(日米野球オールスターシリーズ最終戦、米選抜5−0全日本、米選抜5勝3敗、14日、東京ドーム)大リーグ選抜はデービッド・オルティス内野手(28)=レッドソックス=の先制2号2ランなどで5−0で最終戦に勝利し、通算成績を5勝3敗として全日本に勝ち越した。全日本では岩村明憲内野手(25)=ヤクルト=、赤星憲広外野手(28)=阪神=がともに38年ぶりの日米野球タイ記録となる7盗塁をマーク。岩村は打率.440で敢闘賞に選ばれた。〔写真:日本が誇るスピードスター・赤星も、岩村に負けじと7盗塁=撮影・尾崎修二〕
スピードを追求した全8戦のフィナーレに、最大級の賛辞が待っていた。赤星が笑っている。セレモニーが終わり、三塁側ダッグアウトでの最後の交流の時…。愛くるしい表情でオルティスが語りかけてきた。
「スーツケースに入れて帰りたいよ。お前なら入るだろ。メジャーに来るなら、絶対にウチに来てくれ」
86年ぶりにワールドシリーズを制したRソックスの4番からのラブコール。悪い気はしなかったが、答えは『NO』だ。もちろん、“虎命”−。
最後まで存在感は薄れなかった。八回二死での第4打席。魂のこもった強いゴロが、中前へ抜けた。続く仁志へのカウント2−0からの3球目。“ラストチャンス”で今シリーズ7個目の盗塁を決めた。ドジャース単独チームと16試合を戦った66年の黒江透修(巨人)に並ぶタイ記録。岩村とそろって、日米野球の歴史に足跡を残した。
「『8個やる』と言ってましたからね。だから、最後も行ったんですけど…。仁志さんの(カウント2−1からの5球目)、ボールだよ、あれ」。宣言していた8盗塁を目指し、さらに三塁も狙ったが、仁志は見逃し三振…。新記録は幻と消えた。それでも悔いはない。全8試合に『1番・中堅』でフルイニング出場。32打数10安打の打率.313、2打点、7盗塁。堂々の成績に赤星は胸を張った。
倉敷・秋季キャンプで取り組んだ打撃改造の成果だ。新任の正田打撃コーチの助言で、従来より右足を上げるタイミングを早めた。重くて飛ばないメジャーの公認球。動くボールにも対応し、ヒットを量産。そして、走りまくった。
今シリーズのMVPに輝いたウェルズ(ブルージェイズ)が、ヒーローインタビューで印象に残った選手として赤星の名を挙げた。J・ウィルソン(パイレーツ)はスタッフを通じてユニホームの交換を求めてきた。誰もが認めるナンバーワンの人気者だった。
「本当にいいシリーズでした。来てよかった。出てよかった」
満足感が身を包んでいた。パワーに屈しなかった10日間。猛者たちが鮮明に記憶した小さなヒーローは、深まる秋に“進化”を遂げた。
◆全日本・王監督 「(大リーグ選抜は)この8試合の中で一番気合が入っていた。技術的な差はどんどん縮まっているが、パワーと取り組む姿勢が違っていた」
◆左翼でオルティスの本塁打を見送った全日本・和田(西武) 「(飛びにくい)メジャーのボールだったし、(グラウンドに)落ちてくるかと思ったけど、そのままフェンスを越えた。さすがですね」
★古田が“アルー打法”挑戦
古田は大リーグ選抜の野手最年長で38歳のアルー(カブス)と、ユニホームを交換してニンマリ。テークバックをとらない打法に「僕らは打つ位置が少し前過ぎるのかも。まねしてみます」と“アルー打法”挑戦を口にした。また、シリーズを終えて「抑えられるチャンスはあるけど差はまだまだある。トッププレーヤーの数が違う」と大リーグ選抜を分析した。
★岩隈の移籍希望は変わらず
オリックス入りに難色を示している岩隈も日米野球を終えた。15日は大阪市内のホテルで表彰式に出席。仰木新監督との会談も予想されるが「聞きたいことは特にない」。トレードで他球団に移籍したいという希望はまだあり「じっくり考えます。いつまでかは分かりません。それは(球団との)話し合いによって…」と歯切れが悪かった。
■日米野球・全日程終了(米選抜5勝3敗)■
米選抜○7−2●全日本
米選抜○5−3●全日本
米選抜○7−3●全日本
米選抜○7−2●全日本
全日本○3−1●米選抜
全日本○5−1●米選抜
全日本○3−2●米選抜
米選抜○5−0●全日本
四回の二盗で、日米野球記録に38年ぶりに並ぶ7盗塁目。このシリーズで8盗塁を目指してきたけど、今季138試合で8盗塁の男が、8試合で7盗塁でしょ。チームに帰ったら怒られちゃいそうだね。来年はこれを弾みにしてトリプルスリー(3割・30本・30盗塁)を目指したい。
実は日米野球で、来季に向けたスパイクをテストしていた。底のクッションが厚めでフィット感があるヤツ。シーズン8盗塁じゃ駄目だし、成長しないとね。
敢闘賞は実感がわかないけど、目標だった「自分の名前を多くの選手に覚えてもらう」というのはできたと思う。練習前にウェルズに「ユニホームを交換しよう」と言われて、めちゃめちゃうれしかった。とても同じ年(25歳)には見えないよね。ま、それはお互いさまだけど…。ラミレスやクロフォード、アルーとも交換した。大塚さんにもパドレスの“迷彩服”柄のユニホームをもらった。
今回のメンバーでは、やっぱりウェルズとクロフォードだね。ウェルズは走攻守そろって、中日のアレックスをふた回り太くした感じ。間違いなく、次世代の超スーパースターの2人。ラミレスとオルティスみたいになると思う。
2年前の日米野球では周りが見えなかったし、今回も最初は自分がチームの中心でやれるとは思っていなかった。でも、中心でプレーできて、持ち味も出せたかな。ラミレスとか三塁コーチャーのパット(コラレスコーチ)からも“メジャーに来ないか”とお誘いを受けた。
向こうは手元で動くボールを投げるピッチャーが多かった。ボールを最後まで見ることは、日本の投手と対戦する場合でも大事だし、追い込まれるとバットが出なくなる。16日から参加する秋季キャンプ(愛媛・松山)の課題にしたいね。
〔写真:敢闘賞に輝いた岩村は日米野球タイ記録の7盗塁と走りまくり、「何苦楚(なにクソ)魂」を炸裂させた=撮影・尾崎修二〕
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★赤星「8試合で8盗塁」に一歩及ばず
赤星(阪神)も7盗塁で岩村に並び、38年ぶりの日米野球タイ記録。最終打席となった八回二死から中前打で出塁し、二盗に成功。三盗も狙ったが、打席の仁志が見逃し三振に倒れたため、新記録は幻に終わった。「自分で8個やるといっていましたから」と開幕前に公言した「8試合で8盗塁」に一歩及ばず、快挙にも苦笑いだった。
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来オフ、メジャーに強行移籍?! 西武・松坂大輔投手(24)が14日、東京ドームでの日米野球終了後、早ければ来オフにポスティングシステム(入札制度)で米大リーグに挑戦する考えを明かした。「(4年後に権利取得する)FAまでは長いし、行けるなら早い方がいい。来年はライオンズですけど」との注目発言で初めて具体的な時期、移籍方法を示唆。結婚、さらに西武の球団売却騒動で、松坂のメジャー移籍も一気に加速しそうだ。〔写真:「僕、この帽子のチームに入りま〜す」とばかり、エンゼルスの帽子を手に大リーグ選抜のベンチにあいさつする松坂。気持ちは早くもメジャーの一員?! =撮影・斎藤浩一〕
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初参加となった日米野球もこの日が最終戦。さすがの怪物・松坂もあこがれのメジャーにナマで触れ、胸も自然と高ぶったのかもしれない。
「面白かったです。メジャーの全力のプレーはスゴかった。パワーの差もありましたね」
最終戦での登板機会こそなかったが、試合後のセレモニーではエンゼルスの帽子を着用するなど終始ゴキゲン。“野球少年”に戻った怪物は興奮のあまり、メジャー移籍に向けた“人生設計”までをも、スラスラと披露しはじめたのだった。
「FA(取得)までは長いし、いけるなら早いほうがいい。誰もがそう思っているんじゃないですか」
松坂がFAの権利を取得するのは早くても4年後の2008年オフ。この日、そのFAよりポスティングを希望するのかと問われると、キッパリと返答してみせた。
これまで何度もメジャー志向を口にしてきた松坂だが、その移籍の方法について明言したのはこれが初めて。しかし、注目発言はまだ続いた。
「来年はライオンズですけど。来年は、です」
まるで来季限り、2年後の米国移籍をみずから示唆するような意味ありげな言い回し。自分の発言にどれだけの重みがあり、どれだけの反響があるのかを知っている松坂だけに、意図的とも思えるコメントだ。
メジャー移籍が加速する要因は確かにある。10月28日深夜に日本テレビアナウンサーの柴田倫世さん(29)との婚約発表。私生活でひと区切りついたことに加えて、留学経験もあって語学堪能な倫世さんの存在で、米国でも野球に没頭できる環境が整いつつある。
さらには西武の球団売却問題も、松坂を“後押し”する。親会社のコクドの西武鉄道株の虚偽記載問題発覚に端を発した騒動。現時点で経営首脳は球団売却を否定しているが、予断を許さない状況。仮に売却が決定した場合、チームへの愛着心が薄れた松坂が“ライオンズ”を去る可能性は高まるばかりだ。
もちろん実力も実証済み。第6戦で米大リーグ選抜相手に完投勝利。翌12日には“世界一の4番”のオルティス(レッドソックス)から、直筆メッセージとサイン入りのバットもプレゼントされている。
「(日米野球でメジャー志向がさらに強くなったか?) それは変わらないです。もともと、強いですから」。気持ちを隠そうともせず、米国への思いを語る怪物。高校時代からの大きな夢に向かって、松坂の心はもはや揺らぐことはない。
■松坂の日米野球第6戦VTR 日米野球第6戦(11日、札幌ドーム)で先発した松坂は150キロの速球とスライダーを武器に四回まで1人の走者も許さない完ぺきな内容。五回無死で大リーグ選抜4番のアルー(カブス)に中前打され、球が高めに浮いた六回に1点を失ったものの、最後まで直球主体の組み立てを崩さず9回を5安打1失点、6奪三振の快投。大リーグ選抜・ボウチー監督は「今の時点でメジャーに通用するのは間違いない」と大絶賛。日米野球では20年ぶりの完投勝利を飾った。 |
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★ファンとの交流を主張
松坂は12月に行われる契約更改の席で、球団側によりファンサービスの必要性を説くつもりだ。「選手と球団が協力しあって、もっとファンにアピールしていくべき。これからは選手側からも企画を出してやっていかないと。定期的に話し合いをしたい」と、選手主導の“ファンサービス委員会”の設置を熱望。さらなるファンとの交流が必要と主張する考えだ。
(日米野球オールスターシリーズ最終戦、米選抜5−0全日本、米選抜5勝3敗、14日、東京ドーム)大リーグ選抜はデービッド・オルティス内野手(28)=レッドソックス=の先制2号2ランなどで5−0で最終戦に勝利し、通算成績を5勝3敗として全日本に勝ち越した。〔写真:見てくれ、この腕、このパワー。オルティスは左中間最深部への2ラン=撮影・斎藤浩一〕
<日米野球:全米5−0全日本>◇第8戦◇14日◇東京ドーム
Rソックスのオルティス(28)が最終戦で待望の第2号を放った。4回の第2打席。井川が3球続けて変化球を投げた後、4球目の甘く入った直球を流し打ち。左中間スタンド最前列に運んだ。6日の第2戦は右翼の照明付近まで飛ばす160メートルの豪快弾だったが、この日は巧みなバットコントロールを披露。「第1打席は速球でやられた(三振)から、今度はオレがお返しした」と強気なところを見せた。8回の最終打席も大飛球を放ったが中堅フェンス手前で失速。「悪くないね。勝って気持ちよく帰れる」とご機嫌でバスに乗り込んだ。
[2004/11/15/09:07 紙面から]
写真=オルティスに「大リーグに来る時はボストンに来いよ」と声を掛けられ別れのあいさつをする赤星
<日米野球:全米5−0全日本>◇第8戦◇14日◇東京ドーム
ヤクルト岩村がシリーズ敢闘賞に選ばれ、賞金100万円を獲得した。最終戦も2安打1盗塁。打率4割4分は両チーム通じてトップ。「1人でも多くの(メジャーの)選手に名前を覚えてもらいたいと思ってこのシリーズに臨んでいた」と振り返った。バット以上に印象を残したのは果敢な走塁で7盗塁は阪神赤星と並んでトップタイだった。
「シーズン8盗塁の男が8試合で7盗塁。チームに帰ったら怒られそうですね」と話すも、モチベーションを高めたのが、将来のメジャー志向であることは間違いない。「現実的に感じられるようになった。ますますやる気になりました」。16日には愛媛・松山での秋季キャンプに合流する。
[2004/11/15/07:47 紙面から]
<日米野球:全米5−0全日本>◇第8戦◇14日◇東京ドーム
全米が5勝3敗でシリーズを制し、6大会連続(単独チームは除く)の勝ち越しを決めた。開幕4連勝で90年(3勝4敗1分け)以来の負け越しはなくなったが、その後3連敗。試合前にボウチー監督は「92年の大会以降は1度も日本に負け越していない。勝って帰ろう」と選手にゲキを飛ばした。「4勝4敗のタイにはさせない」という気迫が充満した。先発ピービが6回まで無失点、打線は中盤に爆発。オルティスとウェルズがそれぞれ2ラン、ブラロックの適時打で計5点を奪った。4連敗を免れ、チームに安堵(あんど)感が漂った。
同監督は「昨日のオフで充電できたようだった。ピービの好投のおかげで、打線にも気合が入った」と振り返った。終わってみれば全米の計9本塁打に対し、全日本は佐伯の1本だけ。「今回のメンバーはパワーヒッターが多い。パワーを使ってゲームをした」と力勝負で臨んだことを明かした。
[2004/11/15/06:27 紙面から]
<日米野球:全米5−0全日本>◇第8戦◇14日◇東京ドーム
全米の主砲ウェルズ(ブルージェイズ)が、井川からの2号2ランを含む3安打を放ち、チームを勝利に導いた。連敗阻止とシリーズ勝ち越しを懸け、「最初の1球目から負けられない」と意欲満々だった。シリーズMVPにも輝き「素晴らしい試合だ」と喜んだ。
ブルージェイズの将来を背負う25歳は打率4割7厘、7打点など打撃3部門で全米トップの成績を残した。「活躍できた自信を胸に、リーダーとして春のキャンプに臨む」と勇ましい言葉を並べた。
[2004/11/14/17:47]
4回2死二塁 岩村はピービから内野安打を放つ |
【全日本0―5全米】強烈なデモンストレーションで「IWAMURA」の名をメジャー軍団に刻み付けた。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」(スポニチ後援)は14日、東京ドームで最終戦が行われ、全米に零敗の全日本にあっても岩村はまばゆいばかりの輝きを放った。4回に遊撃内野安打で出塁すると、すかさず二盗。今シーズン8盗塁の男が今大会だけで7盗塁を決めて、66年の黒江透修(巨人)以来となる最多タイ記録。この日も4打数2安打で通算打率・440で両チームを通じての首位打者を獲得し、シリーズ敢闘賞に選ばれた。
「1人でも多くのメジャーの選手に自分の顔と名前を覚えてもらいたい一心で全力でやった。2年前に出場した時と比べてパワー面を含め、確実にステップアップしている自分を実感できた」。その顔は充実感にあふれた。
試合後には同じ25歳でシリーズMVPを獲得したウェルズが岩村のもとを訪れた。「みんなお前のことを“ジャパニーズ・Aロッド”と呼んでいるよ。早くアメリカに来い!」。最大級の愛称を贈られ、ウェルズの方からユニホーム交換を持ちかけられた。
「ラミレスやコーラからも誘われて、興味が現実的になってきた。動けなくなってから行っても仕方ないし、華のうちに1年でも早く行きたい」。その“予行演習”として来季はメジャーのストライクゾーン、さらにムービングボールへの対応を意識しながら打席に立つことを宣言した。吉井、石井、高津に続いて、ヤクルトから4人目のメジャーリーガーが誕生する日もそう遠くはない。
≪松坂 行くなら早いうち≫松坂はあらためてメジャー挑戦の気持ちを強くした。最終戦はグッズの収集に大忙し。オルティスのバットなどを大事そうに持ち帰り「行けるなら早いほうがいい。気持ちはもともと強いですから」。また、12月下旬に行われる契約更改では「僕らが任せきりじゃなく、選手と球団とで定期的に話し合う機会が必要ですね」と“ファンサービス向上委員会”の設置を申し入れる考えを明かした。
≪仁志 4年前からの成長を確信≫4回に中前打を放った仁志は、通算17打数2安打の打率・118で終了。メジャー移籍を視野にFA宣言しているだけに「収穫は投手の攻め方。4年前に出場した時は力勝負という印象だったけど、今回は違っていた。やれるという自信?そんなに甘いものじゃない」と話した。今後はメジャーからのオファーを待つ方針。巨人との残留交渉は早くても19日以降となる見込みだ。
<全米・全日本>4回に先制2ランを放ち、ナインの出迎えを受けるオルティス(左から2人目) |
【全米5−0全日本】有終の一発締めだ。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」(スポニチ後援)は14日、東京ドームで最終戦を行い、全米はレッドソックスを86年ぶりの世界一に導いた4番オルティスが4回に全日本先発の井川から左中間に先制2号2ラン。日本のファンへの最高の置き土産となった。主砲の本塁打と4投手による完封リレーで全米は5―0で快勝。5勝3敗でシリーズ勝ち越しを決め、優勝賞金5000万円を獲得した。シリーズMVPには5回に2号本塁打を放ったウェルズが選ばれた。
最後を締めたのはやはりこの男だった。0―0の4回無死二塁。井川の直球に詰まらされたオルティスだが、高々と舞い上がった打球は左中間にグングン伸びる。そしてスタンド最前列に飛び込んだ。第2戦では推定飛距離157メートルの特大弾でファンのハートをつかみ、最終戦で再び強烈なインパクトを植え付けた。
「きょうはやらなければいけないと思った」。慣れない人工芝でのプレーで右ひざを痛め、3連敗を喫した第5戦以降は無安打。第1打席では井川に空振り三振に倒れただけに「仕返ししただけさ」とメジャーのプライドをむき出しにした。
レッドソックスの相棒・ラミレスが途中帰国したこともあり、日本人選手の中でも人気は一番。この日は嶋や新垣に“グッズ交換”を求められ、渡辺には特大弾を放ったバットを気前よくプレゼントした。見た目は怖いが、実際は「ビッグ・パピー(大きなパパ)」と呼ばれる人懐っこい性格だ。初めての日本では積極的に外出し、福岡ではふぐ料理にトライしようとしたが「毒がある」と言われて断念。お土産には自分用のピンクの着物と陶器を購入し「刀も買ったけど、飛行機には持ち込めないかもしれないなあ」と笑った。
オルティスの一発はチームにとっても4試合ぶりの本塁打。最終戦でようやく勝ち越しを決めたボウチー監督は「(3連敗で)多少プレッシャーはあったが、本塁打が出るのはウチの試合」と主砲の活躍を称えた。
「家に帰ったら家族とバケーションを楽しみ、野球のことは来年考えるよ」。16日に発表されるア・リーグMVPの有力候補にも挙がる28歳の大砲。レ軍を世界一に導き、日米野球でも2本の本塁打を放った。オルティスは最高の1年を締めくくった。
MVPに選ばれ、賞品の車の前で笑顔を見せるウェルズ |
【全米5−0全日本】ブルージェイズの次世代スター、ウェルズが今シリーズMVPに輝いた。5回に井川から左翼へ2号2ランを放つなど3安打。賞金200万円と車を獲得し「テキサスの家にいる奥さんにすぐ電話したよ。寝てたようだけど、MVPの話をしたら一気に興奮してたね」と笑顔を見せた。
今シリーズは通算7試合出場で27打数11安打。打率・407、7打点など、打撃3部門で全米トップの成績を残した。勝利を挙げた5試合すべてで安打をマーク。7日の第3戦では3安打3打点でMIP賞も受賞した。
ハードな移動が続いたが、13日の移動日には秋葉原に出かけデジタル音楽プレーヤーを購入。買い物でうまく気分転換を図った。今オフにはブ軍・主砲のデルガドの移籍が濃厚。それでも「活躍できた自信を胸に、リーダーとして春のキャンプに臨む」とさらなる飛躍を誓っていた。
≪ピービ「ワールドシリーズのつもりで」2勝目≫先発のピービがシリーズ2勝目を挙げ、両リーグ防御率1位の実力を発揮した。勝ち越しが懸かるマウンドだったが「ワールドシリーズ第7戦に投げる気持ちで臨んだ。われわれは勝つために日本に来た」と、1球ごとに声を発する気合の投球で6回を2安打無失点。日本は初めての海外旅行で前夜はケイティ夫人と鉄板焼きを食べて出陣した23歳の若き右腕。日本での知名度も飛躍的にアップした。
≪大塚 日米規格の統一を提案≫初の凱旋シリーズを終えた大塚が「日本のマウンドや、ボールもメジャーと統一した方がいいと提案していきたい」と、日本野球界のために一肌脱ぐことを宣言した。シリーズでは抑えとして3試合に登板。第7戦では小笠原にサヨナラ打も浴びたが「楽しかったですよ。1、2戦では成長したところを見せることができたし」と笑顔。今後は日本に約3週間滞在し、サンディエゴに戻って自主トレを開始する予定だ。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
全日本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
全米 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 0 | 0 | 0 | X | 5 |
[日]●井川、新垣、石井、加藤 [米]○ピービー、シールズ、ラインブリンク、ロドリゲス [本]オーティズ2号2ラン(井川・4回) ウェルズ2号2ラン(井川・5回) |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
全日本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
全米 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 0 | 0 | 0 | X | 5 |
[日]●井川、新垣、石井、加藤 [米]○ピービー、シールズ、ラインブリンク、ロドリゲス [本]オーティズ2号2ラン(井川・4回) ウェルズ2号2ラン(井川・5回) |
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阪神・井川慶投手(25)が今オフの契約更改交渉の席で、将来的なメジャー移籍についての阪神球団のスタンスを確認する考えでいることが14日、分かった。本紙の取材に井川自身が明らかにしたもの。球団サイドはポスティング移籍を認めない考えだが、その選択肢も含め、阪神と初めて本格的な「メジャー交渉」を行うことになる。
急速に膨らむ夢は抑え切れない。広がり続ける思いは、どこに着地点を見いだすのか。さまざまな「憶測」が飛び交う中、井川が知りたいのは阪神球団の本心だ。
「(ポスティングを認めない話は)直接聞いてないことですから。やっぱり、旬のうちに行きたいという気持ちがある。それが僕の意志です」
自身のホームページで、メジャーの舞台に立つことを「夢」と記した。さらに「旬」と表した言葉には、揺るぎない決意を込めている。絶えることのない向上心とともに、できるならば一刻も早く海を渡りたいのが25歳のエースの本音だ。
現行の制度が変わらない限り、FA権取得は5年後の09年中。となれば、ポスティングでの移籍しか手段はない。ただ、すでに野崎球団社長は「ウチの場合は考えていない」と否定的な考えを明らかにしている。
当然、井川の耳には報道陣などを通じて話が伝わっている。だが、実際に話し合っていない以上、それを「真実」とは受け止められない。
12月中にも行われる契約更改の場で、球団サイドに気持ちを伝えるのかという問いには「それは先のことだから分かりません。例えば、そういう話をします、と『予告』するのは失礼なこと」と話したが、さらに「自分の考えというのは橋岡さん(弁護士)に伝えてます。代理人の考えが僕の考えであると思ってもらって構いません」と付け加えた。
7日の日米野球第3戦では6回3失点。パドレス・ボウチー監督からは「今すぐ通用する」と賛辞を贈られた。この日の第8戦でも敗れはしたものの「ものすごく楽しい時間を過ごせました。メジャー?チャレンジしたいと強く思いました」ときっぱり言い切った。
直接対決を通じて再確認した自身の夢。その重さ、大きさをかみしめ、阪神球団と正攻法の協議を始める。夢がいつ実現するかは分からない。ただ、井川の一途な思いは日を追うごとに燃え上がるばかりだ。
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記録締めッ!快足で日米野球を席巻した阪神・赤星憲広外野手(28)が14日、最終戦でもスチールを決めてシリーズ通算7盗塁のタイ記録だ。「アカホシ」の凄さを改めて浮き彫りにした全8戦。連れて帰りたい?ノー!岡田阪神の来季V奪回へ欠かせない男です。
シリーズ8盗塁の新たな歴史は幻に終わった。八回二死二塁。ラインブリンクが投じた仁志への5球目に、赤星は迷わず三塁へ駆けた。セーフのタイミングで滑り込んだが、三振のコールで攻撃は終了。シリーズ最多盗塁タイ記録で、充実の8試合を終えた。
「本当にいいシリーズでした」。全日本の不動の1番打者として全戦フル出場。最後まで快足は止まらなかった。八回二死の中前打から、続く仁志の打席でシリーズタイ記録の7盗塁目となる二盗をマーク。それでも8盗塁の目標に届かなかったことで「8個やるって言ってたから。だから三塁まで行ったんです」と悔しさをにじませた。上を見続けていた。
打率・313。秋季キャンプから取り組む新打法は、メジャー相手という格好の実戦で確かなステップを刻んだ。「イチローさんとどっちが速いか話題にしてくれたりうれしいですね」。俊足巧打で「レッド」の名は、全米をも席巻した。「関本からも『頑張ってますね』って電話がありました」。その活躍は自身の励みに、そして遠く離れた岡山で秋季キャンプ中のチームメートの刺激にもなっていた。
表彰式後、オルティスには「スーツケースに入れて連れて帰りたい。メジャーならウチに来てくれ」と肩を組まれた。「それはない」と赤星は笑った。「とりあえず体を休めたい」。体を覆う心地よい疲労は、来季の充実を約束している。
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夢へ一気に近づいた。岩村が、四回に大会最多タイとなる7盗塁をマーク。今季わずか8盗塁に終わったが、夢舞台で持ち前のアグレッシブさを発揮した。打撃でも大暴れし、文句なしの敢闘賞。「(メジャーを)現実的に感じてきました」。その目は自信と希望に満ちあふれていた。
メジャー軍団も“ジャパニーズ・A・ロッド”と名付け、実力を高く評価した。8日に帰国したラミレスや、コーラらが、「いつ(メジャーに)来るんだ?」と“仲間入り”を期待したほどだった。
昨年も球団にポスティングでのメジャー移籍を求めている。要求は認められなかったが、「動かなくなってから(メジャーに)行ってもしょうがない。花のうちに行きたい」と、今オフの契約交渉の席でもメジャー移籍の夢を訴えるつもり。思いは、この8試合でさらに膨らんだ。
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米選抜が5―0の快勝で連敗を3で止め、通算5勝3敗で勝ち越し。米選抜としては92年から6シリーズ連続で勝ち越しとなった。米選抜は四回にオルティスの2ランで先制し、五回にもウェルズの2ランなどで加点。全日本は先発ピービから六回までわずか2安打、4投手に6安打と封じ込まれた。今シリーズのMVPには通算打率・407、2本塁打、7打点のウェルズが選ばれた。
目標の負け越し回避はならなかった。最終戦は0対5で完敗。ダイエーの球団売却で長年慣れ親しんだ『FDH』のユニホームでは、この日が最後の指揮となった王監督は“有終の美”を飾ることはできなかった。
「10年間でチームも会社も変わるが、変わることはどうしようもない。新しいオーナー会社に『持ってよかった』、ファンにも『いい方向になった』と思ってもらえるようにならないと」。王監督は特に感傷にふけることなく、表情はさばさばとしていた。
勝負に徹した全8戦だったが、あと一歩及ばなかった。技術面の差はさほど感じなかった。「問題はパワーと取り組む姿勢」と指摘。「手を抜くプレーが一切ない。常に最善を尽くす。向こうは競争の激しさがプレーに出ている」。パワーの差は歴然だったが、それとは別に精神面に大きな違いを感じ取った。
“世界の王”は大人気だった。大会期間中の試合前、MLBの選手に次々とサインボールや記念撮影を求められ、1人ひとりと丁寧に応対。「162試合とプレーオフを戦って、疲れている中で日本に来て、一生懸命プレーしてくれたことを感謝したい」。最後はねぎらいの言葉で締めた。
試合後、王監督は空路、キャンプ地の宮崎に戻った。15日の実行委員会ではダイエーから、ソフトバンクへの売却が他球団に説明される。「中間報告ということだから、そういうつもりはしていない。現場の我々がやることは同じだから」。日米野球の全日程が終了。王監督の頭の中は早くも来季のV奪回に切り替えられていた。
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言葉には実感がこもった。「すごく勉強になりました」。“初舞台”を終えた嶋は、本場の凄みを肌で感じた者にしか分からない、充実感にあふれていた。
第5戦ではクレメンスに2点二塁打をお見舞いしたが、終わってみれば今シリーズ通算14打数2安打。セ・リーグの首位打者も、メジャーにひねられた。この試合でも、九回、二死一、二塁で打席が回ってきたが、ロドリゲスの145キロのカットボールに二ゴロに倒れ、閉幕の打者になった。
「向こうのバッターはパワーだけじゃなくて、選球眼もいい。ボールを引き付けて打てるし、余裕がある」。同じ打者として学ぶべきものを、はっきりと見た。
試合後、ともに戦った証に、オルティスとアルーからバットを譲り受け、ラインブリンクとはユニホームを交換した。それ以上にこの8日間の経験が、嶋の何よりの宝となった。
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最後はやっぱりこの男だった。四回、オルティスが井川の4球目を、詰まりながらも左中間スタンドへ運んだ。2戦目に日本のファンの度肝を抜いた157メートル弾以来の、来日2号。初回、空振り三振を喫していただけに、「今度はお返しをしたまでさ」と、豪快に笑ってみせた。
この一発が号砲となり、五回にはウェルズの2ランなどが飛び出し試合を決めた。負ければ勝ち越しがなくなるという大切な試合。ボウチー監督は試合前に「1990年以来、負け越していない。勝ち越さなければメンツがたたない」とゲキを飛ばしていた。
オルティスこそ「これはゲーム。プレッシャーなんてない」と言い放ったが、ウェルズは「きょうは最初の1球目から、勝たなければと思って挑んだ」と言い、先発のピービも「ワールドシリーズの7戦目に登板している気持ちで向かった」と振り返る。そしてもぎ取った勝利。メジャーの底力を見せつけた。
会見場に姿を見せたボウチー監督の左ポケットにはこの日のウイニングボールが。「サンディエゴの事務所に並べておこうと思ってね」。終始、表情は和やかだった。
シリーズMVPに輝いたのは、俊足巧打でファンを沸かせたウェルズ。この日もダメ押しの2ランなど3安打を放ち、打率・407で締めくくった。このシリーズで最も印象に残っているのは日本野球のレベルの高さだという。「選手の名前も覚えた。今後だれがメジャーにくるのか、楽しみに追いかけてみたい」と振り返っていた。
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「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は14日、東京ドームで最終戦を行い、大リーグ選抜が5―0の快勝で連敗を3で止め、通算5勝3敗で勝ち越しを決めた。
大リーグ選抜は四回にオルティス(レッドソックス)の2点本塁打で先制し、五回にもウェルズ(ブルージェイズ)の2ランなどで加点した。
全日本は先発ピービ(パドレス)から六回までわずか2安打しか奪えないなど、4投手に6安打と封じ込まれた。
今シリーズのMVPには通算打率4割7厘、2本塁打、7打点のウェルズが選ばれた。
4回表2死一、三塁、和田の打席で盗塁を決める岩村。二塁手はジャイルズ=東京ドームで |
“日本のA−ロッド”誕生だ! ヤクルトの岩村明憲内野手(25)が、25打数11安打で今大会の首位打者を獲得、敢闘賞を受賞するとともにメジャー挑戦の足がかりをつかんだ。
名前を覚えてもらいたいと臨み、これ以上ない成果を収めた。この日の2安打を含め7試合連続安打。加えて7盗塁は、赤星とともに38年ぶりとなる日米野球のタイ記録。打って走って、守りもうまい。3拍子そろった三塁手は、最高年俸選手アレックス・ロドリゲス三塁手(ヤンキース)をもじったニックネームでメジャーリーガーから呼ばれるようになった。
ステップアップのきっかけは前回の日米野球だった。「2002年はパワー不足を感じた」と岩村。翌年の春季キャンプでは1300グラムのマスコットバットを振り続けたが、無理がたたって右手首を骨折、最低のシーズンを送った。だが、回り道を無駄にしない活躍に「アピールはできた。取りあえず、やることはすべてやった。メジャーで活躍するには? ボールを動かしてくるから、最後までボールを見ることが大事」と、挑戦を視野に入れる言葉を残した。
最終戦を前に交換したコーラのバットには「明憲へ。グッドラック。アメリカで会おう」とメッセージが刻まれていた。「華のあるうちに行きたい」という日本のA−ロッドが海をわたる日は、そう遠くはなさそうだ。
(後藤毅人)
4回裏無死二塁、左中間本塁打を打ったオルティス(左から2人目)を迎える全米選抜ベンチ |
オルティスが、最高の形で最高の1年を締めた。0−0の4回無死二塁、それまでメジャー打線を3安打無失点に封じていた左腕・井川の直球を、左打席から左中間席に運んだ。同じ東京ドームで右翼に160メートル弾を飛ばした第2戦以来となる、2号先制2ラン。米選抜に勝ち越しをもたらした大砲は「第1打席は速球でやられた(空振り三振)から、今度はオレが仕返ししてやっただけ」と豪快に笑った。
硬い人工芝での連戦でひざを痛め、第5戦以降は快音が消えていた。しかし、大トリで締めくくるところはさすが。「疲れたけれど、日本は本当に楽しかったよ。東京ドームでの2本塁打には満足している。日本食も食べたし、お土産には着物やソースを買った。あとは帰国が待ちきれないね」。195センチ、104キロの体で、ニンマリだ。
今季はリーグ2位の41本塁打と開花し、リーグ優勝決定シリーズでは宿敵ヤンキース相手に3連敗から奇跡の4連勝を果たし、シリーズMVPも獲得。そのまま一気に球団86年ぶりのワールドシリーズ優勝をもぎ取った。そして日米野球では、極上の“締め”。自身も決して忘れられないであろう1年の最後に、強烈な残像をプレゼントしてオルティスは日本を去った。
(廣田学)
5回裏1死一塁、2ランを放ち、ホーム上でお得意のポーズをするウェルズ(冨永豊撮影)=東京ドームで |
「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は14日、最終の第8戦を行い、大リーグ選抜が5−0で全日本に快勝。対戦成績を5勝3敗として全日程を終了した。大リーグ選抜の大砲デビッド・オルティス(28)=レッドソックス=が4回に2号となる先制2ランを左中間に打ち込み、ワールドシリーズを制覇した1年を最高の形で締めくくった。シリーズMVPは、チームの打撃3冠王となったブルージェイズのバーノン・ウェルズ外野手(25)が受賞した。
MVPを受賞したウェルズは、賞金200万円に加えて500万円以上もするホンダの高級車「NEWレジェンド」を副賞で獲得。「チームのみんなもこれ(車)を狙っていたんだ。国に帰った時、車がもう1台待っているのはうれしいね」。常に穏やかな口ぶりのマジメ人間も、ビッグなプレゼントには笑みを抑え切れなかった。
打率・407(27打数11安打)、2本塁打、7打点は、いずれも大リーグ選抜のトップ。さらに中堅で好守備を連発し、背走ポケットキャッチも軽々と披露。今季ゴールドグラブ賞を受賞した実力を見せつけた。
所属するブルージェイズは今季67勝94敗で、ア・リーグ東地区最下位。オフは主砲デルガドもFA移籍確実といわれる。「ここで活躍できた自信を胸に、リーダーとして来季はキャンプに望みたい」。不振球団に在籍するため目立たなかった実力派は「メジャーリーガーと日本のファンに、自分の存在を知らしめたい」という目的を果たした。
(鈴木遍理)
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