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さて、シャイナーでは現在、どのように曲を作っているのか、創作のプロセスを教えてください。 Josh:これといったルールはないんだ。でも、だいたい最初はアレンがベーシックな構想を練ってくる。それをスタジオに持ち込んでバンドの中で検討していくうちに、最初の形とは全然違うものになっていったりすることもある。他のメンバーがアレンジを手掛けたりもするし。でもほとんどの場合、アレンがラフなアイデアを持ってくるのが最初に取っ掛かりになるね。よくあるパターンだよ。 最新アルバム『THE EGG』では特に、ただのパンク・ロックやギター・ロックとは違う、複雑な構成の曲が聴けますが、こういうアレンジはどのようにして仕上げられていくのでしょう? Josh:レディオヘッドの『OK コンピューター』を聴いて、ありがちなロック的手法以外にも出来ることはいっぱいあるって事に気がついてね。 Paul:ただ、最終的には非常に複雑な形になったけど、作り始めた当初は、すごく簡潔で分かりやすいアルバムになるって人に豪語してたし、実際、レコーディングも今までで一番スムーズだったんだよ。曲もあっという間に出来たしね。 Josh:うん、最初からどの位の時間がかかって、どんな形で仕上げるかっていう予定がきっちりと見えてる感じだった。 Paul:デモもあっという間に出来たしね。 Josh:だけど、プロデューサーのJ(・ロビンズ)は簡単な曲しか聴いてなかったから……。 Paul:ハハハ、そうそう。 Josh:Jにはデモの形で最初に6曲ほど送ったんだけど、“サージェリー”とか“プレイデッド”みたいな比較的シンプルな曲ばかり送ったんで、それを聴いたJは「うん、これなら簡単に出来る」って思ってたらしくて。でも、その後にスタジオで実際に彼と会ってから、「じゃあ、これが残りの曲」って他のを出したら、彼、困っちゃってさ(笑)。 Paul:アルバムの後半になるにつれ、だんだんダークで複雑になっていったからね。 最新作での、J・ロビンズとのコラボレーションはどうでしたか? Paul:すごく良かったよ。楽しかったしね。Jとはもう長いつきあいになる友達なんだ。シャイナーはジョウボックス(※バーニング・エアラインズ以前にJがやっていたバンド)と対バンした事もあるし。ジョウボックスのメンバーはみんな、以前から僕らにすごくよくしてくれてね(※シャイナーの所属レーベルDeSotoは、元ジョウボックスのキム・コレッタが運営)。僕が加入する前にも、Jはシャイナーのデモをすごく気に入って、これをレコードにして世に出したいって言ってたらしいんだ。そして僕がバンドに加入してからも、ジョウボックスと12週間に及ぶツアーをやったりして、Jとはかなり仲良くなっていったね。彼は長い間シャイナーを好きでいてくれて、バンドの重要なサポーターなんだ。今回のアルバム制作にあたって彼に協力を依頼したのは、信頼できる第三者からの意見を何よりも必要と感じたからさ。僕らの暴走を食い止めるためにね(笑)。 Josh:ハハハ、僕らだけだったらもっとずっとダークな作品になってたと思う。 Paul:うん、だろうなぁ。そんな感じでJは最高の助けになってくれたよ。彼はヴォーカルにフォーカスを絞ってくれたね。 その「自分達だけだともっとダークな作品になってしまう」という理由は何なのでしょう? Josh:僕は個人的にすごくダークな音楽が好きなんだ。ジョイ・ディヴィジョンやキュアー、バウハウスなんかが好きだし。そういう音は、僕が個人的に楽しむためのものだけど。それから、僕が加入する以前のシャイナーの曲って、どういうわけだか全体的に哀しみが立ち込めていたような気がする。僕のワイフも「これを聴いてるとすごく落ち込むわ」って言ってたよ(笑)。なんでだろう? どの曲もだいたい混乱や不確実性や不幸を歌っていたからかもしれない。ほとんどの曲がそういう題材を扱ってるし。でも歌詞がどうであれ、哀しみに溢れていたような気もするなあ(笑)。君はどう思う?。 Paul:同感だね。ただ、今作でJが僕らのソングライティングに影響を及ぼしたとは思ってないんだ。彼は…… Josh:僕らを前進させる勇気をくれた。 Paul:うん。もし彼が引き受けてくれなかったら僕がプロデュースをしただろうけど(※ひとつ前の作品ではポールがプロデューサーも務めている)、バンドのメンバーでありながらプロデューサーを兼任するのは本当に難しいんだ。ミュージシャンとしての自分に全てをフォーカス出来なくなるし、メンバーとの仲も危うくなっちゃうんじゃないの?(笑) そこにJがいてくれたから、僕らはバンドに集中できて、先に進むことが出来たんだと思う。 Josh:うん、前進できたんだ。 シャイナーの音楽に表れている、暗いとか哀しいっていう感情はどういう種類のものなのか、それはあくまでアレン個人の問題なのかとか、そこら辺のことはどう考えていますか? Paul:アレンの曲は、ほとんどがパーソナルなものだと思う。だけど、これといって明確なテーマがあるわけじゃない。歌詞についても、そこで語られるストーリーを通じて、何か別のものを発散しているというか。歌詞を聴く人がどういう風にでも解釈できるようになっているね。 Josh:言葉を使って何もかも語ろうとしてるわけじゃないんだ。社会的なことや、例えば「世界は絶望的」みたいなことは言ってないよ。どちらかといえば人間関係のことについての曲が多いね。もちろん「君を愛してる」とかいう類の薄っぺらいものではないけど。 彼が、普段から暗い人だっていうわけではないんですね? Paul:そんなことないよ。それはありえない。一緒にいればわかるけど、どっちかといえば…… Josh:アホっぽいというか、陽気というか。 Paul:マヌケなヤツさ。ただ僕らはみんな音楽に対して本当に真剣だから、どんどんマジになっていって、そこが暗さみたいなのに通じるのかもしれないけどね。 ちなみに、現在のアメリカを覆っている空気というのは、外の国から見ているだけでも何となく良い雰囲気じゃないのかなぁっていう気がするんですが―― Josh:実はテロ事件の1カ月後、ニューヨークに行ったんだ。ニューヨークの人々は、音楽を渇望してたよ。バンドを見ることで自分自身を取り戻そうとしてるような感じだった。 Paul:全国でも、特にニューヨークはそうだったね。 Josh:テロ以前よりも、みんな親切だったし。……最初は誰もが感傷的になってたけれど、次第に政府の思惑に気付いていったっていう感じ。政府は国民が団結するように仕向けてたんだ。どこに行ってもアメリカ国旗がなびいていただろう? それを見るたび、だんだんとその状況が無気味に思えてきたよ。背筋が寒くなる感じがしたね。それは僕だけじゃないはずさ、そう思った人は多いと思う。毎日CNNニュースを見ながら「さて、次は何が起きるんだ?」なんて恐怖感に襲われてさ。「時期はわからない、場所もわからない、だけど第2の惨事はきっと来る」みたいに煽られて……誰もが恐怖心を抱えていたよ。 Paul:人としての権利さえ奪われたって感じだった。パーソナルなレベルでもそうだったし、国としても同様だった。 Josh:ああ。ジョージ・ブッシュの支持率が上がるたびに政府に対する不信感がつのっていったね。
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