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こういう質問をしたのは、2人のこだわりのあり方というのがまさに79年のポスト・パンク、ポスト・ニューウェーブ的な精神を継承しているという印象を個人的に持ったからなのですが、そんなことを意識したりはしていますか?

Sebastien:僕らは何かを意識的にやろうとしたことは一度もないよ。バンドの名前に1979を使うというアイデアが出てきたのは、このアルバムをレコーディングしたずっとずっと後でのことだしね。1979年は僕が生まれた年で、たまたま音楽にとって、そして他のいろんな事にとってとても重要な年だった。その1979年という年がこのバンドに何か影響を与えているとすれば、それは僕が生まれた年だったということだけさ。もしその年が存在していなかったら僕はここにいなかったわけだから。

例えば、今ニューヨーク辺りにはポスト・パンク・リバイバルみたいなバンドがたくさんいて、そういう人たちは意識的に79年くらいのバンドの手法をもう一度やってみようとしてる部分があると思うんです。あなたたちの場合は少し違って、79年当時のバンドが持っていた生々しさみたいなものを今の時代に再現できてると個人的には思うんですが、どうでしょうか?

Sebastien:僕自身パンクについてはよく知らないし、その時代についてもあまり知らないんだ。バンドを始める前から幾つか知ってるバンドはあったよ、クラッシュとかね。でも、ファンではなかった。僕らのアルバムがそういう風に聞こえるとしたら、それは僕らがそういうバンドが影響を受けたのと同じバンドに影響を受けてるからじゃないかな。それが理由じゃないかと思うよ。1979年当時に聴かれていた音楽が、僕らが今聴いてる音楽と同じだっていうこと。僕は音楽を聴く時そのバンドのルーツが何かっていうのを知りたいんだ。どうしてそういうサウンドになったかってことをね。

ちなみに、ポスト・パンク・リバイバル全般についてはどう感じていますか?

Sebastien:パンク・ロックというのは音楽の種類ではなくて考え方なんだ。だから、ポスト・パンクという概念すら僕には意味をなさない。なぜならパンク・ロックとは概念であり、スタイルではないから。もしパンクがスタイルなら、クラッシュとセックス・ピストルズのサウンドは同じ物になっていただろう。クラッシュとピストルズ、さらにラモーンズは、おそらく最も影響を与えた、そして最も人気のあるパンク・バンドだけど、そのサウンドは全く違う。僕は、バンドが他のバンドと同じ事を目指しているからといって、そういう人たちを非難するということはないよ。バンド自体に対してというより、それぞれ曲ごとに自分の意見を持っているからね。1曲だけ好きなバンドもあれば、全部の曲が好きなバンドもあるし。逆にどういうバンドについてか例は挙げられる?

ラプチャーとか!!!、インターポールとかは?

Sebastien:ラプチャーは……好きな曲もあるけど、全曲が好きなわけじゃないな。インターポールも同じだね。彼らは悪くはないと思うよ。別にパクったり何かのコピーっぽかったりってわけじゃないし。!!!についてはよく知らない。

彼らに比べて、自分達はポスト・パンクのスタイル以上に精神性を受け継いでいると感じたりはしませんか?

Jesse:(ここで、ずっとウトウトしていたジェシーが目覚める)ポスト・パンク・ムーヴメントの考え方の多くは、自立性なんだよ。例えば、ライヴをするにしてもクラブでライヴをブッキングしてっていうやり方より、自分でオーガナイズすることを選ぶとか。誰かに教えてもらってやるってことじゃあないんだ。だから、その考え方は、何か物事をやる時にはとても現実的なやり方なんだ。自分のバンドを思い通りにコントロールできるようになると……あれ?(途中で話が見えなくなる)

Sebastien:話の前半を聞いてなかっただろ(笑)。話の本筋から逸れちゃってるぜ。まあいいよ、続けて(笑)。

Jesse:……だから君が、ポスト・パンクから僕らが受けた影響だと思っているものは「現実的である」っていう要素なんだ。自分ができることを自分の持てるものでやるっていうこと。

(セバスチャンがジェシーに寝ていた間の流れを説明)

Jesse:ポスト・パンク・ムーヴメントについて考える時、その音楽性に関しては全く考えないな。

Sebastien:そういう話をしてたんだよ。お前が寝てるあいだにね(笑)。パンク・ロックってのは考え方であってスタイルじゃないって。

Jesse:(苦笑)……日本の雑誌を見てると、これがグランジ・スタイル、これがヒッピー・スタイル、これがパンク・スタイルっていう感じでファッションになってたりするけど、そういうものではないんだよ。何か自然に起こったものを意図的にもう一度つくり出すことはできないんだ。わざとドラッグをいっぱいやったからアーティストになれるわけでもないし。例えば、日本にはレゲエを好きな人が多いよね。で、ドレッド・ヘアにしたりする。でも、ドレッド・ヘアっていうのは本当は自然に出来あがるものなんだ。全然ブラッシングしないでシャンプーもしなければ自然にドレッドになる。でも日本だとドレッドにするのにすごいお金と手間ひまをかけるだろ。何か形があるからって、そこにその本質が存在するかっていうと、そうじゃないんだ。

今までの話の流れは「あなたたちは、こういうスタイルですね」と定義しようとしているわけではなくて、そういうものから自由なバンドなのだと確認するための質問なんですが、そこは理解してもらっているでしょうか?

Sebastien:うん。

さて、この後はオーストラリアに行って、さらにイベント(Canada Wet)に参加する形での再来日が決定しているようですが、次回のライヴに向けて何か抱負とか、どういうライヴにしたいかなど考えていることはありますか?

Sebastien:お客さんに火をつけて、僕らはステージでビールを飲む。機材も持ってこない。その方が移動がラクだし。あと消防士は必要だよね。で、ムショ送りになる(笑)……。実際にはたぶん、今回のライヴとそんなに変わらないと思うよ。まだ同じアルバムのツアーの一環だし。次のアルバムを作る前の最後のツアーだね。だから、そのまた次に戻ってくる時には、もちろん今作からの曲もやるけど、新作から新曲をたくさんやるはずだよ。あと、5月にまた来る時にはさらにお客さんが増えてるといいね。

ニュー・アルバムの話が出ましたが、もうなにか具体的なアイデアとかはでてきてるのですか?

Jesse:ひとつ現時点で言えるのは、これがリスナーの気持ちだとすると(ジェスチャーでハートの形を示す)、そこにフックを四隅から引っ掛けてどんどん引っ張って伸ばす。全てのアイデアをより遠くまで引っ張って伸ばしていく。でも、そうすると真ん中に穴が開くかもしれないよね。そうしたら今までに無かったものを作り出すことにもなるかもしれない。

もう少し具体的に言うと?

Jesse:今まででベストなアルバムになる。

Sebastien:具体的なアイデアはまだないんだ。正直なところ、それについて話をまだちゃんとする機会がなくてね。まだ話せるようなレベルでのアイデアはないんだよ。

Jesse:こういうのはどうかな? 今回のアルバムは、新しいリスナーに対する挑戦として作った。で、最初はあまりよく分からなくても、聴いていくうちに理解してくれた人もいたかもしれないし、すぐにこのアルバムを気に入ってくれた人もいたかもしれない。で、次作はすでに存在するファンに向かっての挑戦になる。そういうアルバムなら、いちばん最初に僕らの音楽から刺激を受けた時と同じように刺激を受けることができるだろ。もちろんバンドとしては変わらないし、ベース+ドラムだし、自分たちの気に入っている音というものもあるけど、次作はアイデアがさらに発展した形になるね。今回のアルバムはとても効率的で、余分なものはそんなに入っていないけど、次のアルバムはもっと進化したものになるよ。

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