カンタベリー系というのは音楽的にジャズ・ロックとダブるものがありますが、もっと多種多様で、ポップだったりアヴァンギャルドだったりします。
簡単に言ってしまうと、ジャズの影響を強く受けたロック系の人たちによる、ひねくれた音楽。転調・変拍子バリバリの複雑な曲展開をさらっと聞かす、クールな態度。ユーモア感覚やサイケ風味もあり。
◯代表的なグループ:
Soft Machine, Caravan, Hatfield and the North, Henry
Cow, Gong
◯代表的な歌い手:
Robert Wyatt, Kevin Ayers, Richard Sinclair
もともとはイギリスのカンタベリー地方が発祥の地ですが、その人脈は音楽性を変化させつつ網の目の様に全世界に広がっていき、レコメン系とかチェンバー・ロック等をはじめとして現在のオルタナティヴ・ロックにも影響を与えています。
(これを全部満たすという訳ではありません)
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キーボード(特にオルガン)が活躍する。
ファズ/ディストーションの効いた音色。
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曲調がどんどん展開して行って元に戻らないことがある。
曲がメドレー形式で切れ目無しに繋がっていくことが多い。
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うねうねとして息の長いメロディ・ライン、でも心に残る。
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ついてくのが難しそうなリズム、にも関わらず躍動的。
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あらかじめ作曲/アレンジされたパートとその場の即興/アドリブとの区別が曖昧で判別しづらい。
一人がソロをとるというより、グループ全員の演奏が同等に前に出てくる感じ。
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牧歌的叙情性もあり、いかにも英国らしい(紳士的?)音楽。
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各々のバンドの人脈が複雑に入り乱れている。
具体例はカンタベリー入門テープ参照
●ブリティッシュ・ロック集成
マーキー別冊 マーキームーン社
タイトル通りブリティッシュ・ロックを集大成した本なのだが、この中で大々的に特集されているカンタベリー関係の記述(坂本理さんがほとんど一人で書いている)によって、この本はカンタベリー・ファンのバイブルとしての役割を果たしてきたと言えるのではないだろうか。実を言うと、ぼくはこれでカンタベリーに開眼した。それまでバラバラに好きだったものが一気につながり、ちょっとしたカルチャー・ショックを受けたものだ。それからそこに載ってるレコードを次々に集めていくことになる。以来何度も読み返して参考にしている。長らく絶版状態だったが、復刊されて入手しやすくなった、ただし、圧巻だった付録の人脈図が割愛されてしまい、内容が10年ほど前の古いままなのが非常に残念。(今また入手困難状態のようだが…)
by Michael King
Firefly Publishing
1994年イギリスで刊行。ワイアット本人の言葉や関係者の発言、それらに補足説明を加え、当時の新聞記事などの資料、豊富な写真をちりばめながら、1993年まで時系列に沿ってワイアットの詳細な録音(&ライヴ)データを網羅した労作。カンタベリー史およびブリティッシュ・ロック&ジャズを紐解く上で貴重な資料となる。
ロング・ムーヴメンツ ロバート・ワイアットの足跡(マイケル・キング著 藤本成昌訳 青林堂)として和訳が出ていたが、現在絶版らしい。オリジナル洋書の方が版が大きく写真も遥かに綺麗でデータも見やすいので、和訳をお持ちの方も入手しておいて損はない。これを持ってなければワイアット・ファン、カンタベリー・マニアとは言えませんぞ。
大鷹俊一 監修
音楽之友社 ONTOMO MOOK
プログレ・ビギナー向けのディスク・ガイド。取り上げ方には偏りが見られる(特にアメリカ・日本が酷い。「フランスほか」という括りもちょっと...)が、カンタベリー関係は充実している。坂本理先生による的確なカンタベリー紹介文と主要グループの簡潔なバイオは参考になる。プログレ方面から見たECMレーベル、など各種読み物もあり。
松井巧 著
BNN Exceed Press Pop Culture Series
ストレートなジャズからフリー、フュージョン、アフロ・ジャズ、アシッド・ジャズまで、特異な変遷を経てきた英国ジャズの歴史がわかる。未CD化ディスクを多数含むオールカラーのディスク・ガイドが圧巻。人名辞典、レーベル・リスト付き。
last updated: 2002.7.21
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ジャズ・ロックとは?
ジャズとロックが合体した音楽 <−そのままやんけ!
非常に曖昧なジャンルで、はっきり定義しづらい。
ジャズ側からとロック側からのアプローチの違いとか、フュージョンとどう違うのか等、人それぞれの捉え方によって様々。
Miles Davis の「In a Silent Way」や「Bitches Brew」がジャズロックの原典という通説もある。
ぼくの解釈では、ビートがロック的で、歪んだギターが鳴ってたりドラムがドタバタうるさかったりし、構造的にはジャズ(即興演奏が主体)で歌はほとんど無い様な音楽がジャズ・ロック。(例:The Tony Williams Lifetime「Emergency!」)
フュージョンとの違いは、音が凶暴であり、根底にロック魂があること。
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レコメン系とは?
Chris Cutler(元 Henry Cow のドラマー)が、世界各地の優れたミュージシャン/レーベルを紹介する目的で設立した Recommended Records が語源。
海外では R.I.O. (Rock In Opposition = 反体制派ロック) と呼んでるようだ。従来は、左翼的思想を持ちメジャーな音楽業界に反抗するパンク的精神で結集した特定のバンド群(Art Bears, The Work, Univers Zero, Stormy Six, Etron Fou Leloublan, Samla Mammas Manna, etc)のことだったが、現在では Henry Cow 直系の複雑で硬質な前衛ロックを指していう言葉になった。代表的なレーベルは前記 Recommended Records (ReR) の他に Cuneiform(アメリカ)がある。
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チェンバー・ロックとは?
シンフォニック(symphonic = 交響曲)に対してチェンバー(chamber = 室内楽)というようだが、この辺の定義はよくわからない。
レコメン系と同義語として使われることが多いようだ。
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