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ちなみに、あなたたちはこれまでずっとCDだけじゃなくてアナログ盤をリリースしたり、他のバンドとスプリット盤を作ったり、コンピレーションに参加したり、メジャーと契約している時期でも常にインディーズから何かしらリリースしてましたよね。これはやはりあなたたちにとって重要なことなんでしょうか? John:そうだね。俺たちにとっては7インチというのはバンドの軽いアイディアを捉えるのにもってこいのフォーマットだからね。アルバムの場合はどうしても作るのに時間と金がかかってしまうし、マーケティングからアートワークまで、考えなくちゃいけないことが山ほどあるよね。だけど、7インチの場合は、例えばシンパシー・フォー・ザ・レコード・インダストリーから出した時なんか、曲を渡した3週間後には完成した現物を手にしていたっていう。まるで新聞を作るみたいな早さなんだ。まさに自分たちがその瞬間にやっていることを確実に捉えてるメディアなんだよ。だから、そういう形で音源をリリースすることは俺たちにとって大切なんだ。 じゃあ、これからもそういう形でのリリースに期待しています。 John:う〜ん、正直な話、俺だけじゃなくて、他のメンバーも様々なプロジェクトに取り組んでいるんだけど、どうしてもそっちに時間を取られてしまうんだよね。だから、みんなで集まる時間が前より減ってしまったんだ。もちろん、今後も出していくつもりだけど、以前ほど量産はしないだろうな。あそこまでRFTCが市場に溢れることはないと思う。 そうですか……では次に、アートワークについて質問します。あなたたちの作品には今までサソリやトラやゴリラなんかがジャケットに登場しているし、あとPVにも犬や猫が出てきますけども、それには何か理由があるのでしょうか? John:単純に動物が好きなんだ。音楽のインスピレーションにもなるし。すごく美しいし、それぞれ何かの象徴だったりするよね。しかも、とにかく野性的だし。同時に、気の毒だと思うところもあるんだ。というのも、結局は人間様にその運命を握られてるからね、動物って。自分たちの声っていうものを持ってないわけだからさ。ある意味、俺たちが動物の声を担っていると思ってるところもあったりして(笑)。 アートワーク上の動物が象徴しているコンセプトとかメッセージとは具体的にはどんなものなのでしょう? John:いや、ただ本当に好きなだけなんだよ。まあ、サソリとかコブラは毒を持ってるし、こわもてキャラだよね。絵的にもすごくクールだしさ。あとトラに関しては、さっき話した何でも過剰だった時代に撮影したものなんだ。トラを借りられるほどの予算があったから、思い切ってやってみたっていう感じなんだよ。だって楽しいじゃん、そういうのって。何でもやれる気になってて、「じゃあ、トラを呼べ!」って感じだったんだ(笑)。そう言えば、あのトラを貸してくれた人に、「もしよければクマも連れてくるよ」って言われたんだけど、さすがにクマは遠慮しといたよ(笑)。 (笑)。さて、現時点での最新アルバム『ライヴ・フロム・キャンプ・X−レイ』ですが、このアルバムからはあなたの怒りのエネルギーが感じ取れます。 John:怒りっていうか……ここ何年間かRFTCに一貫してあるテーマは“孤独感”だと思うんだ。自分たちの居場所がないような気分っていうか。世間はRFTCを必要としているのか?っていう疑問がよく浮かぶようになってね。その答はわからないんだけど、少なくてもメンバーそれぞれにとってこのバンドは絶対に必要なんだ。だけど、だからって俺たちはどこに属したらいいかわからなくってさ。だから、そんなところに企画された今回のRFTCのトリビュート盤は、俺にとって、そして他のメンバーにとって、まさに救いだったんだよ。というのも、色んなバンドが、あらゆる形でRFTCの曲をカヴァーしてくれてるんだから。「なるほど、こういうことなのか。確かにどこにも属してないかもしれないけど、こういう形で色んなシーンで活躍してるバンドを繋ぐことはできるんだな」って開眼させてくれたんだよ、このコンピは。「みんな根底にある精神性には気が付いてくれてるんだ」って安心したっていうかさ。すごく気持ちが良かったよ。 なるほどー。それでは、今回のトリビュート・イヴェントについての感想を教えて下さい。 John:もう最高にクールだったね。とにかく、あの場所にいて、みんなからRFTCに対する愛情を色々と聞かされてさ。お世辞っていうのは場合によっては受け入れがたいもんだけど、ああいう場所で、RFTCが作る音楽がいかに自分たちの人生を影響したかっていう話を大勢の人達から聞くと、本当に名誉だと心から思うよね。その場でも「ありがとう」とお礼をしたけど、本当に昨夜のイヴェントは俺にとって特別 なものだったし、一生涯忘れることのない感動を味わえたんだ。そのことについてみんなにも知ってほしいな。単純にライヴをやったり、他のバンドのライヴを観るだけでも楽しかっただろうけど、それ以上にあの場に流れた空気、っていうか感情は……自分たちが何か“いいこと”をしたんだなぁって、初めて実感できたものだったよ。 あなた自身も参加して行なわれた最後のスペシャル・セッションですけど、2時間半しか練習していないのにあれだけ強力な演奏ができたのは、参加したメンバー全員がRFTCに深い愛情を持っていたからこそだと思うのですが、あなた自身もステージ上で歌いながら、その愛を全身で感じていたのではないでしょうか? John:うんうん、もちろん。もう俺に対する最高の好意を示してもらったと思うし、あんな素敵なプレゼントは生まれて初めてだよ。実は今回、イヴェントに参加する直前までは、バンドとして来れなかったのをちょっと気にしていたんだ。RFTCの曲を俺一人だけが他の人達とやるっていうことについてもね……というのもRFTCは俺一人のバンドじゃないからさ。だけど、そんなに真剣に考え込まずに“これはパーティなんだから思う存分に楽しもう”と気持ちを一新させて挑むことにしたんだ。で、いったんステージに上がってみんなと演奏した瞬間“これをやって良かった!”と心の底から思えたよ。 なるほど、最初はちょっと抵抗があったんですね。 John:うん。ただ宣伝のためにやりたくないことをやっている、と思われたくなくてね。そうすると今まで自分達がやってきたことを冒涜してるようなことになっちゃうんじゃないかって……とにかく今までRFTCが築き上げてきた伝統を汚してるように思われたくなかったんだ。他のメンバーなしでちゃんとしたライヴをやるなんて考えられないし、っていうか、そもそもタブーだよ、そんなことは。でも、今度のイヴェントはそうじゃなかったんだ。あれはみんなからの贈り物だったんだよ。現場にいた俺一人だけじゃなくて、たまたま別 のプロジェクトでツアーがあったから参加できなかった他のメンバーに対するプレゼントでもあったわけさ。このイヴェントが決まって呼ばれた時、最初は他のメンバーに「やっぱり断わろうと思うんだ」って話したんだよ。そしたら、全員から「いや、おまえは絶対に行くべきだ」って強く勧められて、それで来ることにしたんだ。 本当に来て良かったと思いますよ。会場に来たオーディエンスもみんな楽しんでたし、イヴェントそのものも大成功でしたしね。 John:そうだよね。あれ以上、最高になりようがなかったもんな。完璧だったよ。 ステージ上から何回も“Celebration of Life”(人生の祝福)と繰り返していましたが、あれはまさにあなたの人生哲学じゃないかと感じたのですが。 John:あの言葉は、とにかく何をも超越してるっていうか、“ロックンロールするぜ!”とか言うよりマシだろ(笑)。俺たちはまさに人生を祝福するためにステージに上がってるわけだから。バンドにしてもファンにしても、音楽のスタイルや形式にこだわり過ぎるところがあるよね。些細な違いとかばっかり気にしてさ。だけど一歩下がってみると、その違いって大したことないんだよね。人間同士の違いなんて大したことなくて、実は共通 点の方がむしろ多いくらいなんだ。音楽だってそうさ。RFTCと、例えば最低なちんかすメタルをやってるバンドにしたって、その違いは微々たるものなんだよ。結局はギターと歌を使ってロックンロールの分身を演奏してるだけなわけだからね。だから、そういう微妙な違いを気にしなくなると、全体像が見えてきて、音楽の形式なんか超越したもっと高い場所を目指せるようになるんだ。そして“人生の祝福”っていう言葉こそ、なんていうか全てを整理してくれるような気がしない? だって、まさにその通りで、俺たちは「生きていて幸せだ」って思ってるし、今ここにこうしていられることについてだって、本当に嬉しいと感じているからさ。 なるほど。あなた方はメジャー・デビューする以前から来日も果たしていますし、それ以降、日本のバンドとも厚い交流を持っているわけですけれども、この日本という国との相性の良さって、どういうところから来ていると思いますか? John:子供の頃から日本には惹かれていたんだ。おそらく、和食が好きになったっていうのが大きかったんじゃないかな(笑)。それで日本の映画とかを観るようになって、あと『仮面ライダー』とか70年代の日本の特撮番組とかが好きでさ。特にどういうところが好きかっていうのは特定して説明したりはできないんだけど、なんか魅力的なんだよ、日本って。それから日本に来て嬉しいのは、こっちの方が他の国よりもRFTCというバンドに対する理解が深いような気がすることだね。日本でライヴをやるたびにそれは感じるし、そうやって言語の壁を超えてひとつのことを分かち合えると本当に特別 な繋がりだって思えるよ。RFTCは、人と人との繋がり、ライヴでのコミュニケーションというものを昔から尊重しているバンドなんだ。ライヴに来てくれる人々も俺達と同じぐらい、その場を盛り上げるために必要なんだってことを会場全体に判ってもらえるようなライヴをやってるつもりだから、それが言葉を超えて実現してしまえる日本でライヴをやるのは本当に好きだし、こんなに恵まれた環境でライヴをやれるってこと自体も本当に幸福なことだと思う。だから、もっと頻繁に日本に来れたらいいなって、いつも思っているよ。 それは、我々にとっても光栄に思います。ちなみに、日本の特撮ヒーローにハマったきっかけって、どんなことだったんですか? John:子供の頃、親によくロサンゼルスの中華街にあるおもちゃ屋さんに連れて行ってもらったんだけど、そこで日本のおもちゃを結構売ってたんだよね。マジンガーZの人形とかテレビ・ゲームとか、あと仮面ライダーのシールとかを買ってもらってたんだ。その当時は『仮面ライダー』という番組どころか、キャラクターの名前すら知らなかったけどね。でも、とにかくクールなキャラクターだと思って、そのシールを集めていたんだよ。 わかりました。では最後に、今後の予定について聞かせてください。世界制覇の野望は未だにあるんでしょうか? John:いや、世界制覇はもう気にしてないよ。昔はそういう意気込みは確かにあったんだけど、歳を取るにつれ、どうしても家から離れるのが辛くなってきてね。言い訳とかはしたくないんだけど、俺たちはやれることはやり尽くしたと思うんだ。世界中を満遍なくツアーしたし、精一杯やってきたんだよ。だから今はそういう形で勝負するんじゃなくて、その経験を音楽の中で活かしていきたいと思っているんだ。 音楽的に深みを増していこうっていう方向にシフトしていく感じですか? John:必ずしもそういうわけじゃなくて、とにかく音楽を作ることに集中したいって感じなんだ。ツアーするのは楽しいけど、やっぱりツアー中に音楽を作るのは大変なんだよね。私生活が一旦停止しちゃうし。まあ、でも確かにツアーっていうのは、面白い人と出会う機会でもあるし、他のバンドと仲良くなれるし、自分の音楽が好きな人たちと直接触れることもできるし、楽しいんだけどさ。なにしろRFTCはライヴ・バンドだし。俺たちの作品を気に入ってくれてる人たちも大勢いるけど、RFTCと聴いて、まずみんな思うのはライヴのことだろうからね。 RFTCとして次にバンド全員で日本に来れるのはいつ頃になりそうでしょう? John:もちろん俺たちもすごく日本でライヴをやりたいんだけど、現実的には次のアルバムを作ってからの話になるね。新作を完成させて、ノリにノッてる時に来るのがベストだと思うしさ。それにしても、今回は本当に他のメンバーと一緒に来たかったな。別 にRFTCとして演奏しなかったとしても、このイヴェントの空間を体感して欲しかったね。でも、これからアメリカに帰ったら、俺が日本で受け取った感動をちゃんと全員に伝えて、ちょっとでも理解してもらうつもりだよ。
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