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これまでにリリースしてきた『?(クエスチョン・マーク)』、『Enemies & Immigrants』、そして『Pearls To Pigs』Vol.1&2と全てEPのサイズですが、前2者が独立しているのに対し、今回は「その1」「その2」と続きものの形になりました。最終的にアルバムになるということでしたが、『Pearls To Pigs』シリーズの性格が、最初の2枚のEPと大きく違っているところがあるとすれば、それは何でしょう? Alessandro:今回は(アルバムになるくらい)もっと曲があったっていうことなんだ。必ずしもそれが理由じゃないかもしれないけど、『?』の時にはマネージメントがついてて、曲を選ぶのにそこから影響があったんだよね。まあ、別にそれ自体は問題じゃなかったし、気にもしてなかったけどさ。で、『Enemies & Immigrants』の時はバディヘッドからEPとアルバムをリリースする予定だったんだけど、結局バディヘッドからは離れたんだ。何か悪いことがあったとかじゃなくて、単に自分自身で同じことがやれるって分かったからね。彼らには彼らのフィロソフィーがあって、それがあのレーベルの他のバンドとはすごく合ってた。でも、modweelmoodとはそこまで合わなかったんだよ。『Enemies & Immigrants』も良い作品だけど、『Pearls To Pigs』の方がより磨かれた曲が入ってると思う。全てを自分のホーム・スタジオで、独力で完成させたしね。僕は、自分がいいミキサーだとかエンジニアだとか言うつもりは全くないけど、まずエンジニアはバンド・メンバーと同じで、その音楽を理解してないといけない。僕達がこれまで一緒に仕事した人達が理解してなかったってわけじゃないよ。ただ、見方が違ってたんだよね。特にナイン・インチ・ネイルズのリミックスを家でやった時、最終的なマスターを聞いて、プロフェッショナルなマスタリングさえ施せば、クオリティは十分なものにできるって分かったんだ。それまでは、自分のミックスはラフ・ミックスでしかないっていう恐怖心があったんだよね。まあ、それでも僕らのトラック("THE GREAT DESTROYER")は他のものと比べたらラフなんだけど、そういう部分も気に入ってるし、ラフな分だけみんなが曲に注目してくれたらいいなと思ってる。人々の耳をとらえることができるぐらいキャッチーだし、それでいてすぐ消え失せてしまうほどの単純なポップ・ソングにはなっていないからさ。 確かに。では、通常どのようなことから、ソングライティングのインスパイアを得ていますか? Alessandro:それって、いつも僕が答えられない質問なんだ。特定のことじゃないんだよね。 Pelle:何でもないものであり、全てでもあるっていう。 Alessandro:面白いことに、音楽も歌詞も作っていくうちに違う意味合いが出て来たりするしね。その日は特定の意味でも、別の日には違う意味になってたりするんだ。"Mhz"の歌詞で、最初のコーラス部分は誰か女の子のことだったと思うんだけど、そのうち、自分の中の「一方ではもっと頑張ろうとするのに、もう一方は疲れきって投げ出してしまう」っていう二面性に関する曲になったんだよね。何かがクリエイティビティのきっかけになるっていうアーティストもいるけど、僕の場合は曲が完成した後で「ああ、そうか、この曲はこのことについてだった」って思う方なんだ。でも、それで特定の時期や事象に捕われずに、どんな風にも受け止めてもらえるものになってるんじゃないかな……分からないけど。音楽的には、僕が以前に残しておいたリフがきっかけだったりもするよ。 Pelle:ほとんど偶然なんだよね。何か作り始めてみたら、次の瞬間にはもう曲が出来上がってるっていう感じで。それがうまく行く時もあれば、いかない時もある。 2人のコラボレートはどのような感じで進められるのですか? Pelle:曲によって様々だよ。 Alessandro:僕がツアーに出ていたり、ペレがイギリスに行ってたりとかで同じ街にいないことが多いから、僕が家で曲を作った後に彼が参加してギターを加えたり、うなずいて「いいね」って言ってくれたり、何か変化を加えたりするんだ。あと、例えば"crumble"では、ペレがまずイギリスからデモを送ってきたんだよね。そういうわけで、デモを全て発表するのはクールだと思うんだ。デモは完成版とは全く違うからさ。その後で僕がアレンジして彼も気に入ってくれて、彼の方でもラップトップでまた色々とレコーディングして、ファイルを送り返してくれた。その時、僕は家にいたんだけどね。 Pelle:僕はイギリスに1年間ほど住んでたんだよ。だからその間はあまり一緒にやれなくて、別々に作業してたね。 Alessandro:彼がイギリスに行く前に一緒に始めてた『Vol.1』は、2006年の年末にはほぼ完成してた。そこまでは2人でやって、その後で歌入れとミキシングをして仕上げたんだ。だから(コラボレーションの形は)本当に曲によって違うんだよ。完成させたばかりの『Vol.3』に収録する新曲は、ナイン・インチ・ネイルズのツアー中にシンセサイザーを弾いていた時にできた曲で、そこにヴォーカルを乗せたんだ。それをペレに送ったら、クールだって言ってくれたからそこで完成。だから特定の方法ってないんだよね。曲によって常に違う。 モッドウィールムードの、エレクトロニクスを使ったクールなサウンドとオーガニックな生楽器のサウンドの融合、そして非常に叙情的なメロディとそれを歌う美しいファルセット・ヴォイスは大変な魅力を持っていますが、このスタイルは初期から確立されていたのでしょうか? Pelle:いいメロディの曲っていうのは、常に必須だったね。2人ともいいメロディがすごく好きなんだ。 Alessandro:捻りの効いたやつがね。ペレと一緒にやり始めた当時、僕はちょうどコンピューターを使い始めたところだったから、今とは作業の仕方も違ってたよ。『?』にはループがいっぱい入ってる。適当なアナログ盤とか、サンプルのライブラリから持って来てそれを使ったんだ。でもその後は、自分で全てのサウンドを作るようになった。ドラムも僕がプログラムしたドラム・マシーンだし、ドラム・マシーンであれ、モジュラー・システムであれ、決してサンプルは使わないようにしてる。どうしてもサンプル音が好きになれなくてね。それぞれの楽器はそれぞれの声を持ってるからさ。あらゆる打楽器音を出すマシーンも、あらゆるベース音を出すマシーンもあるけど、どれだけ面白いものにできるかは僕にかかってる。そこにギターをうまく絡み合わせられるような環境を作るから、ロック側がエレクトロニクス側と衝突するとか、そういうことが無くなってるんだと思う。どういうわけか、いつも上手くブレンドされて溶け合うようになってるんだよね。 Pelle:そもそも、僕もアレックスも音楽学校ではギターを学んだから、彼はギタリストになるんだと思ってたんだけど。 Alessandro:ああ、僕はそれはもう諦めた感じだな(苦笑)。 Pelle:でも、このバンドでは、ギターはそんなに必要ないのかもしれない、って思うようになったんだ。うまくコラボレートできるなら、それがいいものなんだって。 Alessandro:『Vol.1』の最初の曲ではペレがカシオのキーボードを弾いてるんだけど、別に僕が「ギター無しで」って言ったからじゃなくて、彼が偶然そのキーボードを持って来たから、というだけなんだ。 Pelle:ルールがないのはいいことだし、そうあるべきだよね。 Alessandro:音楽的にルールはないけど、僕はあるていど限られた状況に身を置くのが好きだね。条件を設定しておくと、その中で色々試そうとするものだからさ。 なるほど。さて、モッドウィールムードとしてのライヴ・パーフォーマンスは、これまでに何回か行なわれていますが、2006年のニッティング・ファクトリーでのライヴをYouTubeで見ると、アレッサンドロが1人だけでプレイしているようですね。ペレがいなくてもモッドウィールムードのライヴは成立してしまうのでしょうか? Pelle:その時、僕はロンドンにいたんだ(笑)。 Alessandro:あれはいい体験だったよ。いざとなったら僕1人でもショウがやれるって分かったからさ。楽器も、僕の体が届く範囲にも限界があったけど、それでもなんとか成り立ったよ。ただ、デュオでやる時ほど面白くはないと思う。もともと僕はライヴでプレイするのがあんまり好きじゃないんだけどね。スタジオで色々やってる方が楽しいよ。 そうなんですか? ペレは? Pelle:僕はライヴでプレイするのは好きだよ。まあ、ラブとヘイトと両方の感情があるかな。 Alessandro:あ、NINでは話は別だよ。あれはトレントのバンドだから僕がヘマをしてもみんな気づかないだろうし(笑)、僕は自分のスペースシップに籠って誰にも邪魔されずにプレイしていられるからね。自分のバンドで少ない観客を前にプレイする方が、よっぽどナーバスになるよ。 なるほど。5月30日のレディトロンとのライヴはどのようなものにしたいと考えていますか? Alessandro:まだ何も考えてないんだよ。 Pelle:まだ先だからね。そろそろ、ある程度アイディアが無きゃいけないんだろうけど。 ちなみに、レディトロンとはどのようにして交流を持つようになったのですか? Alessandro:去年のナイン・インチ・ネイルズのヨーロッパ・ツアーで、彼らがオープニング・アクトを務めてくれたんだ。本当にクールなやつらで、ツアー中は結構つるんだし、彼らのステージに招かれて何曲かシンセサイザーを弾いたりもしたんだよ。とても楽しかったな。で、ツアーを終えてこっちに戻った後、彼らは向こうでアルバムのレコーディングを始めたんだけど、AIMでルーベンやダニエルと連絡は取り合ってて。そしたらアルバム中の1曲"Versus"のオーバーダブをやってくれって頼まれてね。彼らはそれを気に入ってくれて、すでにプロデューサーと一緒にレコーディングを開始してたんだけど、また別の曲を送って来たんだ。それで僕がその曲に足りないと感じた部分、ギターや、ハーモニーや、シンセをレコーディングして送り返した。「僕が思いついたことをやってはみたけど、何か押しつけているようには感じて欲しくないし、使いたくないトラックは外してくれて構わないよ」って言ってね。でも彼らはその大部分を使ってくれて、さらに多くの曲を送って来たんだよ。そんな風にして結局、ニュー・アルバムの6曲を共同プロデュースすることになった。だからって言うわけじゃないけど、素晴らしいアルバムだよ。僕にとってもすごく良い経験になった。自宅で作業できたから、共同プロデュースといっても自分の環境でやれて楽だったし。好きな時間に休憩して、犬の散歩をしたり、猫と遊んだりできたからね。"Ghost"っていうファースト・シングルのリミックスもやらせてもらったよ。そんなこんなで、僕らがレディトロンの前座をやることになったってわけ。彼らから頼まれて何も考えずに「イエス!」って返事したんだ。その時点では、またナイン・インチ・ネイルズとリハーサルに入ることになるとは思ってなかったからね。でも、なんとかするよ。 ところで、ファンの間では、blindoldfreakというサイトの存在が知られています。これはアレッサンドロのソロ・プロジェクトか何かなのでしょうか? この名義での作品制作も進めているようですが、どのような内容のものなのか、モッドウィールムードとはどんな違いがあるのか、正体を教えてください。 Alessandro:ブラインドオールドフリークは僕が1人でやっているんだ。よりエレクトロニックな音楽をやり始めた時、マシーンで色々と実験してたんだけど、それはあまり楽曲やメロディー主体でない感じのもので、そういう作品を集めたんだよ。今では、その中の幾つかはモッドウィールムードでも使えると思うけど、とにかくその時はサイトを立ち上げてヴィデオ・クリップをアップしたんだ。他のエレクトロニックな作品を、出し惜しみしないで発表してしまおうっていう目的でね。今は様々なセッションにシフトして色々と試しているところだから、それをそのままリリースしているんだ。他の人達にどう受け止めてもらえるかは分からないけど、分かってくれる人がいたら満足だね。僕はエレクトロニック・ミュージックが大好きなんだ。僕にとっては耳に心地いい音楽だし、成功のために自分を偽ったり、期待したりする部分もないし。ただ僕の場合、マシーンにすっかりハマって作業している時でも、メロディックなものにしたいと思えばメロディックなものが出て来るんだよね。だから歌にはなっていないかもしれないけど、それでも聞けるものにはなってると思う。今後どうなるかは分からないけど、モッドウィールムードと同じような形でリリースするかもしれないね。 あなたは歌も歌えるし、ギターも鍵盤も弾けるマルチプレイヤーですが、コンピュータ・プログラミングを中心とした音楽表現に最も興味を惹かれた理由は何だったのでしょう? Alessandro:シンセサイザー、特にモジュラーをいじっていると、子供みたいな気分になるんだ。常に何か新しいものが出て来て、ワクワクするんだよ。それがアイディアのもとになるんだ。"Mhz"は最初シークエンスをプレイしていて、それがきっかけでベースが出て来た。たいてい新しい楽器がアイディアを喚起して、それが曲になっていくんだよね。それを実際に手作業でやっているっていうところが、よりエキサイティングだと思う。だから僕はツマミがいっぱいついたシンセサイザーが好きなんだ。ギターも今でも好きだけど、いつも同じような音に聞こえてしまう気がするんだよね。だから、モッドウィールムードのトレードマークになるようなギター部分は、だいたいペレが弾いてるよ。僕が思いつくものよりずっと頭に残るようなものを作ってくれるからね。
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