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これまで30年の長きにわたってバンドを続けてこれた理由がわかりました。では、あらためてこの先どんな風に活動していきたいかという今後の展望を聞かせてください。 John:基本的な姿勢として「金をもらえる限りは続ける」というのがあるんだ(笑)。例えば、今回の来日にしても、こちらから積極的にその機会をうかがっていたわけではないんだよ。新しいブッキング・エージェントを通じて日本のコントラリードから接触があったので、こうして来ることになったわけだけどさ。そもそも新しいエージェントにはトムがコンタクトを取ったんだけど……アニー(※今のブッキング・エージェント)とはどうやって知り合ったんだっけ? Tom:彼女はアリス・ドーナッツと仕事をしたことがあったらしくて、その伝手だよ。北米のブッキング・エージェントを変えることになったんで、いい人を捜したら、アリス・ドーナッツのギタリストのマイケルがサンフランシスコに住んでいるアニーを紹介してくれて、メールで連絡を取ったんだよ。そしたら、大げさじゃなく、送信して10分くらいで返事が来て。「本当に変な話なんですけど、ちょうどあなたにメールを出そう思っていたところだったんです。これでやっとあなたのメールアドレスがわかりました」って(笑)。「アメリカでブッキング・エージェントを探しているならぜひ」っていうことで、とんとん拍子に決まったんだ。彼女は人柄もいいし、仕事もできる。うまくいっているよ。で、そこにコントラリードから来日の話が来たわけ。 John:こういうことがあるからこそ、続けていこうという気持ちになるんだ。今でも僕たちには音楽がみなぎっているし、演奏していても非常に楽しい。ツアーも、もちろんストレスがたまることもあるけれど、時々オフを取って、燃え尽きてしまわないように気をつけている。それから、別名義でやってるハンソン・ブラザーズも、いい気分転換になるしね。去年は主にハンソン・ブラザーズの方で活動していた。半年は完全にオフにして、その後、ハンソン・ブラザーズのライヴ盤を出したんだよ。『It’s A Living』(※生活のためにやってるんだ)っていうタイトルなんだ(笑)。それで、ハンソン・ブラザーズ名義で秋に何度かライヴをやって……だから、今夜のショウはノーミーンズノーとしては2007年12月17日以来になるね。14〜15ヵ月ぶりだよ。 本当に楽しみにしています。では、最後の質問なのですが、あなた方は世界中のオルタナ・バンドに大きな影響を与えていると思います。そういうバンドを耳にする機会も時々あると思うんですが、その中で、これは面白いなと思ったものは何ですか? John:いやぁ、それはなかなか、一口には言いがたいね(笑)。 Tom:僕たちのレコードの売れ行きから判断するに、そんなにたくさんのバンドに影響を与えているとは思えないんだけど(笑)。 John:でも、ツアーなんかで一緒になった若い……というか、僕たちより年下のバンドに、昔から聴いてました、すごく影響を受けているんです、みたいなことを言われることはある。インタビューで名前を出してもらえたりもするけど、本当に素晴らしいことだと思うよ。僕たちにしても若い頃に聴いた音楽から影響を受けたんだし、その影響は今でも続いているわけだから。そうやって、音楽ってそれまでのものを養分にしながら進むものなんだよ。もし僕たちの音楽を聴いて、楽しかったから自分たちでも音楽を始めてみようと思う人がいたなら、それは僕たちの音楽から生じた、すばらしい副産物と言えるだろうな。 では単純に、最近お気に入りのアーティストやレコードも教えてください。 John:お気に入りのアーティスト、か。うーん。トムはどう? Tom:今はクラシックをよく聴くね。最近だと……ショスタコーヴィッチが気に入ってる。いくら聴いても飽きないんだ。ショスタコーヴィッチと、デューク・エリントンは、20世紀の作曲家の中でも、僕にとっては最高の2人だな。 John:個人的に、70年代当時、AC/DCはどうしても好きになれなかったんだ。なんか聴いていられなくてね。それはレッド・ツェッペリンも同じだったんだけど。なのに今になって、AC/DCって結構いいじゃないかって思ってる自分に気がついたよ(笑)。このところ息子がカーステでAC/DCばかりかかけまくって、この何ヵ月かAC/DCしかかけないくらいの勢いなんだ。最近の「音楽に関する新発見」というと、まずはそれだね。いや、本当に、悪くないんだ。聴くと血が騒ぐ(笑)。 Tom:AC/DCの何がいいって、あれだけビッグなロック・バンドなのに、衣装を何度も着替えたりとか、ギターを替えたりとか、そういうギミックがほとんどないところだよね。ステージに上がって、スイッチを入れたら、あとはもうまっしぐら、っていう。ほんと、そういうところはただ演奏が楽しくてしょうがない、そのへんのバーでライヴやっているバンドと何も変わらない。とにかくステージで盛り上がることに命をかけていて、あとはバックステージに女の子が何人か来てくれたらいいかな、みたいな(笑)。 John:あとは浴びるほど酒を飲んでね。いや、彼らの最新作はいいよ。もう35年とかやっているのに。 Tom:最新作のアナログ盤を持ってるけど、最高に音がいいしね。 John:実はあれ、バンクーバーでレコーディングしたんだよね。ブライアン・アダムスがやってるスタジオで、僕も行ったことがあるんだけど。 Tom:バンクーバーのなかなか興味深い地区にあるんだ。 John:確かに。ロウワー・イーストサイドで、ドラッグ中毒の人やホームレスがうろうろしているようなところだよ。アメリカとカナダ合わせても、一番エイズの感染率が高いんだ。そんなお上品とは言いがたい地域のど真ん中に、なぜかブライアン・アダムスのスタジオがあるっていう。 なるほど、それは面白い話ですね。あ、もうひとつだけ。ロブ・ライトという人はあなたたちにとってどういう人かというのを、それぞれ簡単に話していただけますか? John:兄のことを話せって? 参ったな。もちろん、ものすごい昔、それこそ生まれた時から付き合いがあるわけだけど、なんて言っていいのか、僕にはわからないよ。音楽をやる仲間っていう目で見れば、彼は素晴らしいソングライターだし、僕自身、あの作曲スタイルには大いに刺激を受けてきたのは確かだ。それに、個人的には、こんなに長い間一緒に音楽を続けてきたというのは、驚くべきことだと思ってる。今ではお互い、音楽の上では相手が何をやりたいか、口にしなくてもわかるからね。 Tom:それにロブは、曲作りで構成のツボを押さえる、天性のカンを持ってる。ロブの書いた曲を練習していると、最初はなかなかやりにくかったりするんだけど、あるところで、こういうことか!ってしっくり来るポイントがあるんだ。リズムにしても、なかなか言葉では説明しにくいんだけど、曲の構成があるべき姿に収まっているというのかな。アレンジのセンスというのか、曲をまとめあげることにかけてはものすごく才能がある。コード進行にしても、ここが曲調の変わり時だっていうところをいつも突いているからね。 大絶賛ですね。 Tom:だっていい人だもの。あとはシングルモルトのスコッチウィスキーを飲んでいればご機嫌なんだ。 John:うん、この後もきっと帰ってきたら、コンピューターで絵を描きながら、スコッチを飲むと思うよ。スコッチのいいやつを、しっかり買いこんでたからね(笑)。 Follow Links:
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