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90年代にオルタナティヴのムーヴメントが起こった時には、多くのインディー・バンドがメジャーに搾取されるという状況があったと思いますが、その頃の状況からいろいろ学んでタフになっていた、というふうにも考えられると思いますか? Bob:その頃の影響というのは大きいと思うよ。だからこそ、今のインディペンデント・シーンのネットワークが強くなれたんだと思う。今では、メジャーからアプローチされるインディー・バンドは少し懐疑的な見方をするよね。結局、メジャーでもインディーでもバンド側が痛い目に遭わないように気を付けていればいいんだ。確かに、90年代のやり方は良くなかった。次のニルヴァーナやグリーン・デイを期待してメジャーがバンドを搾取したせいで、多くのバンドが解散に追い込まれてしまった。メジャーは数字の世界だから、セールスが上がらなければすぐに切られてしまう。それで、バンドはモチベーションをなくてしてしまうんだと思う。そういうことが実際に目の前で起こっているのを見て、今のバンドは教訓を得たと思うし、だからこそ、バンド同士の繋がりを強く保つようにして、バンドにとっていい環境を維持しているように感じるね。 NAHTにとって、アメリカで地道ながらも充実した活動ができているバンドから学ぶことはやはり多いですか? Seiki:地域ごとの細かい関係は、僕は遠くにいるからイマイチ伝わりにくいところがあるんだけど、単純に音楽のことを言うと、彼らの音楽はとても魅力的だし、自分が作曲する時に頭の片隅に彼らの曲が残っていたりするぐらい、刺激を受けている。それはヘイ・メルセデスに限ったことではないけどね。 アメリカでいわゆるチャートの世界とは別のところでキチッと活動できているバンドがいるということを知るだけでもバンド活動の励みになったりはしませんか? Seiki:本人の問題でしょうね。自分の心の中に表に出て行きたい気持ちがあるなら、どんどん表に出ていくべきだし、そんなに大げさに表に出て行かなくてもそこで満足感が得られるならそれはそれでいいと思う。でも、メジャーのシステムの中でやっていくことでプロパガンダなり、宣伝活動をして小さなものを大きく見せかけることはあまり好きじゃない。結局、メインストリームでもアンダーグラウンドでも、選ぶのはお客さんの方だからね。パンク・ロックに関して言えば、商売っ気を出し過ぎるのは好きじゃないけど。在り方としては共存していけばいいのかな、とも思う。 Damon:僕達はジミー・イート・ワールドとツアーに出かけたんだけど、彼らはメジャー・レーベルに所属しているんだよね。でも、問題なく一緒にツアーができる。もちろん、ライヴに来ていた人達はほとんどジミー・イート・ワールドのファンなんだけど、僕達の演奏もちゃんと聴いてくれて、反応してくれる。ライヴに来てくる人達にとってはメジャーだろうが、インディーだろうが、関係ないんだよね。音楽さえ気に入れば、それなりに楽しめる。Vagrantからリリースしてるバンドの中には、今すぐにでもメジャーに行けるバンドもいる。これまでインディー・バンドとしてインディー・シーンの中で活動してきたバンドで、メジャーに行っても姿勢が変わらなければ、引き続きインディー・シーンからのサポートを得られると思うんだ。 今、名前が挙がったVagrantレーベルの居心地はどうですか? Bob:凄くいいよ。どのバンドも分け隔てなくサポートしてくれる。今、Damonが話したように、Vagrantにはメジャー級の人気を誇るバンドも出てきているけど、まだまだこれからというバンドもいたり、今後も、新しいバンドをどんどん取り上げていくような感じになっている。その姿勢が好きなんだ。 Todd:どのバンドも平等に扱われている。例えば、Alkaline TrioやSaves The Dayがアメリカでは大ブレイクしているような感じなんだけど、僕達がおざなりにされているという印象はまったくないんだ。凄くフェアなレーベルだと思う。 Vagrantには勢いを感じますが、アメリカ全体の現在の音楽シーンというのはインディペンデントなスタンスのレーベルにとっていい環境にあると感じますか? それともまだまだキツイ、という感じでしょうか? Bob:インディペンデントなレーベルとバンドにとっていい環境になっているよ。大企業からの資金援助がないレーベルやバンドが成功するのを見るのは、本当に気持ちがいいね。例えば、Dashboard Confessionalは地道なツアー活動をしていて、最近ではシカゴでソールド・アウト・ショーを3回もやった。しかも、すべてインディペンデントな活動でなし得た成功だ。突然、ラジオでも曲がバンバンかかるようになったり、さらに高い注目を集めているけど、メジャーのサポートなしでそこまでできる、ということを証明しているようで、仲間が頑張っている姿を見て誇りに思うよ。 Todd:ある1つのことに大きな情熱を燃やして、がむしゃらになってやっている人の姿を見るのはとても気持ちいいことだ。結果的に成功を手に入れられたなら、さらに喜ばしいね。 Bob:Vagrantに所属してるバンドはどれも、自分達自身を信じてがむしゃらに頑張っているバンドばかりだ。自分達の手で目標を達成しようと思ってそれなりの結果を得られている。そうした気運の高まりは他のインディー・レーベル、例えばJade Treeなんかにも飛び火して、どんどんインディペンデント・シーンが活発になってきてる気がしてる。今後もさらに発展することを願っているよ。 Seiki:インターネットの普及が地方同士を結ぶいいツールになっていると思う。今までは想像や理想でしかなかったことが形となってきている。メジャーのサポートなしでも成功できるのは、最近では日本でも実現可能になってきているし、魅力的なことだと思う。 Bob:同感だね。 さて、今夜オンエアイーストで行われるREFINEも、まさにメジャーのサポートなしで実現した、意義深いイベントだと言えると思うのですが、イベントに出演するに当たっての意気込みを聞かせてください。 Damon:誘われただけでも光栄だったよ。僕達がこんな素晴らしいイベントに呼ばれる機会を恵まれるなんて、そう滅多にないからね。ラッキーだよ。こんないいチャンスを断るなんてバカのすることだ、と思ってね。とにかく嬉しいよ。昨年から今年にかけてはアメリカばかりツアーしていたから、アメリカから少し離れて、新しい人達と出会える機会を与えてくれたことについては本当に感謝してる。 Bob:さっき、Seikiが言ったように、インターネットのおかげで今回の来日が実現したようなものだよ。もともとEメールを通じてこの話を受けたわけだし、そうしたツールを利用してネットワークを広げていけるなら、とことん利用したいと思うね。 Seiki:僕らは出演者として全力で勝負するつもりでやるよ。 こういう場が増えることで、刺激なり、得るものがありますか? 気持ちをかき立てられるというか。 Seiki:ライヴの性質や会場の大きさ、共演者にかかわらず、僕らのライヴに対する意気込みは同じ。いつも、今日のハイライトは俺達が勝ち取ってやる、という気持ちでやってるんだ。でも、せっかく遠く、アメリカからやってきてくれているので、日本のいい印象を持って帰ってもらいたい。今日も機材のサポートを僕らにやらせてもらうんだけど、演奏以外のことに気を使わなくて済むように協力したいと思ってる。
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