YOU WILL ROCK ME / QUEEN54 
 side A  title / (composer)time
 (1)TIE YOUR MOTHER DOWN / (MAY)4:48
 (2)LET ME ENTERTAIN YOU / (MERCURY)3:02
 (3)STONE COLD CRAZY
           / (MAY, MERCURY, TAYLOR, DEACON )
2:14
 (4)MODERN TIMES ROCK'N'ROLL / (TAYLOR)1:48
 (5)SHEER HEART ATTACK / (TAYLOR)3:25
 (6)KEEP YOURSELF ALIVE 【炎のロックン・ロール】
                               / (MAY)
3:47
 (7)BRIGHTON ROCK / (MAY)5:10
 (8)DEAD ON TIME / (MAY)3:23
 total time...27:37+(頭約10秒,曲間約1.5秒,後約12秒) 
 side B  title / (composer)time
 (1)WE WILL ROCK YOU / (MAY)
2:01
 (2)FIGHT FROM THE INSIDE 【秘めたる炎】
                             / (TAYLOR)
3:02
 (3)FUN IT / (TAYLOR)
3:29
 (4)SWEET LADY / (MAY)
4:01
 (5)IF YOU CAN BEAT THEM 【うちひしがれて】
                            / (DEACON )
4:15
 (6)NOW I'M HERE / (MAY)
4:13
 (7)IT'S LATE / (MAY)
6:25
 total time...27:26+(頭約10秒,曲間約2秒,後約7秒) 



 side A

(1)TIE YOUR MOTHER DOWN / (MAY)
taken from : 『 A DAY AT THE RACES 【華麗なるレース】』  ▲title / artist
 東洋的で荘厳なフレイズ(同作収録の「WHITE MAN」と呼応している)から、永遠に上昇していく構造を持ったフレイズを経て(共にブライアンのギター・オーケストレイション)、“ハードなのに軽快な”ブギーA(1)がスタート。特別なイントロダクションと軽快なノリは、オープニングには持ってこいの曲。ギター・ソロではブライアンがスライド・ギターを披露している。
 何かとうるさい両親をどうにかして(母親→縛り付けて、父親→鍵を掛けて閉じ込めて)パーティーに出かけよう、というパーティー・ソング。この点からしてもアルバムのオープニングとして作られたらしいことが窺い知れる。


(2)LET ME ENTERTAIN YOU / (MERCURY)
taken from : 『 JAZZ 』
  title / artist
 “両親をどうにかして”家を出たあと始まるこのショウで、「あなたを楽しませますよ(LET ME ENTERTAIN YOU)」というA(2)。前曲がブギーだったので、ハードなシャッフルのこの曲は相性も良い。
 歌詞には「We'll sing to you in Japanese(日本語でも歌います)」(訳:大野れい)という部分があり、『 A DAY AT THE RACES 』 に収録の「TEO TORRIATTE (LET US CLING TOGETHER)【手をとりあって】」で日本語の歌詞を歌ったこともほのめかされている。その他、ショウ・ビジネスにまつわる様々な事柄が出てくる歌詞を読んでみると、「意外と彼らって自分達とその周りで起こることを客観的に捉えてたんだな」ということが分かる。
 曲は女性も含む5〜6人が言い争う声(笑い声もある)で終るのだが、フレディー、ブライアンの声とロジャー“らしき”声は分かるものの、あとは誰なのかよく分からない。ジョン・ディーコンなどは一度も声を聴いたことがないので分かるわけがないのだが(笑)。
 因みに、この曲が収録された 『 JAZZ 』 のタイトルの意味は、本来の音楽としての“ジャズ”ではなく、“ごちゃ混ぜ”という意味合いで解釈されているが、この曲の歌詞の中には“Jazz you”という言葉が出てきて、「興奮させます」と訳されている(訳:大野れい氏)。


(3)STONE COLD CRAZY / (MAY, MERCURY, TAYLOR, DEACON )
taken from : 『 SHEER HEART ATTACK 』  title / artist
 前曲の言い争う声のエンディングのように“ああだこうだ”と言い争って作ったかは分からないが、4人が初めて共作したA(3)。メタリカがカヴァーしたことでも有名なハード・ロッキンな曲で、とにかくブッちぎりのスピード感。
 ある種のグルーヴ感さえ持ったギター・リフ部と、鼻詰まり気味のフレディーが早口で歌うブレイク部、そして「Stone cold crazy, you know」というハッとするコーラスの“キメ”部が印象的。


(4)MODERN TIMES ROCK'N'ROLL / (TAYLOR)
taken from : 『 QUEEN 【戦慄の王女】』  ▲title / artist
 立て続けにハード・ロッキンでスピーディーなA(4)。こちらは作曲者でもあるロジャーがヴォーカルを執っている。ブライアンのリヴァーブ深めなソロは結構ストレイトなロック・フレイズ。後半には遠くの方でピアノも聴こえる。
 前曲よりも若干リフがダサ目だが、この“速さ”と最後の“ウゥゥゥゥゥ、ロックン・ロォォォル!”のカッコいいディレイ付きシャウト(声の主はもちろんロジャー)に免じて許してしまおう。


(5)SHEER HEART ATTACK / (TAYLOR)
taken from : 『 NEWS OF THE WORLD 【世界に捧ぐ】』  ▲title / artist
 ブッちぎりの前2曲から少しスピードを落として、「ガガガガガガガガ」とぶっきらぼうなギター・コードを掻き鳴らすA(5)。“当時シーンを席巻していたパンクへのクイーンからの回答”とよく言われているが、音の響きがやっぱりハード・ロックなので、パンク・ロックを欲している耳にはどうしても届かないと思う。が、しかしカッコいい曲ということに変わりはない。彼らの良い意味での気持ち悪さが、同時代性を飛び越えて、むしろニュー・ウェイヴというかサイバーな感じを出している。
 タイトルからして分かるように、本来 『 SHEER HEART ATTACK 』 に収録されるはずだったのだが、このサウンド自体はこの時代だからこそ採用したのではないかと思われる。
 作、リズム・ギター、ベース、ドラム、リード・ヴォーカル(一部フレディーがリードを執るが)全てをロジャーがこなしている。ロックン・ロールと言えど、基本的には“エンターテインメント”としてそのパフォーマンスを提供してきたクイーンだが、“炎のロックン・ローラー”〜ロジャーは、パンクが発散する“何か”に感じ入るものがあり、結構“マジ”でやっていたのではないだろうか?


(6)KEEP YOURSELF ALIVE 【炎のロックン・ロール】 / (MAY)
taken from : 『 QUEEN 【戦慄の王女】』  title / artist
 “炎のロックン・ローラー”〜ロジャーの曲が2曲続いた後で、ブライアン作の“炎のロックン・ロール”A(6)。次曲で堂々と炸裂する“津軽じょんから”ギターのプロトタイプ的なリフがファンキー。
 「1小節多いのではないか」と思われるドラムのブレイク部のあと披露される、ツヤツヤでプリプリとした今にもトロケそうな音色のギター・アンサンブルがとにかく気持ち良い。更にそのあと、ロジャー→ブライアンと続く“語り”っぽい部分の直後のギターのトロケ具合も最高。友人からベスト盤を借り、自分でファースト・アルバムを買ってこのギターの音色を聴いた時の衝撃は今でも忘れられない。


(7)BRIGHTON ROCK / (MAY)
taken from : 『 SHEER HEART ATTACK 』  title / artist
 “津軽じょんから”ギターを堪能できるファンキー・チューンA(7)。フェイヴァリット・アーティストとしてビートルズとジミ・ヘンドリックスの名を挙げるブライアンの好みが見事な形で昇華された1曲。
 遊園地のS.E.が響く中、『 QUEEN II 』 最後の曲「SEVEN SEAS OF RHYE 【輝ける7つの海】」の最後に聴こえてくる歌声と同じメロディーを、誰かが口笛で奏でている(左チャンネル)。そのさらに奥から聴こえてくるファンキーなギター・リフに、ガンガン飛ばすドラムが加わって、否が応でも胸がワクワクしてくる。フレディーが主にファルセットで歌うAメロから、何となく“栄光”っぽい雰囲気のサビ、そしてさらにファンキーな間奏部へ。最後はハイ・スピードなブルーズ・ロックになってジミ・ヘン・コードでジ・エンド。
 その間奏部で聴かれるギターに、特に“津軽じょんから”フレイヴァーが溢れている。また、前曲で少々試みられたブライアンの看板芸とも言うべき「ディレイを使った1人輪奏」も見事。このディレイ技は次作 『 A NIGHT AT THE OPERA 』 の「THE PROPHET'S SONG 【預言者の唄】」で、コーラスの塊にも掛けてしまうという荒技に発展する。


(8)DEAD ON TIME / (MAY)
taken from : 『 JAZZ 』  title / artist
 ブライアン作のファンキー・チューン3連発の最後を飾るA(8)では、ブライアンのファンキー・フレイヴァーが前曲以上に炸裂する。「ヅグンク・ヅンツク、ヅグンク・ヅンツク」というリフのファンキーさは当然のことながら、リスナーの手をスルリスルリとかわしまくる、掴み所のないギター・ソロの身のこなしは、とにかく“お見事”のひと言。初めて聴いた時は「何でこんなことができるんだ?」と半ば呆れてしまうほどのインパクトだった。
 そんなブライアンのプレイに負けず劣らずギトギトでノリノリにハイ・テンションなフレディーのヴォーカルと、チキチキ、バタバタと騒々しいロジャーのドラムが、聴き手の心拍数にさらなる拍車を掛ける。
 初めに言った“ファンキー・チューン3連発”というのを裏付けてくれるかのように、歌詞の終わりの方には、しっかりと“KEEP YOURSELF ALIVE”の文字が。しかも小文字で書かれた歌詞の中、そこだけ大文字で。これは明らかに 『「KEEP YOURSELF ALIVE」の発展系の曲だ 』 ということを示唆するためにそうしてあるとしか思えない。



 side B

(1)WE WILL ROCK YOU / (MAY)
taken from : 『 NEWS OF THE WORLD 【世界に捧ぐ】』  ▲title / artist
  スポーツ中継、もしくはCM経由で今やお茶の間でもお馴染みのB(1)。「ドン・ドン・チャッ」という手足を使ったバック・トラックに、ラップの元祖とも言えそうなヴォーカルが乗るという、なんとも風変わりな作りながら、一瞬にして連帯意識を生んでしまう不思議な魅力を持った曲。
 当カセットと同様、『 QUEEN 』 から 『 JAZZ 』 までの曲で構成されたライヴ・アルバム 『 LIVE KILLERS 』 では、アップ・テンポなアレンジがなされた「WE WILL ROCK YOU」のあと「LET ME ENTERTAIN YOU」が始まり、「アンタ達をロックしてやるゼ」と「アンタ達を楽しませてやるゼ」が立て続けに演奏されるという、“濃い目”のオープニングだった(この「ドン・ドン・チャッ」ヴァージョンはそのライヴの後半で演奏されていた)。よって当カセットではそれらを2つに分け、A面のオープニングにはイントロダクションが付いた「TIE YOUR MOTHER DOWN」の次に「LET ME 〜」を持ってきて、この「WE WILL 〜」をB面のトップに抜擢した次第。そして、クイーン(YOU)がリスナー(ME)をロックしてくれるという“リスナーからの視点”という発想で、当カセットのタイトルでは主語も述語もそれぞれ逆転して拝借させてもらった。


(2)FIGHT FROM THE INSIDE 【秘めたる炎】 / (TAYLOR)
taken from : 『 NEWS OF THE WORLD 【世界に捧ぐ】』  ▲title / artist
 続くB(2)は、ミドル〜スロウ・テンポに乗せてベースが“ブル〜ン”とウネる、ヘヴィー・ボトムかつグルーヴィーな曲で、ドラムやヴォーカルはもちろん、その“ウネる”ベース、ギターまでロジャーが演奏している(ギターはブライアンも演奏)。
 サウンドは何となくブラック・ミュージックを意識しているフシもあるが、歌詞はその向こう見ずな生き方を“業界”に利用されるパンク・キッヅ達を憂いているような言葉が並んでいる。
 この曲、前曲よりキーが半音高いだけで、テンポもほぼ同じなので、この曲をバックに前曲を歌えてしまう。歌部分の小節数はこちらの方が多いので、同時に歌うとB(1)の方が先に終ってしまうが、DJ的には繋げ易い曲となっている。


(3)FUN IT / (TAYLOR)
taken from : 『 JAZZ 』  ▲title / artist
 前曲に続いてロジャー作、ミドル・テンポのファンク・チューンB(3)。一部ロックン・ロール的なニュアンスも聴かれるが、明らかにブラック・ミュージックを意識したサウンド、フレイズを聴くことができる。まずシンセ・ドラムを使ったイントロにちょっと驚かされ、ブライアンの粘っこいファンク・リフ&切れ味鋭いカッティングにヤられる。それと、ロジャーとフレディーがユニゾる「ヘイ、エヴリバディエヴリバディゴナハヴァグッツァイツナイ」という流暢な語感もファンキーでいい。
 終盤はクラブ・プレイを意識したのか、ちょっとしたブレイク・ビーツが続く。その中には、ルーファス・トーマスが真似てみせたニワトリの“ポケーッ”という鳴き声(まぁ、これが英語圏の一般的なニワトリの鳴き声なのだろうが)をギターでやっているような部分もある。


(4)SWEET LADY / (MAY)
taken from : 『 A NIGHT AT THE OPERA 【オペラ座の夜】』  ▲title / artist
 ロックン・ロールでは比較的珍しい8分の6拍子を使ったB(4)。このリズムにルーズなロックン・ロールのリフがピタリハマっているのはさすがブライアン。ライナー(吉田俊宏氏)には「サビで自然と4分の4になだれ込み」とあるが、残念ながら4分の4にはなっていない。ドラムがフレイズを細かく刻んでいるだけで、大きくリズムを刻めば始まりからずっと同じ8分の6だ。ギターやベースでコードの変わり目を聴きながらテンポをとっていくと明らかに分かる。
 当カセットとしては前曲までのスロウ〜ミドル・テンポから、クイーン・フレイヴァー溢れる風変わりなロック・ナンバー群への橋渡しとして、この曲をここに持ってきた次第。


(5)IF YOU CAN BEAT THEM 【うちひしがれて】 / (DEACON)
taken from : 『 JAZZ 』  ▲title / artist
 如何にもと言えばあまりに如何にもな、明るく溌剌としたロック・ナンバーB(5)。でも、ブライアンのギター・フレイズが結構おいしい。
 そして、終盤ハッとするのが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコの「I'M WAITING FOR THE MAN」っぽい「ダッダッダッダッダッダッダッダッ」というフレイズ。偶然だと思うがちょっと面白い。DJでクイーンからヴェルヴェッツに繋ぐ人はあまりいないだろうが、この曲でならそれが可能だ。
 それにしても歌詞が全くロックっぽくなくて、「長いものには巻かれなよ」なんてことを歌っているらしい。「ロックでそんなこと言っていいのか?」と、ついつい突っ込みたくなる。だからというわけではないが、ジョン・ディーコンの作(笑)。


(6)NOW I'M HERE / (MAY)
taken from : 『 SHEER HEART ATTACK 』  ▲title / artist
 クイーン以外にはおそらく誰もやらないようなマジカルなロックン・ロールのB(6)。明るくルーズなリフと、どこまでも上昇していきそうなコーラス(僕としては、この上昇は当カセットA(1)のイントロダクションの上昇し続けるフレイズと呼応させたつもり。)とフレディーの山彦が印象的。もし登山するような機会があったら、一度「ナウ・アイム・ヒ〜ア」と言って山彦を試してみたいものだ(ホントは別に試したくはないが)。


(7)IT'S LATE / (MAY)
taken from : 『 NEWS OF THE WORLD 【世界に捧ぐ】』  ▲title / artist
 ソリッドなロック・ナンバーを集めた当カセットの最後を飾るのは、長尺で壮大なスケールのロックン・ロールB(7)。イントロや曲の構成(「Scene 1、〜2、〜3」という風に分かれている)からすると結構“大作系”の曲っぽい感じもするが、中盤から終盤にかけてロックン・ロール風味が増してくる。そんなイメージがあるから、一瞬フレディーの曲かと思ってしまうのだが、実はブライアンの曲。
 ギター・ソロではエディー・ヴァン・ヘイレンよりも一足先にライト・ハンド奏法〜いわゆるタッピングが披露されているが、あれほど華麗で派手ではなく、あくまでソロの一つのアクセント、効果として使われている。
 フレディーはと言えば、目一杯声を張り上げ、曲が最も騒々しくなる場面では、これまで聴かせたことのないような妙なハイ・トーン・シャウトをキメている。

 ここまできて振り返ってみると、やっぱりクイーンの中でロックンロール系の曲担当はブライアンとロジャーなのだなというのが分かってくる。その中でもハードでストレイトなのがロジャーで、一癖あるのがブライアン。



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