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Niigata, 2005. 7. 30
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Shizu Kawata


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 05年、ナイン・インチ・ネイルズのワールド・ツアー前半戦でサポート・アクトに抜擢され、同時期にデビュー・アルバムがロードランナーから世界リリースされたことで、一気に注目を集めるようになったザ・ドレスデン・ドールズ。ピアノ&ヴォーカルのアマンダと、ドラム(時にギター)のブライアンによる、この男女デュオは、トレント・レズナーが認めただけあって本当に素晴らしい才能を持っている。同年夏のフジ・ロックで、そのステージを目の当たりにした人なら、存分にそれを実感できたのではないだろうか。06年にはショーン・スレイド(※フジに同行するほどの入れ込みようだった)のプロデュースを受けてセカンド・アルバムを完成させ、さらなる飛躍を見せていってくれるはずだ。それにしても、ステージ上でもオフでも、実にチャーミングなコンビです。

「可愛らしいものや、ふだん何気なく目にするもののイメージを使って、人間の奥底に秘められたグロテスクな感情をえぐり出そうとしてるわけ。私にとってアートとはそういうものなの」

アマンダの眉、すっごくクールでキュートですね!

Amanda:ありがとう! 4年ぐらい前、マリーネ・ディートリッヒそっくりさんコンテストに出場するために全部そり落としたのがきっかけで(笑)、それ以来ずっとこうしてるの。

デザインはどうやって考えついたんですか?

Amanda:音楽や他のことと一緒で、魔法みたいにパッって思いつくのよ。何かを参考にしたこともないし、何となくこのデザインに落ち着いたの。

あまりに特徴的だから、ステージ以外でも周りの人がすぐあなただと気付いてしまうのでは?

Amanda:ほんとそう。独特だものね。いつか有名になったらまた伸ばすつもり(笑)。

ちなみに、僕はコーチェラ・フェスティヴァルにも行ったんですが、M.I.A.がやっている時、あなたが「こんなムサ苦しい男がいっぱいいるテントになんていられないわ」といった感じで出て来る姿を目撃して、やっぱり眉ですぐあなただと分かっちゃいました。

Amanda:うん、すごく混んでたわよね。でもM.I.A.のステージは素晴らしかった!

では、今年の前半ずっと続けてきたナイン・インチ・ネイルズとのツアーの感想を聞かせて下さい。

Brian:初めて2〜3千人規模の会場で演奏したんだけど、とても良い経験だったよ。集まったオーディエンスは5年間ずっとナイン・インチ・ネイルズのライヴを心待ちにしていたわけだから、オープニング・アクトである僕達の力が試される機会でもあった。ライヴ前にネットの掲示板で僕達のことが話題になっていて「ドレスデン・ドールズはカッコいい!」とか「いや最悪! トレントはどういうつもりだか!」なんてメッセージが色々書き込まれてた。とにかくフタを空けてみるまで何も想像できない状況で、彼らの期待にどれだけ応えられるかはもちろん、最高のライヴを届けたいという意気込みが強くなったよ。

Amanda:大変だったけど、その分手に入れたものも大きかった。トレント・レズナーも他のメンバー達も色んなことを教えてくれたわ。直接話をするだけじゃなく、彼らの周りにいるだけで音楽に対する姿勢やレベルの高さを肌で感じ取れたの。

なるほど。ところで、今こうして見ていても、2人はお互いにとって最高のパートナーだと思うのですが――

Brian:うん、もう知り合って5年くらい経つけど、仲はすごく良いんだよね。一緒に過ごす時間がすごく長いのに、それでも楽しくやってられる。仕事上の付き合いだけとか、仲違いをするようなバンドも多数いる中で、僕達は友情を深めることができてほんとラッキーだと思うよ。

バンドにおけるパートナーと、恋愛におけるパートナーとではどういう違いがあると思いますか?

Amanda:面白い質問ね。既婚者達を見ていると、驚くぐらいバンドと重なる部分があるなって思うわ。結婚ってお互いを深く知り合う上に人生を約束するわけじゃない? 私達のような男女デュオは夫婦関係同様とてもヘヴィな間柄で、問題が起きたら何としても解決案を模索せざるを得ないから、極めて密度の濃い関係になるのよ。

Brian:それにお互いの弱さや欠点を補い合う方法を見つけようとするところも、プライベートやバンドにおける僕達の関係を反映してるんじゃないかな。2人の個性や長所を最大級に活かすことが大切だから。

Amanda:意見の相違に腹を立てず、相手を認め称賛する気持ちが大切なの。私もブライアンもこういう考えになるまで何年もかかったけれど、自分のフラストレーションを相手にぶつけずうまく昇華させるのよ。そのままの相手を受け入れるのはどんな関係においても基本中の基本だものね。

なるほど。さて、2人が最初に出会った瞬間から、このバンドのユニークなコンセプトは明確に見えていたのでしょうか?

Amanda:全然! 結成当初は今のようなメイクや衣装もなしで、音楽もストレートなパンク・ロックだったの。でもとあるライヴで「今日はドレスアップしてみようよ!」ってことになったのね。それがあまりにも楽しかったから、以来このスタイル落ち着いてる。それまではバンドのイメージや外見はもちろん、演劇の要素を取り入れようなんて2人で話し合ったことは一度もなかった。ごく自然にこうなっていったというか。

Brian:もともと視覚面で特別な要素を取り入れたいとは思ってたんだ。何もかも偶然の賜物ということではなくて、ある程度やりたいことは分かってたよ。でも「これがロック・スターだ!」と言わんばかりの大袈裟な演出はしたくなくて、あくまで自然の流れに任せたかった。で、ふと僕達の音楽性は極めて30〜40年代の装いにマッチしていると気付いたんだよね。

Amanda:ある日、ライヴの衣装を決めようと私のクローゼットを漁ってたんだけど、たまたまドレスとタイツを見つけたの。で、ブライアンには「その帽子いいね」って。だからわざわざ全部そろえ直す必要もなかった。私がすでに持っていたワードローブでコーディネートしたのよ。

では、音楽スタイルに関しては、どのようにして出来上がってきたのでしょうか?

Brian:結成後、数ヵ月の間で徐々に変化していったんだ。

Amanda:それよりもう少し長くかかったかも。最初にブライアンにデモを聴かせた時、完成してる曲もあったんだけど大半はドラムを必要としていた。で、鍵盤を奏でる左手が「もっと激しく、ドラムみたいに!」って訴えてたのを、ブライアンがしっかり理解してくれたの。他のドラマーと試してみたこともあったけど、ブライアンほど理解してくれた人はいなかったわ。ビートだけじゃなく、リリカルな要素も必要だと直感で感じ取ってくれたのね。バンドを始めたばかりの頃は、私のベッドルームで2人だけでジャムってた。音を通じて、まるで人が知り合うような感覚でお互いの“ことば”や“声”を覚えていったの。

Brian:そうなんだよ。

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