GOOD OLD-FASHIONED QUEEN / QUEEN60 
 side A  title / (composer)time
 (1)LAZING ON A SUNDAY AFTERNOON
                【うつろな日曜日】 / (MERCURY)
1:07
 (2)GOOD COMPANY / (MAY)3:23
 (3)SEASIDE RENDEZVOUS / (MERCURY)2:15
 (4)BRING BACK THAT LEROY BROWN / (MERCURY)2:15
 (5)BICYCLE RACE / (MERCURY)3:01
 (6)THE MILLIONAIRE WALTZ / (MERCURY)4:55
 (7)LOVE OF MY LIFE / (MERCURY)3:34
 (8)GOOD OLD-FASHIONED LOVER BOY
          【懐かしのラヴァー・ボーイ】 / (MERCURY)
2:54
 (9)KILLER QUEEN / (MERCURY)3:00
 (10)DREAMERS BALL / (MAY)3:30
 total time...29:54+(頭約10秒,曲間約3秒,後約35秒) 
 side B  title / (composer)time
 (1)IN ONLY SEVEN DAYS / (DEACON)
2:30
 (2)WHO NEEDS YOU 【恋のゆくえ】 / (DEACON)
3:06
 (3)MISFIRE / (DEACON)
1:49
 (4)LONG AWAY / (MAY)
3:33
 (5)LEAVING HOME AIN'T EASY 【去りがたき家】
                                  / (MAY)
3:14
 (6)'39 / (MAY)
3:30
 (7)FAT BOTTOMED GIRLS / (MAY)
4:16
 (8)SOMEBODY TO LOVE 【愛にすべてを】
                            / (MERCURY)
4:57
 (9)DON'T STOP ME NOW / (MERCURY)3:29
 total time...30:24+(頭約10秒,曲間約1.5秒,後約10秒) 



 side A

(1)LAZING ON A SUNDAY AFTERNOON 【うつろな日曜日】 / (MERCURY)
taken from : 『 A NIGHT AT THE OPERA 【オペラ座の夜】』  ▲title / artist
  フレディーお得意のヴォードヴィルの曲調に乗せて、ブライアン・メイのツヤツヤとしてはじけるようなギター・オーケストレイションが踊る、1分ほどの軽快な小曲A(1)。このギターのフレイズは、日本が誇る異才〜ローリー寺西(再結成クイーンにはポール・ロジャーズよりもローリーを加入させるべき!)率いるすかんちがインディーでリリースした 『 スカンチン・ロール・ショウ 』 に収録の「JAZZ」で見事なまでにパクッている。「クイーンのフォロワーはいない」と言われているが、どっこい日本にはローリー寺西というすんごいフォロワーがいるのである。
 この曲はよくある一週間ソングで、月曜は仕事、火曜はハネムーン、水曜はサイクリング、木曜は動物園までワルツを踊りながら行き、金曜はルーヴル美術館で絵を描いて、土曜はプロポーズ、日曜はゆっくり過ごそう、といった具合に一週間を歌っている。そして、この曲は当カセットのテーマでもあり、この曲以降、A面はこの歌詞に沿って進行していく。


(2)GOOD COMPANY / (MAY)
taken from : 『 A NIGHT AT THE OPERA 【オペラ座の夜】』
  title / artist
 A(1)の“月曜は仕事”、“火曜はハネムーン”を受けて登場のA(2)。歌詞の中に仕事や結婚の話が出てくる。ここでは“COMPANY”という言葉が“会社”という意味合いだけでなく、“友達”、“付き合い”といった広い意味合いでも使われている。
 サウンド的には、ディキシーランド・ジャズ・バンドを模したギター・オーケストレイション、ウクレレ(日本製)、ウォームでトボケた味わいのヴォーカルと、ブライアンが大活躍のナンバーとなっている。
 特にギター・オーケストレイションが素晴らしく、クラリネット、トランペット、トロンボーンなどの音色を、ワウ・ペダルでのトーン・コントロールやピッキングの細かなニュアンスなどを駆使して巧みに表現している。


(3)SEASIDE RENDEZVOUS / (MERCURY)
taken from : 『 A NIGHT AT THE OPERA 【オペラ座の夜】』  title / artist
 “ハネムーン”ならぬ“ランデヴー”のA(3)。楽しげなピアノに乗ったロジャーとフレディーのヴォイス・パフォーマンス(それぞれ金管楽器、木管楽器を模している)が聴きモノ。特にロジャーの唸りを効かせた“カズー似のトランペット”といった趣のパフォーマンスがユーモラス。ここではブライアンは影が薄い。


(4)BRING BACK THAT LEROY BROWN / (MERCURY)
taken from : 『 SHEER HEART ATTACK 』  ▲title / artist
 アコースティック・スウィングの雄〜ダン・ヒックスも真っ青のヴォードヴィル・ナンバーA(4)。「これぞクイーンの真骨頂!」とも言うべき密度&濃度を誇る超絶チューン。前曲A(3)と同じ2分15秒でありながら、速度が速い分より様々なアイディアが詰め込まれ、あれよあれよと言う間に曲が展開していく。右に左に飛び交うコーラス、軽やかなウクレレやバンジョー、グルーヴィーなウッド・ベース、いつものヘヴィーな演奏とは違ったスリリングさを聴かせるドラムと、4人のチーム・ワークがガッチリと組み合い、息をもつかせぬ展開を披露する。
 確かギター・マガジンの '91年3月号だったと思うが、ブライアンがインタヴューで「古い弦楽器音楽は昔から好きで、よく演奏していた」というような発言をしていた気がする。この曲はそんな彼の素養が惜しみなく発揮されたものだと思う。中期クイーンにおけるグッド・タイム・ミュージック趣味は付け焼刃的なものではなく、フレディー(ミュージカルやレヴュー好きでライザ・ミネリのファン)やブライアンの趣味性に裏付けされているのだ。
 因みに、A(1)との繋がりは“I'll be back again before it's time for sunny-down”の“back”に掛けている。


(5)BICYCLE RACE / (MERCURY)
taken from : 『 JAZZ 』  ▲title / artist
 “水曜はサイクリング”ということでA(5)。普段TVを見ていても、自転車に因んだ映像が出ると、かなりの確率でこの曲がBGMに使われている。かなりのお茶の間浸透度。しかし、それは製作者側の話であって、クイーン・ファン〜ロック・ファン以外の視聴者はそれと気付かずに見ているケースがほとんどかと思われるが。
 吉田俊宏氏のライナー(以後、ライナーは吉田氏によるものとする)に拠れば、フレディーがツール・ド・フランス(フランスの自転車レース)に触発されて作ったらしいが、自転車レースと世相・風俗を反映した歌詞に何の関連があるのかはよく分からない。その時の気まぐれ的な発想で作ったナンセンス・チューンなのだろうか? それとも何かそれなりの関連でもあるのだろうか? いずれにしても、歌詞の節操のなさを反映してか、とにかく目まぐるしい展開の曲に仕上がっている。
 厚いコーラスの後、優雅で軽やかなピアノに乗せて「I want to ride my bicycle 〜」と歌ったかと思うと、突然ドッシリとしてオドロオドロしくヘヴィーな展開となったり、バラードっぽい雰囲気になったりと、息つく暇もなく変化していく。
 その中でも「さすがクイーン」と唸らされるのが、「On your marks(位置について), Get set(用意), Go(ドン)」(訳:大野れい氏)という歌詞の後の、レースの開始を告げるファンファーレのようなギターや、自転車のベルのS.E.、そして左右にパンして追いかけっこするギター・ソロが出て来る場面。様々なアイディアで自転車レースを表現している。
 こうして聴いてみると、その“ミニ・オペラ的”展開や“自転車のベルの音”というところから連想して、10ccの「UNE NUIT A PARIS 【パリの一夜】」(『 THE ORIGINAL SOUNDTRACK 』 に収録)辺りからの影響という風にも思えてくる。


(6)THE MILLIONAIRE WALTZ / (MERCURY)
taken from : 『 A DAY AT THE RACES 【華麗なるレース】』  title / artist
 “木曜は動物園までワルツを踊りながら行”ったかどうかは知らないが、ワルツのA(6)。“ズン・チャッチャッ、ズン・チャッチャッ”と、いかにもワルツなピアノで始まると、しばらくは優雅なワルツが続き、「BOHEMIAN RHAPSODY」の第3部(ハードなギターが出てくる所)のような激しい展開を経て、ローリー寺西が「あのディズニー風のギターはブライアンにしかできない」(“技術的に”という意味ではなく、“発想として”という意味の発言と思われる)と絶賛したギター・オーケストレイションが登場、美しさに花を添える。


(7)LOVE OF MY LIFE / (MERCURY)
taken from : 『 A NIGHT AT THE OPERA 【オペラ座の夜】』  title / artist
 優雅なピアノ繋がりで登場のA(7)。クラシカルなピアノとハープという、いかにもエレガントなサウンドの美しいバラード。ここでも少しだけギター・オーケストレイションが聴ける。


(8)GOOD OLD-FASHIONED LOVER BOY 【懐かしのラヴァー・ボーイ】 / (MERCURY)
taken from : 『 A DAY AT THE RACES 【華麗なるレース】』  title / artist
 A(1)の「I come from London town, I'm just an ordinary guy(僕はロンドン生まれの ただの男さ)」(訳:有満麻美子氏)に強引に掛けて登場の「懐かしのラヴァー・ボーイ」A(8)。しかし出だしがピアノなので、ピアノがメイン楽器だった前曲からの繋がりとしては自然な感じ。
 ヴォードヴィル調のこの曲、かなりビートルズ的作風というか、中でもポール・マッカートニー的作風に仕上がってはいるものの、コーラスのゴージャスさとブライアンのコール&レスポンスを含めたギターの間奏部のおかげで、完全にクイーン・サウンドになっている。
 この“GOOD OLD-FASHIONED(懐かしい)”という言葉は曲調と相俟って、このカセットをひと言で表すのに最適だったので、タイトルに拝借させてもらった。


(9)KILLER QUEEN / (MERCURY)
taken from : 『 SHEER HEART ATTACK 』  ▲
title / artist
 “金曜はルーヴル美術館で絵を描いて”ということで、フレディーのフランス趣味を歌ったA(9)。指パッチン(最近の再発CDシーン的には“フィンガー・スナッピン”といった方が良いだろうか)で始まり、神妙な雰囲気から徐々に「おおシャンゼリゼ」のように軽やかな雰囲気になっていき、お決まりのギターの間奏が登場する。後半部「ドライヴ・ユー・ワ〜〜イルド(ドドドドドド)」という部分のダイナミックなドラミングがかなり感動的。
 この曲も幾分ビートルズ的だが、ビートルズの曲とは違って、ギター1本で弾きながら歌っていてもちっとも面白くない。一人で「パッ・パッ・パッ・パー、エニツァ〜〜イム」などとやっていても、虚しいだけだ(笑)。彼ら特有のサウンドあってこその、どちらかというと鑑賞向けの曲。
 本文中幾度も顔を出すローリー寺西はこの曲が大好きと見えて、前述の「JAZZ」ではアウトロのギターを、「THANK YOU」(『 OPÉRA 』 に収録)ではイントロの指パッチンを引用している。


(10)DREAMERS BALL / (MAY)
taken from : 『 JAZZ 』  title / artist
 前曲のエンディングのギターを引き継ぐ形で、ギター・オーケストレイションによるお出迎えのA(10)。このイントロやオブリガード、間奏などのギターを除けば、基本的にはアコースティック・ギターをメインの伴奏楽器とした、ホッコリ暖かく懐かしいスロウ・テンポのジャズとなっている。
 この曲は彼氏に捨てられてしまった女性の気持ちを歌った曲なのだが、A(1)で“火曜はハネムーン”、“土曜はプロポーズ”と、まるっきり順序が逆になっているところを見ると、この曲の主人公の女性は“火曜にハネムーン”した方の女性という設定となる(笑)。そして、“土曜にプロポーズ”された相手は“誰かほかの女性”ということで、この曲の主人公は土曜日にふられてしまったということに。
 という具合に土曜日の意味合いもあるが、このユッタリとした雰囲気はA(1)の「LAZING ON A SUNDAY AFTERNOON」という雰囲気にピッタリでもあるので、これにて初めの一週間は幕を閉じる。



 side B

(1)IN ONLY SEVEN DAYS / (DEACON)
taken from : 『 JAZZ 』  ▲title / artist
 B面に移って新たな一週間の始まりということで、再びの“一週間ソング”B(1)。こちらは取り立てて曜日ごとに特徴のあるエピソードがないので、あくまで曲調・サウンドのみの繋がりで進行していきたいが、強いてテーマらしきものを挙げるとすれば、最後の方に出てくる「I'm going back home on Sunday(日曜日には家に帰ることになっている)」(訳:大野れい氏)という一節に引っ掛けて、“お家へ帰ろう”といった感じだろうか。とは言っても、A面も歌詞だけでなく、かなりサウンドの繋がりを考えてはいるのだが。
 で、この曲はジョン・ディーコン作の、フォーキーな中にもコンテンポラリーな雰囲気を持った曲で、クイーンの曲の中にあっては珍しく寂しげな曲調。キラキラとしていながらもホノボノとしたピアノで始まり、寂しげなアコギで終る。頬を撫でる風のようなロング・トーンのエレキ・ギターが優しく切ない。強烈なインパクトはないが、後になって余韻がジ〜ンと心に染みてくるタイプの曲。


(2)WHO NEEDS YOU 【恋のゆくえ】 / (DEACON)
taken from : 『 NEWS OF THE WORLD 【世界に捧ぐ】』  ▲title / artist
 前曲の終わりと同じアコギで始まる(ジョンとブライアンが弾いている)カリプソ調の曲で、再びジョン作のB(2)。前曲がバカンスを歌った歌でもあったので、バカンス先が南の島だとすれば、この曲調は結構マッチしていることになる。サウンドは、アコギが基調となっているが、オブリガードやエンディングなどに静かなエレキ・ギターが入ってくる。
 この曲のギター・ソロは、ハース・マルティネスの「ALTOGETHER ALONE」(『 HIRTH FROM EARTH 』 に収録)と並んで、フリッパーズ・ギターの「COFFEE-MILK CRAZY」(『 海へいくつもりじゃなかった 【THREE CHEERS FOR OUR SIDE】 』 に収録)のギター・ソロのヒントっぽいような気がするのだが、確か小沢健二はクイーンが嫌いだったようなので、果たしてどうなのだろうか?


(3)MISFIRE / (DEACON)
taken from : 『 SHEER HEART ATTACK 』  ▲title / artist
 小沢健二の「愛し愛されて生きるのさ」(『 LIFE 』 に収録)に似たアコギのコード・ストロークに続いて、ポップな音色のエレキ・ギター(ジョンが弾いている)とトロピカルなパーカッションがすぐ後を追うイントロが印象的なB(3)。クイーンにおけるジョンの初採用曲でもある。この曲が収録された 『 SHEER HEART ATTACK 』 の中ではどうしても浮いた曲に聴こえてしまうが、その後のアルバムの曲と並べてみると、全く違和感なく聴けてしまう。
 また、こうしてジョンの作品を3連発で聴いてみると、フォーキーでありながらコンテンポラリーな雰囲気を持った曲はジョンの持ち味だということが分かる。後半出てくるエレキ・ギターの巧みな転調が面白い。


(4)LONG AWAY / (MAY)
taken from : 『 A DAY AT THE RACES 【華麗なるレース】』  ▲title / artist
 ここからはブライアン4連発。ウェスト・コースト・ロック〜ザ・バーヅっぽいフォーク・ロック調のB(4)。クイーンの前身バンド〜スマイル時代にはザ・バーヅもそのレパートリーにあったというというから、ブライアンにとっては自然なセレクションなのだろう。ヴォーカルもブライアンが執っている(ほんの一部ロジャー)。とにかく爽やかなコーラスの高揚感(特に3分を越えた辺りは)と煌びやかなギターの美しさは絶品のひと言に尽きる。
 『 A DAY AT THE RACES 【華麗なるレース】』 の中では「YOU TAKE MY BREATH AWAY」「THE MILLIONAIRE WALTZ」(当カセットA面6曲目)という大曲に挟まれ、地味な印象を受けてきたこの曲、こうして取り出してみると相当良い曲だったことが分かる。ブリティッシュ・ロック対アメリカン・ロックという構図が当たり前だった時代ならぞんざいな扱いをされても仕方なかったのだろうが、ジャンルの壁が低くそして薄くなった現代のリスナーになら、この良さが抵抗なく伝わることと思う。


(5)LEAVING HOME AIN'T EASY 【去りがたき家】 / (MAY)
taken from : 『 JAZZ 』  ▲title / artist
 ハートウォーミングなフォーク・タッチの曲B(5)。ヴォーカルはブライアン。アコギの低音弦がボ・ディドリーのようなビートを刻んでいる所へ、そよ風がたゆたうようなエレキ・ギターが流れて、徐々に明るい雰囲気になり歌に入る。そこからはホッコリとした曲調になるのだが、前曲の雰囲気を若干残しつつ、スティーヴン・ビショップが歌っても良さそうな感じの曲に仕上がっている。2分36秒を過ぎた辺りからの、半音ずつメロディーが上昇していき、最後に一気に高い音へ飛んでいく部分は特に感動的。


(6)'39 / (MAY)
taken from : 『 A NIGHT AT THE OPERA 【オペラ座の夜】』  ▲title / artist
 続けてフォーク/カントリー・タッチのB(6)。アコギのストロークと共に、“悠久の”という感じのコーラス(トップはロジャーが歌っている模様)で幕を開け、そのままドラム無しで曲が進行していく。ベースはジョンがウッド・ベースを弾いている。
 ライナーにあるように、僕もこの曲は「新しい大陸を発見して云々…」といった昔の物語だと思っていたのだが、まさか宇宙と地球を舞台にしたSF仕立ての物語だとは夢にも思わなかった。ショート・ショート好きな僕としては、このストーリーについての逸話はとても嬉しい。
 「主人公が'39年に宇宙へ旅立ち、その100年後に宇宙から帰ってみると子孫はいるが妻は亡くなっている」、というちょっとした悲劇だが、ある意味、ハートウォーミングな 『 猿の惑星 』 もしくは 『 浦島太郎 』 とも言えそうな、相対性理論や時間のロジックを使った物語であると言える。宇宙を舞台にする所など、大学で天文学を学んでいたブライアンらしい。


(7)FAT BOTTOMED GIRLS / (MAY)
taken from : 『 JAZZ 』  ▲title / artist
 前曲からのカントリー・フレイヴァーを引き継ぐ形のB(7)。ただし、こちらはコーラスがゴスペル的であるようにも聴こえるし、ギターのフレイズにはトラッド的な影も見え隠れしている。そして、何よりも演奏がヘヴィーになっている。
 ここまでのブライアンの4曲を聴いてくると、ジョンがフォーキーな要素をコンテンポラリーな方向へと持っていっているのに対して、ブライアンの場合はむしろそれを懐かしい方向へと持っていっているように思える。この曲でこそヘヴィーなアレンジがなされているが、コードやフレイジングはかなりオーソドックスだ。
 因みに、意外にも日本のスティーリー・ダンと言うべきポップ・マニア兄弟〜キリンジが、他人への提供曲やカヴァーを集めた変則的なアルバム 『 OMNIBUS 』 で、この曲をアコースティックに、そして完全にカントリーとしてカヴァーしている。キリンジ弟〜堀込泰行はクイーンのファンだという。


(8)SOMEBODY TO LOVE 【愛にすべてを】 / (MERCURY)
taken from : 『 A DAY AT THE RACES 【華麗なるレース】』  ▲title / artist
 前曲のゴスペル的なコーラス繋がりで、ゴスペル仕立てのロッカ・バラードB(8)。もう全身が総毛立つこと間違いなしの名曲。3分ほどでブレイクした所から徐々に盛り上がり、手拍子とコール&レスポンスが入ってくる辺りはもう感動の嵐!ストレイトな曲調が好きな人は、「BOHEMIAN RHAPSODY」よりむしろこちらを好むかもしれない。
 この曲はゴスペルを意識したせいか、コーラスの広がりや残響感が他の曲・アルバムと違う質感を持っているような気がする。いつもはイコライジングの処理で、良くも悪くも薄くて乾いた感触のあるコーラスが、とても厚く広く温かみのある感じになっている。この曲のみ別の場所、もしくは違う手法で録音したのだろうか、クレジットには改めて“Gospel choir - Roger, Brian, Freddie”と記されている。


(9)DON'T STOP ME NOW / (MERCURY)
taken from : 『 JAZZ 』  ▲title / artist
 最後を締めくくるのは、数あるクイーンの曲の中でも僕が1番くらいに好きなB(9)。バラード調で始まり、ピアノの伴奏で軽快に転がり、最後は再びバラード調で〆る。前曲の興奮をそのままに突っ走り、その興奮を安全に着地させてくれるのはこの曲しかない。ピアノを基調とした伴奏でも繋がっているし、何よりこのカセットのコンセプト〜“グッド・タイム・クイーン”を象徴する言葉“GOOD TIME”がこの曲の中に出てくる。
 1番の聴き所はなんと言っても前述の“GOOD TIME”という歌詞が出てくるブレイク部分から「アー〜~~~~~~」とコーラスが上昇していく所。当サイトのいたる所で使っている表現だが“背中にフックを引っ掛けられて、一気に空に持っていかれた上昇感”。聴くたびに興奮してしまう。



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