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Deerhoof



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では、ソングライティングについて聞きたいんですが、ディアフーフの曲ってどんなふうに出来上がってくるのでしょう? 今の話だと各自がアイディアを持ってくるということのようですね。

Satomi:そうです。

それぞれ、かなり完成した形で持ってくるんですか?

Satomi:一番完成した形で持ってくるのはグレッグで、“これ以外のものを弾いてしまうとこのコンポジションは成り立たなくなる”(笑)っていうくらいのところまで完成されてて、それはそれでちょっと辛いんですけど……。他のみんなも全体的な構成とか、ハーモニーとかまで一応持ってきて、あとは話し合いながら、アレンジはみんなでするんですけど、基本的には各自で作って持ってきます。そういう方がやりやすいんですよ。みんなシャイだから「こんなのがあるんだけど」って自分のパートだけ持ってくることは絶対ないです。

ロック・バンドにありがちな、全員が顔を合わせて、誰かが何かつま弾いたら他の誰かが合わせるみたいな、そういうのはなくて……

Satomi:あ、それはないです。

ほとんど完成したものを持ちよる、と。

Satomi:そうです。みんな自分の家で考えてから来るのが好きみたいで、お互いデモをMP3で送り合ったり(笑)。タイトルとかも“Greg 1”、“Greg 2”とか“John 1”、“John 2”とかだし(笑)。

そこにはもう全部、ギターもドラムもベースもしっかり入っちゃってるんですか?

Satomi:入ってないのもあるんですけど……例えばわたしはベースで曲作るんで、ベースと歌だけとか。あと“ギターはこんな感じで”みたいな。だからひとりひとり、ちょっとずつ作り方は違うんです。ジョンは結構ギターで全部乗せて“どうですか”って感じで送ってくるし、エドは入ったばっかりだからどんな感じで作るのか最初はわからなかったんですけど、作り方がジョンと結構似てるんで、ふたりで“ギター合宿”じゃないけどミーティングをやって、持ってきたりとかしてますね。でも基本的にはみんな、自分の完成した“ヴィジョン”を(笑)持ってくるって感じですね。

歌メロとかは、どんな感じで決めるんですか?

Satomi:歌メロも、みんな持ってくるんですよ。でも、わたし的に“それは歌えない”っていうのもあって……たとえばギターで作ったメロディとか歌うとなると難しかったりして、そこらへんはわたしが勝手に歌いやすいようにメロディを変えちゃったりすることもあるんですけど、基本的にはみんなメロディを持ってきます。

ほとんど1回だけ新譜を聴かせてもらってるんですが、たとえば8曲目はバスケットボールの曲だったと思うんですけども……

Satomi:あ、バスケットボール、はい。

あの曲とかは、どんなふうにして出来たんでしょう?

Greg:いつ聴いたの?

Satomi:どんな状態のやつを聴かれました?

ついさっき、ちょっと早く来て聴かせてもらったんです。

Greg:あ、なるほどね。

Satomi:どんなふうに作ったか、覚えてないなあ……そう、歌ってたんですよ。♪バスケットボール♪とか言いながら歩いてるうちに“出来た!”と思って家に帰って書いて、友達に電話して歌って、「どう?」って訊いたら「いいんじゃない」って言ってもらえて。それでグレッグとふたりで「じゃ、こんな感じで」って。

Greg:ウホホホホ! 彼女が全部作ったんだ。メロディもベースラインも、何もかも全て出来上がってた。ただギター・パートだけがなくて、そしたら彼女が「そういえば、ローリング・ストーンズの曲で“マイ・オブセッション”っていうのが好きなんだよね」って言うわけ。『ビトウィーン・ザ・バトンズ』に入ってる目立たないトラックだけど、あの曲のギター・スタイルとギター・サウンドが、めちゃくちゃ好きだって言うんだ。

Satomi:そう。

Greg:で、「この“マイ・オブセッション”みたいなギター・パート作れる?」って訊かれて、それでああいうギター・パートをメロディにくっつけてみたんだよ。

Satomi:もうまずギターのトーンから入って(笑)。

Greg:トーンと、それに演奏のスタイルもね。1966年のキース・リチャーズになった振りをして……つまり何ていうか、曲やパートを書こうとしてるときに、自分でどうやってアイディアを見つけ出すかっていうと、たとえばこういうちょっとした“細工”を仕掛けてみようとすることもある、ってことなんだ――“よし、この曲を作ってる振りをしよう”、“このギター・プレイヤー/ドラマー/リリシストになった振りをして、連中ならこういうときどうするかを考えよう”みたいに自分自身をだましてアイディアを思いつく、っていうのかな。たぶん、そうやって自分がやったものは、実際のキースのプレイとは似ても似つかないんだろうけど(笑)、でもそういう小細工を自分に仕掛けることによって思いついたのが、あの曲のギター・パートなんだよ。

Satomi:ティーンにウケるような、歌いやすい曲が作りたかったんですよ。北京オリンピックがあるから“これは応援歌に使ってもらえるかも”とかって。

Greg:キャハハハ!

Satomi:ドリーム・チームが出てくるときに♪バスケット・ボール♪とか……絶対あり得ないですよね(笑)。

いやあ、それはわからないですよ(笑)。

Satomi:最初も♪パン、パン、パ、パンッ♪ってチアリーダーがやれるじゃないですか。でも結局、全然オリンピックっぽくなくなっちゃったんですけど。

……まあ、そうですね……。

Satomi:イヤハハハ(苦笑)。でもグレッグも、キース・リチャーズが大好きなんですよ。こないだ飛行機に乗ったときにもらった新聞で、ルイ・ヴィトンの1面の広告にキース・リチャーズが出てたんですね。

Greg:あははは。

ルイ・ヴィトンの広告?

Satomi:そう。不思議ですよね。そしたら、グレッグがそれを切り抜いて、別にルイ・ヴィトンは全然好きじゃないんですけど、キース・リチャーズだからって切り抜いて、それが今物置の中に貼ってあって。(扉を)開けるとキース・リチャーズが……(笑)。

Greg:あれは物置じゃなくてオフィスだってば!

Satomi:グレッグのオフィスは物置の中なんですよ。通りのサイレンの音がうるさいから、物置を整理して、服とかちょっと詰めて、中にコンピュータ置いてやってるんです。

(笑)そこにキース・リチャーズもいると。

Satomi:そう、キースのルイ・ヴィトンのアド写真が貼ってあるんですよ。『シャイン・ア・ライト』も、もう何回も観ました。

おお。

Satomi:映画館でも何回も観た上に、今回飛行機で来るときも、他の映画観ないで3回連続で観てましたよ。

Greg:(日本語で)ヨンカイ(笑)。

Satomi:ローリング・ストーンズのトリヴィアやらせたらすごいです。

Greg:ウホホホホ。

Satomi:“チャーリー・ワッツは何匹犬を飼ってるか”とか、すごい何でも知ってるんですよ。

じゃあ、一番好きなアーティストはキース・リチャーズなんですか?

Satomi:そうよね、一番好きよね。

Greg:イチバンかどうかはわかんないけど、何ていうか……若い頃、何かしらのヒーローとか本当に気に入ったものに出会えるのって、すごく楽しいことじゃない? 確かに中には何年か後には興味をなくしちゃうものもあったりするけど、やっぱり子どもの頃何かに夢中になれるのって、すごく素敵なことだと思うんだ。すぐ飽きる場合もあれば、何年経っても相変わらずまだそのことを“研究”してたりすることもあるからね――新たな発見をしたり、さらに深くのめり込んだりしながら、その全てを理解しようとし続けてるんだ。そういうヒーロー的存在が音楽の世界に何人もいる僕は、ラッキーだと思うよ。誰しも音楽の世界のヒーローっているもんだけどね。その中でもキース・リチャーズは、よく言う“枯れることのない泉”みたいな存在で、彼の音楽を改めて聴くたびに“ワオ!”っていう新しい発見がある。キース・リチャーズに対する気持ちって、“好き”っていう感覚とはまた違うんだよな。ただ彼の音楽が好きだっていうだけじゃなく、子どもの頃に彼の音楽を聴いて受けた衝撃もすごく独特で、僕の中で何かスイッチが入ったような気がしたわけ。そのスイッチは今もオンのままで、今もまるで食べ物か栄養素みたいに僕に力を与えてくれる。ただ一方では、いい意味でイライラの種でもあるんだよ。“自分も音楽を作らなきゃ、何かやらなきゃ”って、いても立ってもいられなくなるから。そう、ムズムズしてくるんだよ(笑)。

Satomi:あと余談なんですけど、キース・リチャーズ以外にもうひとりいるんですよ。

Greg:ヘッヘッヘ。

Satomi:すごいヒーローが……ウィリアム・シャトナーなんです!(笑)

Greg:アッハッハハ!(大笑い)。ウホホホホホ!

Satomi:テレビを観てて、コマーシャルとかにウィリアム・シャトナーが出てきたとき、「グレッグ! ウィリアム・シャトナーが出てるわよ!」とかって呼ぶと、何をしてても見に来るくらい大好きよね。

Greg:ああ、でも誰にだってそういうヒーローはいるだろ。

Satomi:わたしにはいないと思うけどなあ。

Greg:サトミハ、ドリフターズ、ダイスキ(笑)。

Satomi:あ、大好き〜(笑)。

Greg:ア〜ハハハハ!

Satomi:あなたもでしょ。

Greg:もちろん、ウホホホ!


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