Aimee Mann / Out of My Hair @ The Forum
(Part 1: Out of My Hair)


24 November 1995

 11月24日、The Forum にて行われた Aimee Mann のライヴを観てきたので報告します。まずは前座を務めた Out of My Hair から。

 …いやあ、こりゃ謎っすね(笑)。
 先行シングル盤は渋谷の外盤屋でもバカ売れしてたっていうし、某ロッキング・オン誌でも "DROP THE ROOF" がアルバムレビューのトップで合評もらってたりするもんだから、とりあえずこの Out of My Hair っちゅうのを生で観て真価を確かめとくか、くらいのつもりだったのですが…。こりゃ謎っすよ。

 こっちじゃ呼ぶに事欠いて "David Bowie meets Marc Bolan" なんてコピーも付けられてる Out of My Hair(及び中心人物の Comfort)だったりしますが、ライヴ前の客入れBGMが Blind Faith の同名アルバムだったりと勘違いぶりも甚だしく、なかなか堂に入ったものです(笑)。今時 "Do What You Like" とか10分以上聴かせる懐古趣味の客入れがどこにあるんだと。

 ようやく出てきた Comfort は170cmあるかどうかのごく小柄な男で、左利きにギターを構えます。そして出てきた声は… 何だかえらく可愛い。

 ヴォーカル兼ギターの彼の他に、リードギター+ベース+ドラムス+キーボードという王道5人編成のバンドですが、どうにも捉えどころのないサイケデリッ クな曲調の中に、微妙にポップなメロディの断片が見え隠れするという不思議な演奏。赤のタータンチェックのパンツで、足を揃えてマイクの前にじっと立った まま歌う Comfort ですが、サウスポーでギターをかき鳴らす姿自体はとりあえず絵になります。髪型や目つきにややボラン的なものを感じなくもない。

 異様にキャッチーなギターポップかと思いきや、実はその裏でベースがファンキーなラインを弾いていたりして悪くない。むしろ若くて新しいバンドなのに、 最初から手堅くまとまっているところが謎めいてます。ヴォーカルのか弱さは相変わらず気になりますが、それも持ち味と割り切ればなかなか楽しめる…

 …と思っていた矢先に、演奏がいきなり変質したのです。
 別に加速したわけでも減速したわけでもないのですが、明らかに何かが変わった。Comfort がこっちを見る目つきに妙な光が宿ったというか。

 ここから後の彼らはいきなり超カッコよすぎなバンドに変わっていました。ふと気づけば照明は前座とは思えないほど派手になってるし、繰り出す楽曲の緩急 も見事です。終盤にかけて突然アリーナロックの如きダイナミズムを引っ張り出してきたのにはびっくり。轟音とフラッシュの中、観客に向かって両手を広げて ナルシズムの極致に入り込んでいった Comfort の確信に溢れた歌は、まさに一体何事が起こったのか?という感じです。最初はぼんやり観ていたロンドンっ子たちも、食い入るようにステージを見つめてお り、ラストは割れんばかりの大喝采で締め括られました。前座でここまで観客を引き込むのは相当珍しいです。

 何となくレコード会社の回し者くさいのが気になりますが、こいつらはどうもブレイクしそうな気配十分です。要チェック!


December 2004 追記
 Out of My Hair は日本のロックメディアでも激しく取り上げられましたが、その後どうにもぱっとしませんでしたね。Comfort はソロになったような気がしますが、どうでもよかったような…(既に記憶が曖昧)。まさしくレコード会社の回し者以外の何者でもなかったという感じです が、こういう「時代の徒花」的存在を現場で見られたことは、それなりにいい思い出だったりします。



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