全日本が西武・松坂大輔投手(24)の完投勝利で2連勝を飾り、対戦成績を全日本の2勝4敗とした。プロ入り6年目で初の日米野球参戦の松坂は初登板で米大リーグ選抜を5安打1失点。ブルース・ボウチー監督(49)=パドレス=らから大絶賛された。将来のメジャー移籍を狙う“平成の怪物”に、また一つ新たな伝説が生まれた。〔写真:城島に肩をたたかれ、会心の笑みを浮かべる松坂。日米野球での完投勝利は、20年ぶりの快挙だ=撮影・尾崎修二〕
さすがは怪物。これが日本が誇る最高級エース『MATSUZAKA』だ。松坂が北の大地で、本場メジャー軍団の前に9回5安打1失点と仁王立ち。完封こそ逃したが、日米野球での完投勝利は20年ぶりの快挙だ。
「この日を心待ちにしてました。勝った瞬間は非常に気持ちよかったです。早く投げたい気持ちでいっぱいだったけど、落ち着いて投げることができました。完投は指令? 志願です!」
心地よく流れる汗をぬぐうことも忘れ、24歳の“野球小僧”がお立ち台で最高の笑顔をみせた。シリーズ前の時点で第2、7戦で先発予定だったが、10月のプレーオフや日本シリーズの激戦で疲労が蓄積。調整が間に合わず、この日の“一戦必勝”にかけていた。
注目の第1球はクロフォード(デビルレイズ)に対してあいさつ代わりの150キロ。これでエンジン全開。城島(ダイエー)との五輪バッテリーで、五回無死でアルー(カブス)に中前打を許すまで、ひとりも塁に出さないパーフェクトピッチングだった。
公私ともに絶好調だ。10月28日深夜に日本テレビのアナウンサー、柴田倫世さん(29)との結婚を発表。この日は倫世さんは仕事もあって東京で留守番。「家でテレビで見ていたと思いますよ」(松坂)と最愛の人に、最高の姿を見せつけた。
来季は日本一連覇を目指すため、西武でのプレーを明言しているが、メジャー志向は強い。自宅にはレンジャーズ時代のA・ロドリゲス(ヤンキース)、イチロー(マリナーズ)のユニホーム。ランディ・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)のキャップが飾ってあるほどだ。来季終了後にもポスティングシステム(入札制度)による大リーグ挑戦を目指す可能性は高い。
「向こうに行ってやりたいと言っているからには、こういう試合で結果を出したいと思っていた」。初挑戦となった日米野球で松坂が全米に猛アピール。怪物が大きな夢をグッとたぐり寄せた。
【データBox】
西武・松坂が、日米野球初登板で完投勝利を挙げた。日米野球での日本投手の完投勝利は、昭和59年10月27日のオリオールズ戦(後楽園)で、広島・川口和久が6安打完封を演じて以来、20年ぶり。川口はこのとき、日本投手最多の10奪三振も記録している。 なお、日米野球での日本投手の完封勝利は4度あって、川口以前の3人は(1)村山実(昭和37年11月17日のタイガース戦=後楽園)(2)益田昭雄(41年10月23日のドジャース戦=後楽園)(3)高橋明(43年11月17日のカージナルス戦=小倉)。 |
【裏話】松坂の好投を呼んだのは、試合前に届いたゴールデン・グラブ賞受賞の吉報。平成11年の入団後6年間で、故障に泣いた平成14年を除き、5度目の獲得となった。松坂は移動の際、自分のグラブを、型崩れを防ぐためにジュラルミンケースに入れて運んでいる。野手以上に守備意識が高く“守れるピッチャー”を理想に掲げる男にとって、ゴールデン・グラブが何よりの勲章なのだ。
◆松坂に最敬礼の全日本・王監督(ダイエー) 「松坂は緩急をつけて相手にスイングをさせていなかった。責任感の強い投手。この時期に完投を意識しているのはすごい。打線もきょうは飛距離が出ていたね」
◆大リーグ選抜・コルボーン投手コーチ(ドジャース) 「メジャーの投手よりも緩急をうまく使っていた。こっちの打者はタイミングをつかめなかった。メジャーで通用するのは間違いないが、それは彼だけでなく、今大会で投げた日本の投手全員だ」
◆3打数1安打の大リーグ選抜・カブレラ(マーリンズ) 「松坂の直球には正直、驚いたよ。きょうは脱帽、すいません、という感じだね」
◆唯一の打点をあげる二塁打を放った大リーグ選抜のJ・ウィルソン(パイレーツ) 「松坂から打てたのは幸運なこと。スライダーが特に素晴らしかった」
◆メッツ・大慈彌功極東担当本部長 「高校時代から将来はメジャーリーガーになれると思っていた。カットボールがうまく使えるようになった。あとはシーズン中、無理な球数を放らないようにすれば、いずれアメリカのマウンドに立つ日が来る」
★小笠原に道産子ファンが喝さい
小笠原(日本ハム)が本拠地で3万5000人の道産子ファンの喝さいを浴びた。五回二死三塁で右前タイムリー。貴重な3点目を生んだ。第5戦まで13打数2安打。「結果が出ていなかったから、タイムリーなのが救い。でも、札幌のファンは1本じゃ満足してくれないでしょう」。5打数1安打に終わったことはザンゲ。
★佐伯が全日本1号
待望の全日本1号は佐伯(横浜)。八回に「K(奪三振)ロッド」ことロドリゲス(エンゼルス)のスライダーを右翼に本塁打。6戦目でチーム初アーチとなった。日本より7グラム重いメジャー公認球を使っているため、打球が伸びずに苦しんだ。第4戦の三回に先頭で打席に入ったとき、直前に打ったオルティス(レッドソックス)の足形が残っていた。「かなり後ろに立っていた。じっくり最後まで見て打つのを、マネしてみたんです」。日米野球ならではの“学習”となった。
◆二回に左ひじに死球を受け三回の守備から退いた和田(西武) 「激痛は走ったが、メジャーは痛いところを見せないし我慢した。ひじは曲がるし、骨は大丈夫」
(日米野球オールスターシリーズ第6戦、米選抜1−5全日本、米選抜4勝2敗、11日、札幌ドーム)メジャーのプライドが、ズタズタに引き裂かれた。五回、先頭のアルー(カブス)が中前打を放つまで、松坂にパーフェクトに封じられた。
「きょうは松坂に尽きる。素晴らしい投球をした。球種がたくさんあるし、試合の組み立てをよく知っている。今の時点でメジャーで通用するのは間違いないね」
大リーグ選抜・ボウチー監督(パドレス)は、お手上げのポーズ。前日は岩隈(近鉄)に7回1失点に抑えられ、2日間で計2得点。この日は疲労を考慮し、試合前の打撃練習を中止したが、実らなかった。
「彼の投球をほめるしかない。すべての球種が素晴らしく、対策はうまくいかなかった」。日本でいう“松坂世代”の23歳で、初めて3番に入ったブラロック(レンジャーズ)は、2三振に唇をかんだ。4連勝から一転して連敗。『マツザカ』の4文字が、渡米よりも一足早く、メジャーの脳裏に刻み込まれた。
〔写真:二回、城島の打球をはじき、ぼう然とするカブレラ。メジャー軍団が初めて先手を取られた=撮影・浅野直哉〕
◆先発して4回2失点のレッドマン(アストロズ) 「全体的にはよかったが、いくつかミスをしてしまった。マウンドになじむのにも時間がかかった」
二回の先制タイムリーはおいしいところで回ってきた。八回の三塁打も他の球場なら、本塁打。(中堅)クロフォードがもたついたとき“三塁まで行ける”と。スピードでも負けてないのを見せられて、自信になった。
6戦を終え、両チーム最多の6盗塁。「クレメンスからも走る」って宣言してたけど、10日の第5戦では2安打2盗塁。“公約”達成やね。ホッとしてるよ。クイック(モーション)がない投手だし、あれくらいは走れる。日本の投手のほうがクイックは早いからね。クレメンスは1戦目で対戦して球は見ていたし、特別って意識はなかった。でも、中4日であれだけの投球をするんだから、さすがサイ・ヤング賞投手。日米野球が始まる前は5盗塁って思ってたけど、8戦で8盗塁はいきたい。
ここまで戦ってきて、やっぱりボールは統一するべきだと思う。世界中見ても、国によってボールが違うスポーツなんて野球だけでしょ? 言い訳はなくしたい。(メジャー球は)皮が滑りやすいし、変化球を投げづらい。1週間で慣れろってほうが無理。投手は大変。来年は野球のワールドカップも開催するって言ってるんだし、大事なことだと思う。
メジャーの選手はこの日の試合前練習をすべてキャンセル。試合前のシートノックはいつもしないけど、それも試合に集中しようってことだと思う。日本も100%まねしろとは言わないけど、今の練習だと試合前に疲れちゃうよ。
大阪からの移動で、ジャイルズがTシャツとサンダルで移動してたのには驚いたよ。札幌が寒いって知らなかったみたい。メジャーの選手は三塁ベンチを出てから、左打者は審判の前を通って打席に入る人が多いけど、何でだろ? 日本の選手は審判の後ろを通るのに。おれも早速、来年からまねしてみようかな?
〔写真:八回、ロドリゲスから左中間へ三塁打を放つ岩村。先制二塁打を含め、3打数2安打と奮闘した=撮影・尾崎修二〕
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<日米野球:全日本5−1全米>◇第6戦◇11日◇札幌ドーム
メジャーに、その力を知らしめた。西武松坂大輔投手(24)が、日米野球初登板で力投。5安打1失点に抑え、日本人投手では20年ぶり、大リーグ選抜相手では51年ぶりの完投勝利を、日本人初の無四球で飾った。メジャーの猛者相手に随所で内角を直球で攻め、封じ込めた。いつかはメジャー、を公言する右腕が、猛アピールした。
勝負に徹していても、自分の最大の武器には自信があった。9回裏2死、4番アルーに対しカウント0−2。打者優位のカウントになっても松坂が選択したのは、ストレートだった。146キロでバットを押し込みライトフライ。歴史的な無四球完投勝利を、あっさりと成し遂げてみせた。
本格派の中の本格派右腕が、もっとも神経を使ったのは、内角真っすぐのコントロールだった。「少し変化球が多くなりましたが、勝ちに徹していたということで、よしとします」。そう振り返るが、打者がもっともスピードを感じる内角の真っすぐが決まるから、変化球も効果的だった。要所では、真っすぐで強気に攻めた。4回までパーフェクト。「完投は志願です。いけるとこまでいこうと思ってました」。6回に奪われた1点も、外野手が打球をグラブではじいてタイムリーにしてしまったもの。限りなく完封に近い1失点、無四球での完投勝利だった。
“別人18号”が、メジャー相手に剛球を投げ込んだ。3日の東西対抗戦で先発した時は、真っすぐの球速が140キロ前後にとどまった。日米野球は当初、6日の第2戦先発が内定していたが、6戦目に変えてもらった。「肩が緩んでいただけで、締めれば大丈夫。調整の時間をもらったし、しっかり投げないとだめでしょう。先発で2回のところを1回にしてもらったんですから」。チームには迷惑をかけたが、短期間での修正も完ぺきだった。1度きりの登板で、結果を出した。
最速150キロの真っすぐには、中身も詰まっていた。メジャーで使用されるボールと、メジャー用に硬くされたマウンドを克服した結果だった。「ボールはすべすべしますね。球離れが早くなると抜けてしまう。でもそんなに気にはなりませんでしたよ」と適応力も十分。マウンドも全米チームの要望で、クレーという粘土質の土で固められ、プレートの前に埋め込まれていたゴムも排除されていた。ボール、硬いマウンド。まさにメジャー仕様での好投だった。
あこがれのメジャー入りへ、猛アピール。試合前のブルペンでテレビ撮影を頼まれたが、登板に集中したいと断っていた。「向こう(米国)に行ってやりたいと言っているんだから、こういう結果を出せてよかったです」。初参加の日米野球の先発は、それだけ重要な舞台でもあった。ポスティングシステムでの移籍か、早くても08年オフになるFA権利取得まで待つのか。いずれにせよ、一足早く「メジャーリーガー」松坂の姿が、札幌のファンの前に披露された。
[2004/11/12/08:46 紙面から]
写真=日米野球20年ぶりの完投勝利を飾った松坂(右)は城島とがっちり握手を交わす
<日米野球:全日本5−1全米>◇第6戦◇11日◇札幌ドーム
待望の日本人1号アーチは、横浜佐伯のバットから生まれた。3−1で迎えた8回表、メジャーを代表する剛腕「K・ロッド」ことロドリゲスのスライダーを、右翼席に運んだ。飛ばないと言われる大リーグの公式球を6試合目にして初めてスタンドに運んだ。34歳のベテランは「アドレナリンが出た。世界の王監督に迎えられて興奮したよ」と笑顔で振り返った。
飛ばない、と言われるメジャーのボールをいかに攻略できるかを考え続けた。答えは全米の主砲オルティスの打撃を観察している時に見つけた。「日本人はバットコントロール、大リーガーはボディーコントロールで打つ」。オルティスと同じように捕手寄りに立って、体全体で力をバットに伝えた。
プロ12年目の今季、打率3割2分2厘、19本塁打と最高の成績を残した。オフはFA権の行使について悩んだが、牛島新監督から来季も貴重な戦力として期待されていることを実感。権利を行使せず残留することを決めた。「メジャーに興味のない人間が貴重なチャンスを与えられて本当にいい勉強をさせてもらっている。今回の経験を来年につなげたい」。気持ちは誰よりも若い。【広瀬雷太】
[2004/11/12/06:32 紙面から]
<日米野球:全日本5−1全米>◇第6戦◇11日◇札幌ドーム
将来の大リーグ挑戦を目指すヤクルト岩村が打って走って存在感をアピールした。先制打を含む2本の長打でチームの連勝に貢献。先制打は2回無死一、二塁の好機で左中間を破る二塁打。赤いバットやリストバンドを使う25歳は「先発の“レッドマン”には負けたくないですから」と冗談まじりに笑った。
全試合に出場し、無安打だったのは第1戦だけ。打率4割7分1厘は全日本で首位と好調だ。加えて公式戦で打率3割、44本塁打、103打点のスラッガーが、打撃以上に目立っているのが足だ。積極的な走塁で盗塁王の赤星(阪神)を上回るチームトップの6盗塁を記録。岩村は「今の成績でも十分なんですが、雑なプレーはしたくない」と常に全力をアピールした。
[2004/11/11/22:44]
<日米野球:全日本5−1全米>◇第6戦◇11日◇札幌ドーム
全日本の5番、西武和田が2回の打席で左ひじに投球を受け、3回の守備から佐伯と交代した。
骨には異常がないようでアイシングだけで、病院に行く予定はない。和田は「激痛は走ったが、メジャーは痛いところを見せないし、我慢した。ひじは曲がるし骨は大丈夫」と話した。
[2004/11/11/21:23]
<全米−全日本>1失点完投の松坂は城島に肩をもまれ笑顔(共同) |
【全日本5−1全米】北の大地で松坂がメジャー級の実力を見せつけた。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」(スポニチ後援)は11日、札幌ドームで第6戦を行い、全日本の先発・松坂は全米打線を4回までパーフェクトに抑え、9回を5安打、無四球、1失点。日米野球初登板で、84年の対オリオールズ戦での川口和久(広島)以来20年ぶり、全米相手では53年の荒巻淳(毎日)以来51年ぶりの完投勝利をマーク。打線も8回に佐伯が全日本初本塁打を放つなど5点を奪い、対戦成績を2勝4敗とした。
また1つ新たな怪物伝説が生まれた。最後の打者アルーを右飛に仕留めると、松坂から会心の笑みがこぼれる。予定の6回を終えても続投志願し、9回を5安打1失点。日米野球では84年の川口(広島)以来20年ぶり、全米相手では51年ぶりの完投勝利を挙げた。
「本当にこの日を心待ちにしていた。あこがれのメジャー相手にこれだけのピッチングができて大満足です」。プロ6年目で初出場の夢舞台。初回、先頭のクロフォードへの初球はいきなり150キロを計測。名刺代わりには十分過ぎる剛球だった。
当初は第2、第7戦の先発が予定されていた。しかしプレーオフ、日本シリーズの疲労から、王監督に「1試合限りでいいので万全の状態でマウンドに上がりたい」と直訴。この日の登板に懸けたが“試練”も待ち受けた。前日にMLB側の要請を受けて米国のグラウンドキーパーが来日。15時間かけてレンガを敷きつめ、メジャー仕様の硬いマウンドに変えた。それでも松坂の変化球は抜群の切れを見せ、4回までは完全。メジャー側が球審にボールチェックを要求するほどだった。滑りやすいメジャー球にもリリースポイントを従来より前にして、球持ちを長くする工夫を凝らした。
「今すぐにでも行きたい気持ちはある。だからこそ結果を出したかった」。今オフもポスティング・システム(入札制度)でのメジャー移籍を視野に入れていた。7日には上原に頭を下げて、クレメンスの“合同トレ”に飛び入り参加し、中4日の調整法などを積極的に質問。「できることなら僕もクレメンスのように、余力を残して格好よく引退したい」と引き際の美学まで口にするほど影響を受けた。
日本テレビアナウンサーの柴田倫世さん(29)との今オフ結婚も発表。「よく料理の手伝いもするけど、包丁だけは使わせてくれませんね」とのろけたが、英語も堪能な良き伴侶を得たことでメジャー挑戦の準備は整った。「メジャーが相手でも怖さを感じることはなかった」。早ければ06年のメジャーデビューに向け、「MATSUZAKA」の名はしっかりと刻まれた。
▼全日本王監督 松坂は多彩な変化球はもちろん、コントロールがよかった。見事だったよ。こういう時期でも、いける時は完投を、という意識が凄い。打線もだいぶ振れてきたし、残り2試合でタイにしたい。それしかないよ。
<全米−全日本>8回1死、待望のチーム1号弾を放った佐伯 |
【全日本5−1全米】全日本にとって待望の一発は、佐伯のバットから生まれた。8回1死、Kロッドことロドリゲスの決め球、125キロのスライダーを会心のスイングで右翼席に運んだ。6試合目にして飛び出した全日本初アーチ。「シーズン中と同じぐらいアドレナリンが出た。世界の王さんに出迎えられて、オレの方が興奮しました」と声を弾ませた。
5試合目までノーアーチ。王監督も「1本も打てないんじゃ…」と不安を募らせる中、佐伯は冷静に分析した。他の打者とも話し合っての結論は「ボールのせいじゃなく、打ち方に問題がある」。メジャーを参考にしたのは9日の第5戦(福岡ドーム)。3回、打席に残るオルティスの足跡を踏むようにスタンスを取った。「自分よりずっと捕手寄りだった。景色が違った」。手元で変化するボールを少しでも呼び込んで、体全体で打つ。その“極意”が、待望のアーチにつながった。
「今まではメジャーに関心はなかったけど、この場に参加してすごい勉強になっている。いいものはどんどん取り入れて、来年につなげられれば」。今季は打率・322でリーグ3位。それでもてんぐにならず、どん欲に吸収する。6回の守備ではウィルソンの打球を後逸(記録は二塁打)し「完封と完投じゃ全然違う。大輔に申し訳ない」と頭をかいたが、チームにとっては価値のある、勢いを呼ぶ“メジャー仕込み”の本塁打だった。
≪岩村“赤”に興奮≫岩村が2回に先制の左中間二塁打を放つなど、またまた大暴れ。「(好機で)ヨダレを垂らしながら打席に向かいました。レッドマンには負けたくないですから」とバットやリストバンドなど赤をイメージカラーにしているだけに“赤男”攻略に満足げだ。6回には二盗で今シリーズ6盗塁目をマークし、8回には左中間三塁打。打率は・471のハイアベレージだが「今後も雑にならないようにしたい」と謙虚だった。
≪大歓声に小笠原が初打点≫本拠地で大歓声を受けた小笠原が、5回に右前適時打を放ち6戦目で初打点をマークした。「シーズン中ずっと見ていてくれたので、(ファンが)1本で許してくれるかどうか。でも最低限のノルマは果たせた」と照れ笑い。第1、第2、第5打席とフェンス際に大飛球を放って沸かせたが「(本塁打より)勝ちに行くだけです」と残り2試合に向けて気合を入れ直していた。
連日の移動で疲れが出たか、元気のない全米ベンチ |
【全米1−5全日本】「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」(スポニチ後援)は11日、札幌ドームで第6戦を行い、松坂が日米野球で20年ぶりの完投勝利を挙げた。全日本の先発・松坂はメジャー相手に4回までパーフェクトに抑え、9回を5安打、無四球、1失点と堂々の内容。初登板で日米野球初勝利をマークした。全米は6回、ウィルソンの適時二塁打で1点を返すのが精一杯。第7戦は12日にナゴヤドームで行われ、全日本は上原(巨人)、大リーグ選抜はマーキス(カージナルス)が先発する。
松坂の前に何もできなかった。今季のオールスター出場メンバー7人を並べた打線がわずか5安打と沈黙。試合後のボウチー監督も脱帽するしかなかった。「彼が素晴らしかったというひと言に尽きる。4つのメジャーレベルの球種を持っており、今の時点でも十分に通用する」。事前に関係者から松坂の情報を入手していたが、予想以上の実力に驚いた。
唯一の得点は6回2死一塁からウィルソンの適時二塁打。これも左翼・佐伯が後逸したためで、零敗を喫してもおかしくない内容だった。今季34本塁打の3番ブラロックは2三振を喫し「95マイル(約153キロ)の直球もあって変化球もすごい。おめでとうと祝福するだけ」と苦笑いした。
4連勝後の連敗。2試合でわずか2得点の打線は深刻だ。ア・リーグ本塁打王ラミレスが第3戦後に故障で緊急帰国し、頼みの主砲オルティスも人工芝の負担がひざにかかっており、大事を取って欠場した。大阪から移動してきたこの日は初めて試合前の打撃練習をキャンセルしたが、効果なし。「打線が打ってくれないと勝てない」とボウチー監督。疲労からか、球場を引き揚げる選手の足取りも重かった。
≪怪物成長に驚き≫00年シドニー五輪で米国代表として松坂と対戦したウィルカーソンも、松坂の成長にはびっくりだ。「あんなに変化球の球種は多くなかったはず。素晴らしい投手になっていたね」。最初の打席では空振り三振を喫するなど3打数無安打。「直球は150キロがコンスタントに出るし度胸もある。彼は近い将来にメジャーに呼ばれると思うよ」と話した。
日米野球に出場したクレメンスが、関西空港から日航機でデビー夫人とともに帰国した。登板翌日とあって、少し疲れた表情を見せながらも、搭乗前には土産を物色。名残り惜しそうな様子だった。今季限りで引退する可能性を「99%」としている328勝右腕の決断は、日米ファンの注目を大きく集めることになる。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
全日本 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 5 |
全米 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
[日]○松坂―城島 [米]●レドマン、ローシ、ラインブリンク、ロドリゲス、キング、 レイツマ―マルチネス [本]佐伯1号(ロドリゲス・8回) |
◆佐伯が日本1号 待望の一発が飛び出したのは2点リードの8回。エンゼルスのストッパー、“K・ロッド”ことロドリゲスの決め球のスライダーを捕らえた。右翼席中段に運ぶダメ押しのソロとなった。 「メジャー選手との打ち方の違いを感じさせられます」飛ばないボールでも、スタンドまで簡単に運ぶスター軍団の打ち方に感心させられてばかり。第4戦では、打席に残っていたオーティズの足跡に自分の足を入れて、同じステップで打った。 結果は遊ゴロだったが、「とにかくボールを引きつけて打っているのが分かった。メジャーにまったく感心のない男が、勉強させられています」。人知れず世界一の4番打者の技術を吸収した佐伯が、待望のアーチで、日本にさらなる勢いをもたらした。 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
全日本 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 5 |
全米 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
[日]○松坂―城島 [米]●レドマン、ローシ、ラインブリンク、ロドリゲス、キング、 レイツマ―マルチネス [本]佐伯1号(ロドリゲス・8回) |
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西武・松坂大輔投手(24)が、日米野球で20年ぶりに日本人投手として完投勝利を挙げた。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」の第6戦は、松坂が四回までパーフェクトに抑え、5安打無四球、1失点の力投で大リーグ選抜に勝ち、対戦成績を2勝4敗とした。
「勝負に徹しました」。お立ち台の松坂は涼しげに振り返った。初めての日米野球で、9回完投勝利。日米野球での完投勝利は、日本人投手では20年ぶりの快挙となった。
四回まではパーフェクト。大胆さの中に繊細さをちりばめた投球だった。「あらゆるコース、球種を使いました」。チェンジアップ、カーブ、カットボール、スライダー。変化球で丁寧にコースを突きながら、MAX150キロの直球で内角を際どく攻めた。「向こうのバッターは積極的にストライクが来たら振っていくので」。95球で「マツザカ」の名を全米選抜に刻み込んだ。
2三振のブラロックが舌を巻いた。「すべての変化球が良くて毎回違うパターンで投げていたので、的が絞れなかった。そこに150キロの直球が来るんだから。メジャートップクラスのスターターと比べても遜色(そんしょく)ない」。ボウチー監督も「向こうの方が上手」と白旗を揚げ、「今までに見たことのない振りかぶり方をするのが印象的」と、目を丸くした。
松坂には“負い目”もあった。本来なら第2戦、第7戦と登板する予定だったが、プレーオフ、日本シリーズの疲労が残り、王監督に申し出てこの日の登板にずらした経緯がある。「これだけ時間をもらったのに変な結果は出せない」。この第6戦で日本のエースに値する投球を見せなければならない責任感もあった。
「僕にはやらなければいけないことがたくさんあります」。そう言って当面メジャー行きは封印した松坂。しかし、胸に抱き続けている夢の実現へ、この完投勝利の持つ意味は大きい。
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試合前、阪神・赤星に朗報が届いた。2年連続3度目となる、阪神勢唯一のゴールデングラブ賞受賞。「僕の中では守備で流れをつくっていくので、盗塁王よりうれしい。盗塁王とともに生涯、獲り続けたい」。その栄誉を支える快足で、またもメジャー相手に魅せた。
2点リードの五回だ。一死から遊撃正面へのボテボテのゴロも、俊足で失策を誘い出塁。続く仁志への初球にシリーズ5個目の二盗を決め、三ゴロの間には好走塁で三塁を陥れた。「よかったです。その前に刺されてたんで」。三回にはけん制でアウトになったが、目標の8盗塁へ勢いは止まらない。
決して、体は万全ではない。第1戦で右手薬指を負傷、腰の状態も悪い上、この日の札幌への飛行機移動では首を寝違えた。それでも、前を向く。全米をも席巻する「アカホシ」の輝きは増すばかりだ。
八回、横浜・佐伯の右越えソロは今大会の全日本第1号。「手応えは最高でした。チーム初のホームランを打てて感激しています」。ベンチで指揮を執る王監督も「1本も出ないかと思っていたよ」と笑みを見せた。
ようやくエンジンがかかってきた。松坂の完投に加え、打線も7安打中5本が長打。「今日は絶対勝ちたかったからね。タイ以上はないけど、何とかタイに持ち込みましょう」。投打がかみ合っての連勝劇に王監督も上機嫌だった。
オルティスは松坂との対戦が実現せず、無念の表情だった。人工芝での連戦で疲れがたまり、ひざへの負担を考慮して欠場。代打の準備はしていたが出番はなかった。「松坂はいいボールを持っている。対戦したかったんだけどね」と残念がっていた。
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「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は11日、札幌ドームで第6戦を行い、全日本が松坂(西武)の好投で5―1と大リーグ選抜に勝ち、対戦成績を2勝4敗とした。
日米野球初登板の松坂は四回までパーフェクトに抑え、5安打無四球、1失点の完投勝利を飾った。打線は二回に岩村(ヤクルト)の二塁打などで2点を先制し、五回は小笠原(日本ハム)が右前適時打、八回にも佐伯(横浜)のチーム初本塁打などで2点を奪った。
初出場の日米野球で広島・川口以来、20年ぶりとなる完投勝利を挙げた松坂=札幌ドームで |
松坂が20年ぶりの快挙を成し遂げた。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は11日、札幌ドームで第6戦を行い、将来のメジャー移籍を視野に入れる松坂大輔投手(24)=西武=が初の日米野球登板で歴史的快投。4回まで大リーグ選抜をパーフェクトに抑えるなど無四球、5安打1失点で、日本の投手では1984年の川口和久(当時広島)以来20年ぶりとなる米国チーム相手の完投勝利をマークした。これで対戦成績は日本の2勝4敗。第7戦は12日午後7時からナゴヤドームで行われる。
ウイニングボールを手にした松坂の顔から笑みがこぼれた。日米野球初出場。大リーグ選抜相手に堂々たるピッチング。最後までリリーフを仰ぐことなく、1失点の完投勝利。日米野球では1984年10月27日、広島・川口和久投手がオリオールズ相手に完封して以来20年ぶり、完投勝利は通算11人目。大リーグのオールスターメンバー相手に完投勝利を挙げたのは、53年の荒巻(毎日)以来51年ぶりの快挙となった。
「(完投は)志願です。気持ち良かった。ボク自身心待ちにしていましたから」。お立ち台で松坂は札幌のファンに叫んだ。
お祭りムードのかけらもない。白い歯を一度も見せることなく、松坂はメジャーリーガーに立ち向かった。ベストを尽くすことが、最高の相手に対する流儀。まさに宣言通りの快投だった。
「クリーンアップには直球勝負を挑んでみたい。でも、あくまでも勝ちにこだわる投球をしたいです」。練習前には、シーズン中に何度も投げているはずの札幌ドームのマウンドに足を運んで、土の硬さや傾斜をチェック。全日本の投手陣が悪戦苦闘中のMLB使用球も、意識して球持ちを長くすることで、抜け球を極力防いだ。4回までは1本のヒットも許さず、9回を被安打5、三振は6つを数え、無四球、たった95球の“省エネ投球”だった。
日本のエースとしてのプライドがあった。当初は第2戦と第7戦に先発する予定だったが、プレーオフと日本シリーズでの疲労を考慮し、登板を引き延ばしてもらった。「時間をもらったから、ぶざまなピッチングはできなかった。いつも通り、ブルペンでは良くなかったけど、気迫で負けなかったと思う」と松坂は胸を張った。
今月に入って球団の身売り騒動がぼっ発。親会社のコクドは売却を否定したが、先行きは不透明だ。来季以降もチームが継続保有される確証はない。ひょっとしたら最後になるかもしれないライオンズブルーのユニホーム。しかし、そんな感傷を周囲に感じさせることなく、投げ続けた。
入団以来、抱き続けているメジャー志向。「今すぐにでも行きたい気持ちはある」と公言する松坂。日本テレビ・柴田倫世アナとの結婚に華を添える力投は、メジャーでやれる自信までもつかんだ。 (西口憲一)
8回表全日本1死、今大会日本人初の本塁打を放った佐伯 |
佐伯が8回に右越え本塁打を放ち、6戦目でチーム初本塁打を記録した。大リーグ公認球を使っているため、打球が伸びずに苦しんでいたが、第4戦で3回に先頭打者として打席に入った時、その直前に打ったオルティスの足形が残っていたという。「かなり後ろに立っていた。じっくり最後まで見て打つのをまねしてみたんです」。大リーグ屈指の強打者を参考にして生まれた一発だった。
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