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そういうことが今後あなた達の表現活動に影響を与えていったりする可能性はないでしょうか? Josh:それは絶対にありえないね。実際、あの事件が僕らの個人生活に及ぼした影響はそれほどないし、ニュースをテレビで見ただけだしさ。テロの前日、偶然僕はテロ機が飛び立った空港から飛行機に乗ってたり、後日グラウンド・ゼロでビルの谷間にぽっかり穴が空いているのを目にもしたけど……でも、それが僕らの音楽に何らかの影響を与えるとは思わないな。カントリー・ミュージックはそういう音楽を作る傾向にあるけど、僕らは違う。 Paul:それってただの資本主義的な戦略なんじゃない? Josh:ああ、ただレコードを買わせるための戦略さ。何にでもアメリカ国旗をつければ売れるっていう企業の戦略だよ。 Paul:正直なところ、そういうのは実に病的だと思うし、腹立たしいね。悲劇を逆手に取ったビジネスなんだ。 わかりました。ところで話は変わりますが、先頃あなた達の所属しているDeSotoレーベルが活動を停止してしまいましたよね。そのことなども含め、現在のアメリカン・インディー・ロック・シーンの状況について、どういう風に見ているか教えてください。 Josh:今は小さなレーベルの時代だと思う。DeSotoは閉鎖しちゃったけど、すでに僕らにも多くのレーベルからオファーが来てるし。小さなレーベルにとってはチャンスの時期だと思う。反対に窮地に立たされているのは大きなレーベルだよ。大きなレーベルほど人員削除をしてるようだしね。DeSotoの場合は、キムに赤ちゃんが出来たっていう個人的な理由で辞めたっていう感じでしょ? Paul:うん、レーベル自体は今までになく順調だったんだから。去年も最高の作品を次々にリリースしてたしね。ただ、彼女自身の人生を次のチャプターへと移行するためにレーベルを閉鎖したってこと。これからだって、バックカタログのリリースは続けいくわけだし。その一方で、大きなレーベルほど同じような音を鳴らす連中ばかり抱えて、個性を出すのに苦労している。まぁ、これからも大きなレーベルの苦難の時代は続くだろうね。 Josh:そうそう、こんな話を聞いたよ。もしエミネムの次回作がコケたら、考えられないくらいの数の人達が解雇されるだろうって。エミネムのたった1作のアルバムは、他の何百ものバンドの運命を左右するくらいの価値があるんだ。信じられる? まさにクレイジーの一言だね。 やっぱり、インタースコープもゲフィンも全部ユニヴァーサルに吸収されて、しかもその上にはシーグラムがいるっていうような状況は、今のロック・シーンをおかしくしていると思いますか? Josh:まさにその通り。 Paul:全くね。 Josh:今メジャー・レーベルは実質、3つか4つくらいしかない。とにかくおかしな状況なんだ。例えば僕らの友達でもあるロケット・フロム・ザ・クリプトは、元々はインタースコープにいたんだけど、契約を切られてベイグラントに移籍した。ところがつい最近、ベイグラントがインタースコープに買収され、それによってロケット・フロム・ザ・クリプトは元いたインタースコープに逆戻り、ってことになっちゃったのさ。それに対して、彼らは物凄く腹を立てている。何でもかんでも吸収したり吸収されたり、とにかく状況はメチャクチャだよ。 やはり、そういう状況からは距離を置いておきたいと考えていますか? Josh:うん、でも僕らに大金をはたいてくれるのなら別だけどね。アハハハハ。 Paul:より多くの人の手に渡るレコードを作っていきたいっていう気持ちはあるよ。メジャー・レーベルにはそうした力があるんだろうし、その意味では僕らの望みに叶った場所だとも言えるけど、だからといって完全にメジャーを信じることはできない。メジャーに在籍してる友達もたくさんいるけど、彼らはリリースさえしてもらえない状況にいたりする。以前は、メジャー・レーベルでも10万枚くらいの売り上げがあれば良しとされてた時代もあったけど、もうそういう状況ではないらしいんだ。ミリオンを売らないと即、首切りさ。リリース後の1週間で5万枚〜10万枚を売り上げないと、それは失敗だと見なされてしまうんだよ。 Josh:そういうのに巻き込まれたくはないね。 逆にインディー・レーベルの方は、ビジネスのノウハウを身につけたり、さらにはレーベルやバンド間のネットワークが広がっていったりとかして、良い状況になってきてると思うんですが、自分達の周囲が活気づいてきているという実感はあったりしますか? Josh:うん、それは感じてるよ。特にファンベースがすごいね。メジャー・レーベルについてるファンに比べて、インディーを支持するファンは本当に熱心だから。ラジオで曲を知るような人は、その1曲だけしか知らなかったりするけど、僕らのファンはアルバム全部を聴いてくれている。そういう中から、このバンドの曲が好きならあっちのバンドも気に入るだろうっていう感じに、シーンとしての輪が広がっていくんだけど、メジャーではそうはいかない。あまりにも多種多様のバンドが存在するし、シングル一発勝負的な場所だからさ。それはシーンとは言えないよ。むしろマス・マーケットだ。僕らがバーニング・エアラインズやジュノーと同じレーベルにいるのはすごく自然なことだろ? お互いの間に何かしらの共通点が見えるからね。こっちのバンドは好きだけど、あっちは嫌いとかいう風にはならないはずさ。まぁ、これは趣味の問題もあるけど。 自分達が何か特定のシーンに所属しているという意識はありますか? Josh:う〜ん……それ以前に、僕らはどのジャンルにも属していないようなバンドだからなぁ。DeSotoに所属していたけど、DeSoto自体、どのジャンルにも属さない特異なバンドを集めたレーベルだったし。僕らはインディー・シーンのバンドとしてはロックすぎるし、エモ・シーンに入るにはエモすぎないような気がするよ。でも最近出てきたバンドの中には、それなりに親近感を持てるヤツらもいるけどね。こういう言い方は嫌だけど、なんていうか、僕らって……モダン・プログレ的とでもいうのかな? 例えばキング・クリムゾンにしてもそうだけど、他とは違うことをやってるバンドこそ壁をぶち破ることが出来ると信じてるんだ。 Paul:とはいえ、何よりも第一に考えてることは曲なんだけどね。 Josh:うん、それは基本だから。 じゃあ、そろそろ時間なので最後の質問です。今日これからライヴがあるわけですが、こうして日本ツアーが実現したことについての気持ちを聞かせてください。 Josh:ギターを始めた頃から日本でプレイしたいと願っていたんだ。いつも日本でプレイすることを夢見ていたよ。これこそ最もクールなことだと思ってた。だから今は最高にエキサイトしてる。 Paul:僕ら全員ずっと来たいと思っていたんだよ。で、実際にここに来て今はさらに興奮してる。日本のバンドを見れることについてもすごく感動しているしね。この土地で何が起きているのか今まで知らなかったのが恥ずかしいくらいだよ。こんなにいいバンドがいっぱいいるなんて夢にも思わなかったからさ(笑)。
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