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by telephone, 2002.6
text by Yoshiyuki Suzuki


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ぐるぐる渦巻きが目印の、高校卒業したてティーンエイジャー4人組=ザ・ミュージック。ご存知のように日本ではすでに人気が爆発し、あまりに急激なその過熱ぶりへの反動からか否定的な見解もチラホラ囁かれるようになったりもしているが、それでも彼らが現在のイギリスの新人バンドの中で頭ひとつ抜けてユニークな個性を持っていることは間違いない。外野の騒音に翻弄されず、どんどん渦巻きグルーヴの勢いと幅を拡大していってほしいと思う。ここではデビュー・アルバムを完成させた直後にギタリストのアダムと交わした会話を掲載する。

「他の人達からどう思われようが気にしない。いちいち他人の意見を聞いてたら、それこそつまらない音楽しかできなくなってしまうと思うよ」

いよいよデビュー・フル・アルバムがリリースされますが、日本でも大きな反響で迎えられることになると思います。

Adam:そう言ってもらえて嬉しいよ、ありがとう。

自分達としては、アルバムを完成させた今どんな気持ちがしていますか?

Adam:ここ3年間くらいこのアルバムを完成させるために、かなりの時間を費やしてきただけに、今作は自分たちにとって最も重要な意味がある作品だと思っているよ。出来にはとても満足している。制作中、不安を感じた時もあったけど、最終的にはうまくいったと思う。

不安に感じたというのは、またどうして?

Adam:アルバム制作に時間がかかっていたし、曲が書けない時もあったからなんだ。

レコーディング自体は、サリー州の郊外にある大邸宅内に作られたスタジオで全体的に楽しい雰囲気の中で進められたそうですね。

Adam:昼間に起きて、午後は庭でサッカーしたりとか、ダラダラすごして夜に仕事するっていうやり方だったんだけど、夜も仕事をするはずが結局パーティーをしてしまうこともあったね。楽しかったよ。

アルバムの随所にエレクトロニック・ミュージック的なサウンド・トリートメントが聴けますが、これはプロデューサーのジム・アビスの手腕によるところが大きいのでしょうか?

Adam:そうだね。もちろん全曲を僕らが書いてアレンジしたのだけど、その後にジムがインプットをしてくれて、よりいい曲にしてくれたんだ。

彼との共同作業がバンドにもたらしてくれた最大のものと言ったら何になるのでしょう?

Adam:今話していたプログラミングの要素かな。それと曲のアレンジにも手をかしてくれた。でも何よりも、僕らが音楽に集中できるような環境・雰囲気を作ってくれたことだね。

“ゲッタウェイ”の冒頭部などにはドラム・マシーンも効果的に使われていますね。こういう要素は、ドラマーであるフィルのダンス・ミュージックに対する深い理解があればこそのアレンジだと思いますが、打ち込みと生演奏の組み合わせについては、どのくらいの配分でやっているのでしょうか?

Adam:どの曲もドラム、ベース、ギター、ヴォーカルで構成されているけれど、さっき話にも出たように、エレクトロニックな要素も入っている。たしかに“ゲッタウェイ”の冒頭部にはドラム・マシーンが使われているけれど、それだけに頼らずに生のドラムスもプレイしているんだ。打ち込みよりも生楽器の方を多く使っているよ。

あなた達が、単なるダンス・ミュージックではなく、あくまでバンドのスタイルを持ったロック・ミュージックにこだわる理由はなんなのでしょう?

Adam:それはやっぱり僕らが聴いてきた音楽がロック・ミュージックだったからかな。確かにダンス・ミュージックも聴いてきたけどね。それに僕らは全員それぞれ違うタイプの音楽が好きだから、作曲の時みんなの好みが少しずつ反映されて、それが僕らなりのバンドの音になっているんだって思うよ。

なるほど。では、デビュー曲“テイク・ザ・ロング・ロード・アンド・ウォーク・イット”をアルバムに収録するにあたって、新しいヴァージョンを作ったのは何故ですか?

Adam:オリジナル・ヴァージョンは、僕らにとってほとんど初めてレコーディングした曲といってもいいほどのもので、本当にデモ用にレコーディングしたものだったんだ。リーズの小さなスタジオで録音して出来に満足したんで、限定盤として7インチでリリースしたんだよ。ただ、デモとしての出来には満足していたけれど、あくまでもデモだから、アルバム用にはもっときちんとレコーディングをしたかった。オリジナルのヴァージョンを気に入ってくれている人達もいるようだけどね。まぁ、今ではデモ・ヴァージョンと、再レコーディングしたヴァージョンのどちらも聴いてもらえるようになった、というわけだね。

ちなみに、この曲の最後の方にはスライド・ギターが入ってきますが、どのようにして生まれたアイディアなのでしょう?

Adam:オリジナルのデモ・ヴァージョンをフィル・ギャックソンと一緒にレコーディングしていていた時に、彼がもう少しギターの音を入れようというので僕がスライド・ギターを入れることにしたんだ。

あと、日本公演でも披露されていた“ディスコ”という曲ですが、タイトルに反して出だしはブルージーな感じになっているのが面白いと思いました。以前のEPにはレゲエ風のリズムの曲もあったりしましたが、いずれも単純にブルースやレゲエをそのままやっているわけではないですよね。やはりルーツ・ミュージックを取り入れる時には、自分達流に変換してやろうと強く意識しているのでしょうか?

Adam:そうだね、さっきも言ったように僕らは曲作りをする時はメンバー全員の、それぞれの要素をインプットしているから。僕とフィルはレゲエが大好きなんだ。で、スチュアートはヘヴィーなロック・ミュージックが好きだね。

ザ・ミュージックでは、具体的にはどのように作曲作業が行なわれているのでしょう?

Adam:リーズにある小さなスタジオに集まって、とにかく音のボリュームを目いっぱい上げて(笑)全員でジャムをするんだ。たいていの場合は僕が家でリフを考えて、そのアイディアをスタジオに持っていきみんなに聴いてもらう。それから他のメンバーもそのアイディアに肉付けをしていくような形で曲作りが進んでいくんだ。だから僕らはバンドらしいサウンドを出せてるんだって思うよ。そういう点では、ヴァーヴはリチャード・アシュクロフトが一人で曲作りをしてたから、バンドというよりも、まるで「リチャード・アシュクロフト&セッション・ミュージシャン」でアルバムを作ってたような感じだったんじゃないかと思うんだ。僕らはそうありたくはないから、できるだけバンドとして曲作りをするように心掛けているよ。

なるほど。ところで、ここしばらくのイギリスの若手バンドは、「演奏が下手だと言われないようにしなきゃ」とか、「出来の良いアレンジだって褒められたいな」とか、「政治的な意見に関しては優等生でいよう」みたいな考え方の連中ばかりだったような気もします。あなた達は、そういう風潮に絡めとられず、破天荒にやっている印象があって頼もしいのですが、自分達にそれができたのは何故だと思いますか?

Adam:僕らは他の人達からどう思われようが気にしないんだ。プレスやメディアが僕らのことについて何を言っていようが聞いちゃいない。僕らはリーズにある自分達の部屋で自分の好きな音楽をやっているだけなんだよ。周りから影響されることなく、自分達がやりたい音楽を作っている。他人の意見を聞いて気にしていたら、それこそつまらない音楽しかできなくなってしまうと思うよ。

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