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ちなみに、ハードディスク・レコーディング自体には、いつ頃から興味を持ち始めたんですか?

Judah:『Elysium』の制作に入る前年から独学で勉強してたんだ。ハードディスクを使った初レコーディングはインスト曲で、それは限定盤に入ってるよ。やってみたらわりと簡単だったし、色んなプロダクションの可能性が見えてきた気がして、それ以来ハードディスクを使うことにしたんだ。去年、初めてのジャパン・ツアーから帰国した直後に『Elysium』のレコーディングを始めたんだけど……確か11月頃だったかな。それから4ヵ月を経て完成したんだ。

デジタル機材を使った表現の可能性については、どう考えていますか?

Judah:これからも使っていくことになるだろうね。デジタル機材のおかげで表現の幅が広がったと思うよ。アナログ派の人達は、アナログ録音の方がナチュラルな音に仕上がるって言うだろうし、もちろんそれにはそれなりの理由があるけど、最終的に皆が聴くのは16ビットに変換されたCDなわけで。つまりアナログ派の意見って「レコード」を対象にしてると思うんだ(笑)。デジタル機材は素晴らしい可能性を秘めてるんじゃないかな。「レコーディング」そのものに対する見識を変えたと思う。以前はスタジオをレンタルしないと無理だったことが、今じゃ誰もが家でレコーディングできる時代になったんだからね。僕達にとってもすごくいいタイミングだったと思うよ。デジタル・レコーディングの技術がなかったらああいうアルバムは作れなかっただろうし、まだ使い始めたばかりだからこれからどんどん活用する可能性は十分にあるね。

ちなみに、『Elysium』はもともとEPにする予定だったので、すぐそれに続けて「ギターをよりフィーチャーしたセカンド・アルバムを作る」という噂もありましたが、それに関しては現在どうなっているのでしょう?

Judah:うん、当初はEPにするつもりで、その後にセカンド・アルバムを作る予定だったんだ。でもレコーディングを実際に始めてみたらEPのプロジェクトが予定よりも大きく膨らんだんで、そのままアルバムにしようってことになってね。で、次回作はどんなアルバムにするか未定だけど、よりギターを取り入れたサウンドになるのは間違いないよ。ファーストとセカンドの中間点に位置するような、もしくはこれまでとは全く違う作品になるんじゃないかな。まだ何も決まってないけどさ(笑)。

ライヴを観て改めて感じたのは、ギターの曲とキーボードの曲、両方があることによって全体にメリハリがつけられていることで、それはヴェルヴェット・ティーンの大きな武器になっていると思うのですが、その二面性を今後どのように折衷させたり、あるいは使い分けていこうと考えていますか?

Judah:そうだな、これからも様々なタイプの曲を作ってバンドの強みにしていきたいと思ってる。アルバム毎に自分達に何ができるか気付かされることが多かったんだ。だから全く新しい楽器に挑戦してまた一味違った曲を生み出すことなんかもあるんじゃないかな。この後のアルバムでは僕がジョシュと一緒にベースを弾くことだって有り得るだろうしね。曲や楽器のスタイルとかに音作りを制限されたくないんだ。だから今は一番やりやすい方法を模索してるところかもしれない。何よりも自分達が興味を持ち続けられるってのが重要だからね。

わかりました。あと参考までに、このアルバムで木管やホーンのアレンジをしたアダムという人物について教えてもらえますか?

Judah:アダム・シース(Adam Thies)っていう奴で、ジョシュの幼馴染みなんだ。3人でバンドを組んでたこともあるよ。ものすごく努力熱心なミュージシャンで、これまで数々のバンドでプレイしてきたんだ。それにアレンジ経験も豊富なんだよ。今度のアルバムで曲のアレンジをやりたいって話してきたのはアダムで、もう願ってもない話だったんで頼むことにしたんだ。彼は僕達が知る中でも最高級のミュージシャンの1人で素晴らしいトロンボーン奏者でもある。今は複数のバンドに所属していて、CannonballとかThe Shotgun Wedding Quintet、それにRealisticとか……色んなことをやってるよ。

それから『Elysium』のアートワークについても訊かせて下さい。このジャケットは一見したところ普通の写真のように見えますが、実はよく見ると歌詞や人物の姿がうっすらと印刷されているデザインになっていますよね。このアイディアはどんな風にして出てきたものなのでしょう? また、アルバムの内容との関連性についても教えて下さい。

Judah:僕達自身のアイディアだけど、レイアウトをまとめたのはジョシュで、写真を撮ってくれたのは彼の奥さん。アルバムのテーマのひとつが「秘密」だったから、歌詞や人物の影を透明にすることで、その雰囲気を出そうと思ったんだ。

アルバム・リリース時のインタビューで「この作品の制作過程で、あなたの失恋経験が反映された」という話を読んだのですが、そのこととは関連がありますか?

Judah:ああ、レコーディングの直前に当時の恋人と別れたんだ。だから歌詞も秘密や隠し事をテーマにしてる曲が多いし、アートワークもそこに繋がってるね。アルバムを作る上で大切なのは、イメージやコンセプトに一貫性を持たせることじゃないかな。そのテーマだけに固執するのは制限を加えることになってあまりよくないけど、ある程度の一貫性を持たせればアルバムとして統一感のある作品に仕上がると思う。

『Elysium』を出して以降ずっとツアーをしてきて、こうして再来日も果たしたわけですが、次回作についてはどんな感じになりそうでしょうか?

Judah:具体的なアイディアはまだないけど、ケイシーと一緒に曲作りするのをすごく楽しみにしているよ。アルバムを追う毎に新しい方向性を見出していきたいと思ってるから、次はダンスっぽいものとか、もう少しラウドな曲調になったりするかもしれない。これまでの2枚のアルバムからもある程度は想像がつくと思うけど、ラウドでアグレッシヴな曲もあれば静かでソフトな曲もあり、って具合に両者のコントラストをキープしていきたいね。まあ、始めてみないとどうなるかわからないけど。

ちなみに、ライヴ後のカラオケ大会で、ケイシーがすごく歌える人間だっていうことが分かったのですが、ジョシュも歌は上手いし、今後はいっそうヴォーカル・ハーモニーを前に出したアレンジメントなんかも考えられるのではないでしょうか?

Judah:そうだね、2人とも才能あるし、実際に歌ってるし。次のアルバムには全員ヴォーカルの曲も入るかもね。

楽しみにしています。さてここで、もし差し支えなければ、今回のアメリカ大統領選の結果についての感想を聞かせてもらえますか?

Judah:正直に言ってかなり失望してる……。でも、この選挙には良かった点もあって、それは、より多くの人々の注目を集めたことだね。大勢の若い連中も投票に行ったし。ただ、国民の意見が真っぷたつに分かれてしまったから、これから国をひとつにまとめていくのは大きな課題になるだろうな。まあ、大統領を務められるのは最高2期までだし……(苦笑)。結果には本当にがっかりしてるけど、もう決まってしまったことだから……。僕個人の意見はアメリカ世論の大多数からはかけ離れてるみたいだけどね。大統領選の結果はほぼ5分5分だったけど、上院や下院の投票では共和党が優勢で、大統領をはじめとする共和党が政治を牛耳るのは目に見えてる。つまり、アメリカが抱えている主要な問題、例えば医療保険制度や中絶といった問題の解決はなかなか難しいものになってくると思うよ。将来について多少の不安はある。民主主義って、力のバランスを保って初めて成立するものだろ? あんなに偏った関係は民主主義には有り得ないわけでさ。幸いなことに上院・下院には民主党の政治家が力を発揮できるぐらいまだ十分に残ってるし、今でこそ偏ってはいるけど、将来的に上手くバランスがとれればいいと願っているよ。

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