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昨日のフジでのステージと前の初来日の時のステージの印象がすごく変わっていて――もちろんメンバーが違うということもあるんですけど。それ以上に服とか、前の来日の時はわりと黒っぽく衣装を統一したりしてスタイリッシュな感じだったのが、昨日はすごくカジュアルな感じでしたよね? その辺はやはり気持ちの切り替えが、5年間の間にあったということなんでしょうか? Justine:ええ、そうね。ファッション的な問題だと思うわ。以前みたく黒ばかり着る必要はないんじゃないかって思えるようになってきたの。でも、それがどういう心理状態を表しているのかって事までは分からないわね。 黒が必要ないってことについては、別に理由があるわけじゃない、と? Justine:(笑)。ハハハ、それは私の中の精神的な問題だから、あまり言葉で説明する必要はないわ。それにセラピストと相談しないと分からないわよ。 Paul:僕はよく黒を着るよ。 じゃあニュー・アルバム、セカンド・アルバムについてなんですけど、これはどんな風にしてレコーディング作業に取りかかっていったんでしょう? Justine:基本的にはとても複雑な作業だったわ。バンド内で起きた色々な事とリンクしながら作っているから。私が1人で家で作ったものと、みんなで一緒に作ったもの、新しいバンドとして作ったもの、新しく加入した人達と一緒に作ったもの……どの曲も違う感情が入っているの。それと同時にアルバムに収録するには、バンドが一体となって統一感のある音を表現しているという部分が重要だと思ってて。とにかく何かをリリースすることが先決だと思ってたから、レディングの前にまずEPをリリースしたんだけど、それにはデモみたいな曲を選んだわ。これはかなり自己満足的なリリースだったかもね。とにかく何かを出さないと、って思っていたから。でもそういう曲をライヴでやっていく内にバンド内にも変化が起きたの。もう一度バンドで一緒にやることが楽しいと思えるようになった。その頃はお金も全くなくて……。 Paul:その頃、ジョン・ピール・セッションに出たんだ。 Justine:そうそう。 Paul:1日に5トラックもやったりして。 Justine:それがすごく良くって。それで自信が戻ってきて、もうちょっと時間をかけて曲を作り上げていこうっていう意欲が湧いてきた。それからはあっという間だったわよ。あまりオーバーダブとかを心配せずに曲作りをしていこうって決めたから。それで、友達の経営する安いスタジオに入って、ほとんど全てをライヴでレコーディングしたの。これは本当よ。 色々な種類のマテリアルがあるということですけども…… Justine:そうなのよ! 頭の中がゴチャゴチャになっちゃうくらい(笑)。そういうバラバラな感じから一体感を生み出すためにも、間を置かずに同じメンバーで一気にレコーディングしちゃおうって事になったのよ。でも曲調はバラバラだけど、それはそれで良いことだと思ってるわ。私達が通ってきた様々な道のりを表現してるし、感情的な歩みも見えると思うから。 抜けちゃったドナの曲をやっている、というのはどういう理由からなんでしょうか? Justine:ドナの曲はすごく良かったし、それを入れるのはすごく重要だったの。最初からエラスティカのために書かれた曲だったし、アレンジもエラスティカがやったし、ちょっとしたパートはエラスティカ全員で書いた曲だから。それにドナの曲はエラスティカがどういう状態にあるかって事を表現してたからね。それに彼女の曲は、私が新生エラスティカのために書いたポジティヴな曲と対照的だったから、昔と今の間を埋める象徴のような気がしたの。 今は、新しいバンドとして新曲をどんどん書いているんじゃないかと思うのですが、新しく揃った6人での作り方と、以前のそれとでは、何か変わったりしたりしましたか? Justine:うん、そうね。今回のアルバムには前ほどポップな曲は入ってないわね。それはきっと私が純真さを失ってしまったからだと思うの。コマーシャルな音楽へ対する私の欲望っていうのもなくなってきたし。今は以前よりずっと色々な事が可能になってるような気がするわ。 それはなんで、そういう気持ちになったのでしょうね? Justine:コマーシャルな曲を書くことによってコマーシャルな意味での成功を手にしたけど、それで私がハッピーになれたわけじゃなかったし、バンドも同様だった。名声を手に入れてもバンドとしてクリエイティヴな方向に向かってるわけじゃなかったの。反対に私達に残されたのは、混乱と疎外感と困難ばかりだったのよ 元々のエラスティカの音楽性の根底には80年代の初期のポスト・パンクのサウンド要素があると思うんですけど、そのオリジナル・ポスト・パンクが持っていたノン・コマーシャルに、やりたいようにやる精神っていうのがここに来て取り戻されたっていうわけでしょうかね? Justine:今回のアルバムでってこと? うーん、そうかもね。いつでも私は自分のやりたい事は絶対に出来るって信じてきたの。そして自分が本当にやりたいって思うことをやるのが重要だと思ってきたわ。それがクリエイティヴな事を行うアーティストとしての当然の権利だと思うし、バンドの一員であるためにも絶対必要なことなの。そのためには様々な障害を乗り越えないといけないんだけど……。ただ、それをやる事でみんなのお手本になる部分もあるし、妥協はできないわ。 Paul:ジャスティーンらしいね。 Justine:そうかしら? では、ここでポールのギタリストとしての音楽的背景をちょっと教えてもらいたいんですけど。やっぱりパンクやニューウェイヴとかがルーツにあるんでしょうか? Paul:うん、その通りだよ。そしてロックもね。子供の頃はパブリック・イメージ・リミテッドとか好きだった。それからエラスティカのファースト・アルバムが出た頃にワイヤーを買ったんだ。まぁ、ワイヤーはどのバンドも同じように通過する道だと思うけど。ポスト・パンクの時代って音楽が広がった時代だと思うし、やっぱり僕にとっては非常に大きな影響力を持っていると思うよ。 Justine:彼の好きな曲はやっぱりパンクだと思うわ。 Paul:そう? 僕はそうは思わないけどね。でもあの時代は良い音楽がいっぱい出てきた時代だったよね。 Justine:トム・トム・クラブとか? Paul:トム・トム・クラブ? あれは80年代だよ。トーキング・ヘッズは好きだったけど。でもあれはアメリカのニューウェイヴだよね。ポスト・パンクのニューウェイヴ。ソニック・ユースとかも。 Justine:no waveね。 Paul:何それ?。 Justine:ポスト・パンクとニューウェイヴを合わせてno waveって言うのよ。 Paul:へえ、そうなの? じゃあ尊敬するギタリストを1人挙げろと言われたら誰なんでしょう。ジョン・マッギーあたりでしょうかね? Paul:え、誰それ? マガジンのギタリストの…… Paul:あれはジョン・マッギールだよ。 Justine:あ、ポールは彼の事好きじゃないわよ。 Paul:うん、一番じゃないね。それだったらパブリック・イメージ・リミテッドのキース・レヴィンが僕にとって最高のギタリストだね。マッギールはマガジンを抜けた後で、パブリック・イメージに移籍したんだよね? 違ったっけ? あまり彼のことは知らないね。そんなに大勢のギタリストを知ってるわけじゃないんだ。あとメルト・バナナのギタリストは最高だね。良いギタリストって5年ごとに出てくるような気がするんだけど、今は彼なんじゃないかな? それからネルス・クライムっていうアメリカ人がいるんだけど、彼もいいね。彼のアルバムは本当にブッ壊れているんだ。ピックアップの替わりにオモチャを使ってたりするのに、なぜかすごく音楽的なんだよね。そしてグレン・キャンベルはいいね。
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