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かつては現バトルスのイアン・ウィリアムスも在籍していた、マスロックの代名詞的存在=ドン・キャバレロ。ドラマーのデーモン・チェを中心に活動を続けているが、2009年の来日時、東京公演のライヴ前に楽屋で3人のメンバーを相手にインタビューした。すでにアルコール度数の高そうな酒ビンをガンガンあおっており、そのせいなのか、あるいは普段からそうなのかはわからないが、かなりコアな話を細かい説明は端折りっぱなしで、思うさま語ってくれた。結構とっちらかってしまった感じもあるが、それでもかなり面白い話が聞けたと思う。 「俺達の音楽は、ほとんどの人に“パンク・ロック”とはみなされないだろうけど、でも自分たちとしては、まさにパンクをやってるつもりなんだ」 日本は2度目になりますが、あらためて印象などを聞かせてもらえますか? Demon:ライヴをやるにはすごくいい場所だよね。食べ物も最高だし。来るまでにすごい時間がかかるのが難点だけど、それは日本のせいじゃないし。 Jason:街がとにかく美しいよ。レインボーブリッジを渡ってくるときに見える街や海の風景が、ホントにきれいで。 Gene:そう、海を感じることができるんだ。 (笑)。前回の来日直前に3人編成になったわけですが、4人の時に作った前のアルバム『World Class Listening Problem』の曲を3人で再現するにあたっては、どのような工夫をしてるんでしょう。 Jason:最新技術に助けてもらってる部分はあるよな。 Demon:ああ。 Jason:アカイ・ヘッドラッシュとかも使うし、欠けたギター・パートを補うためにジーンがループをやったり。あと、曲そのものを部分的に修正してみたりもしてる。 Gene:そう、パートをところどころアレンジし直したりね。 Demon:アカイ・ヘッドラッシュは、すごく実用的なループペダルだよ。大学の学費をつぎ込まなきゃ買えないくらい高価なループペダルも巷に出回ってるけど、アカイ・ヘッドラッシュは確か、200ドルとかじゃなかったっけ。 Jason:ああ、200ドルだ。 Gene:でも、それできっちり仕事してくれるんだ。 最新作『Punkgasm』での曲の作り方も、4人でやるのと3人でやるのとでは、何か変化がありましたか? Demon:何から何までってわけじゃないよ。細かいところで一定の変更を加えたり調整したりっていうのはあるけどね。ある意味ではいろんな制限がなくなった、とも言えるし……。とにかく(ジェフ)エルスワースは、すごく質感のあるプレイをするやつだったよな? Jason:ああ。 Gene:『World Class Listening Problem』じゃ、オリジナリティのある曲を2〜3曲書いてたけど……。 Demon:うん。 Jason:『World Class Listening Problem』と『Punkgasm』じゃ実際ずいぶん違うって、レコードを聴き比べればわかると思うよ。明らかに違いが音に表れてるっていうか、別に何かが“欠けてる”とかいう意味じゃなくて、曲に違いが出てると思う。 新作は前作に比べて、タイトルもそうだし、曲も短かったりしてパンク的なストレートさみたいなものがより出ているような印象を受けたんですが、そのへんはやはり3人になったことと多少は関係してるんでしょうか。 Demon:それはないね。今回のアルバムは、要するに借りを返したってことだと思うんだ。パンク・ロックっていうロックンロールの1チャプターに、俺達はかなり長いこと恩義を感じてたんだけど、今回ふと“そろそろ借りを返さなきゃな”って思ったんだよ。自分たちは音楽史のあの一章から恩恵を被ってて、あの一章がなかったら自分たちもここにいなかったってことも認めてるからね。 Jason:俺なんか「皮肉だなあ」とも思うよ。世間で見かけるモヒカン刈りのタトゥーだらけのバンドなんかより、自分たちのほうがよっぽどパンクだと自負してるからね――自分たちにしかできない音楽をやってると思うし、どんなジャンル分けにも適合しないし、そもそもそんなことで心配したりもしないし。まあ、そうは言っても、俺達の音楽はジャンル的に見て、ほとんどの人に“パンク・ロック”とみなされないのも事実なわけだけど、でも自分たちとしては、まさにパンクをやってるつもりなんだ。 Demon:ああ、スピリットはまさにパンク・ロックなんだよ。 今回のアルバムのタイトルも、パンクに対する敬意を表す意味でつけられたものなんでしょうか? Demon:パンクを讃えてるんだよ。賛美してるんだ。 Jason:敬意ももちろん表してるしね。 Demon:ああ、もちろん、もちろんさ。あと、みんなのパンクに対する凝り固まった見方を変えたい、っていう気持ちもあったかもね。
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