまったからかもしれないが。今では両方同じくらいの頻度で聴いている。


(3)SOUVENIR OF THE CIRCUS 【サーカスの贈り物】  ▲tracks
 本作中一番寂しく悲しい印象の(3)。「もしあなたがだめになってしまうと感じたら〜この幸運の贈り物を受けてごらんなさい」と人生に傷ついた人を励ます歌。共作を含めると彼女のオリジナル曲は(2)とこの(3)のみ。


(4)IF I BUILD MY WHOLE WORLD AROUND YOU 【あなたと私の世界】  ▲tracks
 前曲での暗さを吹き飛ばすかのようにアップ・テンポでポップな、シャッフルの(4)。キャプションでも書いた通り、この曲はモータウンの名デュオ〜マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルが'67年に放ったヒット曲のカヴァー(2人のデュエット・アルバム 『 UNITED 』 に収録)。


(5)DOWN THE BACKSTAIRS OF MY LIFE  ▲tracks
 始まり方からして名曲感の強い、ピアノによる伴奏の(5)。ちょっとキャロル・キングを彷彿とさせる出だしから、サビでは一時的にデュエットのような感じさえする男声のハーモニーが入る。2分44秒でピタッとブレイクした直後、「ドゥドゥドゥドゥドゥ」っとせりあがってくるピアノの低音がとてもドラマティック。


(6)LOSING IN LOVE 【また恋を失って】  ▲tracks
 サウンドは一変して、少しラテンっぽさの漂う物憂げな(6)。モーグ・シンセによる間奏だけが珠にキズといったところか。アコギでアンドリュー・ゴールドが、そしてバックグラウンド・ヴォーカルでジャクソン・ブラウンが参加している。逆に彼女はジャクソン・ブラウンのファースト・アルバムにライターとして名を連ねていた。


(7)STEP OUT  ▲tracks
 聴いた感じからは、これがまさかママズ&パパズ (のメンバーであるジョン・フィリップス) の曲だとは到底思えない(7)。完全にAOR化しているので、熱心なママズ&パパズのファンでもなければライナーや作曲者のクレジットを見ない限りそうとは分からない。でも、ハーモニー感覚だけはちょっとママズ&パパズっぽいかもしれない。カラッと爽やかな風が吹いているような、明るくポジティヴな曲。


(8)DON'T LEAVE THESE GOOD BYE  ▲tracks
 イントロのせいで「また(3)みたいな曲かな?」と思ったらそうでもなく、穏やかでホンノリ明るい曲になっていく、ジュールズ・シアー作の(8)。この曲の歌詞でも分かる通り、彼女は別れの曲でも穏やかな視点で描かれた曲が好きなようだ。カヴァーの多い本作のようなアルバムの歌詞を読んでいると、「英語の歌詞には“I ”と“YOU”に男女の区別がなくて、カヴァーするのには好都合だなぁ」とつくづく思う。日本語は、“僕 (俺) /君 (お前) ”や“私 (あたし) /あなた (あんた) ”といった主語に始まるその後の言葉遣いが、明らかに男の歌/女の歌という区別を強いるから、男性が女性の歌を、女性が男性の歌を歌うことが中々容易でないように思われる。ま、英語には英語なりの男女特有の言い回しがあるのかもしれないし、日本でもいくつもの例外はあるが。


(9)I'VE GOT TO GET A MESSAGE TO YOU 【獄中の手紙】  ▲tracks
 (9)は、恋敵を殺してしまったために、これからその刑を執行されようとしている死刑囚が、恋人へのメッセージを牧師に託す、という重い内容を、明るくポジティヴなメロディーに乗せて歌った、ビー・ジーズの曲。2コーラス目から左チャンネルでかすかに聴こえるヴォーカルが、隠し味としてジワジワと効いてくる。


(10)FOOL AT HEART  ▲tracks
 スティーヴン・ビショップ作の、AOR然とした(10)。歌いだしがマーヴィン・ゲイの名曲「WHAT'S GOING ON」 (『 WHAT'S GOING ON 』 に収録)を思わせる。最後のリフレインがいつまでも耳に残る。


 時代のせいもあってサウンドこそ少し違うものの、僕はキャロル・キングの 『 TAPESTRY 【つづれおり】』 や荒井由実の 『 ひこうき雲 』 と同質の、普遍的な感動を求めて本作を聴いている。これからも末永く本作を折に触れて聴き返すことだろう。

 そう言えば、彼女の声はキャロル・キングとユーミンを足して2で割ったような声に聴こえるのだが、皆さんはどうお思いだろうか。


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