Bon Jovi "THESE DAYS":全曲レビュウ


17 June 1995

 ロンドンで暮らしていると、日本では絶対に見ることのできないライヴもたくさん見られますし、レアなCD/レコードもいろいろ探すことができます。でも、絶対に日本の方がいい点もあるのです… それは、『日本先行発売』! この Bon Jovi の "THESE DAYS" もやられました。レビュウもすっかり出遅れです。とはいえ、ロンドンのレコード屋さんにもいろいろと極秘ルートがありまして。発売日厳守のイギリスのレコード業界にあって、19日(月)リリースのこのアルバムをこっそり17日(土)に並べているお店から、さっそくゲットしてきました。プロモ盤を配られた業界人を除く民間人では、恐らくロンドンでもっとも早く聴くことができた1人なのではないかと。

 週末ずーっとかけっ放し、現在までに5回リピートして聴きました。で、あくまで主観に基づくお気に入り度(5点満点、やや辛め)付きでレビュウしてまいります。



"Hey God" 【冬冬1/2】
 オープニングにややハードな曲を持ってこようとしたら、これしか見つからなかった…って感じでしょうか。残念ながら僕にはジョンのヴォーカルスタイルに合った楽曲には聞こえません。ギターはすごくいいと思いますけれど。あと、歌詞もちょっと。広く社会に目を向けて詞を書いたというのは分かるのですが、何百万ドルも稼ぎ出すボン・ジョヴィの立場で、神に対して苦しい生活の不公平感を嘆く曲を歌われてしまうと、ニューヨーク他のホームレスの方々から苦情とか来ちゃったりしないんでしょうか…。まあ、実際に苦しかったデビュー当時の気持ちを大切にしている、ということなのかもしれませんけれど。

"Something For The Pain" 【冬冬冬冬】
 気を取り直して2曲目。これはいいっすね! キャッチーなコーラスについニコニコです。ジョンとリッチーのハモリもばっちり、ギターソロはイーグルスの 『駆け足の人生 (Life In The Fast Lane)』 を思い起こさせました。スキがない楽曲ですねえ。

"This Ain't A Love Song" 【冬冬冬冬】
 よく出来ている曲。(←誉めてます)

"These Days" 【冬冬冬冬冬】 満点!
 素晴らしい! 文句なし!
 アルバムタイトルがこれに決定した、と最初に聞いた時には「インパクト弱いなぁ」と思ったものでした。でも、これだけいい曲を書けてしまったのであれば、自分だって絶対にアルバムタイトルにしちゃいます。夕暮れに、ホロリとしながら聴いていたい、そんな哀愁系ロック。

"Lie To Me" 【冬冬冬1/2】
 ボン・ジョヴィにとって、この手の世界を歌うのは慣れたものですね。じわじわと盛り上げる展開に胸がうっとりします。デイヴィッド・ブライアンの間奏部分はメロトロンかな? ストリングスアレンジも素晴らしくて、さすがジュリアード出身の実力を見せつけてくれますね。

"Damned" 【冬冬冬冬1/2】
 不倫モノで来ましたか。ボン・ジョヴィにしては珍しい題材。そのせいか、スリリングな展開&サスペンスフルなヴォーカル。大胆にホーンまでフィーチャーしたファンキーなリズムに、思わず身体が動いてしまいます。ギターソロもまったく隙なし。職人芸ですねぇ。

"My Guitar Lies Bleeding In My Arms" 【冬冬冬】
 徹底的に盛り上げる一大叙情詩。すっかり術中にハマって、ぐいぐい引き込まれてしまいます。ギターソロは決して音数は多くありませんが、確実に感情を伝えてくれるもの。

"(It's Hard) Letting You Go" 【冬冬冬】
 アルバムで一番おとなしい曲になるのかな? でも逆に言えば、ジョン(&リッチー)のヴォーカルを一番堪能できる曲ということでもありますね。

"Hearts Breaking Even" 【冬冬冬1/2】
 こういう曲を聴くと、「いやあ、デズモンド・チャイルド先生頑張ってますね〜」って感じです。久しぶりの感があるデズモンドとの共作ですが、韻の踏み方やコーラスでの転調ぶりなんかまさに彼の十八番。ジョン&リッチーは、ある意味でジャガー&リチャーズとか、レノン&マッカートニーに匹敵するソングライターチームになりつつあると思うのですが、個人的にはたまにはこうしてデズモンド・チャイルド先生と組んでほしいです。

"Something To Believe In" 【冬冬冬】
 ええと、ポイズンのカヴァーではありません(笑)。曲としてはむしろ Simple Minds の "Don't You (Forget About Me)" にも似ているような気がします。ジョンとリッチーとの掛け合い(輪唱)はライヴでも映えそうだし、間奏でのファンキーなベースもカッコいいぞ。しかし、既に10曲目ということで、そろそろこちらの集中力が持たなくなりつつあります。ちょっと長いアルバムですね。

"If That's What It Takes" 【冬冬冬冬】
 いいメロディ。それだけで、この曲は僕がボン・ジョヴィに求めるものの8割方を押さえたと言えましょう。ヴァースの2番のバックでデイヴィッドが弾くハープシコード系のキーボードが見事にツボでした。キーボード奏者を抱えるハードロックバンドって、つい頭でっかちになりがちですが、デイヴィッドは弾くところと引くところをイヤになるくらいしっかりわきまえているので、アレンジがわざとらしくなくて大変好感が持てます。

"Diamond Ring" 【冬冬冬】
 歌い出しのヴァース部分、演歌かと思っちゃいましたよ。「お前が●●な時、俺が▲▲してやるぜ」を列挙するパターンは、ボン・ジョヴィの楽曲ではお約束とも言える定番ですが、やっぱりジョンが歌うとサマになります。ちなみにブックレットでのこの曲のページの写真は、ジョンが胸をはだけていて、やっぱり胸毛がちょっと…(笑)

 アルバム本編はここで終了、あとはボーナストラックです。

"All I Want Is Everything" 【冬冬冬冬】
 今回のアルバムは、ちょっとハードな曲でも必ずダークな雰囲気が伴っているんですよね。その意味でも、シングルB面に収録されていた "The End" みたいなタイプの、ダークではないホノボノとした曲が恋しくなっちゃう時は確かにあります。つまりこの曲も、出来はいいけれどやっぱりテーマが暗いなあ、ということです。

"Bitter Wine" 【冬冬冬1/2】
 ご多分に漏れず、僕もこの曲のコーラス部分で、"I'll Be There For You" を一緒に歌っちゃいました。…ていうか一緒ジャン。でもなんか懐かしい。こういう曲でのジョンの歌い回しを聴いていると、彼って本当に歌が上手くなったなぁ、と思います。



 …以上です。総合点は、敢えて今はつけずにおきます。

 アルバムの真価はライヴにおいてこそ発揮される、と信じて、今週末はウェンブリー・スタジアムで行われる彼らのツアーを観に行ってきます。"These Days" "My Guitar Lies Bleeding In My Arms" なんてのをライヴで演奏されたらどんなに盛り上がるだろう、って考えるだけで今から興奮気味。冷静になるために、とりあえずもう一度最初から聴き直そうっと。


December 2001 追記

 その後、ジョン自身もこのアルバムが決して明るい作品ではなかったことを認めています。

 音楽的に、より深みのあるものを作りたい、少しでも成長していきたい、という彼らの気持ちは痛いほどわかりますが、一方で "SLIPPERY WHEN WET" の頃のような、ポップでキャッチーなアンセムもほしい、というファンのニーズもあるわけです。2000年になって、そのあたりを踏まえたと思われる "CRUSH" という作品をリリースしたボン・ジョヴィ。シングルの "It's My Life" ではトミーとジーナまで引っ張り出してきて、かつてのファンたちと新しいオーディエンスたちの両方に訴えようとしたみたい。確かに歌いやすい曲ではありましたが、自分にとってはやり過ぎ/Too much 感が拭えなかったのも事実。いや本当に難しい。まったくわがままなファンだと思います、自分でも…


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