9/16(wed)……@

 …6時に着くんだよ。バスが…で、雨がやたら降っ

てて……

 なんとか6:40ぐらいには高井戸に着く。高井戸の駅に電

車が入った時ミスド(ミスタードーナッツの事)が見えた。

「ミスド開いてたで」

 ふくだが自信たっぷりに言ってくれる。頼もしい限りだ。

 みんなで行ってみる。

 が、"7:00〜23:00"とドアに書いてある。

「………」

「……オイ」

「…………でたらめかい」

 …なんてお約束なんだ。

 そこで、開くまでの時間でさっき電車の中に傘を忘れて

きたやまだ君と傘を初めから持ってこなかったきたがわ

さんがコンビニに傘を買いに行く。

 どうやら、すんでの所で一行のバスは台風から逃げ切り、

間一髪で電車に乗れた様だ。それこそ30分でも遅れたら

厳しい事になっていたかもしれない。

 やっとミスドが開いた。

 適当にセットを頼んで奥のスペースに陣取る。いきなり

みんなの朝食を写真に撮るやまだ。ナニに使うツモリだ。

 そうこうしていると、かとう先生がセットを持ってくる。

「おはよう」

 なんでも、そろそろここに着く頃だから来てみたらしい。

コンビニ弁当で済ますという事は考えずここに来てみた

ら会えたって…。まあ、確率はここで食う方が高いんだ

ろうけど…無事に会えたし、良しとしよう。

 そのまま1時間ほど粘って取りあえず会場の方へ行って

みるか。ということになった。

 そして歩いて4分ぐらいで「NEC高井戸ハウス」に着いた。

一応説明をしておくと、NECがNXを出すまで、NECの規格 に合わせたウィンドウズを作る為に常時100名からのトッ ププログラマーをマイクロソフトの方に常駐させていた。 そのため日本のプログラマーやアシストスタッフ養成の ためにマイクロソフトの技術者や常駐させているスタッ フを日本に呼び寄せて研修をしていた。この施設はその 為の研修施設なのである。そのため、宿泊施設もかねて いる 。
しかし、NECが敗北宣言を出しPC-98フォーマットを捨て NXに切り替えた今、この施設は単なる新人研修にしか使 われなくなってしまったようだ。そこはかとなく雰囲気 は寒い。 その薄暗いロビーで9:00になるまで待たせて頂けてホン トに嬉しいなぁ〜。\(T~T)/ とか思いつつも後の3人が外へ出ていった後も荷物の見張 り番と称して「央華封神TCG」のガイドブックを読みふけっ ていた。いい根性である。 20分ほどしたら産能大の人達が集まってきた。まあ、こ こであえて自己紹介する必要もないかな? なんかミーテ ィングしてるみたいだし。 そして、ミーティングを終えて、学生でも通用しそうな 若いめの人がかとう先生の所にやってきて雑談している。 「ああ、そうそう、これがウチの学生です」 かとう先生がその人に話しかけて4人に引きあわせた。 (その時にはもう3人は戻ってきていた) 「Rand\です。よろしくお願いします」 「おお、君がRand\? あの!? ながおかです、よろしく」 …ナンか、……ナンていうのかちょっとした売れないタ レントに対するような反応だぞ。 そうこうする内に9:00。It's time! おずおずと入っていった。 「あ、ども」 「おはようございます」 やっぱ最初はこんなモン。みんなカタさがある。そして いまだにかみしろ・よしえコンビは台風のため遅れていた。 「あの…名前が分からないので名札付けてもらえます?」 付箋紙を渡された。そこで「Rand\」と大きく書き、その 下に本名を書く。 「強いなあ(苦笑)」とふくだ。 「うん、まあね」とRand\。やけに自信たっぷりに言う。 「こっちの方が分かり易いでしょ?」 そのまま中に溶け込めなくて10分ほど小さく固まってい た。 それでもなんか挨拶はしていこう。ただ何もせずにボケ 〜っと突っ立っているのはばつが悪い。ちょうど一人通 りかかった。 「よろしくお願いします。Rand\です」 「あ、かづのりです、はじめまして」 BBSで熱いトークを交わしていた2人の歴史的対面。 「え? 今の人知り合い?」 ふくだが訊ねる。 「ううん、初対面」 「誰?」 そこへかとう先生が割り込む。「かづのり君」 「え〜!? 見てへんだぁ」 「あーあ。歴史的瞬間やったのに……」 そして、車座に並べられた椅子に適当に座って自己紹介。 順番は割とすぐに回ってきた。 「龍谷大学2回の…」 一瞬、(2回か…)という雰囲気が流れる。少なくとも Rand\にはそう見えた。 この時2回生はRand\1人だけだったのだ。しかし、これ は想像できた事だった。 (マズは予定通り!) ここからがRand\のハッタリの見せ所である。 「ハンドルネームはRand\です」 どよどよ………雰囲気が見事に変わった。会心の笑みを 浮かべるRand\。まずツカミ成功♪<……ツカミ ってアンタ… そして、ながおか先生からこのプロジェクトの目標の説 明。一言で言うと、プロの仕事をして欲しい。プロとは 与えられた条件で、アウトプットをする事である。そし てその結果については言い訳をしない事である。プロと 同じステージに立つツモリで仕事をして欲しい。 …中々厳しい事を言われてしまった。その後かとう先生 からもガイダンスを受ける。知らない人と仕事をやる上 で必要な自己主張をしながら共同作業をこなすという事 を訓錬して欲しいといわれる。それをかとう先生は「即興 性(インプロヴィゼーション)」と表現した。 宇治野さんの自己紹介と軽いセッション。その途中にヲ ノさんが到着。 内容は、かいつまんで説明すると、音の中には2つのカ テゴリーがある。 「楽音」と「非楽音(噪音、純音)」というカテゴリーだ。 「楽音」というのは、普段我々の聴いている音楽を構成し ている主成分で、音色と音の高低がある音つまり、楽器 の音や歌声などである。 「非楽音」というのはそれ以外の音である。
*ちなみに蛇足を承知で付け足すと、「噪音」というのは、 特定の高さもなく不規則な音を言い、「純音」というのは 特定の高さはあるが特定の音色がなくいつも一定の音を 言う。 「噪音」の中には雑音や騒音が含まれる。打楽器の音もこ れに含まれている。「純音」の中には、音叉の音やブザー の音が含まれる。
で、20世紀までは音楽を構成する音である楽音と非楽音 というカテゴリーの対比(というべきかなぁ)で音が解釈 されてきたが、20世紀になってだんだん「楽音」というカ テゴリーが結構狭いカテゴリーである事が分かってきて、 今まで「非楽音」として受け止められてきたカテゴリーが 実は音全体であって、「楽音」と今まで受け止められてき たカテゴリーはその中の一部分である事が分かった、と いうものだ。 このコトはあえて言わせてもらうと、別に珍しい理論で も何でもない。これは、実の所音大や音楽系の専門学校 に行くヤツなら既に常識であるし、そうでなくてもRand\ みたいに一度は本気で作曲をやっているようなヤツなら 大方知っているコトなのだ。(多分) で、ヲノさんは「非楽音」の事をROCKと表現していたが、 そのROCKというのははしょって言うと、一人一人が「ああ、 これって良いじゃん」と思った音がすなわちROCKになる事を 言っていた(ような気がする)。まあ、当たらなくとも近 い所には集約されてしまう(だろう)。 まあ、Rand\にとってもこの辺の概念や観念みたいなも のはいつも頭を悩ませている所だ。そして……ヲノさん にとっても敢えて答えを言わなかった所を見るとまだ答 えは出ていないのかも知れない。 ヲノさんのお話を聞きながらなんとなくそう思った。 そして……その後にこうも思った。さあ、みんな悩みや がって下さいな♪ ミ(^u^)/ そして、その後14:00くらいからCDのコンセプトを決め る作業が始まった。 最初はみんなカタさがあってあまり意見が出なかった。 やっとみんなの口が開きかけた時に、ヲノさんの時間が 押してきたのでいったん各班に分かれてミーティングをする。 そこで、どういう風に曲をレコーディングしていくかと いう事を話し合った。 そして、その時に、せいぜいマシンのスペックを考えれ ば30分が限度になることを言われた。まあ、みんな最初 っから60分も70分も作れるとは思っていなかったので、 それくらいが妥当だろうということぐらいは考えていた ようだ。 しかし、何曲作るのか、1曲どれくらいの長さにするの か全然見えてこない。 結局音楽班の中でもグループを分けてやっていく事だけ を決めたところでヲノさんの車が迎えに来た。 「また明日来るから、それまでにはヴィジョンを立てと いて」と言いのこしヲノさんが去っていった。この時14:30。 ヲノさんはこの時、その日の夜の自分のライブより我々 音楽班の方がはるかに悩みのタネだったのではないだろ うか。 それどころか、1/3から半分位は「ちょっと無理なんじゃ ないかな〜」と思ってたかもしれない。 この後ながおか先生のお説教。「ヲノさんが帰るまでに コンセプトを決めるってコトにしてたのに間に合わなか ったよね。つまり、時間までにアウトプットができなか った訳だ。それはプロじゃない。15:00まで時間を上げよ う。それまでに決めよう」 しかしこの後から、やっとみんなの意見がバンバン出だ す。 そして、5つくらいに絞られた。その候補とは……「莫大 小(メリヤス)」、「透明」、「バカ」、「天然」、「乱れ」……こ れらの言葉自体に2次的3次的意味が付加されどんどん言 葉の深みにはまっていた。 この時点ですべてのタイトル&コンセプト候補の持つイ メージは共有しあっている。喩えるなら、ベンゼン環の 中の二重結合みたいなものである。 ……15:10遂に、ながおか、かとう、宇治野の3教授が動 いた。我々が煮詰まり過ぎてゲル化したのを確認した彼 らはTOP会談に踏み切ったのだ。 何やら前の方から不穏当な空気がバリバ リに流れてくる。 5分後、ながおか先生が「よし、おまえら前向いて」とい った。「あんまりにもおまえら決めるの遅いから我々で決 めました。かとう先生の方から発表があります」 場に一種緊張が走った。 「じゃあ、発表します」かとうさんが立ち上がり、ペンの キャップを抜いた。「もう、オヤジギャグと言われるかも 知れませんが構いません」その声には、何も言わせな いある種の凄みがあった……ような気がした。 きゅっ……きゅきゅっきゅ……ききゅ…… 固唾を飲んでその耳障りな音を聞く一同。何かが我々の 前に現れる瞬間だった。 "Someone is revielin'" ……そんな英語がRand\の脳裏を駆け抜けた。 そして、コンセプトが書かれた。 「乱調」 「こう書いて『みだれてんねん』と読みます」 コレに最初に反応したのはかみしろとRand\だった。 「あ〜、めっちゃいい!」 「をを、ごっつエエやん!」 「ここはやっぱり関西人に読んでもらわなきゃダメだ よな。」 にやにやしながらながおか先生が言う。 良い反応を得られたことに満足している笑みだった。 そして、マイクはかみしろに渡された。 「なんかな〜、むっちゃ力抜けるような感じやねん。ナ ンか……もうみだれてんねん、みたいな」 腑抜けた声で力説するかみしろ。すごく、いい感じだ。 「そう、そんな感じやんな」思わず拳を握るRand\。 実はこの時、一部の参加者はど〜でもいいジャン、な雰 囲気だった。まあ、これ以上いい案が出そうにないから これでいいか……。 正直みんな疲れていたのだ。 妥協……確かにそうかもしれない。しかし、無駄に時間 を食うよりちょっとくらいルーズでも一応の指針を決め てしまった方がいいことが良くある。 今回はその典型的な例である。ぶっちゃけて言えばあと からいくらでも修正は効くのである。 Rand\はあからさまに賛成の意を示した。他人から見た ら露骨だったかもしれない位話をまとめようとした。 そして、とうとうその場の雰囲気をドサクサに紛れさせ ることに成功。かみしろの音頭でみんなの「みだれてんね ん」が唱和されてお開きとなった。 この時宇治野さんがこれをレコーディングしようといっ たので録音。 この時のテイクがCDのキーになっていくのだった。 ……この話はまたあとで。 続く

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