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artist : THE BLANKEY JET CITY
title : 『 BANG ! 』
release : 1992年1月
label : NON FIXX
tracks ( cd ) : (1)RAIN DOG (2)冬のセーター (3)SOON CRAZY (4)ヘッドライトのわくのとれかたがいかしてる車 (5)絶望という名の地下鉄 (6)とけちまいたいのさ (7)★★★★★★★ (8)クリスマスと黒いブーツ (9)Bang ! (10)ディズニーランドへ (11)2人の旅 (12)小麦色の斜面
tracks ( analog ) : 未確認
regular members : 浅井健一 ASAI kenichi,vocals,guitars ; 照井利幸 TERUI toshiyuki,bass ; 中村達也 NAKAMURA tatsuya,drums.
guest musicians : 土屋昌巳 TSUCHIYA masami,blues harp,shaker,tamblin ; ホッピー神山 HOPPY KAMIYAMA,vox organ,piano ; MICKY GALLAGHER,hammond organ ; WILL PARNEL,congas ; JAQ & DI (THE SMANTOOSIES),chorus.
producer : 土屋昌巳 TSUCHIYA masami
related website : 『 BLANKEY JET CITY OFFICIAL WEB 』(公式サイト)、『 SexyStones.com 』(ユダ、シャーベッツの公式サイト)、『 LOSALIOS.COM 』(ロザリオスの公式サイト)、『 rockin' blues.com 』(ロッソの公式サイト)




 僕がなぜ彼らの数あるアルバムの中でこの2ndアルバムを選んだかというと、1stアルバムは曲はいいのに音像がモヤモヤしていて迫力に欠ける面があるし、3rdアルバムは、シャウトしながらもギリギリの部分でメロディーとの均衡を保っている本作に比べると、あまりにずさんな(肯定的に“ラフだ”とはいいかねる)感じがする上、いい意味での軽みを持っていたリズム隊がヘヴィーになりすぎたし(特にジャジーな曲でモッタリしすぎる)、それ以降のアルバムはそれなりにいい曲はありながらも全体としては過去の曲の焼き直し的な部分が否めないからだ。


(1)RAIN DOG  ▲tracks
 タイトルをトム・ウェイツの傑作 『 RAIN DOGS 』 から拝借した(1)。拝借というより、「本作全体が 『 RAIN DOGS 』 のサウンドを意識してますよ」というサインといった方がいいのかもしれない。
 ウェスタンもののフレーズをスピード・アップしたようなハード・ボイルドなリフが、否が応でも聴き手をスリリングな世界に引きずり込む。R & R系やパンク系の音楽を志向してきたものとしてはちょっと珍しいくらいに、息つく暇もなく次々と場面が変化していく。屈折したリズムで緊張感溢れる第1ソロを抜けた直後の、イヌの鳴きまねと共に飛ばしまくる第2ソロの疾走感がカッコよすぎる。そして終わり方も手を抜くことなくキメまくってくれる。それも大仰な感じではなくあくまでもクールに。


(2)冬のセーター  ▲tracks
 いきなりニナ・ハーゲンのフレーズ(詳しい曲名は失念!)を頂いてしまった(2)。このリフもちょっとウェスタンぽいニュアンスがある。ルート音とその短3度上(半音3つ分)の音を繰り返すとそれらしくなる。自殺ごっこをする“孫”の歌なのに、こんなにハード・ボイルドなリフ。そのミス・マッチさがかえっていいのだろう。
 因みに僕はこの曲のシングルで初めてブランキーを知ったのだが、その時は「なんか郷ひろみに似た声だな」と思ったものだった。しかし、直感的に「今まで聴いてきたものとはワケが違う」という只ならぬ迫力を感じ、気に入ってしまった。


(3)SOON CRAZY  ▲tracks
 ジャジーなロカビリーの(3)。個人的には最もブランキーに似つかわしいリズムだと思う。作詞は浅井、作曲は照井の彼らとしては古い曲。ギターのブラッシングとスネア・ドラムが時折ユニゾンするイントロや、この曲の基本を成すベース・ラインがとてもクール。ヴォーカルはしゃべるように歌っているのだが、その言葉の区切り方はとてもリズムを意識していて、音楽的。
 退廃的なイメージを羅列した歌詞の最後に“君はもう知ってるかい? この宇宙はもうYesって 言うのをやめるらしいんだ 君はもう知ってるかい?”とエコロジーっぽい発言をしていたり、アドリブで“家に帰ってトムとジェリーを見ようぜ!”と小学生っぽいことを言っていたりするところが、浅井“ベンジー”健一の危ういバランス感覚。


(4)ヘッドライトのわくのとれかたがいかしてる車  ▲tracks
 コンガやシェイカーが加えられた上に、中村達也がスティックをブラシに持ち替えてプレイしているルンバ調の(4)。この曲は、トム・ウェイツの「JOCKEY FULL OF BOURBON」(『 RAIN DOGS 』 に収録)をかなり意識していて、マーク・リーボウのような屈折感はないものの、かなりキャッチーでラテン風味なギター・ソロがフィーチャーされている。このギター・ソロがとてもメランコリックでロマンティックこの上ない。また、後奏でのモノクロームなギター・サウンドも格別にイイ。


(5)絶望という名の地下鉄  ▲tracks
 前曲と前後して、ヒリついたオルガンがフェイド・インして始まる、ショッキングでヘヴィーなR & Rの(5)。この曲も(3)と同様、浅井作詞・照井作曲。これまでの不良系のR & Rが全てウソっぽく聴こえてしまうほどのドキュメント性。というか実録度。ま、ホントにここまでかどうかは定かではないが、彼らの本気度満点の迫力ある演奏が聴き手にそう信じ込ませるに足る説得力を持っている。
 なお、この曲のタイトルはテネシー・ウィリアムスの戯曲 『 A STREETCAR NAMED DESIRE 【欲望という名の電車】』 をもじったもの。


(6)とけちまいたいのさ  ▲tracks
 うらぶれた感じのスロウなR & R(6)。“日曜日の朝 まぶしい太陽 空の青さに 心を奪われ”という歌詞の割には暗い曲調。しかし、その後の“だけど気分は あぁ このまま青い空の中へとけちまいたいのさ”というくだりで納得。


(7)★★★★★★★  ▲tracks
 本作一番の緊張感を持った(7)。曲名が伏字になっているのは、あまりに直接的過ぎるからだろう。ロッキン・オン・ジャパンに掲載されていた浅井直筆の歌詞によると、実際の曲名は「人殺しの気持ち」。正義を貫くためにはナイフを使うことも厭わない主人公が苦悩する様を、スリリングな演奏で巧みに表現している。サビでの半音ずつ上下するコード進行がちょっとフラメンコ的(こじつけかな?)。意外と、歌詞がなくても十分O.K.なほどインストゥルメンタルが充実している。 “手に汗握る”という言葉は、正にこの曲のためにあるようなもの。


(8)クリスマスと黒いブーツ  ▲tracks
 一転してメランコリックなイントロの(8)。歌メロに入る前のフレイズも、前曲の如くちょっとフラメンコ的。曲は比較的スピーディーなR & Rなのだが、ベース・ラインはラテン音楽的なフレイジング。
 変わりゆく周囲と変わらない自分。そんな自分を周囲に問うような叫びが胸を打つ。


(9)Bang !   ▲tracks
 初めて聴いても懐かしい感じがする曲調の(9)。「ブンチャッ、ブンチャッ」という2拍子の曲。曲が進行するにしたがって半音ずつ転調していき、それと共に緊張感も増していく。
 タイトルからも察することができる通り、ここでも主人公は拳銃ごっこをしている。


(10)ディズニーランドへ  ▲tracks
 静かなアコースティック・ギターのフレイズが徐々に発展していき、緊張感が高まりを見せた時リズムがオンになり、その緊張感が空虚になっていく、諦念に満ちたイントロで幕を開ける(10)。
 ノイローゼになってしまった友達と、はなから行く気もないディズニーランドへ行く約束を交わしたものの、“一緒にいるのがつらくて、恥かしくてたまらないから”と、その約束を破るだろうと想像し、“僕は冷たい人間の仲間入りさ”と開き直ってみせる主人公を描いた曲。


(11)2人の旅  ▲tracks
 空虚な響きを湛えつつも、モノクロームの美しさを持った(11)。ほとんどEm/G7/C7/B7のコードの繰り返しなのだが、楽器が増えていくにしたがってグルーヴ感も増していき、儚げな美しさと素朴な躍動感が同居した、不思議な世界を紡ぎ出していく。聴き手側は薄暗いのに、歌の世界の向こう側は眩しい光に満ちていて、歌の主人公達に付いてその光にドンドン進んでいく感じ。後奏は長いギター・ソロがフィーチャーされているので、ついついこの曲に合わせてギターを弾いてしまう。


(12)小麦色の斜面  ▲tracks
 少年のような躍動感溢れる軽快なR & Rの(12)。小麦色の斜面の途中に止めてあるトラックの荷台で寝転んでいるうちに、新宿に立ち止まっていたり、破滅型ロックン・ローラーのライヴでチューニングのために30分も待たされたりする白昼夢を見るという曲。
 “次第に暮れゆく風景”を下降するクリシェで表現したり、“虫たちの囁き”をハイ・ハット・シンバルとギターのブラッシングで表現したり、しまいには“破滅型ロックン・ローラーが奏でる赤く浮かんだ音”を表現するために、「こんな感じに」と言って第2ギター・ソロをスタートさせたりと、様々な場面を表現するために工夫を凝らしている。しかし、そんなプロセスを全く感じさせずに、極上のR & Rに仕上げているところがいかにも彼ららしい。


 本作を聴いていてつくづく感心させられてしまうのは、ほとんどサウンドトラックという感じの情景喚起力。これでもかというぐらい様々なフレイズを連発するギター、リズムのツボを押えながらもとてもキャッチーなベース、そして攻撃的でありながらもロマンティックなドラムスが一体となって生み出す、一つの無駄もないサウンド。浅井が子供の頃、よく親に聴かされていた映画音楽の影響や土屋昌巳の長年の経験に裏打ちされたセンスが生かされている。それと、浅井と照井がサイコ・ビリー系のバンドをやっていたことも手伝って、ウェスタンっぽい音使いが随所に現れる。

 因みに、ハモンド・オルガンを弾いているのは同名異人でないとすれば(イアン・デューリーの)ブロックヘッヅのミッキー・ギャラガー。


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