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なるほど、それは楽しみです! ちなみに、歌詞に関しては、あなたが実際に持った感情を元にしていること自体は変わらないと思うんですが、感情を歌詞にしていく作業にあたって、そういった音楽的な変化が書き方にも影響してくることはあるでしょうか?

Tim:歌詞の書き方が変わることはありうると思うけど、それには二つの要素が関係してくるんだ。ひとつは、僕が歌詞を音楽から独立したものとして考えてるってこと。例えばThe Good Lifeやその他のプロジェクトのために歌詞を書くときでも、特にそのプロジェクトに特化した書き方はしない。音楽の方はするよ。例えば別の人間と一緒にやる時は、それに応じた音楽にしなければならないからね。ただ、その一方で、音楽の持ってる雰囲気によって歌詞が左右されることはやっぱりあるんだよね。ダークで陰鬱な音楽のために「子供ができて嬉しい」とか、そういうハッピーな歌詞は書けないし、逆に明るくポップな音楽に自殺願望の歌詞は書かないだろうし(笑)。どんなものをやるにしても、誠実さが根本にあることにおいては同じだけどね。とりあえず、次のアルバムの歌詞ではもっとフィクションを書きたいと思ってるんだ。

想像したお話を書くってことですか?

Tim:うん。個人的な経験をベースにすることは変わりないけど、架空の物語風にしたいんだ。“Driftwood”とか“The Recluse”に近いような感じでね。“Art Is Hard”のような内省的な歌詞は、もう十分やり尽くした気がしてるんだ(笑)。別の表現方法へ移る時期だと思ってるんだよ。

つまり、『The Ugly Organ』の中盤以降に置かれた楽曲のパターンが、より増えていくということでしょうかね?

Tim:そう、まさにそう。

わかりました。ところで、あなたはカラオケとかで女性ヴォーカルの曲を歌うのがすごく好きみたいですが、異性のキーの曲を歌うことが自身のヴォーカリストとしての個性を育むことに役に立っていると思いますか?

Tim:そう、女性ヴォーカルの曲が好きなんだ。男性の歌より難しいから大変なんだけど(笑)、高音域で歌うのが好きなんだよ。誰にも好かれる歌い方じゃないってことは分かってる。高いキーの方が聴く方にとってもチャレンジングだよね。もちろん、ジェフ・バックリーやトム・ヨークのような卓越したボーカリストに関しては別だけどさ。僕の声は、彼らの声よりも聴くのが難しい(ディフィカルトな)部類に入るんじゃないかな(笑)。好きなソングライターにも女性アーティストは結構多いよ。

なるほど。では、自分たちの作っている音楽のオリジナリティーが高いということが、一般大衆にとってディフィカルトに感じられるかもしれないという感覚を、自分自身でも持っていますか?

Tim:ああ。でも、それは僕らが誇りに思ってることでもある。今回のアルバム制作の終盤、最後の数曲を仕上げてる段階になって、一歩引いたところから作品を眺めながら、バンドとして率直に話し合ったんだ。「今度ばかりは、やりすぎたかも知れない」ってね。でも「僕らはこの作品が大好きだし、これこそ作りたかった作品そのものなんだ」って確認し合ったんだ。もしかしたら、オーディエンスを完全に失ってしまうかも知れない。それでもオッケーなんだ。実際にそうなったらショックかも知れないけど、それでも基本的なことは忘れてはならないんだよ。僕らは作りたかったアルバムを作りあげたんだ。もしもオーディエンスがついてこれないなら、それはそれで事実を受け入れるしかない。アルバムに対するレビューの中で、僕にとって一番嬉しかったのは、「ディフィカルトだった」っていうものなんだよね。「通して聴くのが難しく感じたけど気に入ったよ」と言われるのが一番の褒め言葉だよ。聴き手にとってチャレンジングなものを作りたかったわけだからね。

実際には、アルバム・リリース後のアメリカ・ツアーは大盛況だったわけですから、少なくとも本国ではきちんと評価され、支持を受けることができたという実感が得られたのではないでしょうか?

Tim:そう、リリース後に実際これだけの反響があって、とにかくホッとしたよ。僕ら側の予想を遙かに超えていたね。自分たちの音楽を信じて、いいと思った音を探して作ったところで、それが多くの人に気に入られるかどうかは誰にも分からないから。『The Ugly Organ』が成功したことによって、謙虚な気持ちで今後もさらに自分たちを高めていかなければならないと思ったよ。理想の音楽をさらにディープなところまで追求していきたいと思う。それが人々に受け入れられるかどうかは相変わらず未知数だけど、前よりは安心して挑戦できる気もしてる。

今回はすごくいい結果が出たわけですが、前回E-メールでインタヴューさせてもらった時、カーシヴを始めるに当たって、曲作りに最前を尽くし、それを信じるということに加えて、もし自分たちが作ったものを人々が嫌いだと思ったのであるなら、そのことについても対処していく、と答えてくれてますよね。具体的にはどう対処していくことになるのでしょう?

Tim:もし本当にそういうことが起こったら、意気消沈はするだろうけど、それでもアルバム作りは今まで通りにやろう、ってことだよ。パーソナルな出来事以外の外野のノイズに惑わされるのはよくないって、僕は固く信じてるから。批評家やオーディエンスがどんなものを好みそうだとか、そういったことに影響されずに、自分たちの作品に対する集中力を保たなければならない。なかなか難しいことだけどね。逆に言えば、やったことが大成功で大勢の人々に好かれたとしても同じことなんだ。その部分は頭の中からいったん消去して、自分自身の本心、パーソナルなところからアルバム作りをしなければいけないと思う。だから、例え『The Ugly Organ』が総スカンを食らっていたとしても、次のアルバムも全く同じ創作姿勢になっていることが理想なんだ。制作に向かう気分が違っていたとしてもね。

自分の創作活動にとって、外部からのリアクションというのは、どれくらいの意味合いを占めるものなんでしょうか?

Tim:なるべくどんな意味合いももたないように、意識的に努力してる。僕にとって成功するかしないか、そのどっちが重要かって……多分……簡単に白黒つけられるようなことじゃないんだよね。ソングライターとしての自分にとって個人的に重要なのは、常に前進し続けられるかどうかなんだ。ライターとして後退してしまった時が本当の敗北なんだよ。そこが一番キーとなる部分で……『The Ugly Organ』の前の『Domestica』も、ある程度の評価を受けたけど、びっくりするほどでもなくて、よかったな、と思うレベルだった。『The Ugly Organ』はそれより大きなスケールで評価されて、正直びっくりしたんだ。つまり、成功が何をもたらすかっていうのは、僕にとっては初めて遭遇する問題で。だからまだ正体不明な問題でもあるんだよね……。でも……とにかく、あまり気にしないようにしてるよ。ただ漠然と手応えを知っておきたい気持ちは否めないから、例えば『Rolling Stone』と『SPIN』のディスク・レビューぐらいは読むけど、後は風の便りにまかせる感じで(笑)。なんとなく評判がよさそうだとか悪そうだとか分かればよくて、そこから先はシャットアウトするようにしてる。

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