(日米野球オールスターシリーズ第7戦、全日本3x−2米選抜、米選抜4勝3敗、12日、ナゴヤドーム)。全日本先発の上原浩治投手(29)=巨人=が新球「ツーシーム」で大リーグ選抜を5回2安打ゼロ封。山口和男投手(30)=オリックス=は151キロ剛球で4番斬り。ともに将来のメジャー移籍へ向け大きな一歩をしるした。全日本は小笠原道大内野手(31)=日本ハム=の代打サヨナラ打で劇勝し、対戦成績を3勝4敗とした。最終の第8戦は14日、東京ドームで行われる。〔写真:初めてツーシームを駆使して5回無失点。上原のメジャー準備は着々=撮影・伊藤なな〕
(日米野球オールスターシリーズ第7戦、全日本3x−2米選抜、米選抜4勝3敗、12日、ナゴヤドーム)。右手でポーンとグラブを叩き、マウンド上で思わず「ウォーッ」と雄叫び。オリックスの守護神・山口が、メジャーの4番・オルティス(レッドソックス)に真っ向勝負。151キロのストレートで空振り三振に斬ってみせた。
「燃えました。楽しかったです。野球をやったという感じです」
七回途中から4番手として登板。2点差の八回二死二塁。打席に迎えたのは今季41本塁打で、レッドソックスを86年ぶりにワールドチャンピオンに導いた主砲だった。
MAX158キロの日本最速タイ記録をもつ右腕は、一昨年オフ、右肩を手術。今季は3勝17セーブと復活し、再来年以降、ポスティングシステム(入札制度)を活用してのメジャー移籍の希望があることを、フロントに伝えている。
メジャー志向の右腕にとっては、これほどまでに興奮する舞台はない。O砲相手に、7球連続のストレート。6球目は153キロ。最後はズバッと151キロ。
「メジャー挑戦? 楽しみにしておいてくださいよ」。1度は封印したはずのメジャー移籍。世界一の4番を力でねじ伏せた快感が、熱き思いを改めて燃え上がらせた。
〔写真:151キロ剛球でオルティス斬り。山口はメジャーへの自信を深めた=撮影・塩浦孝明〕
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(日米野球オールスターシリーズ第7戦、全日本3x−2米選抜、米選抜4勝3敗、12日、ナゴヤドーム)。小笠原(日本ハム)の打球が左翼線で弾む。二死二塁から岩村(ヤクルト)が俊足を飛ばして生還。サヨナラ打のヒーローは「こういうオイしい場面で回してもらって、うれしかった」とヒゲをピクつかせた。第6戦まで18打数3安打と不振。大リーグ使用球に対する戸惑いもあった。「しんを外すと重い。コンパクトに振らないと」。フルスイングではなかったが、フルカウントから、大塚(パドレス)の外角直球に鋭く反応した。「このままじゃ終われないという気持ちがみんなにあった」。小笠原はJAPANを代表して、最終戦でタイに持ち込むことを宣言した。
〔写真:サヨナラ打の小笠原=左から2人目=は手荒い祝福を浴びた=撮影・安部光翁〕
3番に起用された岩村(ヤクルト)が九回無死一塁から中堅フェンス直撃の同点二塁打。サヨナラ劇を演出した。「当たりは完ぺき。入ったと思ったんですけどね」。フェンス上段だっただけに少し悔しそうだったが「3連勝でメジャーの選手も本気になってきたし、最終戦はチームの勝利とあと1本、1盗塁を狙います」と有終の美を誓った。
★本拠地で井端は自慢の足魅せた
中日の本拠地でただ一人の出場となった井端が足で逆転サヨナラ劇を演出した。九回無死から四球で出塁すると岩村の中堅フェンス直撃の打球で一気に生還。タイミングは微妙だったが、ブロックをかいくぐって左手で同点の本塁をタッチした。「あれ(スライディング)は当たり前のプレー」とサラリ。オレ流仕込みの走塁に胸を張った。
◆八回、得点につなぐ右前打を放った全日本・嶋(広島) 「いい当たりじゃなかったけど、ホッとした」
★金メダリスト室伏が始球式、129キロ快速球?
アテネ五輪ハンマー投げで金メダルを獲得した室伏広治(30)=ミズノ、写真=が始球式を務めた。スタンドでは両親、同じくアテネ五輪に出場した妹の由佳も観戦。地元出身とあって大歓声に包まれて登場、豪快なフォームから球速129キロの直球を投げ込んだ。「135キロ目指したんですけどね。でもこういう場で投げられてよかった。リラックスして楽しめた」。他の金メダリストたちが連日始球式で「緊張した」と声を震わせる中、ベテランらしさをのぞかせていた。
(日米野球オールスターシリーズ第7戦、全日本3x−2米選抜、米選抜4勝3敗、12日、ナゴヤドーム)。石井(ドジャース)が2度目の先発で2回を内野安打1本、無失点に抑える好投をみせた。前回(7日)の第3戦での5回1失点に続き、格の違いを見せつけ凱旋登板を締めた。「これで投げ納め。来年は契約最終年なので頑張りたい。1年でも長くメジャーでプレーしたいですから」。早くも4年目のシーズンへ気合を入れ直していた。
〔写真:石井が貫禄ピッチ。上原との名勝負を再現した=撮影・河田一成〕
(日米野球オールスターシリーズ第7戦、全日本3x−2米選抜、米選抜4勝3敗、12日、ナゴヤドーム)。大塚(パドレス)がかつての本拠地で大炎上。1点リードの九回から登板、逆転サヨナラ負けを許した。日本人大リーガーの日米野球での黒星は02年の大家(エクスポズ)に続き2年ぶり2人目。「アメリカに行ってよかったですよ。日本人には打たれますから。でも、あれはストライクでしょ」。二死二塁で小笠原にカウント2−1から投じた外角球の判定を、悔やみきれない様子だった。
(日米野球オールスターシリーズ第7戦、全日本3x−2米選抜、米選抜4勝3敗、12日、ナゴヤドーム)。三回から登板のマーキス(カージナルス)が八回途中まで3安打投球。持ち味の制球力でゴロの山を築き「思い通りの投球だった。ボールを低めに集められた」と満足そう。ワールドシリーズ第4戦で先発、3失点でレッドソックスの86年ぶりの世界一を演出したが「チームも自分もいいシーズンを送れた。そのごほうびで日本にも来ることができたし」とさわやかだった。
<日米野球:全日本3−2全米>◇第7戦◇12日◇ナゴヤドーム
全日本の巨人上原が第1戦の先発に続く2度目の登板で5回2安打無失点に封じた。4回2死、オルティス相手にカウント1−3からの5球目。ボールがわずかにストライクゾーンを外れ四球を与えた。上原は「オルティスは選球眼がいい。ボール球にはまったく動かない」と、今大会を通じて相手打者のすごさに触れられたことに心を躍らせた。
初戦の敗戦投手だけに借りを返す意味でも、勝負にこだわった。チームが4連敗したのは自分の責任と感じていた。だからこの試合は勝ちたかった。「岩隈と大輔(松坂)で連勝して、いい流れをつくってくれていた。それを切りたくなかった」と振り返った。勝利にはつながらなかったが、プライドは見せつける投球だった。
[2004/11/12/22:54]
写真=力投する全日本先発の巨人上原(共同)
<日米野球:全日本3−2全米>◇第7戦◇12日◇ナゴヤドーム
これ以上ない「投げ納め」になった。予定の5回を投げ終えた上原は、笑顔で引き揚げてくる野手たちとハイタッチを交わした。わずか2安打しか許さず無失点に抑えた。「大リーガーたちも疲れていたのでしょう」。照れ笑いの中に満足感がにじみ出る。巨人で、アテネで、そして日米野球で。エースとして大車輪の活躍を見せた04年を最高の形で締めくくった。
いつもの上原とは何かが違った。外野深くまで鋭い打球が飛ぶ度に、日本のファンは肝を冷やした。上原は「日本の(飛ぶ)ボールだったら6本ぐらいホームランいかれてますよ」と笑ったが、本心ではない。実はこの日、生まれて初めて試合で大リーグで主流の「ツーシーム」を試した。すべての打球が微妙にバットの芯(しん)を外れていた。「メジャーの球は変化しやすいんですよ」。縫い目の高い大リーグの公式球を初めて投げた2年前の日米野球からあたためてきた、構想だった。
疲れはピークに達している。それでも日米野球出場にこだわったのは、メジャーを体感できるチャンスを逃したくなかったから。中でも尊敬するクレメンスとの交流は生涯忘れられない経験になった。ブルペンを2度見学し「野球に取り組む姿勢を見て、僕ももう少し真剣に考えないといけないなと思った。生きた教材。僕としては現役を続けてほしい」と表情を引き締めた。グラブなどをもらい「家にクレメンスコーナーをつくろうかな」と子供のように喜んだ。
将来的にはメジャー挑戦も視野に入れているが、もちろん今は来年巨人を優勝に導くことしか考えていない。クレメンスがFA宣言したことを伝え聞くと「じゃあ巨人で一緒に…」と話して周囲を笑わせた。「とにかく今はホッとしてます」。長い1年が終わり、最後は安どの笑みがこぼれた。【広瀬雷太】
[2004/11/13/07:50 紙面から]
<日米野球:全日本3−2全米>◇第7戦◇12日◇ナゴヤドーム
岩村(ヤクルト)が9回に同点の適時打二塁打を放った。「最後は、ヒット、ヒット、ヒ ットと思いながら打席に入った。強くたたけたので、あそこまで飛んだと思う」と、中堅フェンス上部に直撃し た大きな当たりを振り返った。
残るは1試合。気持ちは早くも第8戦に向かっており「勝って(通算成績を)4勝4敗に 戻したい」と、最終戦でのもうひと踏ん張りを誓っていた。
[2004/11/12/23:28]
<日米野球:全日本3−2全米>◇第7戦◇12日◇ナゴヤドーム
小笠原が昨季までのチームメート大塚から、逆転勝利を決めるサヨナラ打を放った。9回、1点差を追いつき2死二塁で代打で登場。「こういう“おいしい”場面で回してもらってうれしかった」と振り返って、思わず笑みがこぼれる。
第6戦まで18打数3安打の不振。大リーグ使用球に対する戸惑いもあった。「しんを外すと重い。コンパクトに振らないと」と心がけ、フルカウントから外の直球に鋭く反応した。打球が左翼線で弾み、岩村が俊足を飛ばしサヨナラの生還。その瞬間、ベンチの中は空っぽになった。
4連敗のあとの3連勝。「このままじゃ終われないという気持ちがみんなにあった」とナインの声を代弁する。残る1試合、勝てば4勝4敗のタイに持ち込める。小笠原が全日本の流れを作り出し、最終戦へとなだれ込む。
[2004/11/12/23:28]
写真=サヨナラ打を放った日本ハム小笠原(2)を迎え、大喜びする全日本ナイン(共同)
<日米野球:全日本3−2全米>◇第7戦◇12日◇ナゴヤドーム
“ガッツ”という愛称通り、気持ちの入った打球が左翼線を抜けた。同点の9回裏2死二塁。切り札の代打・小笠原は「サヨナラの場面だから、打席に向かう時の声援に応えようと思いました」と、カウント2−3から大塚の143キロ外角直球をはじき返した。アテネ五輪1次リーグ台湾戦では「記憶の限りでは人生初」というサヨナラ犠飛。この日は人生初のサヨナラ安打。「こういう形で、こういう舞台で打てたのが最高にうれしい」と話した。
サヨナラ“直前”の1球が勝負の明暗を分けた。大塚が投じた5球目。外角直球がボールと判定された。「運も味方してくれました。見逃した球がすごい良いボールだったんで、固まってしまいました」。だが次の球をためらわずフルスイング。勝利を引き寄せた。これで全日本の3勝4敗。明日14日の第8戦で勝てば、5大会連続の負け越しは免れる。「あと1試合あるので、応援よろしくお願いします」。威勢のいい声がナゴヤドームに響いた。
[2004/11/13/08:45 紙面から]
<日米野球:全日本3−2全米>◇第7戦◇12日◇ナゴヤドーム
全米の先発石井が2回無失点で今シリーズ登板を終えた。本来なら先発ではなく中継ぎ予定だったが、「日本のファンのみなさまのために」(ボウチー監督)と急きょ繰り上がった。コルボーン投手コーチの助言で2回限定となったものの、許した安打は赤星の内野安打のみ。緩急自在の投球で3三振はすべて空振りで奪った。石井は日本の印象について、「野球自体は変わってないが、若い選手が伸びている」と新世代の台頭を感じていた。
[2004/11/13/07:54 紙面から]
<日米野球:全日本3−2全米>◇第7戦◇12日◇ナゴヤドーム
全米の大塚が昨年までの本拠地でまさかのセーブ失敗。負け投手に苦笑いだった。小笠原にカウント2−1から、外角低めに自信を持って投じた速球がボールの判定。マウンドでガックリと崩れ落ち、サヨナラ打を浴びた。捕手エストラダも「クロスコール(微妙な判定)」と嘆いた1球。それでも大塚は「お客さんも(自分が打たれて)複雑だったでしょう。(でも)日本人には打たれるから、アメリカに行って良かった」とジョークで悔しさを紛らわしていた。
[2004/11/13/07:59 紙面から]
<日米野球:全日本3−2全米>◇第7戦◇12日◇ナゴヤドーム
敗れた全米の中で、光ったのが3回から登板のマーキス(カージナルス)だった。8回途中まで3安打と、1失点はついたが完ぺきに近い内容で、持ち味の制球力でゴロの山を築いた。「思い通りの投球だった。ボールを低めに集められた」と満足そうに振り返った。
ワールドシリーズ第4戦で先発し3失点。レッドソックスの86年ぶりの世界一を演出してしまったが「チームも自分もいいシーズンを送れた。そのごほうびで日本にも来ることができたし、来年に向けて頑張ろうという気持ちでいっぱい」と、この日の納得のいく投球に笑顔を見せていた。
[2004/11/12/22:58]
<全日本・全米>お立ち台で王監督(左)から祝福を受ける小笠原 |
【全日本3−2全米】全日本が執念の逆転サヨナラ劇だ。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」(スポニチ後援)は12日、ナゴヤドームで第7戦を行い、全日本は1点を追う9回、全米の守護神・大塚を攻めて岩村の中越え二塁打で同点。2死二塁から代打・小笠原の左翼線へのサヨナラ打で劇的な勝利を飾った。日米野球で全日本のサヨナラ勝ちは88年の第1戦以来16年ぶり。全日本は3連勝で対戦成績を3勝4敗とし、14日の最終戦(東京ドーム)で負け越し阻止を狙う。
愛称の通りに“ガッツ”の一振りだった。2―2で迎えた9回2死二塁だ。代打・小笠原がフルカウントから全米の守護神・大塚が投じた143キロの外角ストレートを叩く。打球は左翼線を襲うサヨナラヒット。二塁走者の岩村が万歳をしながらホームを踏んだ。
「何とか食らいついていって、気持ちで結果を出しました。たった1打席で最後おいしいところを持っていって、みんなに感謝です」。満面の笑みを浮かべた小笠原。それもそのはず。アテネ五輪予選リーグの台湾戦でサヨナラ犠飛を放った小笠原も、サヨナラ安打となると意外にもプロ8年目で初体験。それも日本時代に16打数3安打、打率・188と苦手としていた大塚からの一撃。カウント2―1から手が出ずに見送った外角直球がボールと判定され、大塚がマウンドにグラブを叩きつけて悔しがる一幕もあっただけに「運も味方してくれた」の言葉に実感がこもった。
9日に福岡ドームで行われた第4戦。英語が苦手な小笠原も、意を決して試合前に全米ベンチを1人で訪れた。お目当ては同じ左打者としてあこがれのオルティス。「記念にどうしてもバット交換がしたかったので、必死にボディーランゲージを使ったよ」。小笠原のフルスイングが気に入っていたオルティスはその場で自らのバットに直筆で「To Ogasawara Best of Luck!」(幸運を祈る)とサイン。それから3日後、本当に小笠原に幸運が舞い降りた。
70年春のサンフランシスコ・ジャイアンツとの一戦でサヨナラアーチを放った王監督も「小笠原が期待通りの働きをしてくれた。何とかタイにしたいね」と笑った。これで全日本は4連敗後の3連勝で、あす14日の最終戦に10点差以上で勝てば、4勝4敗のタイながら総得点で上回り、勝利チーム賞金5000万円を手にする。小笠原の一打で可能性をつないだ“奇跡”へ、全日本は総力で挑む。
≪ヤクルトコンビ サヨナラお膳立て≫ヤクルトコンビが劇的なサヨナラ勝利を呼び込んだ。1点差の9回無死一塁。中堅フェンスを直撃する適時二塁打を放ったのは岩村だった。
一発が出れば逆転の場面。ヒーローになり損ねた岩村は苦笑いながら言った。「入ったと思った。完ぺきやったんですけどね。それまで3打席(凡退して)悔しかったので、とにかくヒットだけを狙っていた」。楽しみにしていた全米・大塚との対戦。普段から連絡を取り合っているという仲だけに「顔を見ると笑っちゃうから、球の出どころだけを見ていた」という。そんな岩村の“集中力”が勝った一打だった。
その岩村の同点打を呼んだのが古田だ。2点を追う8回2死一塁から代打で登場。スタンドは最高の盛り上がりを見せ、暴投で2死二塁となって中前に貴重な適時打を放った。試合の流れを変える一打に「あの大きな歓声がうれしかった」。王監督も「古田のヒットで“いける”という雰囲気になった」と絶賛だ。
6大会連続の負け越しとなる寸前でチームを救った2人。14日のラストゲームで4勝4敗のタイを誓っていた。
<全日本・全米>2回、オルティスをフォークで三飛に仕留める上原 |
【全日本3−2全米】これが上原流の、師匠クレメンスへの答えだった。今シリーズ2度目の先発で5回2安打無失点。三塁も踏ませない快投で、全日本のエースとしての誇りを示した。
「いろいろと勉強、吸収できればと思っていたけど、それ以上のものが得られた。満足いく大会でした」。生きる伝説との出会い。上原は何物にも替え難い貴重な財産を手にした。「初めてツーシームを投げました。どうせなら試合で試そうと。面白いボール。(公式戦でも)余裕のある試合で試してみたい」
メジャーで全盛の、直球のスピードで微妙に変化するボール。クレメンスの得意球でもあるツーシームを試した。「日本のボールだとどうかな」と笑ったが、将来を見据えた“新球”。加えて力の勝負にこだわった。4回には前回対戦でフォークを痛打されたオルティスに直球勝負。結果は四球だったが「最後は内角の直球で攻めようと思っていたのに…。悔しい」。MAXは144キロ。その切れはシーズン中を上回っていた。すべてが前日に帰国した師匠へのメッセージだった。
「僕なんか子供みたいなもの。野球に対する姿勢を学ばせてもらった」
クレメンスとは開幕前の対談に始まり、6、7日には合同トレ。腹筋400回のハードメニューも取り入れる中4日での調整法に、試合前日、当日の食事法まで伝授された。「野球に対して真剣。僕自身ももっと考えないと」。プロ6年間で85勝を挙げた上原は、自らを「子供」と表現するほど素直に脱帽した。
「来年?ジャイアンツで待ってます。生きた教材だし(引退しないことを)願ってますよ」。すべてが血となり、肉となった。来季、そして将来のメジャーへ。上原はこれからもロケットの大きな背中を追い続ける。
≪山口 オルティス斬り≫日本が誇る速球王・山口が、真っ向勝負でスタンドを沸かせた。8回2死三塁で打席にはオルティス。158キロの日本最速タイ記録保持者は、9球すべて直球で勝負を挑んだ。8球目が153キロ。最後はフルカウントから151キロで空振り三振に仕留めた。「お客さんには喜んでもらえたと思う。ブルーウェーブのユニホームで試合ができる機会は、これで終わりかもしれなかったので」と意地の投球を強調していた。
≪横山 雪辱1勝≫9回を3人で抑えた横山が、日本ハムの同僚・小笠原のサヨナラ打で勝利投手となった。「投げるチャンスがあれば、と思っていた」という前日の地元・札幌での試合は、松坂の好投もあって登板なし。6日の第2戦(東京ドーム)では3連打を食らい失点していただけに、雪辱のマウンドとなった。王監督も「横山や山口が頑張って、追加点を与えなかったのが大きかった」とご機嫌だった。
≪赤星 6個目盗塁≫赤星が初回に遊撃内野安打で出塁すると、次打者・井端の初球にすかさず二盗。今シリーズ6盗塁目を決めた。ただスピードスターも連日の過酷な移動には疲労困ぱい。前夜は札幌ススキノのネオンにも背を向け、ホテルでルームサービス。カレーライスと鍋焼きうどんを食べ終えると、風呂に入って就寝した。ナゴヤドームは愛知県出身の赤星にとってご当地とあって母・キミエさん(55)を招待。そのなかで快足を披露したものの、公言しているシリーズ8盗塁へ「この試合で7盗塁目を決めておきたかった。8回のセーフティーバント失敗が痛かった」と悔しそうだった。
<全日本−全米>9回、小笠原にサヨナラ打を浴び、肩を落としてベンチに戻る大塚 |
「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」(スポニチ後援)は12日、ナゴヤドームで第7戦が行われ、今シリーズの勝ち越しを狙った全米選抜は抑えの大塚(パドレス)が9回に打たれてサヨナラ負けを喫した。これで第5戦から3連敗。3試合で計4得点と貧打に苦しむ全米ベンチには、慣れない移動による疲労感が充満している。
【全米2−3全日本】全米のバットから快音が消えた。3連敗の要因は深刻な貧打だ。0―0の7回、2四球で無死満塁の好機をつかみ、エストラダと代打ジャイルズの連続犠飛で2点を挙げたが、これが唯一の得点シーンだった。1番のクロフォードは「仕方ない」と疲労困ぱいの表情で球場を後にした。
この3試合は計4得点。本塁打は1本もない。主砲オルティスは4番で出場したが、8回2死三塁では山口の151キロ速球の前に空振り三振。「あんまり興奮するとよくないぜ」と冗談ぽく笑ったが、いつもの迫力は感じられなかった。
理由の一つは慣れない当日移動。試合前、ボウチー監督は緊急ミーティングでゲキを飛ばした。得点を挙げた7回無死一、二塁ではウィルカーソンが犠打を試みる(ファウル)などなりふり構わぬ姿勢も見せたが、結果はサヨナラ負け。指揮官は「こういう移動はメジャーでもないが、条件は同じ。これで面白くなる」と言った。メジャーのプライドをかけてあす14日の最終戦に臨む。
≪大塚サバサバ≫ナゴヤドームでの“凱旋セーブ”が期待された大塚だが、まさかのサヨナラ負けで敗戦投手に。「あれが痛かった」と悔やんだのは昨季同僚だった先頭・井端への四球。多少の力みもあったのか、岩村、小笠原には甘い球を痛打された。それでも試合後はサバサバ。「お客さんも複雑な心境だったでしょう。まあ、僕は日本人には打たれるということですね」と笑っていた。
<全日本−全米>今シリーズ2度目の先発の石井は2回無失点と好投 |
【全米2−3全日本】2度目の登板ということで、前回(第3戦)より腕も振れていたので、実戦に近いような投球ができたと思います。カーブやカットファストボールも使えたし、初回の井端を投ゴロに打ち取ったチェンジアップもまずまずでした。本当は2番手で投げる予定でしたが、ボウチー監督に「ファンが楽しみにしているので先発で投げたらどうだ」と言われたんです。
<2回を投げて1安打無失点。ヤクルト時代の同僚・岩村には143キロの直球で追い込み、最後はスライダーで空振り三振。2回には嶋、今岡の首位打者経験者を連続空振り三振に斬った>
日米野球は2試合(計7回を1失点)に投げましたが、自分としては恥ずかしくない投球はできたと思います。古田さんとも対戦できたし、いい思い出になりました。あと1試合は本来ならベンチで楽しみたいところですが、勝ち越しがかかる大事な試合になってしまいました。メジャーの選手はとにかく負けることが大嫌いなので、僕も応援団として盛り上げるつもりです。
日米野球が終わってもゆっくり休んでいる暇はありません。来季は契約最終年なので、また1つレベルアップが必要だと思います。具体的には昨季は封印していたフォークボールをまた投げようかと考えています。メジャーで成功するにはオフが大事ですから。
(ドジャース投手・石井 一久)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
全米 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 |
全日本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2x | 3 |
[米]石井、マーキス、キング、●大塚─エストラーダ [日]上原、渡辺俊、三瀬、山口、○横山─阿部、古田 |
◆小笠原が大塚打ちV打 このまま終わるわけにはいかなかった。ハムの頼れる主砲も、第6戦までメジャーの揺れるボールに苦しみ、打率1割6分7厘に低迷。「次は打てるように頑張ります」淡々と話しながらも、悔しさは募っていた。 福岡で開幕4連敗を喫した9日に、大塚と夕食を共にした。「日本はこんな程度だと恥をかきたくない。絶対に打ちたいんです」とほえた。くしくもその話し相手の凱旋右腕から放った一打で、留飲は下げられた。 打たれた大塚にも悔いはない。「僕はアメリカに行ってよかった。日本にいたら(シーズン中にもっと)打たれてましたよ」と素直に小笠原をたたえた。 |
◆室伏始球式129キロ |
全日本−米選抜 9回裏無死一塁、岩村の中越え二塁打で、一走・井端が同点のホームイン=ナゴヤドームで(谷沢昇司撮影) |
「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は12日、ナゴヤドームで第7戦を行い、全日本が3−2で逆転サヨナラ勝ちし通算成績を3勝4敗とした。全日本は8回に古田の適時打で1−2とし、9回は大リーグ選抜の抑え大塚から岩村が同点二塁打を放ち、代打の小笠原が左翼線に決勝適時打を放った。大リーグ選抜は7回に連続犠飛で奪った2点にとどまった。最終戦は14日に東京ドームで行われ、井川とピービが先発予定。
竜の千両役者が、土壇場で魅せた。1点を追う9回、四球で出塁した先頭打者の井端弘和内野手(29)。続く岩村の中越え二塁打で、一挙に本塁突入。捕手のブロックを鮮やかなスライディングでかわし、同点のホームを陥れた。
「微妙なタイミングだったけど、三塁コーチが(腕を)回していたので思い切り行きました」。鬼気迫る激走に、観衆のボルテージは一気に最高潮に。逆転サヨナラ勝ちへ大きく弾みをつけた。
中日からは、ただ一人の出場となった日米野球。「ファンも楽しみにしていると思う。全開で行きます」。本拠地・ナゴヤドームでの第7戦を、気合十分で迎えていた。
9回の打席は「ずっと楽しみにしていました」という昨年のチームメート・大塚との初対決だった。しかし、大塚の制球が定まらず、カウントは1−3となった。
「振ろうかなと思った。でも塁に出なければ勝てませんから」。お祭りムードを押し込めたホスト役は、勝負に徹し四球を選んだ。
「正直、疲れました」。日本シリーズを第7戦まで戦い、その後も優勝パレードや東西対抗戦など一息つくヒマもなく日米野球に突入。「試合に出ながら休んでいるような状態」と疲労は限界寸前だった。
それでも、支えてくれるファンのため最後の力を振り絞り、全力プレーで応えた。今季のチームを象徴するような走塁で、スタンドを沸かせた井端。「ヒットじゃないあたりが、いいところでしょ」と、いたずらっぽく笑った。 (高橋隆太郎)
日米野球でのナゴヤドーム凱旋(がいせん)登板は、揺れる気持ちを反映していた。大塚晶則投手(32)がマウンドに上がった9回、先頭打者はくしくも昨年同僚だった井端。ストライクが入らず、四球を与えた。続く岩村には、あと1メートルで本塁打の中越え二塁打を打たれ、アッという間の同点。ここから2者を打ち取ったが、最後は小笠原の巧打に沈んだ。
「やっぱり、ナゴヤドームは投げづらいですね」。古巣の本拠地が、気持ちを微妙に変えた。「やっぱりアメリカに行ってよかった。日本人には打たれるんです」。ジョークを飛ばす声も、どこかうつろに響いた。
敗因は「先頭に四球を出すのが悪いクセ。投げ急ぎ? そんなことはない。米国でああいうリズムに変えていたから」と大塚。「井端だから意識した? いや、それはなかったです」 (廣田学)
始球式で見事な速球を披露したアテネ五輪金メダリストの室伏広治=ナゴヤドームで(稲垣尊夫撮影) |
アテネ五輪陸上男子ハンマー投げで金メダルを獲得した室伏広治(30)=ミズノ、中京大大学院=が12日、ナゴヤドームで行われた「イオン 日米野球第7戦」始球式を務め、プロ顔負けの剛球でドームをわかせた。
金色の「背番号1」をつけたユニホーム姿。英国のハードロックバンド、ブラック・サバスの「アイアン・マン(鉄人)」をテーマ曲にマウンドに登った。野球経験はほとんどないと言いながら、豪快なフォームから投じたボールは129キロを計測。スタンドからどよめきと大歓声が沸き起こった。
「メジャーと日本の選手の中でピッチングできて楽しかった」と笑顔。「次はもう少し速い球を投げたい」と次回の“登板”にも意欲を見せた。
全日本・王監督から金メダルを祝福され、「頑張って…」と激励を受けたという。現在はシーズンオフだが、既に来季に向けたトレーニングを開始。「(来年)8月の世界選手権に向けて頑張りたい」と抱負を語った。 (中村彰宏)
前日 前日(イーグルス情報&ペタ退団?清原問題&ドラフト自由枠決定&トライアウト続報 ほか) ・ |
同日 同日(イーグルス情報&清原問題&ドラフト情報 ほか) |
翌日 翌日(鷲は鮪で釣れ! ほか) |