Easy Blog








← Prev | 1 | 2 | Next →

さて、あなた方の出身地であるシアトルという地名を聞くと、グランジ・ブームが思い出されるような世代なんですが、あなた達の場合は、それを現地でどんなふうに体験し、もしくはどれくらい関っていたのでしょうか?

Steve:僕はシアトルに7年前から住んでるんで、その場にはいなかったからわからないな。

Brian:僕もその頃のことはあまりよく知らないんだけど、その頃シアトルにすごく厳しい法律が出来て、21歳未満はほとんどのライヴハウスに入れないっていう状態になってね。よっぽどニルヴァーナみたいな巨大なバンドでない限り、キッズが普通にライヴを観ることができなかったんだ。だから僕達にとってグランジは、自分とは全く関係のない、巨大なロック・マーケットでしかなかったね。僕達がバンドを観に行くとしたら誰かの家の地下室だったり、シアトル郊外まで出かけて行ってたから。とはいえ、今になってあの頃有名だったバンドのレコードを聴くと、なかなかカッコいいと思うことは多いよ。ほとんどのシアトルの住民達もあの当時のことを誇りに思っているしね。

Steve:今でもよく町で、あの頃のバンドのメンバーとかを見かけるよ。サウンドガーデンのギタリストとか、この前すれ違ったし。クリス・ノヴォセリックも普通に町を歩いているのを見かけるし、それくらいシアトルは小さな町なんだ。

なるほど、そもそも2人がバンドを始めようと思った音楽の原体験は、グランジではなくて何だったのでしょうか?

Steve:僕は小さな頃から、いわゆる歯ブラシをマイク代わりに歌うような子供だったんだけど、真剣にバンドを始めたいと思ったきっかけはマイナー・スレットみたいなパンク・バンドを聴いた時で、初めて地元のパンク・シーンと呼ばれるところでパンクのライヴを見たとき、ものすごく自分の身近にあるというか、強烈な説得力を感じたんだよ。それこそテレビに出てるアクセル・ローズとかそういう巨大なスターに憧れるのとは違って、自分でも何かできるんじゃないかと思わせてくれたパンク・シーンを知って、そこから真剣にバンドを始めようと思ったんだ。15歳の頃だね。

Brian:僕は誰かが作ってくれたデッド・ケネディーズのテープを聞いたのがきっかけだね。僕もスティーヴと同じように、15歳くらいの頃の話だけど、クラスメイトはポーラ・アブドゥルだとかボビー・ブラウンに夢中になってて、でも僕は全く好きになれなくってね。その頃にデッド・ケネディーズを聞いたら、もっと危ない感じというか、「これはちょっと他のやつらが聴いてる音楽とは違うぞ」って思えて、実際にはポーラ・アブドゥルにも1枚だけ好きなシングルがあったんだけど(苦笑)、デッド・ケネディーズはどのアルバムもクールで、怖そうで、その頃からバンドっていうのは「こうあるべきだ」と思うようになって、自分でも始めるきっかけになったんだ。

Steve:ま、正直、僕はアクセル・ローズになりたいと思っているけどね(笑)。

(笑)。スティーヴはシアトルに移る前には、ミネアポリスに住んでいたんですよね?

Steve:いや、僕はミネアポリスから1時間半くらい離れているアイオアに住んでいたんだ。ただ、アイオアよりもミネアポリスの方がバンド・シーンが盛んだったから、よくライヴを見に行ってたんだよ。当初はミネアポリスに住む予定だったんだけど、加入したバンドがシアトルに移ることになったから、結局ミネアポリスに住んだことはないんだよね。

では、ミネアポリスに通っていた頃はハスカー・ドゥやリプレイスメンツなどを観る機会はありましたか?

Steve:いや、ないね。デリンジャー4とか……とにかくミネアポリスはとてもパンクな町だから、そこらじゅうで酔っ払ったり、地べたで寝ているパンクスがいたりして……僕みたいにね(笑)。そういうバンドしか見てないよ。

わかりました。では、今のバンド名の由来を教えてくれますか?

Steve:ライアンが考えてきたんだよね?

Brian:そう。ある日スタジオで僕とライアンとあと何人かで集まっていた時に、ライアンが「全く意味をなさない、すごくくだらない、だけど1度聞いたら忘れられないようなバンド名を考えたんだけど」って言って持ってきたのがThese Arms Are Snakesなんだ。

Steve:例えば、友達の両親だとか、両親の友達とかに「オマエのやってるバンドはなんていうんだ?」って聞かれたときに「あー、These Arms Are Snakesって言うんだけど」って答えると必ず笑われるんだよね(笑)。

(笑)。あなた方は、JADE TREEというレーベルからリリースしているわけですが、彼らとの関係はどうですか?

Steve:とても良いよ。いちおう契約という形をとっているけど、すごくパンクなレーベルで、非常に付き合いやすいし、何よりあそこがリリースしているバンドはどれも好きなバンドばかりだから、自分達もその一員だと思うととても光栄だね。オプションとして2枚アルバムを出すことになったんだけど、その話を聞いた時もとても嬉しかったな。

Brian:僕達としては、バンドを商品としてしか見てないレーベルなんかよりも、ちゃんとパンクなベーシックを持って、アーティストを気にかけてくれるレーベルであることが大事なんだ。と同時に、自分達の作品が世の中にしっかり流通されていて欲しいとも思うから、そういう点でもJADE TREEはバランスがしっかりしているね。これまでJADE TREEは、ペドロ・ザ・ライオンとかジェッツ・トゥ・ブラジルみたいに売れたバンドを輩出してきたけど、レーベル自体はそのスタイルの音楽に固執せずに、自分達が好きだと思える音楽だけ出すという姿勢を貫いている。その事実にも共感を覚えるね。

わかりました。さて、最新アルバム『イースター』は当初プロデューサーに元マイナス・ザ・ベアのマット・ヴェイルズを迎えるはずが、スケジュールが合わずに、セルフ・プロデュースになったと聞いています。自分達自身でレコーディングしてみてどうでしたか?

Steve:そう、マットにプロデュースを頼みたかったんだけど、あまりレコーディング予算が無くて、ドラムのクリスがエンジニアリングやスタジオ・ワークに精通していたから、プロデューサーに予算をかけるより自分達でやってしまった方がレコーディング日数を長くとれるし、クリスに任せることにしたんだよ。結局、時間を多くとれた分、レコーディングの過程で色んなことに挑戦することができて、自分達が持てる力を全てぶつけられたと思ってるよ。

Brian:マットは僕達の友人で、仕事も非常にやりやすい相手ではあるんだけど、スタジオに入って何か試してみたい時に、なかなか上手くいかなくて時間がかかってしまうと、その間も彼のギャランティーは発生しているわけで、本当はそういう試行錯誤も大事な時間なのに、それだけで莫大な金がかかってしまうのが現実なんだ。僕らが自分達だけでやれば、他人の目から見てくだらない実験も心おきなく試すことができるんで、今回は自分達でやろうと決断したんだよ。まあ、さすがに6週間も自分達の作品に集中していると、「結局これはカッコいいのか?」って自分では判断できなくなってしまうから、次回のレコーディングではもしかしたらそういう部分で必要になるプロデューサーを頼むかも知れないけどね。

なるほど。ともあれ、エンジニアもできるとは、いいドラマーを手に入れましたね。

Steve:まちがいないね(笑)! 彼はいい仕事をするよ。

Brian:実際、僕とスティーヴとライアンだけだと「やろう!」と決めてからもなかなか前に進まないタイプなんで、よくクリスに怠け者って怒られるんだけど(苦笑)、彼がいるおかげで物事が順調に進んでいくから、本当にこのバンドにとって不可欠な男だね。

そうしたレコーディング事情にも関連すると思うのですが、セカンド・アルバムは前作に比べて技術的に「いじった」感じより、もっと生々しい感触に仕上がっていると思います。そのことも踏まえて、レコーディングで作り上げるものと、ライヴでやってることの区別はどのようにつけていますか?

Steve:間違いなく、レコーディングとライヴは別物だね。レコーディングされた音源っていうのは、あくまで曲を紹介するっていうだけのもので、一度レコーディングが終わったら切り離して考えるんだ。今回のアルバムはライヴで出してるサウンドとそれほどかけ離れた作品ではないと思うし、バンドの多面性も上手く捉えられたと思ってるけど、とはいえライヴでの僕達とは別物であることは間違いないね。

Brian:そうだね。こういうフォーマットである以上、僕達の場合ライヴとレコーディングが別ものになってしまうのは必然だと思う。間違いなくレコーディングした音の再現をライヴでやることは不可能だし、ライヴのサウンドをレコーディングで再現することも不可能だ。レコーディングされた音はそのまま残るけれど、それから僕達はたくさんライヴをこなしていって、その間には曲自体も変化し続けていくわけだから、同じでありえるはずがないよね。

わかりました。ちなみに、スティーヴはライヴ中ほとんどオーディエンスのいるフロアで歌っていますが、どうしてああいうふうにするようになったのでしょう?

Steve:初めてハードコア・バンドを組んだ頃は、いつもライヴ中に仲間がマイクを奪ったり、誰かの上に乗っかっていたりしてた。だから、そういうスタイルが自分の中に染み付いているんだろうね。その方が僕も楽しいし。ま、よくわからないけど、いったんステージに上がるともう一人の自分が現れてしまうのかも知れないね(笑)。

では最後に、バンドとして今後の活動ヴィジョンを聞かせてください。

Steve:間違いなく、クリエイティヴな音楽を作り続けることだね。あと、自分達で会場限定の音源やレコードを作ったら楽しそうだねって考えているところで、それはぜひ実現させたいと思っているよ。

Brian:僕は、もっともっとアルバムを作っていきたい。最新作と同じように、さらに音楽的な深化を押し進めて、様々なことにチャレンジしたアルバムを作りながら、常にクリエイティヴでいたいと思う。

Steve:そうだね。もっと新しい曲を作りたいね。ロック・バンドをやる醍醐味は、曲を書いて、レコーディングして、1年間ツアーに出る。これだ全てさ。ライヴも楽しいし、全てが楽しいけど、でも僕は新しい曲を作っている時がいちばん興奮するんだよね。

← Prev | 1 | 2 | Next →

Special Issue | Interviews | Articles | Disc Reviews
Core BBS | Easy Blog | Links

© 2007 HARDLISTENING. all rights reserved.