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サムと一緒にポートランドに引っ越して来たということですが、彼との出会いについても、よかったらちょっと教えてください。 Janet:私達は彼がサンフランシスコでバンドをやってた時に出会ったの。大学が一緒だったけど、大学では知り合ってなかったのね。でも私は彼のDONNER PARTYっていうバンドがすごく気に入ってて、よく観に行ってた。サムはとてもキュートで素敵だったから、すっかり夢中になって(笑)。でも、ものすごくシャイな人だったのね。長い間、彼と話をしようとつけ回したんだけど、恥ずかしがって相手にしてくれなかったわ。そして、ある日、私の2つ目のバンドのショーを彼が観に来てくれて。そこでDONNER PARTYとの対バンを提案してきた彼と、ついに話すことができた、っていうのが最初の会話よ。2人の間には音楽的に密接なコネクションがあって、いい友人としての関係に変わった今でも、音楽を作る時のスパークは変わっていないの。 現在のクアジの活動状況は、どんな様子ですか? Janet:サムに子どもが生まれたために、しばらくお休みしてたんだけど、最近また新曲をレコーディングし始めたから、2003年の秋頃には新しいアルバムを出せると思うわ。ちょうど今ミキシング中なの。かなりうまくいってる感じよ。前作の時はまずスタジオに慣れる必要があって苦労したんだけど(笑)、今回のは前のアルバムよりすんなり作れてる気がするわ。 クアジとスリーター・キニーは、あなたの中でどう区別しているんでしょうか? Janet:どっちが制作期間に入っていて、どっちが休みかによるのよね。これまではその2つを行ったり来たりしてて……少し重なる時期があって、その時はものすごく忙しかったけど、でも去年はスリーター・キニーが休みで、クアジはアルバムを作ってツアーを周ってって、そんな感じだったし。で、今年はサムに子供が生まれたから、クアジは少し休みを取ってて、反対にスリーター・キニーの方はゆっくりとだけど活動を再開したし。で、スリーター・キニーがそろそろ休みに入る頃には、クアジの方が活動再開の準備が整ってると思う。ツアーを周ったり、アルバムを作ったりって。大切なのは周りの協力と、あとはスケジュールの管理ね(笑)。 あなたが2つのバンドで活動してることは、どちらのバンドにとってもプラスになっていると思いますか? Janet:うん。そうだと思うわ。それに、クアジとスリーター・キニーっていう全然違うバンドで活動することで、いちミュージシャンとしても成長できるし。ただドラムを叩くだけじゃなくて、自分で曲を書いたり、全体の曲作りにも貢献したいって思ってる人間にとっては……私はいろいろアイディアを出してバンドに貢献したいんだけど、そうするにはやっぱりいいミュージシャンであればあるほどいいのよね。あとは……単純に楽しいし(笑)。2つもこんなにいいバンドで活動できるんだから、自分はすごくラッキーだと思うわ(笑)。 なるほど。ではいよいよ、スリーター・キニーに参加する話になった時のことについて教えてください。 Janet:ジュニア・ハイっていう、友達と楽しむためにやってたようなバンドで、スリーター・キニーがポートランドで公演した時に前座で出たんだけど、その時にスリーター・キニーの演奏を観ていて「このバンドのドラマーになってもいいかも」って思ったのを覚えてるわ。そしたら2日後に、彼女達から電話があって「これまでのドラマーをクビにした」って言うのね。もう3人目のドラマーかなんかで(笑)。それで私を誘ってくれたの。だから、ポートランドのショーでお互いを観察してたことになるわね(笑)。『コール・ザ・ドクター』は聴いてて、素晴らしいアルバムだと思ってたけど、自分が入ることになるなんてね。私達が引き合わせられたのは運命としか言いようがないわ。一番最初のリハーサルはコリンの家の地下室でやって、その時すでに『ディグ・ミー・アウト』に入る曲は出来上がってたんだけど、すごい体験だったわ。前のドラマーが作ったパートは私が作り替えちゃったけど(笑)。私のスリーター・キニーでのスタートはかなり電撃的でダイナミックなものだったの。 じゃあ、その場であなたのアレンジで叩いちゃったということですか? Janet:自分で自分のパートを作っちゃったのよ。彼女達から「この部分だけは残しておいて」と指定された部分以外は全部。というのも、私には前のドラマーの叩き方が全然覚えられなかったのね。いいバンドに途中から加入するっていうのは、なかなか難しいことで、バンドのパーソナリティーを保ったまま、自分独自のものを出さなければならなかった。私はドラマーとして単なるタイムキーパーでは満足できずに、自分自身を表現する必要性を感じる方なの。だから、『ディグ・ミー・アウト』の自分のパートを作りながら、責任の重大さを感じてた。このバンドに釣り合うように頑張らなきゃ!って(笑)。それからはレコードごとに、3人がより対等になって、より流動性のあるライティング・スタイルに変わっていったわ。 なるほど。コリンとキャリーの、それぞれの第一印象はどんなだったか、教えてください。 Janet:えーっと……ずいぶん昔のことだからな……とても親切にしてくれたわよ。すごく性格が違う2人だと思った。バンド内でのそれぞれの役割が違うってことに、すぐに気づいたの。コリンには独特のアーティスティックな視点があって、典型的なライター気質というか……自分の世界を持ってる。キャリーは音楽の知識が豊富で、音楽史の中から重要な出来事やスタイルを抽出してくるのが得意なの。キャリーは知性派だけど、コリンはもっと……何というか、直感的なのね。感情を溢れ出させることに長けてるタイプよ。 個人的な印象だと、素ではキャリーがいちばん感情を表に出すタイプじゃないかという印象を受けますけども。 Janet:うーん、キャリーがこのバンドで何を象徴してるかを考えてるんだけど……ちょっと待って(笑)。そう、キャリーは……小さな爆弾、ね。 小さな爆弾、ですか(笑)? Janet:そう(笑)。ものすごいスピードでよく動くし、いろんなアイディアをいっぱい持ってるし、とても頭が切れるし。少しせっかちでもあるんだけど、そのせいで私とコリンはいい具合に緊張感を保てるの。私達が常に前に進んでいって、そのために全力を尽くしてるのにはキャリーの力が大きいわね。このバンドのカラーというか、そのときどきのトーンはキャリーによって決まることが多いと思う。キャリーはいつも物事はどうあるべきかを考えていて、現状を分析してる。コリンの正反対なの。コリンは本能的でエモーショナルな人だから。キャリーはもっと論理的で……要は正反対なのよ。で、そういう2人を組み合わせるから……そういう性質のぶつかり合いというか、その違いがいい科学反応を生んでるんだと思う。 なるほど。あなたとこうして話していても、すごくインテリジェンスを感じるというか、スリーター・キニーはとてもしっかりした思想の元に表現活動を続けているという印象を受けますが、バンド活動を行なっていくにあたって、色々と議論したり討論したりすることも多かったりするんでしょうか? もしそうだとしたら、そのうえでバンド活動を長く続けてこれている理由というのは、何だと思いますか? Janet:長年一緒にやってきて学んだのは、コミュニケーションと友情が何よりも重要、ってことなの。その二つがぎくしゃくすると、一緒に音楽をやることは不可能になるからね。お互いに仲良く、楽しみながら音楽をプレイすることを続けられるように努力してるのよ。そのために、外部の人に相談したりもしたわ。問題の解決方法を学ぶために、カウンセリングを受けたりして、ストレスのレベルを低いところにキープする必要があることが分かったの。しばらくツアーをせずにいることや、小さなレーベルにとどまること、あまり大勢のスタッフを雇わないことなんかも、その一環でね。なるべくエンジョイできて、なるべくストレスが少ない方法で、長く続けようっていう考え方よ。でも一番重要なのは、コミュニケーションね。お互いに気分良く話ができることが大切。私達は自分達でバンドのすべてをコントロールしてるから、意見の不一致があればとことん話し合うように努めてる。必ず妥協点はあるはずだから。もちろん、簡単なことでは全然ないけどね(笑)。長くやってるうちに、私達にとってはオフの時間が重要だって分かったの。
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