SONGS 60 - 51


順位 曲名 アーティスト チャート順位
60 Street Life The Crusaders US#36/79
59 The Politics of Dancing Re-Flex US#24/84
58 Crush On You The Jets US#3/86
57 Steppin' Out Joe Jackson US#6/82
56 Send Me An Angel Real Life US#29/84
55 You're My Best Friend Queen US#16/76
54 Photograph Def Leppard US#12/83
53 Baby Hold On Eddie Money US#11/78
52 Xanadu Olivia Newton-John/Electric Light Orchestra US#8/80
51 Pick Up The Pieces AWB (Average White Band) US#1/75


60. Street Life - The Crusaders

 クルセイダーズといえば、元はジャズ・クルセイダーズと名乗っていたくらいのもので、インストゥルメンタル/ジャズ系のグループです。ちなみに結成は南部ヒューストン。後にカリフォルニアに移り、次第にライトなフュージョンを演奏するようになります。ジョー・サンプル(Keys)を中心に手堅いメンバーを揃え、72年以降はラリー・カールトンもしばしば客演していました。

 さてこの曲は珍しいヴォーカル入り楽曲にして、彼ら唯一の全米トップ40ヒット。歌っているのはランディ・クロフォードです。スピーディで、非常に耳当たりのいいAORフュージョン。ある意味セルアウトでしょう。日本盤の帯には「メロウなサウンドに都会的なフィーリングがあふれる…」なんていうコピーが踊っていますが、ジャケットのイメージもそんな感じですね。

 ですがしかし、ウィルトン・フェルダー(リード)とウェイン・ヘンダーソン(トロンボーン)の2管の泥臭い絡みに手に汗握って興奮した過去がある訳でもない自分は、こんなお洒落系メロウファンクもあっさり受け入れちゃう。むしろジョー・サンプルの洗練された都会的センスが随所に聴かれる名曲・名演奏かと。特に中間部のエレピソロの完成度はピカイチです。



59. The Politics of Dancing - Re-Flex

 邦題 『危ないダンシング』。80年代UKエレポ/ロックの徒花として片付けるにはあまりにも惜しい。今聴いても劇的にカッコいい独特のビート、腰を直撃するリズム、そしてどうしようもなく英国的な音色とヴォーカル。だいたいあのブリティッシュ・インヴェイジョン全盛期に天下のEMIからリリースされたと言えば、分かる人にはだいたいどんな音か分かるよね。あの頃はホント、レーベルごとにサウンドがきっちり色分けされてました。

 Duran Duran が "The Reflex" をヒットさせてしまったため、「リ・フレックス好きなんだよね〜」って言っても必ず、「ああ、デュラン・デュランね」と流されてしまう悲哀。だがしかし、正直こちらの方が何倍もシビれる。4人組ロックバンドで、メンバーは人脈的にトーマス・ドルビーやトンプソン・ツインズ、ミッジ・ユーロなんかにもつながってます。僕の大好きな The Fixx という英国バンドがありますが、彼らにも通じるサウンド。あれをダンサブルにしてポップにアレンジするとこんな感じ? だいたい、名前が x で終わるバンドに悪いバンドなんてないのです。日本盤の帯には、「英国新鋭・未来派・ゴキゲンシンセ&イカスゼ・ビートロックバンド…」なんて書いてある模様。思いっきり時代を感じるべし。

 ジャケットに写っている人形は「Re-Flex Man」というキャラクター。バンドのシンボルらしいのですが、2001年以降は特別な意味を持つようになったと言えましょう。遠回しに言うと、中華キャノンを取り付けた方が良いよ。要するに「先行者」似。1984年、まさに早過ぎた先行者でした。Re-Flex は。



58. Crush On You - The Jets

 とにかくジャケを見てください。無駄に人が多い。しかもこれがみんな兄弟姉妹(8人)だというのだから驚く。ミネアポリスのグループですが、両親は南太平洋はトンガ王国生まれ。MCAレーベルに在籍し、86年から89年までの短い間に10曲のHOT100ヒットを残しました。

 で、これは初ヒットになるアップテンポのファンクナンバー。もう、初恋系ですよ。乙女ゴコロ風ロリ入ったヴォーカルで。"You Got It All" (US#3/87) や "Make It Real" (US#4/88) といった甘々バラードももちろん良いけれど、やっぱりジェッツはアップが良い。南の島+ミネアポリスと言った瞬間に、足腰のしっかりしたファンクが期待できるわけで。

 ちゃんと相手に告白する前に、自分の恋心をすっかり見破られてしまってどぎまぎする女の子。彼に夢中っていう噂が街中に広まって戸惑う彼女の心情を、キレのいいビートに乗せて歌います。リードは女の子2人でパート分けして歌ってたんじゃないかな。他愛もないティーンエイジ・ラヴソングって言っちゃえばそれまでだけど、ティーンエイジャーだって大真面目に大恋愛してるんですから。自分だってそんな頃があったでしょう? ちなみに貴方に夢中/すっかり惚れちゃった状態を意味する "I've got a crush on you" というフレーズは、この曲で覚えました。



57. Steppin' Out - Joe Jackson

 名盤 "NIGHT AND DAY" のA面(=Night Side)のラストを飾る大名曲。ジャケットにエンパイア・ステート・ビルが写っているとおり、大都会ニューヨークでの夜と昼をイメージしたコンセプトアルバムでした。お洒落なピアノをキラキラと散りばめて軽快なテンポで突っ走る、ひどく爽快な1曲。

 皮肉屋さんの印象もあるジョー・ジャクソンですが、この曲で演じるキャラクターは意外なくらいポジティブな男。辛いことがあったのか泣いている女の子をなだめながら、クールなセリフを淡々と並べていきます。曰く、「街の明かりを見てごらんよ。涙を乾かそう。暗い人生なんてうんざりだ。2人で車に乗ってあっち側へ繰り出そう。まだ若いけどいずれ僕らは歳をとる。テレビやラジオなんて放り出して夜の街へ踏み出そう。僕について来ればすぐに着くさ。君と僕で夜の街へ、街の明かりの中へ繰り出そう…」。

 盤を引っくり返したB面1曲目の "Breaking Us In Two" (US#18/83) はガラリと変わってスロウなピアノナンバー。これに限らず、ジョー・ジャクソンという人は基本的に同じことを繰り返さない人なのです。"Steppin' Out" みたいなお洒落系アップを量産することだって簡単だったのでしょうが、それは彼のプライドが許さない。アルバムごとに全然違う路線に走ってしまい、追いかける僕らもたいへん。それでもついて行ってしまうのは、彼が「一緒にあっち側に踏み出そう…」とこの曲で歌ってくれているからなのかもしれませんけれど。



56. Send Me An Angel - Real Life

 いきなりジャケット間違ってますが。
 これは89年にリバイバルヒットした新録音の "Send Me An Angel '89" ジャケですが、僕が挙げたいのはオリジナルヴァージョン。チキショー、ジャケ写真無かったんだよ。細かいことにこだわるなって? とんでもない! コーラスでのハンドクラップの有無。その違いはあまりにも大きいのです。

 リアル・ライフはオーストラリアはメルボルン出身のバンド。この曲(と'89ヴァージョン)の他に、"Catch Me I'm Falling" という全米40位のヒットもあります。さて "Send Me An Angel" はというと、恋に恵まれない主人公が嘆いてるのか慰めてるのか励ましてるのか良く分かんない歌詞なんですけど、イントロのシンセサイザーのリフからして場違いなまでの異様な緊迫感で、一気にラストまで持っていかれちゃう。正直、普通のラヴソングにしてはヤリ過ぎでしょう。でもそんなところが好き。ブレイクのギターソロも良いし、いい加減なフェードアウトを拒否して派手派手に終わるアレンジも最高。

♪Send me an agnel, send me an angel
 Right now, right now


 たったこれだけのシンプルなコーラスですが、フレーズの切れ目にハンドクラップが実に効果的に決まり、ほぼ間違いなく万人の鼻歌を誘うでしょう。それが例えば大リーグ、エンジェルスの応援歌として使われちゃったりするともうリバイバルヒットの出来上がり。しかも '89ヴァージョンの方が最高位26位と、オリジナルより出世しちゃったりなんかしてるから始末が悪い。でもそれが現実の人生ってヤツやね。



55. You're My Best Friend - Queen

 クラシック音楽をこよなく愛したフレディ・マーキュリーは、生ピアノを弾くのは大好きでしたが、エレクトリックピアノは大嫌いでした。この曲ではクイーンにしては珍しくエレピが大フィーチャーされていますが、フレディは最後まで反対したとか。だからこの曲の全編で聴かれる印象的なエレピ(フェンダー・ローズ)は、作曲者であるジョン・ディーコン自身の演奏。

 クイーンにおけるジョン・ディーコンは決して多作なライターではないのですが、この曲や "Another One Bites The Dust" など、やや意外な大ヒットを作曲しており、地味な存在ながらも密かに多額の著作権料を得ているに違いない。お主もワルよのう(違)。アルバム「オペラ座の夜」中で絶妙な位置に置かれているこの曲は、非常に素直でポップな印象。"♪Ooh, you make me live" と繰り返される伴侶への絶賛ラヴソングは、ジョン・ディーコンの奥さんへの気持ちなのかな?長い時間を共に過ごし、それでも飽きることなく「君こそが最良の友だ」と言い切れる相手といられるなんて、それ以上の幸せはないよ。きっと。ジョンのフェンダー・ローズが幸福感を絶妙に演出しながら左右に揺れる。

 ポジティブで暖かくてラヴラヴで。こんな歌を口ずさみながら、幸福な余生を過ごしたいね。



54. Photograph - Def Leppard

 デフ・レパードに至っては、嫌いな曲を探すことがほぼ不可能なくらいに好きなバンドなので、1曲選べなんて言われると思わずヒステリーを起こして放火したくなるくらい、一晩中アドレナリンが放出されちゃう訳ですが。そんなこと言っても一人取り残されちゃうだけなので、仕方なく選びました。全米デビューヒット、この至福のポップロックナンバーを。

 もちろんアルバム "PYROMANIA" は3枚目、地道にキャリアを積んできた彼らが満を持してリリースした大傑作。捨て曲なしの歴史的名盤ですが、中でも "Photograph" のキャッチーさは際立っています。ギターリフのシンプルなイントロにドラムが絡み、ジョー・エリオットのヴォーカルが入ってくるとその後はどんどん転調しながらコーラスまでノンストップ。どこを切っても覚えやすいメロディで構成された、お手本のような楽曲です。どのセクションもほとんどコーラスみたいなものだしね。これってスゴイことだよ。マリリン・モンローを題材にした歌詞ですが、一般的に憧れの女性を賛美するものと読むこともできますね。

 ここまで読み終わった人は、第1パラグラフに織り込まれた Lepps のアルバムタイトルを探してみると良いよ。「スラング」が入ってないとか言うの禁止。



53. Baby Hold On - Eddie Money

 ブルックリン生まれのエディ・マネーは元NY市警官(NYPD)という珍しい経歴がいつも付いてまわるのでイロモノみたいに思われがちですが、その実非常にまっとうなアメリカン・ロッカーです。初めて意識したヒット曲はご多分に漏れず86年の "Take Me Home Tonight" (US#4) でしたが、後に購入したベスト盤を聴いてむしろ初期のヒット曲に惹かれるようになりました。

 デビューヒットのこの曲も、ひたむきで爽快なロケンロー。彼の持ち味であるミディアムテンポのリラックスしたロックを、ややかすれた哀愁たっぷりの渋い声で歌ってくれます。コーラスのバックに入るハンドクラップが実にキャッチーなアクセント。ドライヴしてる時なんかにかけるともう最高にハマること請け合い。

♪Baby, hold on to me
 Whatever will be, will be
 The future is ours to see
 So baby, hold on to me


 ほとんど何の根拠もないこの楽天性こそが彼の魅力。決して派手じゃないけれど、妙に落ちつく声なのです。どこにでもいそうだけれど、実はなかなかいない貴重なキャラクター。これからライヴで見るのは難しそうだなあ。79年にサンタナの前座(名義はスーパー・ジョイント・コンサート)として来日してた事実を知ったりなんかすると、地団駄踏んで悔しがっちゃいます。



52. Xanadu - Olivia Newton-John/Electric Light Orchestra

 ポップ・ミュージックの完成型をどこに見出すか、という議論は不毛だけれども面白い。現実世界から遊離した、言わば桃源郷のような世界に連れて行ってくれる音楽がそれだと言うのなら、さしずめこの "Xanadu" あたりが完成型なのでしょう。つまり、タイトル語義と曲調のほぼ完全な一致。これ奇跡に近いよ。

 冗談抜きに奇跡的な1曲。当時絶好調のオリヴィアが、これまた70年代を風靡したエレクトリック・ライト・オーケストラとがっぷり組み、ELO のスペイシーなサウンド・マジックの上で幸福感溢れる世界/「ザナドゥ」(=オリヴィア主演映画)を表現するという企画。考えた方も大したものですが、まさかこれほどまでのウキウキ系楽曲に仕上がるとは誰も思っていなかったのではないか。ジェフ・リンは最高の素材を手にした時に能力を最大に発揮するタイプですが、ここではオリヴィアの美声を得て、本人も普段の5割増しくらいの気合いで仕事をした気配があります。キラキラしたファンタスティックなトラックの上で、オリヴィアの歌声もやけに明る過ぎ。

 これで映画の方も大ヒットしていたら非の打ちどころがなかったのだけれど、世の中そううまくはいかないものですね。オリヴィアのブリブリ路線はひとまずここで打ち止めとなり、この後82年にはあの「肉体系」大ヒット曲でガラリとイメージチェンジすることになる、そんな意味でも貴重な時期だったと言えます。



51. Pick Up The Pieces - AWB (Average White Band)

 インストゥルメンタル楽曲の全米1位は多くありません。Jan Hammer の "Miami Vice Theme" (US#1/85) や Herb Alpert の "Rise" (US#1/79) などと並び、チャート史上に燦然と輝く大ヒット曲がこれ。

 とにかくオープニングのブラス・リフで勝負あり。技巧的なんだけど妙にポップなリフで、一発で頭に残っちゃうのです。加えて全体を貫くファンキーで黒っぽいビート。これが6人組の白人グループだというのだから驚きます。しかも英国産(メンバーの出身はスコットランド)。これだけカッコいいお洒落なファンクを演奏しながら、「平均的な白人バンド」と名乗っちゃうなんて、いかにもブリティッシュ・センス・オブ・ユーモア。

 70年代にはこうしたホワイトのファンク・バンドがいくつかありました。オハイオで結成された Wild Cherry などもそうですが、あの泥臭さとはまったく別物の洗練された都会性を感じてしまうのはレーベルのセンスなのか。AWBが在籍したアトランティック・レコードには、この時期独自のブルー・アイド・ソウルを追求していたホール&オーツもいたりしますね。

 サックス吹きなら一度は吹いてみたいフレーズでしょう。後に可愛いキャンディ・ダルファーがカヴァーして、ますますこの曲の個人的評価を上げました。ややテンポの早いキャンディ版もお勧めなり。



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