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Deerhoof



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グレッグはドラマーなのに、ギタリストであるキース・リチャーズから大きな影響を受けているというのも少し不思議な感じがします。

Satomi:ああ、それには、おもしろい答があるんですよ。

Greg:ウホッ(笑)。キースのリズムに対するアプローチから受けた刺激を反映させる表現手段は、必ずしもギターでなくてもいいわけ。たとえドラムにも……っていうか、それで言うならウィリアム・シャトナーなんか、さらに接点なくなっちゃうだろ? 楽器なんか全然やらないんだから。ただ、彼の仕事は台本のセリフを喋ることだけど、それでもドラムの演奏に応用することは可能なんだ。彼のセリフへのアプローチ――節回しのセンスとか、テンポの取り方、間の置き方、独特のアクセントの付け方、常に変にテン張った喋り方をするところなんか、ドラムの演奏にすごく通じるところがあると思うんだよね。独特の間を置いた喋りによって、リズムを持った緊張感が生まれるからだよ。そこからいつ何が起きるかは見当もつかないんだけど、いったん何かが起きると爆発的なことが起こるケースが多い、と。そういったフィーリングを深く感じ取れば……まあ別に“感じとらねばならない”とかいうもんでもなくて、「コンピュータ・プログラムでキース・リチャーズのギターをドラムに応用する方法を考えてみよう」とかいう話でもないんだけど。ただ、その音楽とかアティテュードとかリズム感覚について、何かを思い切り深く感じ取ることで、それが自動的に僕のドラム演奏につながっていくんだってこと――特別に“そうしよう”と努めなくてもね(笑)。

Ed:マイルス・デイヴィスがシナトラを勉強したのと同じだな。

Greg:ああ、そうそう、その通り。

なるほど。じゃあ例えば、ドラム・キットがシンプルで、キックとスネアとシンバルしかないっていうのも、もしかしてキース・リチャーズのアティテュードが反映されているからなのかしら。

Satomi:あれは、移動しやすいからでしょ(笑)。

Greg:ウホホホホホ! でも君の言う通りで、キース・リチャーズって人は「いつもアコギで練習しろ」ってことを常に言ってるギタリストのひとりなんだ。アコギじゃエフェクトの助けを借りられないからさ。デカい音やクレイジーなエフェクト・ペダルで、“俺は上手いんだ”と自分をごまかすことができなくなるでしょ。もちろんキースもライヴじゃエフェクト・ペダルは使ってるし、ドデカイ音を出してるけど。

John:(笑)。

Greg:でも、練習はアコギでやってるんだよ。理由は――彼によれば――その楽器の一番シンプルな形で練習すれば、隠れ蓑がなくなって自分が実際弾いてる素の音が聞けるからなんだ。隠れ蓑にするデカいヴォリュームもサウンド・エフェクトもない状況じゃ、何かちゃんと考えながらプレイしてるのか何も考えずにプレイしてるのかが、一目瞭然になるんだよ。何も考えずにアコギなんか弾いちゃったら最後、スカスカのプレイになってしまう(笑)。だからアコギを弾くときには、自分で何か考えてクリエイトしなきゃ、どうしようもなくなるわけ。僕がシンプルなドラム・セットを好きなのもそのためで、アイディアがすっからかんになったら、途端に何も叩けなくなってしまうからね。特別なエフェクトも何も使ってないし、自分で工夫しなきゃどうしようもなくなるんだよ。だから、自分自身をクリエイティヴな方向に持っていく“裏技”のひとつって感じだね。

わかりました。ちなみにサトミさんがベースを始めたのはこのバンドに入ってからだそうですが。

Satomi:そうです。入ったときは歌ってるだけで、ディストーション・ペダルつないで“ガァァーッ!”とか言ってたんですけど……。

Greg:ブホホホホ。

どのような経緯で、ベースを弾くことにしたんですか?

Satomi:何か、勧められたんですよね……(英語で)何でわたしベースを始めたんだっけ? 覚えてないんだけど。

Greg:ブホホホホ!

Satomi:あなただったかロブだったかに「ベース弾けば」って言われて、それでロブがギターを弾き始めたんだったと思うんだけど。

Greg:オボエテナイ……大昔すぎて!(笑)

Satomi:もうそのときに20歳越えてたから、“こんな年で楽器なんか始めて、大丈夫かなあ”と思って。だって音楽の成績すっごい悪かったんですよ、小学校のときとか。ハーモニカとかも、いつも居残りとかさせられてたし。ところが、キム・ゴードンも28歳でベース弾き始めたとかいう話を聞いて“じゃあいけるかも”と思って弾き始めたんですけど、でも弾いてみると、ベースだったらそんなに難しくないってことがわかって。

Greg:でもギターも弾くじゃない?

Satomi:うん、でもギターじゃ、こ〜んな感じじゃ弾けないから。

Greg:アッハッハッハ! でもほとんどギターしか弾かなかったアルバムとツアーもあっただろ?

Satomi:ああ、『The Runners Four』のときね。エフェクト・ペダルも使ったし。

Greg:(笑)、でも、そう、独学でベースを覚えたんだよね。

Satomi:独学だから変な弾き方です(笑)。

じゃあ、ジョンとエドも、それぞれ楽器を始めたきっかけや、そのとき影響を受けたミュージシャンについて、教えてもらえますか?

John:楽器を始めたのは、いつ頃だっけ……たぶん11歳とかそのくらいだったと思うんだけど、兄貴がベースをやりたがってたんだよね。ふたりともブラック・サバスとかヘヴィ・メタルにすごくハマってて、兄貴がベースを買いたがったから、両親がレンタルしてやることにしたんだ。

Greg:フホホホ(笑)。

John:最終的に気に入らなかったときのことを考えると、買ってやるまではいかなかったみたいでね(笑)。すると、ギターが欲しかった僕が泣き出したもんで、「わかった。ふたりとも借りてあげる。ジョンはギター、お兄ちゃんはベースね」って。で、同じ日に街に出かけてそれぞれ楽器を手に入れたんだ。ところがすごく複雑な気分になったのを覚えてるよ。というのも、僕は左利きでそれまでギターを手に持ったこともなかったんだけど、家に帰ってから右利きの兄貴に「こんなふうに抱えるんだよ」って教えられて手に持ってみたら、やっぱり違和感があって、逆方向に抱えたほうがしっくりくるんだよね。

Ed:アハハハハ!

John:(笑)でも、弦を張り替えればいいってことにも気がつかなくて――ギターの特性も知らなかったからね――「しょうがないや」って右利きのままプレイすることにしたんだ。

Greg:アッハッハッハ!

John:もしかすると、兄貴が僕にとって最初の音楽のヒーローかもね。年も上だし曲を覚えるのも速かったし、オジーの“Crazy Train”も兄貴から習ったんだ(笑)。

Satomi:ギター・キャンプには参加しなかったの?

John:ギター・キャンプの経験はないね。レッスンは何度か受けたことあったけど。

Satomi:最初に習った曲は?

John:ツェッペリンの曲を2曲ほどかな……でも出来のいい生徒じゃなかった(苦笑)。レッスンでいつもビクビクしてたのを覚えてるよ。先生っていうのが大学生だったから、大学構内にあるリハーサル・スタジオにレッスンに通ってたんだ。クラシックを専攻してる学生たちに、変な目で見られながらね。

Greg:ウホホホホホ!

Ed:僕の場合は親父がギタリストで、家族全員何かしらの楽器を弾かなきゃならない決まりだったから(笑)、僕も5歳でキーボードを弾き始めたんだ。で、姉貴のダンナさんがジャズ・ギタリストで、一度家に遊びに行って彼の大量のレコード・コレクションを見せてもらったときに、ジミ・ヘンドリックスの『Are You Experienced?』を見つけたんだよ。で、レコードをかけた瞬間……。実は僕、ずっとキーボードだけやってたんだけど、あるときドラムがやりたいと思って、その頃ちょうど母親を説得してドラム・レッスンも受けさせてもらってたんだ。ところが『Are You Experienced?』を聴いて、“オーマイガーッ!”って感じになって……ちょうど13歳くらいだったかな。めちゃくちゃ興奮しながら家に帰ったのを覚えてる。で、ある朝目が覚めると(笑)親父が廊下に立ってて、いきなり「ギター・レッスンに申し込んだから、ギターを買ってやろう」って。それでギターを買いに出かけて、以来ドラムには1度も……(笑)。

Greg:ウホホホホ。

Ed:……ギター以外何も弾かなくなっちゃった。最初に覚えた曲は、フレディ・キングの“ハイドアウェイ”だったな……。だから、そう……ヘンドリックスと父親が、いちばん影響を受けたミュージシャンだね。ヘンドリックスっぽい服を着て、鏡の前に立っておもむろに“Voodoo Child”とか弾き出したりして……。

Greg:ウハハハハ。

Ed:で、部屋にハーフ・スタックのギター・アンプが置いてあって……。

Greg:ブッ! 何歳でだよ!?

Ed:14か15だったと思うけど、新聞配達して買ったんだぜ。

Greg:アーッハッハッハ!

Ed:母親に保証人になってもらって銀行でローンを組んで、自分で新聞配達して返済したんだ。フェンダーの4-12で、ひどい代物だったなあ。部屋の中で爆音鳴り響かせてたよ。で、実は一方でマーチング・バンドにも入ってたから、ユニフォームのトップを着たまま鏡の前に立って、こんなふうにヘンドリックスになりきったりとかして。

Greg:アハハハハハ。


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