|
あなたがほとんどの作詞作曲を手掛けていると思うんですが、他のメンバーはどのような形で作曲に関わっているのでしょう? Ian:曲によって、メンバーの関わり方が違うんだ。それはクールなことだと思う。ほぼ全ての素材は僕が書き上げるんだけど、作り方は曲によって異なっている。ギターで曲を書いて、アレンジもつけて、ほぼ完全な状態に仕上げてからドラム・ビートを乗せてもらうっていう事もあれば、ベースになるフレーズだけを考えて、皆とジャム・セッションをする中から発展していく曲もある。僕は自分のスタジオを持ってるんだけど、そこで全部のパートをプレイして、プログラミングもドラムも自分で済ませてしまうこともあるね。 全パートを自分だけでやってしまうんですか? Ian:ああ。そうやって全て自分でやっちゃう時もあるし……反対に、同じ曲を何度かレコーディングするうちに、それぞれが少しづつ違っていて、最終的には曲のスタイルまでもが変化していくっていう事もある。そんな感じで、曲作りはその時々によって臨機応変にやってるよ。その方がクールだし、やってて楽しいんだ。今は自分達のスタジオも手に入れたから、好きなようにやれるんだ。 じゃあ、いつでも好きな時にスタジオが使えるってわけですね? Ian:うん。今、まさにそこにいるんだから(笑)。つまり、僕のアパートメントでもあるんだ(笑)。 地下スタジオなんですか? Ian:いやいや、すっごく広い2000平方フィートのロフトを持ってるんだ。すごく快適だよ。つい最近も、ここでレティソニックが3曲レコーディングしたところなんだ。その曲はMP3.comで聴く事ができるよ。 ということは、そのスタジオでは、他のバンドのレコーディングも請け負っているんですね? Ian:うん。今週は、ウォルターの新しいバンドのミックスをやっているよ。他にも色々なバンドの手伝いをしてる。とはいえ、ほとんどは交友関係のある人達だけどね。特に営業してるわけでもないし。ともあれ、自分のやり方を貫ける場を持てたことは幸運だと思ってるよ。実はカルディアのニュー・アルバムの曲も全部レコーディング終了してるんだ。 えっ、もう次のアルバムが出来上がっているんですか? Ian:うん、すでに20曲がレコーディング済みだよ。クールだろ。 早く聴きたいです。ちなみに、作詞・作曲に関するインスピレーションはどんなものから得ていますか? Ian:なんだろうねえ……。ありとあらゆることがインスピレーションになり得る。音楽的には、新しいレコードを聴いたり、しばらく聴いてなかった古いレコードを聴いたりしてる時にインスピレーションを受けることもあるし、他にも人生の様々な場面においてヒントを得る時がある。それは自分自身が体験したことであったり、身近な人の体験であったり、伝え聞いた話であったり……。本当にどんなことだってインスピレーションの源になるんだ。予期もせず、パッと良いアイデアが思い浮かぶ時だってあるし。中でも特に良いアイデアが浮かぶのは、深夜、ベッドに入って準備万端、寝る体勢になった時なんだけどね(笑)。 (笑)なるほど。ところで、デビュー・アルバムを聴いて、あなたのヴォーカリストとしてのポテンシャルの高さに正直とても驚かされました。これだけの技量を持っていながら、今回までシンガーとして表立った活躍をしてこなかったのは何か理由があるのでしょうか? Ian:結構長い間ヴォーカルを取ってきたけど、自分の中で「これがオレの歌い方だ」っていう確信が持てたのはほんの2〜3年前からなんだよ。以前は自分の声に自信もなかったし、ヴォーカリストってバンドを代表する人物だろ? その分、責任も重くなるし、そういう物事を受け入れるのに多少時間がかかったね。ギター・プレイに対する自信は以前からあったけど、歌うことに対する自信っていうのはほんの2年ほど前にやっと手に入れたって感じ(笑)。少しづつ自分の歌に自信を持てるようになると、より良いものを求めて努力を重ねていった。その積み重ねが、人々からのリアクションにも繋がっていったと思う。その反応を見て、僕自身、今後も続けていこうと決心したのさ。誰だってどこかの分野で人よりも優れた才能を持っていると思うんだ。特技があるのにそれを活かさないのは非常に恥ずべきことだよ。人々に影響を与えることが出来るかもしれないのに……。他の人には出来ない特技があるのなら、絶対に行動に移すべきだ。 ヴォーカル・レッスンを受けたりもしたんですか? Ian:最初はレッスンも受けてたけど、レッスン料を払いきれなくなって辞めちゃったよ。でも、歌うにあたって最大のヘルプになったのは、自分のスタジオを持てて、レコーディングを最初の段階から自分の手で行えたことだね。セルフ・レコーディングの面白いところは、全部を録り終えて聴き返した時、あまりにも身近すぎて何が悪いのかさっぱり分からないところ(笑)。客観的に見るのがすごく難しいからさ。あと、ツアーに出ることによって僕のヴォーカルも鍛えられたと思う。 あなたはさらに、歌とギターだけにとどまらず、他のバンドのレコードでエンジニアを勤めたりもしてますし、例えばカブ・カントリーのアルバムでもテルミンやウーリッツァーなど様々な楽器を弾いてますよね。もとからマルチ・プレイヤーとしての意識は高かったのでしょうか? Ian:ああ、そうそう。えーと、あの時は何をプレイしたかなぁ? えーと、ウーリッツァーとテルミンと……他にも何かやったような気がするけど、覚えてないや。確かに楽器であれば何であれ、とにかく弾きたいってタイプなんだよね。使い方が分からなくても、とりあえずいじってみたいっていう。最近の作品では、ストリングス・アレンジ、それにメロトロンとかチェンバロなんかにも凝っているんだ。そういった楽器をいっぱい使っていて、他にもオルガンやエレクロトニック・ドラムを使ってみたりもしている。自分のスタジオには、ありとあらゆる楽器があるんだ。ドラム・セットからウーリッツァー、テルミン、ギターにベースにオモチャみたいな楽器までね(笑)。 音楽オタクの城って感じですねえ。さて、アルバム6曲目“NEVER FEEL”では、ドラムのタイム感に手を入れたそうですが、ハードディスク・レコーディングによるサウンド・プロセスの割合はかなり高いのですか? Ian:カルディアに関しては、全てのドラム・パートを2インチの24トラック・テープでレコーディングして、それをプロトゥールズに取り込んで作業を続けたんだ。僕のスタジオにはプロトゥールズもあって、うん、そういうエディット作業も好きだよ。領域が広がるし、作業時間が短縮されて仕事がはかどるからね。僕は常に何かをしてるけど、仕事のペースはスローなんだ。1曲にかける時間はすごく長いと思う。一度終えた作業にも何度も直しを入れたりして、そういう時にはプロトゥールズがあると確かにすごく便利だね。セーヴしておいたファイルを何カ月か後に開いて作業を再開することが可能だし、色々なパターンを試すことが出来る。細かいところをちょこちょこと変えることも出来るし。とはいえ、プロトゥールズ上でカットしたり、音域を変えたりすることは実際にはあまりないね。どちらかといえば、パーンをしたり、音を重ねてサイケデリックな雰囲気に変えたりっていう作業をする。カルディアのドラムとベースは、ほとんどがライヴ・レコーディングのまま使っているよ。カットアップや複雑な操作は加えていないんだ。次のアルバムでは、プログラミングを多用した曲も2曲ほどあるけどね。それは新しい試みなんだ。 今サイケデリックという言葉が出てきましたが、あなたは、ギター・プレイの中でペダルやエフェクトを多様してますよね? もし差し支えなければ、どのようなエフェクターを用いているのか、主な使用機材について教えてください。 Ian:誰もが店で買えるような普通のものを使ってるよ。もちろん幾つか併用しているけどね。まずメモリーメン、よく使われているよね? 他には、ラインシックスのディレイ・ペダルを使ってる。色んなことが出来て便利なんだ。それからラインシックスのモジュレーション。これはトレモロが出来る。あとは、BOSSのピッチシフト・ペダル。ピッチ変換が出来て、ハイピッチでクレイジーなサウンドが作れるんだ。それからファズファクトリー・ペダルがある、これは最高だね。ライヴで使っているのはこのくらいなんだけど、実際はもっと山のように持っているよ。サウンド操作をするのが大好きなんだ。レコードの中でギターに聴こえる音でも、実際に弾いてる楽器はウーリッツァーで、それをローズに繋いで、ペダルを使って、アンプを通した音だったりするんだよ(笑)。気に入ったサウンドが出るのであれば、どんな使い方でもOKなんだ(笑)。ドラム・セットにしても、ただアンプに繋げるだけじゃなく、何か別の機材に接続した上でアンプに繋いでみたりしてさ(笑)。どんなことでも試してみる。これも自分のスタジオを持ってるメリットの1つだね。とりあえず、どんなものでも繋いでみるって感じ。そこから最高のサウンドが生まれるかもしれないんだから。
|