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わかりました。では、もうひとつ、先のE-メールでのインタビューで「自分は自己破壊的な性格の持ち主だと見られてきた」とか「メンバーのほとんどが自分たちに対してポジティヴなイメージを持てない」というような発言があったんですけれども、最新作が受け入れられたことで、今ではもっとポジティヴなイメージを持てるようになったとか、そんな変化を感じたりしてはいませんか? Tim:ポジティヴとネガティヴ、楽観と悲観といった対立で、自己破壊的な性格を説明することはできないと思う。自己破壊的な性格を育てるのはペシミズムじゃないと思うんだ。例えば……自己破壊的であることはオプティミスティックである、とも言える気がする。こう言った方がいいかな……僕にとって難しいのは「ひとつのことを長続きさせること」なんだ。カーシヴをここまで持続させるのはすごく大変だったんだよね。一度解散もしてるし。バンドがいい状態にある時でもその事実を認めることができない、ってのが僕の抱えてる問題のひとつでね。でもこれはペシミズムじゃないと思うんだ。違いがあると思う。僕は決して悲観主義者ではなくて……楽観主義者でもないけど……。 バンドを続けるということは、あなたにとってそんなにハードなことなんですか? Tim:だいぶマシにはなってるけどね。でも実際、今年の前半にアルバムの評価が高そうだって判明した頃、つまり「これは成功しそうだ」って状況になってきた時に、全てを投げ出したい気分になってしまったんだ。もう完全にこの世界から足を洗ってね。それを家族や友人たちが「成功に対する恐怖心、あるいは気の弱さ」だと気付かせてくれたんだ。不幸にも僕は、全く同じことを恋愛でもやってきてるからね(苦笑)。うまくいきすぎてるって感じると、そこから抜け出したくてしょうがなくなる傾向があるんだ。でもマットの助けによってカーシヴを続けることができた。今ではそういう気分になった時は、自分にそういう傾向があるってことを思い出すようにして、認めることによって乗り切るようにしてる(笑)。 うーむ……。 Tim:自分でもよく分からないから、説明するのが難しくてね。前よりもうまく対処できるようになってることは確かだよ。正直に言っちゃえば、次のアルバムを作ること自体が僕にとってはハードなことだし、このバンドを続けるべきかどうか、すごく悩んだよ。でも結局(止めることは)ネガティヴなことだって結論に達して、続ける努力をした方が最終的にはベターだって決心したんだよ。 ……例えば、こうやって日本へ来れたとか、嬉しい出来事もあるっていうことが、創作活動を前に進めるエネルギーになってくれたりはしないのですか? Tim:いや、それが……日本へ来るってことは、僕ら全員にとってひとつのゴールだったから、それが達成されたってことは、実はネガティヴに働くことも考えられるんだよね(笑)。最終目標と言ってもいいくらいだったから、これでやりたかったことはやり尽くしちゃったとも言えるわけで。マットと一緒にバンドを始めた最初の頃、僕らにとって重要なことのひとつに「遠くまで行って演奏する」っていうのがあって。例えば、今僕は日本にいるけど、うちの父親は日本に来たことはない。人が一生のうちに行ける場所は限られてるし、行きたいと思ったって希望が叶う保証はないんだ。バンドをやりながらあっちこっち見て回るのは最初から大きな目標だったよ。ツアーの物珍しさは薄れてしまったけど、実現できたことに関してはすごく満足してる。もともと旅行が好きなこともあって、しばらく家にいると、やっぱりまたツアーが恋しくなるし。でも実際、日本にまで来れちゃったのは困ったもんだね。クリントとも話してたんだ……ひとつの章が終わったような気分がするってさ。自分の音楽でここまで達成できるなんて思わなかった、って言ってたよ。それでまぁ、これからどうしようかって話になんとなくなっちゃうんだけど……このバンド、お互いに仲はいいんだ。その辺は問題ないよ。でもみんな歳を取ってきたしね……。僕には実はもうひとつ目標があって、それは職業ソングライターになることなんだ。目標というよりは、実現不可能な夢みたいなもんだけどね(笑)。目標っていうのは達成できそうなもののことだから。まぁ、そういうわけでそっちの目標の実現は無理っぽいけど、もうそれしか残ってないんだ。それには曲を書き続けるしか方法はないんだし、それ自体は別に難しいことじゃないよね。 うーん、なんかヘヴィな話になってきちゃいましたが、とりあえず個人的には、キーボードを多用してフィクショナルな詞が歌われる次のアルバムの完成を期待していますので……ところで、ここに最新アルバムの日本盤と外盤があるんですが、ジャケットが逆版になっているんです。これには何か意味があるんですか? Tim:へえ……これが日本盤? 確かに反対になっているね。これは多分……確信は持てないけど……半分は反対に印刷したんじゃないかな。こっちのジャケットとこっちのジャケット、両方が店頭に並ぶように、ってね。僕はてっきり、ケースに表裏反対にして入れるんだと思ってた。戻ったらマットに訊いてみよう。もしそうでなければ、片方は印刷ミスってことになるけど(※この後マットに確認したところ、やはり初回プレスの半分は逆に印刷したのだそうです)。僕としては、このクリーンな方が表であって欲しかったな。中を見るとだんだん汚れていくような感じで。でもアナログ盤は確か、ダーティーな方が表になってた。CDの殆どがクリーンであれば、それでも構わないと思ってるけどね。画家のラルフ・ステッドマンって、知ってる? いや、恥ずかしながら詳しくは……。 Tim:ハンター・S・トンプソンっていうアメリカのジャーナリストの本のイラストで有名なんだけど。『The Ugly Organ』のジャケットは、そのラルフ・ステッドマンの作風を真似してるんだ(笑)。 あなたが描いたんですよね? Tim:そう。この絵の具の飛び散り具合が、ラルフ・ステッドマンそっくり(笑)。こういう混沌とした絵を得意とするアーティストなんだ。 わかりました。それでは、今夜これから行なわれるライヴを心から楽しみにしています。 Tim:ありがとう。きっとうまくいくよ。
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