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ただ、そうやって成功したのを受けて、ソニーとメジャー契約することになったし、どんどん活動規模が大きくなってきてますよね。そういう現状も踏まえながら、今後バンド的にどういうふうにやっていきたいと考えていますか。 Hannah:メジャー・レーベルと契約するのは、やっぱりちょっと怖かったのよね。ずっと長い間、パンクでD.I.Y.精神あふれるKill Rock Starsにいたから。でも、これまでのところ、よくしてもらってるわ。 Brace:まだKill Rock Starsからアナログ盤は出せることになってるしね、幸いなことに。 Hannah:だから、アンダーグラウンドとのコネクションはまだ切れてないのよ。そういう立場が一番私たちに合ってるように感じるの。 Brace:しかも、僕らのショウは今が一番、ノイジーでカオティックになってるよ(笑)。バンドを結成した当初から目指してたことは全然変わってないんだ。メジャー・レーベルと契約したからって変わることはないね。かつての偉大なバンドだって、たくさんメジャーで活躍してたわけだし。ワイヤーとかギャング・オブ・フォーとかさ。 Hannah:ザ・スリッツもね。 Brace:そうそう。ボアダムズだってそうだし。メジャー・レーベルに移ることの影響は、あると思えばあるし、ないと思えばないもんだよ。 Hannah:フォーカスを失わないようにさえすればね。ハイプを無視して。怖いのは、お金の額が違うということと、次回作へのプレッシャーや期待が大きくなるってこと。注目される前はそんな心配はいらなかったのにね。 Brace:(ソニーからの最初のリリースとなった)ライヴ・アルバムを出した時、ジャケットはTシャツのデザインそのままで文字は入れなかったんだ。「これじゃ内容が何も分からないのでは?」って言われたけど、最終的にはそれでリリースさせてくれたよ。僕らはそういったデザイン面にもこだわりたいから、あれはクールな判断だったと思うよ。 Hannah:バンド側が完全にコントロールできる、というのは大切なことよね。メジャーに行って、レーベル側に方向を決められてしまうというのはよく聞く話だけど、その辺は自分たちを強く持ち続ける必要があると思うの。 Brace:僕らは今でもハンドルを握ったままだから大丈夫(笑)。 Hannah:そういうことね(笑)。 ではここで、あなた方から見た素顔のベスについて語っていただけますか。 Hannah:声もそうだけど、人々に影響を与えることのできるパワーを持った女性ね。彼女としても、そのポジションを真剣に受け止めてる。彼女が自分自身をロールモデルとして捉えてるということではないわよ。ただ、社会的に力が無い人達の声となってあげたい、代弁してあげたい、と思ってるの。もちろん彼女だけじゃなくて私たちも、そういった社会から疎外されてるような人達−− Brace:アウトサイダーたちね。 Hannah:そう、アウトサイダーたちとコネクションを感じたいと思ってる。同性愛者たちや、変人と呼ばれるような人たち、うまく世の中に溶け込めない人たち。ベスに世間の関心が向けられることで、彼女に自己を投影できる人はたくさんいると思うのね。誰だって自信を持っていいんだとか、どんな人でも認められて受け入れてもらえるんだって。私たちのライヴ・パフォーマンスではそういうことが重要なの。全ての人たちを巻き込んで、誰もが同等なんだって感じられるようなライヴがやりたいのよ。誰が誰より優れてるとか、そんなこと関係ないんだってね。あなたが誰であろうと構わない。私たちを見れば、誰だってみんな一緒。そういうライヴなのよ。 Brace:その通り。 Hannah:ベスにとって、有名人の役はハードだと思う。タブロイド紙とかに追いかけられて、嫌になってる時もあるわ。そういうものを全然読んでないしね。タブロイド紙なんて、セレブリティをこき下ろしたいだけだから、彼女の体重のことを面白がって書きたてたりするのよ。 Brace:まあ、昔から大きなマスコミには興味なかったけどね。今さら気にすることもないよ。こっちはずっと音楽活動を続けてるだけで、マスコミがどう思おうと関係ないんだ。視界にさえ入ってこないな。 Hannah:そんなふうになるまでバンドが有名になったこと自体、私たちには不思議に思えるのよね。まあ、正確にはイギリスでべス個人が有名になったってことだけど。未だになんだかおかしな感じよ。 わかりました。では、時間が来てしまったので最後の質問です。今年の仕事はこれから行なわれるライヴが最後になると思うのですが、来年の計画について教えてください。 Hannah:そう、今日が最後で、それからしばらくはオフなの。 Brace:ニュー・アルバム用の曲を書き始めるためにね。 Hannah:それから夏の間にまたツアーを始めることになるんじゃないかな。 Brace:フェスティバルに出たりとかね。 じゃあ、夏までにはレコーディングを済ませる予定ですか? Hannah:多分ね。でも期日を決めてしまうとプレッシャーになるから、それは避けてるわ。〆切りを定めずに、なるべく夏までにレコーディングしようとは思ってるんだけど、やってみないと分からないわね。 すでに書き上がっている曲もあるんですか? Hannah:ええ、幾つかね。でも、形にするには、ゆっくり腰を落ち着けてからでないと。ツアーがずいぶん続いたから、クリエイティヴな面でフォーカスし難かったの。そろそろ早く家に帰ってレコードを作りたくなってるところよ。 初のメジャー・レコードになるわけですけれども、何かこういうことをやってやろうと考えてるようなことはありますか。 Hannah:まあ、正確に言えばライヴ・アルバムが最初のメジャー・レコードだけど、スタジオ・アルバムとしては最初ってことね。時間と予算が余計にもらえるってことで、さらにクリエイティヴなことができるんじゃないかって期待してるわ。 Brace:かといって、ピカピカした派手なアルバムが作りたいわけじゃないよ。 Hannah:やり過ぎは駄目よね。 Brace:メジャーに行ったとたんに退屈なアルバムを作っちゃうバンドがあったりするけど。 Hannah:いきなりストリングスが入ってたりとか(笑)? Brace:そうそう(笑)。そういうのは目指してないから。逆に、さらにもっと変さを追求した曲を作っていきたいね。フィードバックを増やしたりしておかしな音にしていきたい。人々の予想を裏切るのはエキサイティングだよ。 Hannah:これからも新しいことにチャレンジしていきたいわ。 ちなみに、プロデュースはリック・ルービンになるんですか? Hannah:何曲かはそうかも。 Brace:幾つかそうなるかもしれないね。 Hannah:でもアルバム全体にはならないと思う。いろんな人にセッションを頼んでみることにするわ。 Brace:それができたらクールだね。 Hannah:またギーと仕事ができたらいいな、とも思ってるし。 Brace:そうだね。彼はよかったからね。 Hannah:いい人だったわよね。もちろん、リックもクールよ。 Brace:うん。彼はクールだ。 Hannah:でもリックは、どちらかというと放任主義なの。スタジオでは「今のいいんじゃない?」って一言しゃべってくれるくらいで(笑)。それだけ言っておもむろに去っていくの(笑)。 Brace:「オズの魔法使い」みたいだよね(笑)。 Hannah:髭をなでながら(笑)。 分かりました。じゃあ、今日のライヴはもちろん、今後の活躍を楽しみにしています。 Hannah:どうもありがとう。 Brace:ありがとう。日本は大好きだから、また戻ってくるよ。 Hannah:本当、またすぐに来たいわ。日本食最高! Brace:東京でいいレコード屋があったら教えてね。
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