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なるほど。ところで、タイムボム・レコードに行ったのは、フガジのギー・ピチョットに教わったからだとも聞いているんですが、彼は最新アルバムのレコーディングを手伝ってくれてますよね。ギーと一緒にやることになった経緯について教えてもらえますか?

Brace:アルバムのプロデュースを誰に頼もうかって考えてた時、ちょうど(ギーがプロデュースした)ブロンド・レッドヘッドの『Misery Is A Butterfly』を聴いてたんだよ。あのアルバムのサウンドが大好きでね。メンバー全員、ブロンド・レッドヘッドのファンだったし。それから、ギーが手掛けたQuix*o*ticというバンドのレコードも最高で、ずっと尊敬する人物だったんだよね。もちろん、フガジという伝説的なパンク・バンドのメンバーでもある。僕らとしては、生々しいパンクの美学が分かって、なおかつ、あのブロンド・レッドヘッドのアルバムのような美しいポップ・レコードが作れるような人とレコーディングしたいと考えてたから、彼こそ最適だと思ったんだ。

Hannah:パンクのサウンドにするってことと、良質なレコーディングにするってことのバランスが取れる人だと思ったのよ。綺麗なサウンドでありながら、エッジを失わないような音楽にね(笑)。すごくいい人で、一緒に仕事がし易かったわ。

Brace:僕らのやりたいことはマイナーな音楽をお手本にしてるケースが多いから、そういうルーツの部分を理解してくれる人だとやり易いんだ。

Hannah:ほとんど無名のバンドの名前を挙げて「あんなふうにやりたい」って言っても分かってくれたのよ。

Brace:うん、僕らがインスパイアされる音楽を知らないエンジニアだと、なかなかうまくいかないと思う。

Hannah:意思の疎通がね。

Brace:メタリカしか聴かないような人とは無理なんじゃないかな。VoidとかNecros、Young Marble Giants、The Slitsがどんなバンドか知ってる人じゃないとね。僕らはそういうノリのバンドなんだってことを分かってくれる人とやりたかったんだよ。

ちなみに、同じくフガジのブレンダン・キャンティーが監修してる『Burn to Shine』というDVDにも出ていますよね。

Brace:ああ、あれは『Standing In The Way Of Control』をレコーディングした後だったんだ、確か。

Hannah:ブレンダンもすごくいい人だったわね。

Brace:うん。あのDVDの撮影、すごく面白い体験だったよ。燃やしてしまうのはもったいないような素敵な家だったな。

Hannah:そうそう。素晴らしい大邸宅なのに、さらに大きな大邸宅を建設するために取り壊されることになってたのよ。

Brace:取り壊される家に火を付けて燃やすことで、税金が控除されるとかだったんだよな。消防隊が消火訓練できるから。

Hannah:でも、あれは本当にもったいなかったわね。まだ新しかったし。

Brace:僕らの誰も足を踏み入れたことないような邸宅だったのにね。

Hannah:もう飽きて気に入らなくなったとかで、建て替えられることになって燃やされたのよ。

Brace:家主の家族が変で、甘やかされ放題な感じの子供達がはしゃいでてさ。

Hannah:「新しい家を建ててもらうの!」って叫んでて。

Brace:リビングで遊んでた。不気味だったよ。

Hannah:そう。私たちが演奏するのを家族で見てたのよね。

Brace:あっちこちに聖書とゲーム機があって(笑)。

Hannah:訳が解らない状態だったわ(笑)。

(笑)。さて、その、ギー・ピチョットとジョン・グッドマンソンの協力を得て作った最新アルバムが大ヒットしましたけれども、今作で自分たちは音楽的に何を達成できたと思っていますか?

Hannah:このアルバムではバンドのみんながもっとオープンになれたと思うわ。これまでのゴシップは、サウンド的にまだ限られてたと思うんだけど。

Brace:そうだね。

Hannah:メンバーそれぞれが音楽的に伸びることができたアルバムじゃないかな。多岐にわたって自分たちを試すことで、曲ごとに違ったサウンドにすることができたの。まあ、今回は予算も時間もたくさんあったしね。

Brace:うん。時間をかけられたんだ。

Hannah:だから、急ぐ必要がなかったのよ。それでサウンド面でも凝ることができたの。

Brace:楽器が少ないってことを考えると、そのわりにはずいぶん幅広いサウンドでレコーディングできたもんだと自分でも思うよ。それだけで結構な達成感があるんだ。2本のギターとベースがいて、アルバムの全曲が同じ音っていうような作品はいっぱい存在してるよね。そういうのとは正反対のことがやりたかったんだ。

そうやって出来たレコードが、海を越えたイギリスで、ニューレイヴだといって持て囃されたことについては、どういう気持ちがしましたか?

Hannah:びっくりしたわよね。

Brace:そうそう。

Hannah:なんか突然、イギリスでウケてるって話になってて。すべてが6ヵ月ぐらいの間にいきなり起こったのよ。そんなこと予想してなかったし、向こうで実際にリリースされたのはアルバムが出来てからずいぶん後だったしね。アメリカで出てから、そうなるまで時間がかかってるわけ。予想外に成功してくれたアルバムになったわ。

Brace:うん。その頃に僕は、よくDJをしてたから、リミックスを出そうってことになって、Soulwaxにリミックスを頼み込んだんだ。やっとのことで実現して、それがイギリスのクラブでかかるようになって、そっからの展開がクレイジーでさ。ホントにびっくりしたよ。

Hannah:ショッキングだったけど、嬉しくもあった(笑)。

Brace:うん(笑)。その前はロンドンへ行っても客が40人ぐらいしかいなかったよ。それが今では2000人も来てくれて。

Hannah:すごい違いよね。

今年になって急に「イギリスのニューレイヴですよ」みたいな文脈であなた方を紹介する日本のメディアも出てきて、僕なんか「えーっ」って感じなんですけれども。

Brace:いや、それは僕ら自身も思ってるよ(笑)。みんな簡単にジャンル分けしたがるんだよね。『Standing In The Way Of Control』がダンスっぽかったから、それだけでニューレイヴってことにされたんだ。僕らとしては、確かにダンスっぽくはあるけど、本質的にはDチューニング・ギターのアルバムだと思ってるし。

Hannah:私たちにとってはパンクなのよね。

Brace:そう、パンクのレコードなんだ。もちろんポップな要素も入ってるけど。『Movement』にはハンマーでギターを叩いてるだけの曲だってあるんだぜ。アルバムごとに変わっていきたいと思ってるしさ。ニルヴァーナの『Nevermind』が出た時も、その前の活動があったにもかかわらず新人だと思われたよね。彼らと一緒だって言いたいわけじゃないけど、僕らはここへ来て注目されただけで、決して新人バンドじゃないんだ。今晩のライヴでは『Movement』からの曲もプレイする予定だよ。それで少しでも分かってもらえればいいけど−−。

Hannah:ポッと出のバンドじゃないって分かってもらうために頑張るしかないのよね(笑)。

Brace:『Movement』とか初期の7インチのことは知らない人が多いからね。でも、どの作品も誇りに思ってるよ。

Hannah:音楽の世界で何かがトレンディーになると、安易に一括りにされてしまうことはありがちなのよ。

Brace:でも、なるべくそういうのとは関わりたくないんだ。

Hannah:『Movement』の時だって、ホワイト・ストライプスと一緒にされることが多かったわけだし……それかヤー・ヤー・ヤーズとか。

Brace:それぞれに良いバンドだと思うけど、親近感を覚えてはいなかったんだ。僕らが自分たちで近いと感じてたのは、Erace ErrataとかTracy + the PlasticsとかNumbersだったからね。日本のメルトバナナとか。今でも、例えばOOIOOの方がニューレイヴのバンドより、一緒にプレイしたいと思えるバンドなんだ(笑)。

Hannah:確かにそうね。同輩意識が持てるのはそっちだわ。

Brace:エネルギーとかパワーの種類、音楽的アプローチが近いのはそっちなんだよ。

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