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“コイン・オペレイテッド・ボーイ”って曲が大好きなんですけど、ライヴではアルバムと歌詞を少し変えていますよね。サンフランシスコで観た時には、その箇所をアマンダが歌うとお客さんも拍手喝采で――隣にいたやつなんか思わず「もう1回あの部分を歌わせたい!」と漏らしてましたが――フジロックでは言葉の問題でそういう感じにはならなかったですよね。ちょっと気になったりしましたか?

Amanda:うん、確かにそういうことも考えるし、ヨーロッパをツアーしてる時でも、どれだけ歌詞の意味が伝わってるんだろうって考えたりもしてたのね。今日も、フジ・ロックに来る普通のお客さん達にどれだけ自分の言ってることが理解してもらえるんだろうって考えてたの。ただ、すごく不思議なんだけど、まずソングライターとしての自分がいて、ステージでどうやって歌詞の内容を伝えていったらいいのか必死になって考えてる一方で、純粋にパフォーマーとしての自分がいて、言葉なんて関係ないって思ってたりもするの。言葉が通じないなら、体でも何でも使って表現していけばいいや!って思ってるのね。私がこのバンドで、っていうか、ブライアンと一緒に演奏するのが好きなのは、そういうところにも理由があるのよね。ライヴをやってると、うまく伝わることもあれば、そうじゃない時もある。ブライアンの調子が良くないこともあるし、私のピアノがイカレちゃってる時もあるわ。ただ、ライヴをやってて何が一番いいかっていったら、よくも悪くもその場にしか生まれない空間を共有していくことなの。だから、演奏がどうのこうのっていうよりも、私とブライアンとが一緒に演奏してるってことが大事なのよ。私達が一緒にステージに立って、お互いに目を合わせながら、その日その場所でしか起こらない一瞬を作り上げて、その空間をお客さんと共に分かち合うこと。だから、ライヴをやって、最高の時もあれば最悪の時もあるし、ひどい音だったり誤解されて伝わっちゃうこともあるけど、とにかくリアルで生々しい経験であることは確かなの。そしてブライアンは、それを最後まで一緒に経験してくれる人なのね。

Brian:いくら良い演奏だって、気持ちが入ってなかったらダメだしね。

Amanda:うん、心ここにあらずって感じの演奏を聴かされるなら、下手な演奏を聴かされるほうがずっとマシだし。ミュージシャンって、まずはミュージシャン同士お互いの目を見てお互いの演奏を聴くってことが大事なんだけど、ライヴの時にはお客さんの声にも耳を傾けなくちゃいけないのよ。ライヴに限っては、その日その場に集まってくれた人達がバンドの一部になるんだから。私は、バンドとオーディエンスの間に壁を作るのは絶対にイヤなの。その姿勢から考えてみても、私のパートナーはブライアン以外には考えられないのよ。

わかりました。“コイン・オペレイテッド・ボーイ”では、オモチャの男の子と人間の女の子に間にあるちょっとアブない感情のありようを、セクシャルな感じも絡めて歌っていますが、このアイディアはどこから生まれてきたんですか?

Amanda:最初にアイディアが浮かんだのは、ドライヴ中にコイン・オペレイテッド・ランドロマット(コイン・ランドリー)の看板を見かけた時だった。それ以来、コインを入れたら動くっていうアイディアが頭の片隅にずっとこびりついてたの。それに私自身ちょうどその頃、忙しすぎていつも色んなことに気がとられていた上に、恋人もいなくて淋しかったのね。で、このアイディアって恋愛にも結び付くかもって思いついたのよ。コインを入れるだけで簡単にスイッチを入れたり切ったり出来るし、ものすごく単純でお手軽じゃない? 最近はそういうインスタントな快楽を求める人が多いし。でも、もちろん実際はそんなこと不可能で、複雑で分かりづらいからこそ恋愛は素晴らしいものなわけでしょ(笑)? だから曲の中に、愛はそんなに簡単じゃないって気持ちもちゃんと込めてるわ。

曲調もオモチャっぽい感じをうまく出してますが、やっぱり先に歌詞のアイディアがあったから、ああいう感じの曲調になったんでしょうか?

Amanda:そう、歌詞のアイディアからインスパイアされてああいう曲ができたの。あの曲なんか良い例だけど、童謡みたいな子供っぽくてイノセントなメロディに、毒を入れていくのが好きっていうか。このバンドの名前にしても、可愛らしいお人形さんの“ドール”に、人類史上最悪の出来事を連想させる“ドレスデン”でしょ。2つの相反するイメージを結びつけることで、そこに強烈なイメージを浮かび上がらせてるっていう。世にも美しいアートや音楽って、そういう二面性を持っていると思うのよ。対立し合う2つのものを結びつけることで、そこに美しさと、悲劇が生まれるのね。私達は、可愛らしいものや、みんなが普段何気なく目にするもののイメージを使って、人間の奥底に秘められたグロテスクな感情をえぐり出そうとしてるわけ。私にとってアートとはそういうものなの。自分が普段目にしていなかった胸の内をえぐり出してくれるものが本当に素晴らしいアートなのよ。

わかりました。ところで、最近お気に入りの音楽やアーティストなんかを教えてもらえますか?

Amanda:アメリカやヨーロッパで名前が知られるようになってきたレジーナ・スペクターっていう女性ソロ・ピアノ・シンガーがいて、2ヵ月前にアルバムをリリースしたんだけど、これまで聴いたこともないような美しい曲を書くの。ソニー・レコードと契約したばかりだと思うけど。

ピアニストとして尊敬している人は?

Amanda:ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンク! それにバッハも(笑)。

ステージでは、ブラック・サバスの“ウォー・ピッグス”をやってましたけど、あの曲をやろうということになったのは?

Brian:最初にあの曲を演奏したのはハロウィンのときだったよね。

Amanda:私は子供の頃ブラック・サバスって聴いたことなくて、ブライアンはもちろん大好きだったけど――。

Brian:(にっこり)。

Amanda:私が初めてブラック・サバスを聴いたのは……その当時、ごっついバイクに乗った、見るからにへヴィメタ・オタクって感じの人と付き合ってたんだけど(笑)、一緒にドライヴしてる時に、ウオーッって感じでブラック・サバスをかけ始めて(笑)、私が「誰これ?」って訊いたら、「あの偉大なるブラック・サバスを知らない!? 冗談だろ!?」って、すっごいショックを受けてたわ(笑)。ブラック・サバスがへヴィメタルだってことは知ってたけど、実際に曲を聴いたことはなかったのね。でも、実際に聴いてみたらすごく良かった。中でも“ウォー・ピッグス”は大好きな曲で、暑い夏の日に車で高速を走ってる時に初めてあの曲を聴いたんだけど、超感動しちゃって、「すごい、メタル最高!!」って、その時に初めてへヴィメタルの何たるかが理解できたと思ったの。このバンドで最初にあの曲を演奏したのはハロウィンの時なんだけど、ブライアンに「ブラック・サバスのカバーをしてみない?」って声をかけたら――。

Brian:(感嘆の声で)「アマンダ! ありがとう!!」(笑)。

Amanda:――と大喜びしちゃって(笑)。で、その時はそれきりだったんだけど、何年かした後ツアーで再び演奏するようになったのね。あの曲って、すごくツアー向きのナンバーだと思う。特に今回みたいに初めての場所で、お客さんの反応がどうなるか分かんない場合にはとても助かるのよ。即効性がある曲じゃない? それにブライアンのドラムがまたあの曲にすごくハマってるのよねー。

Brian:(得意そうにドラムを叩くふりをしてから)それにあの曲はリスナーの目線に立ってるっていうか、お高く止まってなくて、誰でも共感できる内容を分かりやすい形で伝えているよね。頭で考えるよりも、むしろお腹でガツンと受け止めるって感じでさ。自分達があの曲をカバーすることで、ロックンロールの気持ちよさみたいなものを、オーディエンスを威嚇したりせずに伝えられると思ったんだ。いつでもお客さんの目線に合わせていかないとね。

Amanda:あと、ライヴで演奏するには、これ以上ないくらい完璧な反戦ソングだし。ちょうどアメリカで大統領選が行なわれてる頃のツアーでも、ずっとこの曲をやってたの。この曲をやる時には、必ずみんなに選挙に行くように呼びかけてたのよ。

さて、05年はデビュー・アルバムをロードランナーからリリースし、ナイン・インチ・ネイルズの前座として世界を周り、日本に来てフジ・ロックに参加し、さらに今後は幾つかのフェスティヴァル出演も控えていますよね。これからドレスデン・ドールズは多くの人々に受け入れられていくことになるでしょうし、あなた達の人生にも大きな変化が訪れたと思いますが、そうした瞬間を過ごしている現在の、素直な気持ちを教えてください。

Brian:うわああー(笑)!! 誰も理解してくれないんだー(笑)!!!!

Amanda:日々変化があるからホントに大変で、特に家に帰れないのがキツいわね。ブライアンも私も同じ環境で同じことをしてるけど、2人とも違う人間だから感じることは違うと思う。私にとって一番つらいのは、アーティストとして自分を表現しているのに、創作活動に時間が割けないことね。いつも自宅で曲作りをするんだけど今は滅多に帰れないし、最近はいつも同じ事を何度も繰り返し話してるだけのような気もしてる。こうしてあなたにバンドのヴィジョンなんかを語ってるけど、実際は創作活動もままならないような状態だと、自分が偽者に思えてきちゃってて(笑)。ブライアンはソングライターじゃないからそういう思いはないかもしれないけど、家に帰れないのはどんな人にとってもつらいことね。

Brian:ずっと欲しかったものが全て手に入ってしまって、いや、たとえ全てじゃなかったとしても、過去を振り返るほどの成功を手にしたとしても、最終的に充足感を得られていなければ……。

Amanda:無意味になる。

Brian:うん、幸せにはなれないだろうね。そういう意味で今の状態は、自分にとって何が重要で、何が幸せをもたらしてくれるかを学ぶいい機会だと思ってる。とても恵まれているのは十分承知しているけど、大変なのも事実なんだ。20歳の頃は「ツアーに出て毎日ライヴが出来たら最高なのに」って思ってた。でも実際その夢が叶ったら、人生の別の部分において、ある種の虚無感を感じるようになったんだ。だから、プライベートや愛する人々に対する自分、そしてプロのミュージシャンとしての自分、そういった全てのバランスを均衡に保つことが大切なんだよ。そのどれかに重きを置きたくなる気持ちになったとしても、他の部分にも目を向ける心を育むことが大切なんだ。

がんばってください。じゃあ最後に、今後の予定は?

Brian:9月に新作のレコーディングを控えてるから、すごく楽しみなんだ。1年半のツアー経験で培ったものを形にしたソリッドなアルバムになると思うよ。

楽しみにしてます。

Amanda:私達もよ!

リリースはいつ頃を予定しているんですか?

Brian:たぶん来春には出せると思う!

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