小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第一章  SEVENTEEN

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第一章 ~SEVENTEEN~
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第一章 ~SEVENTEEN~


僕の名前は野崎清太郎。こう書いてせいたろうと読む。某県で育った、一般的な高校生。自転車で通う訳でも無いのに毎日ヘルメットをかぶり通学している。学校の方針だからしょうがない。授業が終わるとすぐに帰宅する高校生。友達という友達はいない。特徴の無い空気のような高校生。

僕が生まれ育ったこの町は周りは山に囲まれている。人工的な杉の森ではなく、自然の木々で取り囲まれた山。隣りの町にある駅に行くのもバスで小一時間もかかる「ど田舎。」星は残酷過ぎる程良く見える。・・・・らしい。前に芸能人がノアの方舟にきてテレビでそう言っていた。

そうだ、珍しい物と言えば、本社が都会にあるという大手会社の工場。通称「ノアの方舟」。町の中心部にあって自然とは真反対の無機質の白い大きな固まりになって毎日煙を出している。まるでノアの方舟みたいだから大人から子どもまで皆そう呼んでる。


一番不思議なのが、「ノアの方舟には、アダムとイブが乗った」、そんな話がこの町では当たり前になってたこと。方舟の工場長がそう信じていたから。町の人たちも昔からそう信じてた。もちろん、実際にはそんなことは無いってことは皆知ってた。でも、なぜかこの町の人たちの間ではそんな話が出回ってた。その時、僕はまだ、方舟がこの町でどれだけの影響力があるかなんて知らなかったんだ。小さい頃から聞かされてるから、もちろん、僕も信じてた。ノアの方舟に乗ったアダムとイブが運ばれていく。そして新しい世界を作る。なんて話が、僕を、僕らを運んで行ったんだけど。

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