=イタリア記=
             (四)



    


 モスクワを過ぎると、
グッとローマが近く感じてくる。
ベネチア、ミラノ・・・身近な都市の名前が出てくる。
なんだかようやくエコノミーから解放される。
それだけでもうれしい気分になってくる。
ほんのちょっと開放感が出てきたことがうれしいのだ。
(もう少しだなぁ・・・)
けっこう奥底からこの一言が浮かんだ。
この画面で見るとローマまで目と鼻の先だ。
いよいよローマだ、イタリアだ!!




 飛行時間が残り30分あまりと表示が出た。
なんだかいやにうれしくなってじっとしてられない気分になってきた。
この勢いで横の席の人に堂々と声をかけトイレへ・・・。
けっこう我慢しながらじっとしていたので、
狭い機内トイレがなかなかに広く感じた。
こういう状況におかれてみると、
列車が止まって車内に閉じ込められるという状況がなんだか理解できる。
なんだかほんと辛そうだなぁ・・・。

 予定到着時刻が19:06。
出発地からの距離は凄いね。
この距離を12時間で移動するってやはり凄い!!
ドラえもんの「どこでもドア」があながち荒唐無稽とも言えない。
時間のわりに外はずいぶん明るい。
日本より日が長いことが分かる。
7:00になっても明るかった。




 フト窓を見るとなんだか白いものがへばりついている。
なんだろうと顔を近づけるとなんと霜の結晶だ。
外の気温の低さが分かるというものだ。
月のクレータのような形をしていた。
キラキラしてきれいだった。




 イタリアの大地が眼下に見えてきた。
なによりもやっと到着したという安堵感。
どこの場所が見えてるのはわからないが、
ほんとにホッとした。
どこかに落ちるという強迫観念があり、
100パーセント安心はしていなかった。
飛行機事故のニュースというのは散々見てきてるわけだから、
大丈夫だと思っていてもどこかに不安感というのはある。
人によっては自分が乗ると落ちると思い込んで、
飛行機には乗らないという人もいる。
それを一時は鼻でせせら笑っていたが、
自分が乗っているとあながち笑い飛ばせるものではないことが分かる。
いやはや・・・である。



 

 夕暮れの街並みが見えてきた。
高度もかなり下がってきて、
耳がどうもよろしくない。
エレベーターで急に高度が下がったりすると、
耳が聞こえずらくなるあの現象だ・・・。
なんだか結構ひどく感じる。
機内アナウンスもなんだか聞こえづらい。
地上についてしばらくすれば治るだろう・・・。




飛行場に着陸。
空港の施設が過ぎていく。
中国の旅客機が止まっていた。
なんだかホッとしたのと、
イタリアへ来たといううれしさが同時に湧いてきた。
機内ナウンスもうわのそらで、
なに言ってるのかさっぱりわからなかった。




 到着。
お疲れさまでした・・・と、自分に言っている。
機内荷物を手元に下ろしてとにかく出口へ。





どうでもいいが、
乗ってきたアリタリアの旅客機の尾翼。

主翼上あたりのところに座っていたんだな・・・。



夕暮れの空に飛び立っていく旅客機。
なんとなくセンチメンタルな気分になる。

センチメンタルジャーニー・・・





空港内を移動していく。
けっこうな距離を歩いた気がする。
座ってるだけだったが結構くたびれ感がある。
早くホテルで休みたい・・・。




 入国審査のカウンターへ到着。
なんと、ぎょ!!っとした。
凄い人の行列!!
インドからの飛行機も到着していたらしい。
それにしても凄い行列だ。
いつになったらホテルに到着できるのかな・・・。
ま、怒ってもなにしてもどうにもならないのでとにかく並んでるしかない。
これだけの人がいても窓口は二つ・・・。
一体やる気があるんかなここの人は・・・。
まあ、臨機応変というのがないね。



延々と並んでようやく窓口の到着すると、
隣の窓口に行けという指示が出る。
実際言葉はなに言ってるのか分からなかったが、
手を振って向こうと合図していた。
指示に従って隣の窓口に行くと、
パスポートもよく見てるのかどうかわからないうちに通過していいとなった。
散々並んでこれかと・・・拍子抜けした。
日本人はすべてこちらのカウンターで簡単に通過だった。
日本人は信用があるということか・・・。


 スーツケースの受け取り口に行くと、
ドンカドカ投げている。
よく壊れないと思うくらい結構乱暴だ。
スーツケースにラップをぐるぐる巻きにしてるのを見たが、
この状態を想定してケースを保護するためだったと気づいた。
外人さんのケースに多かった。




 いい加減待ってパッと通過して、
バスに乗り込んで目的のホテルへ。
どんなホテルかと思って着いてみるとなんともはやって感じ・・・。
ビジネスホテルって感じだ。
中に入るととにかくエレベーターが狭く、
ケースを持って4人乗れるかどうかだ。
それほど人数がいるわけでもないのに、
乗って止まる階に行くまでまたまた時間がかかった。
深いため息とともに部屋に滑り込んだ・・・。





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