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私が聴いてきたお気に入りの音源を、オリジナルジャケットを参考としたイラスト(著作権対策の苦肉の策)と共に紹介するコーナーです。
ハーモニカ関連のものに限らず、幅広く様々なジャンルの音源を紹介していくつもりです。ハーモニカという楽器を通じて音楽に携わってきた人間が、音楽的な幅を拡げていく過程が見えてくるかも…
第一回からハーモニカでもブルース物でもないですね。
レオン・ラッセル。40~50代前後くらいのウエストコースト・サザンロック好きの方々にとってはお馴染みの名前ですが、ここではハーモニカファン・ブルースファンを対象の中心とした文面で紹介していきます。 ジャンルとしては「スワンプロック」と言われる範疇にあたるのでしょうが、この方、そこいらの「俺はブルースマンだ」なんて言ってるオタクブルースピアニストなんか問題にならない位に黒っぽいピアノを弾きます。生きながらにして伝説の人となってしまった、ピアノ・ギター・その他なんでもこなすマルチプレイヤーであり、作詞作曲・アレンジ・バンドリーダー・プロデューサー・オーガナイザー・レーベル経営者。
フレディ・キングの1970年代の作品「テキサス・キャノンボール(Big Legged Woman収録)」「ゲッティング・レディ(Same Old Blues収録)」などのアルバムをプロデュースし、自己のレーベルであるシェルターから出したことでブルースファンには知られていますが、この頃のフレディのアルバムは「ロックっぽい」「ギターの音数が多い」という程度の理由であまり評判が良くないようです。
確かにフレディ自身のスタイルとしてはキング・フェデラル時代ほどの魅力はないかもしれません。シェルターのアルバムから感じられるのは、当時のロック・サウンドとブラック・プレイヤーによるブルースのテンション・爆発力の融合ということです。ハイテンションなステージングでは当時誰にも追随を許さなかったフレディの力がゴスペルチックなピアノとコーラスワーク、レイドルのタイトなボトムワークによって彩られ、名曲「セイム・オールド・ブルース」が生まれたのだと推測されます(作曲にもレオンがかなり関わっているように思われる)。
また、当時のブルースマン・ギタリストの中で16ビートのノリを持っていた数少ない人であり、ファンキーな曲調への対応がスムーズであることも、「ビッグ・レッグド・ウーマン」「ミー・アンド・マイ・ギター」「パレス・オブ・キング(もーこの曲大好き!)」その他の楽曲において証明されています。
1970年代初頭にはブラックミュージックの影響を受けたポップスのプレイヤー達が大きなムーブメントを起こしていました。ジョージア州にあったカプリコーン・レーベルからオールマン・ブラサース・バンドがデビューし、ボストンから出たJ・ガイルズ・バンドもアトランティックからアルバムデビューしています。そしてイギリスのシンガー、ジョー・コッカーのバックを固めた中には、このレオン・ラッセルを始め、彼自身がコーディネイトしたプレイヤー、カール・レイドル(フレディ・キングのシェルターでの作品でベースを弾いているのはこの人。)やジム・ケルトナー(のちにライ・クーダー等との活動も展開、売れっ子ドラマー)たちもいたのですが、この時のコッカーの活躍を見て、エリック・クラプトンはアメリカでの活動を展開するにあたって彼らを起用してバンドを結成したのでは、思われるフシがあります。実際、レイドルはデレク&ドミノス〜初期のクラプトン・バンドに到るまで参加し続けます。ブラック色が強い音楽を表現できるスタッフを側においていたい。でも、実際に黒人さん達を集めたバンドでツアーをすることが当時の音楽業界の常識としては認められなかったのでしょう。
そこでデラニー&ボニーとの活動あたりから知り始めた人材の活用を試みたのではないかと推測されます。
オクラホマ州タルサというアメリカ深南部のディープな地区(なんつってもローウェル・フルスンの生地!)に集まるミュージシャン−ジェシ・エド・デイビス(タジ・マハールの初期のブルース色の強いアルバム内で、存在感溢れるギタープレイを聞かせてくれるのはこの人)・J・J・ケール(まさにギター仙人。クラプトンの"コカイン","After Midnight"のオリジネイター)・ロジャー・ティリソン・カール・レイドルetc.−彼らはタルサ・コネクションとも呼べる音楽集団であり、その黒幕として、タルサ付近からLAに到るまでの音をまとめあげ、プロデュースしたのがラッセルの功績です。
ミュージシャン名を挙げたらきりがないのでこのあたりでアルバムの紹介にうつります。
このアルバム「RETROSPECTIVE」はレオン自身の1970~75年の活動をまとめたものですが、初期のアルバム「LEON RUSSEL」あたりのピアノ・プレイの凄さ、いかにもスワンプ・ロックという感じの「デルタ・レディ」から、泣きの名バラード「ソング・フォー・ユー」まで、音楽性の広さと録音技術のすばらしさがこの人の魅力です。ゴスペル色の強い、一音一音の粒の大きい、タッチの豊かなピアノプレイはアップテンポでもバラードでもその存在感を主張しています。「バラッド・フォー・マッドドッグ・アンド・イングリッシュマン」に至っては、もう、何も言えません聴いたら毎回涙腺が緩みます。
「マスカレード」のオリジナル・バージョンの怪しさには、も〜一本取られました。
「レディ・ブルー」ではメンフィス勢(ギターはスティーブ・クロッパー、ドラムにアル・ジャクソン、ベースはダック・ダン! )を起用して少し重量の軽めな世界観を表現しようとしている様子。
「ブルーバード」も軽快な好演。
架空のカントリーミュージシャン、ハンク・ウィルソンに扮しての「HANK WILSONユS BACK!」からの「ロール・イン・マイ・スウィート・ベイビーズ・アームス」ではカントリー・ハーモニカのお手本プレイヤー、チャーリー・マッコイが参加していますので、ハーモニカファンは必聴。
私は無謀にも「ソング・フォー・ユー」を一度歌ったことがあります。
現在ではもっと無謀にハーモニカでよくこの曲を演奏していますが、3rdポジションで歌メロは吹けますので、試してみてください。
アドリブとるなら4th(ナチュラル・マイナー)の方がやりやすいですね。
男臭い、絶対洒落なんかじゃ言えない気持ちが込められているこの曲、ハーモニカに合うとは思えなかったけど、一心にやったら何とかなってしまったという好例です。
色々なことを経験した上で挫折し、何をやったらいいんだろうと途方にくれて立ち止るとき、やっぱり自分の昔から染み付いた匂いは消えないんだな、とそれを否定するんではなく肯定させて、また前を向かせてくれる、そんな一枚。
レオンのそれぞれのアルバムも必聴ですよ。