=イタリア記=
             (一)

    


 そうだイタリア行こう・・・、
というほど軽いノリではなかったが、
とにかくイタリアに行くことになった。
では、どういうふうにして行くか。
20代の時はツアーに参加することもなく単純ヨーロッパに渡った。
日数にも時間にもゆとりがあったということだ。
今回はそういう時間的、日数的にゆとりはない。
結局、阪急のツアーに参加することにした。
最終日にけっこう自由時間があるツアーなので、
個人的な用事もできそうだった。
決まったらすぐ申し込み。

 9月の下旬からの出発となった。
ネットでその時期のイタリアの気候を調べると、
まずまずよさそうだ。
とにかく急いで準備。
当然ながら当地で洗濯をすることはないので、
結局着るものがほとんどの準備となった。
なんだか結構買い揃えることになって思った以上の出費。
旅慣れない者の常としてそんなものなんだろう・・・。



 出発当日は晴れ。
今のぐずついた天気が続いてるのを見てると、
けっこうラッキーだったかなと思うことしきりだ。
こういう時に雨が降る中出発は辛いところだ。
それがなかっただけラッキーな旅行になる気がした。
こういう場合何事も良いほうの思い込みが大事だ。

 スーツケースはすでにQLライナーで空港に送ってある。
ま、世の中便利になったもんだ・・・。
手荷物一つで空港に行けばいい。




 成田空港に到着。
かなり広くてすぐには方向感覚がはたらかず、
なんとなく人の流れについて行ったり、
立ち止まったり・・・。
普段の方向音痴がここでも発揮されてしまい、
集合場所を全く逆の所に行ってしまった。
なんだか誰もそれらしき人がいないので、
おかしいなと思いもう一度パンフレットを確認して場所を確認すると、
北ウィングのはずが南ウィングに来ていた・・・。
いきなりボケたかたちだ。
集合時間は少し過ぎていたので泡を食って走る。
とにかく皆さんのいるところには到着できた。
いきなりのボケに少々先が思いやられるの感あり・・・。

その後、チケットをもらってスーツケースを預ける。
すると搭乗予定の旅客機が遅れてるとの掲示。



(飛行機が遅れるということは到着も遅れるということか・・・)
夜寝るのが遅くなるのが少し気になった。
時差を考えると寝る時間というのがやたら気になっっていた。

そんなことを考えてると、
場内アナウンスで自分の名前が呼ばれてる。
「えっ!!????」と思って、
もう一度呼ばれる名前と内容を聞くと、
搭乗チケットの落とし物といっている。
「えええ!!やばい!!」
大慌てで案内係のお姉さんのところへ走る。
事情を言うと空港内の全部の案内係のところに届いてるか聞いてくれた。
「どこにも届いてないみたいですね」と、冷静に言われた・・・。
「それでもアナウンスで言われたのですが・・・」と食い下がると、
「チケットのカウンターに行ってみてください」と言う。
「どこですか?」と、息も絶え絶えに聞くと、
「あちらです」と、腕を伸ばして方向を示してくれた。
「ありがとうございます」と、一言お礼をいうとまた走った。
チケットのカウンターに行くと誰も忙しそうで声もかけられない・・・。
そんなことでひるんでる場合でもないので、
とにかく落としたチケットを取りに来たと言うと、
一番端に行って下さいと言う。
また走ってはしに行くと、
お姉さんがにっこりしてチケットを渡してくれた。
なんともはや初っ端からとんでもない事態を経験してしまった。
なんだか先が思いやられるなと、
少ししょんぼりだ。
この時、E‐チケットも紛失していた・・・。


ま、チケットも戻ったし時間もまだあるので、
滑走路の見える展望スペースに移動。



滑走路の端に移動しては、
次々に飛び立っていく飛行機を見てると、
なんだかワクワクしてくる。
世界へ向かっていくというのは、
なんかいいよな、という感覚が沸いてくる。
なんとなく淡いノスタルジーのような気分も湧いてくる。
若き日、勇躍ヨーロッパ目指して飛び立った時のことが懐かしい。

しばらく飛び立つ飛行機を眺めて、
時計を見ると搭乗時間が迫ってきていた。
空港の中に戻る。
集合場所に行くとそのまま搭乗口へ移動。



けっこう長い列が続く。
一機の旅客機にこれだけの人が乗るのかと思う。
これだけ乗る人がいてもアリタリア航空は火の車の会社だ。
なにがどうしてって感じだ・・・。

待っている間というのはけっこ緊張感がある。
こういう時って特になんでもないのに説明できない緊張感ってあるもんだ。
なんだか不思議だ・・・。




機内に入るとさすがエコノミーという感じの狭さだ。
しばらくなんだか人でごったがえしてる感じ。
全員が椅子に座るまでしばらく時間がかかった。
それにしても想像を絶する狭さだ。
窓際の席になったので、
いきなりトイレに行けるのか不安になった。
通路までに二人ヒトが座っている。
この距離が異様に長く感じるのだ。
人間我慢が肝心だと自分に言い聞かせるしかなさそうだ・・・。
全員が席についてしばらくするとゆっくり機体が動き出した。
いよいよ出発だ。
ここでも言いようのない緊張感湧いてきた。
落ちないだろうなっていうことだ・・・。




駐機してる機を横目に見て次第に加速していく。










フワリと空に向かって浮いた機の窓から成田が遠ざかっていく。
いや、日本が遠ざかっていく。
もうどこにも逃げられない・・・。
落ちずにローマまで無事飛んで欲しい。
落ちるわけないと思ってもどこかにちょっとした不安というのはある。
墜落事故に合うのは自分ではないという保証はどこにもない・・・。
そう簡単には落ちるわけないと思っても、
なんか飛行機というのは苦手ではある。

小さくなっていく地上を見てると思わず、
さよお~~~な~~ら、さよおなら、
元気でいいてぇねぇ~~~・・・。
都はるみの唄が浮かんできた。
窓際の席には下世話な自分が座っていた・・・。




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