小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第一章  SEVENTEEN

目次はこちら

第一章 ~SEVENTEEN~
P.2 

僕の父さんも、もちろん工場で、そう、方舟で働いていた。というかクラスメイトのほとんどの両親は方舟で働いていた。この町は元々、ただの山?というか森だった。もちろん人は住んでいなかった。土地が安いという理由で、ずいぶん前に山を削って工場を建設した不思議な町。だから方舟があるからこの町が生まれたような物。って先生が言っていたっけ。でもその他にも、もちろん仕事はある、けど市役所か郵便局、農家や大工とか。あと小さな商店街もあるから八百屋やお肉屋さんも、他にも、もちろんあるんだけど。

父さんは家では仕事の話は滅多にしない。何かの部品を作っているらしいけど、それだけじゃ何が出来るのかも分からない部品らしい。一度見せてもらったけど、こんな小さな物を大きな方舟で作るのがなんだかおかしかった。沢山の人がこんな物で生きていけるのが今でも不思議に思う。母さんは専業主婦。同じ部署で父さんと知り合って結婚したから仕事をやめた。なんで同じ所で働いている人同士で結婚すると仕事をやめなければいけないか僕にはまだ分からない。母さんは笑っていつか分かるというけど。

そんな工場で支えられている町にも学校はもちろんある。幼稚園から高校まで、ずっと同じ顔ぶれのエスカレーター式。ノアの方舟を取り囲むように。そう、空から見ると大きな四角の近くに小さな四角が並んでいるみたいに。

次のページ

ページ: 1 2 3