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ここ日本から見ると、今になっていきなりニューヨークからポスト・パンク/ニューウェイヴ的な方法論を使ったバンドが急にたくさん出てきたような印象を受けます。すごく面白い現象だなとも思うんですが、実際にポスト・パンクが再評価されるような動きが最近のニューヨーク・シーンにはあったんでしょうか?

Anthony:そうだね。いろいろスタイルの違う音楽を取り込んで、退屈でシリアスすぎる音楽をどこかに追いやってしまいたいって感じてた人がたくさんいたんだよ。音楽にフィジカルな要素を取り戻したいって。へヴィすぎず、もっとダンスや純粋なエネルギーっていう意味でさ。いろいろドライになった感じがしたから、みんな、もっと温かみが感じられるものが欲しくなったんだ。肉体的なものをね。

もう1つ日本から見てて思うのは、ニューヨークの音楽シーンって、ここ15年くらい、メジャーもアンダーグラウンドもあまり元気がなかったような印象だったんですよ。それがここ1〜2年のうちにいろんなバンドが出てきて、すごく勢いを盛り返したように見えるのですが、実際ニューヨーク音楽シーンの中にいる人間としてはどう感じていますか?

Anthony:すごくいいことだと思ってる。実際エネルギーに溢れてるし、動機もしっかりしてて、音楽にも真剣に取り組んでるバンドがあちこちにいるし。有名になりたいってことじゃなくて、ただ自分が好きな音楽を鳴らしたいっていう思いだけで活動してる連中がね。今はそういう動きが街中に広がってるけど、どのバンドもしっかりした考えを持って、真面目に音楽に取り組んでて、それが今の状況のいいところだと思うんだ。

9.11のように精神的、物理的なダメージを受けた土地には、その傷を癒すように新しい音楽やカルチャーが生まれてくるという捉え方はロマンチックすぎますかね?

Anthony:いや、その少し前からこういう動きは生まれてたから、特に9.11に対する反応や結果というわけではないと思うよ。こうやって世界中から注目されるようになるのは最近になってからだけど、ニューヨークの中ではその前から勢いを持ちつつあったんだ。けっこう前から続いてる動きなんだよ。

なるほど。さて、昨日〜今日と、こうして大きなイヴェントに参加する形でライヴを行ったわけですが、感想を聞かせてください。

Anthony:最高だよ。ここ日本ではアルバムもまだ出てないし、誰も僕達の音楽を知らないはずなのに、みんな楽しんでくれたみたいだし、温かく受けとめてもらえた。ほんと、すごく嬉しいね。

ポスト・パンク的な方法論が、今日でもちゃんと通用するという確信はバンドを始めたときからあったんでしょうか?

Anthony:いいや、全然。他人がどう思うかなんて、全く想像もつかなかった。ただ、自分達が好きな音楽を鳴らしたかったっていうだけでさ。それ以外のものは全て後から付いてきたようなものだったんだ。正直言って、自分達以外の人が気に入るとは思ってなかったな。

でも、やってみたら、すぐにいい反応が返ってきたと?

Anthony:いや、さすがにすぐってわけにはいかなかったね。でも、ゆっくり少しずつだけど、確実に受け入れられていったよ。

ちなみに、あなた達自身としては、今回のような巨大なステージよりも、もうちょっとこぢんまりとしたクラブの方がプレイしやすいんでしょうね?

Anthony:そうだね。今回は少し戸惑ったな(笑)。妙にスペースが空いちゃってさ。下手すると、あのステージくらいの大きさしかないクラブでやっててもおかしくないわけだから(笑)。あれだけ大きなステージで演奏するのは確かに面白かったけど、個人的にはもっと観客との繋がりが実感できるところの方が落ち着くね。

パンク・ロックと、政治性・社会的なメッセージ性とは切っても切れない関係にありますが、あなた達の場合はどうですか?

Anthony:僕達の書く歌詞はかなり政治的だし、社会的だと思う。さっきまで音楽面のことばかり話してたから、そう感じられなかったかもしれないけど、僕らは自分達の目で見たニューヨークを描いてるつもりなんだ。どんなことが起きていて、それがどう影響を与えているか、とかね。確かに最初は自分達が好きなサウンドを作り出すところから始まったんだけど、いざ歌詞を書く段階になったら、社会的、政治的なものを書くようになったんだよ。ニューヨークで日々経験すること、それがどう自分達に影響を与えてるか。あるいは、それがどんな風に他の都市に派生していくか。そういうことが、僕達にとってはすごく大事なテーマなんだ。

では、パンクとダンス・ミュージックはあなたの中でどう繋がっているのでしょう?

Anthony:そうだな……ギターはかなりパンク色が強いけど、リズムはもっとダンス・ミュージックやファンクに近いと思う。ベーシストとしては、パンクよりもダンス・ミュージックやファンクからインスピレーションを受けることの方が多いからね。……でも、しょせん音楽は音楽で、違いなんてないと思うんだ。こうやって話をするとき、不便じゃないように、パンクやダンスって分けてるんだと思うよ。

一方で、ダンス・ミュージックには現実逃避の音楽という一面もあると思うのですが――

Anthony:そう。そうなんだよね。僕達がダンス・ミュージックで嫌な部分もそこなんだよ。だからこそ、自分達の歌詞はもっと意味のあるものにしようとしているんだ。ダンス・ミュージックの歌詞って……というか、歌詞そのものが無い時もあるけど……ほんと意味がないんだよね。ダンス・ミュージックの歌詞って、聴いててもほんとに何も伝わってこないことが多いし。♪遊びに行こうぜ〜、パーティしようぜ〜みたいな感じでさ。それじゃだめだと思う。要するにレディオ4では、自分達の好きなものから好きな部分を取り出して、それをお互いに組み合わせているってわけ。

現実逃避のみの音楽にならないようにするために注意していることなどはありますか?

Anthony:特に歌詞を書く時は、現実味を持たせるようにしてる。音楽だけじゃなくて、映画でもそうなんだけど、どこか別の世界に連れていってくれるようなものはあんまり好きじゃない。観ていて共感が持てる、そういう現実味があるものの方が好きなんだ。個人的にも、後で何かが残るような音楽が好きなんだよね。ただ単に楽しもうとかじゃなくて……確かにそういう音楽にも需要があるけど、少なくとも僕らは違うんだ。

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