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一方で、最終的にロック・バンドとしての勝負どころはライヴの場である、という意見もあると思います。凝ったサウンド・プロダクションをどのようにライヴで再現しているのでしょう?

Ian:かなりレコーディングに忠実に再現できてると思うよ。僕にしてもジェフにしてもレコード通りのサウンドが出せてると思う。それからバックグラウンドで使ってるような細かいサウンドも、ライヴでも同様に出していたりする。うん、レコードの世界観をかなり忠実に再現したライヴをやってるね。違うところがあるとすれば、ライヴはレコード以上にパワフルだということ。それからライヴではヴォーカルにも力を入れていて、レコードと比べても遜色ないと自負してる。だって、オーディエンスから「ワオ、レコードのヴォーカルは最高。あんな歌い方が出来るなんて。でもライヴは到底ムリだね」なんて思われたら最悪だろ(笑)? だけど僕はステージでもちゃんと歌えるから、皆も驚いてくれるよ。まぁ、レコードとライヴの最大の違いを挙げるとしたら、それは、レコードは自分が気に入るサウンドが出せるまでエンドレスにやり直しが効くけれど、ライヴは瞬間の勝負だということだね。もし失敗したら、それは取り消せない失敗になる。反対に史上最強のいいサウンドを出せたとしても、それはその場一回限りのことで、次はどうなるのか誰もが分からない。そういう場だからこそ、エキサイティングなんだ。ここ2カ月ほどずっとライヴ・ツアーをやってるけど、僕らはメンバーそれぞれの信頼関係が成り立っていて、一緒にプレイするのが本当に楽しいよ。それぞれが個別の世界を持っているのに、それが1つにまとまってプレイするのはナイスなことだよね。

ちなみに最近では、イヤー・オブ・ザ・ラビットとツアーをしたそうですが?

Ian:ああ。彼らとは1カ月くらいツアーしたかな? 最高にクールだった。

一緒にイギリスも廻ったんですよね?

Ian:ああ、2週間くらいね。

英国では早くから好反応を得ていると伝えられていますが、実際に行ってみていかがでしたか?

Ian:最高だったね。これが2度目のイギリスだったけど、今回は特に最高だった。その中の3回は、シヴとも一緒にプレイした。彼らはイギリスでかなり支持されてるから、コンサートの規模も結構デカくて、いいライヴが出来たと思う。それからレディング・フェスティヴァルとリーズ・フェスティヴァルでもプレイしたけど、これまた最高で、夢のような出来事だったよ。ああいった夏を代表するビッグ・フェスティヴァルに出演出来たのは本当に光栄だし誇りに思う。イギリスでは何度もプレイする機会があって良かったな。イギリスでプレイするのは大好きなんだ。オーディエンスの反応もいいし、レビューでも良い記事を書いてもらえたし。あ、2〜3、批判的な記事も書かれたけどね(笑)。

イヤー・オブ・ザ・ラビットとツアーをした感想についても教えてください。

Ian:彼らはスゴイよ。とってもいい人達だし。ただ、彼らはツアーバスで移動してて、僕らはバンで移動してたから……なんせバスの方が速いだろ? 僕らは彼らに追い付くように、毎晩夜通し走り続けたんだよ。マジでタフだったな。毎日12時間は運転してたんじゃないかなあ? しかも真夜中にね。おかげでクラブに辿りついた時は常に疲労困憊状態で……でも、イヤー・オブ・ザ・ラビットのメンバーとは何回か一緒に飲む機会もあって、いい人達だったよ。プレイもいいし、ライヴの構成もしっかりしてる。素晴らしい人達だと思う。

それでは、初夏に行なわれた、ジェッツ・トゥ・ブラジルとレティソニックとのライヴについての感想も聞かせてください。

Ian:とてもクールなライヴだった。まず彼らとニューヨークでプレイして、その後はワンライン・ドローイングというバンドとも1週間くらいアメリカをツアーしたんだ。

ああ、ジョナ・マトランガとも一緒にやったんですね?

Ian:そう、僕らの出番はジョナのワンライン・ドローイングのすぐ後だったんだけど、これもいいライヴが出来た。うん、最近は全てが順風満帆だね。

ところで、あなたの活動背景にはニューヨークのハードコア・シーンがあると思うのですが、ファースト・アルバムの音楽性は、驚くほど多彩で情緒的、かつ先鋭的なものになっています。ライヴァル・スクールズやジェッツ・トゥ・ブラジル、そしてレティソニックなどもそうですが、ここにきてニューヨークでハードコア出身者が一斉にその音楽性を拡大していることに何か共通の空気を感じていたりしますか?

Ian:ああ、それは確かに感じる。それぞれが大人になったという事も関係してるんだろうね。大人になって、そういう音に魅力を感じる年代になったって事だね。僕らがハードコアをやってた15年前は、ラジオを聴いても現在のような多様な音楽は聴けなかったし。多少は他と違う音楽があったのかもしれないけど、ほとんどがポップ・ロック、ハードコア、ハード・ロックって感じだった。メタリカ的な音楽、グリーン・デイ的な音楽って振り分けがされてた時代だし、僕らの思考回路もそういうラインを踏襲してたと思う。うん……だからやっぱり年齢を重ねていった事が現在の僕らの音楽性に繋がっているんだと思うけど……えーと、よく分からないや!

(笑)あなた自身を振り返ってみて、どのような変化があったと思いますか?

Ian:もう山のように変わったよ。挙げればキリがないね。あえて挙げるとすれば、自分というものが少しは理解できるようになったってこと。何が好きなのか、何が嫌いなのかを見極められるようになったんだ。音楽を続けながら、ラジオを聴いたり、MTVを観たりしてると、そういうメディアに出てるような音楽とは全く違う音楽をやりたいって気持ちが強く固まってくる。新しいもの、他とは違うものへ対する情熱は、以前よりも強く感じるようになったね。そういう意味でレディオヘッドを尊敬するんだよ。全く新しい音楽性を打ち出したアルバムを出して、古いファンからは賛否両論で多くのファンを失ったと思うけど、それでも他の人がやらない音楽をああいうメジャーなバンドが打ち出してきたのは素晴らしいことだと思う。今の僕は、雑誌やテレビを賑わせているような音楽を知ると、それとは全然違う方向を打ち出していこうと模索する日々だよ。とはいえ、美しいポップソングを作りたいっていう欲求もある。オーソドックスな中にも何か素晴らしいものが隠されていると思うからね。そういう美しい音楽を新しい手段を用いて表現したい。

現在アメリカのインディペンデント・ミュージック・シーンは、かつてのグランジ・オルタナティヴ・ムーヴメント直前の充実期を迎えているような印象が、ここ遠く離れた日本からも感じられます。現場にいるあなたとしても、良心的で誠実な創作活動を実践しているアーティスト達が、商業音楽に拮抗しうる力を再び持つであろう予感を覚えていたりしますか?

Ian:現在はヘヴィでエモーショナルな音楽が盛り上がりを見せているね。イギリスでは70年代、80年代的なロックが勢いを増してきている。ジェットっていうバンドが特にブレイクしそうな気配を見せてるんだけど、知ってるかな? AC/DCみたいな感じの……ああいうギターを大々的にフィーチャーした音楽がもてはやされている。まぁ、それが今の流行りなんだろうね(笑)。またそういう時代の出番が来たって感じ。それからディスコ・パンク・ロックもポピュラーなんだ。例えばラプチャーみたいなバンドが支持されているし。

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