SONGS 140 - 131


順位 曲名 アーティスト チャート順位
140 When Will I See You Again The Three Degrees US#2/74
139 Sunglasses At Night Corey Hart US#7/84
138 Back For Good Take That US#7/95
137 The Search Is Over Survivor US#4/85
136 Girlfriend Pebbles US#5/88
135 Ai No Corrida Quincy Jones US#28/81
134 Voices Carry 'Til Tuesday US#8/85
133 Cold As Ice Foreigner US#6/77
132 Fly, Robin, Fly Silver Convention US#1/75
131 I Surrender Rainbow UK#3/81



140. When Will I See You Again - The Three Degrees


 まさしく『天使のささやき』。ここまで原題に関係なくイメージだけで邦題つけられちゃうと反論する気もなくなっちゃいますよね。しかもそのイメージが的確すぎたりする場合には。

 Three Degrees についてはあんまり詳しいわけではないのですが、この曲はディスコ時代のコンピレーションを買うとたいてい収録されていて、比較的馴染みのあった歌です。子供の頃から耳で覚えていたような気もします。歌詞がいいんですよ。ウブっぽくて。しかもオープニングから随所に挿入される "Haa..." "Ooh..." といった囁き声の数々。まさに『天使のささやき』な訳です。

♪Are we in love or just friends?
 Is this my beginning or is this the end?
 When will I see you again?


 実はこの曲、米国より先に日本でヒットしたそうで。その昔存在した「東京音楽祭世界大会」なるイベントに向けて、74年6月に発売されたこの曲ですぐに金賞を受賞した彼女たち、全米でトップ40入りしたのははるかに遅れて10月のこと。日本で受けた曲の常として、日本語ヴァージョンも存在します。しかし、全米ナショナルチャート的には、この曲が単独名義最大のヒットにして最後のHOT100ヒットになってしまいました…



139. Sunglasses At Night - Corey Hart


 この曲に出会ったのは83年の夏で、The Fixx と同じ頃だったと記憶しています。おっと思わせる不思議なタイトルで気になっていたところに、いきなり不安を煽るようなイントロのコード進行で引き込まれました。コーラスで激しいギターリフが炸裂して Corey の青いシャウトが飛び出すところなんかは今聴くと赤面モノですが、当時は結構熱くなっていたものです。

 夜にサングラスをかけたら、何も見えませんがな。
 …という突っ込みを半ば期待するが如きこのタイトル、歌詞を読んでみると実際そのようで、恐らく自分を騙している「彼女」との関係、その殺伐としてきた状況を直視したくないという気持ちから、オレは夜にサングラスをかけるんだよーん、といった感じ。

♪Don't switch the blade on the guy in shades
 Oh no
 Don't masquerade with the guy in shades
 Oh no
 You got it made with the guy in shades
 Oh no


 カナダ出身の Corey Hart は Bryan Adams と比べられたりもしましたが、タイプは全然違っていました。まあいろんな意味で彼は「青さ」が売りだった面もあるような気がしています。純情一直線、とにかくマジメ。ガールフレンドが日系だったので、頻繁に来日していたような記憶もあり。この次のシングルの "It Ain't Enough"(US#17/84) も、静かに熱く燃えるイメージが印象的な佳曲でした。"Never Surrender"(US#3/85) の青臭さも、今聴くと素敵。端的に言って、丁寧で良い曲をたくさん書いていました。業界にもみくちゃにされるヴォーカリストという立場にこだわらず、ソングライターとして裏方に徹していればより大きな成功を手にすることができたのかもしれません。でも時計の針は戻せないし。それに、そんな無謀かつ純情な Corey こそが僕らの心を捉えたわけで。

 ぜひ実際にカナダの大地の上で聴いてみたいアーティストの1人です。



138. Back For Good - Take That


 きゃー! Take That なんて、超恥ずかしい!

 …と思っていたのは95年までのこと。でもそれは、恥ずかしいという思いからよく耳を傾けず、よく目を向けなかったがためのことでした。この "Back For Good" を聴いた時、そのあまりによくできたメロディ展開に、これまで真面目に聴いてこなかったことを大いに悔やんだものです。

 Take That はイギリスの実力派男性アイドルグループで、91年から96年に解散するまでの間に実に16曲の全英ヒットを飛ばしました。うちトップ10ヒットが13曲、うち全英1位が8曲。まさしく一大現象を巻き起こしたわけです。

 ソングライティングの中心人物は Gary Barlow で、この "Back For Good" も彼がリードヴォーカルをとっています。やや技巧的なバラードを書かせると天下一品で、Elton John や George Michael の系譜の上にあったといっても良いでしょう。あれ? 過去形ですね。解散後のソロ活動はやや精彩を欠くところがあり、評価としては厳しくならざるを得ません。むしろグループ脱退後めきめきと頭角を現したのは Robbie Williams の方で。もともと年少組でやんちゃなキャラを演じていた彼だったわけですが、世の中何がどうなるか分かったもんじゃありません。

 恥ずかしながら、今ここに打ち明けますと。
 この曲を聴くまで、"for good" というフレーズをなかなか覚えられませんでした。辞書では何回か引いたことがあったのに。"for good" とはすなわち "for ever" と同様、「永遠に、ずっと」という意味です。とてもお勉強になりましたね!



137. The Search Is Over - Survivor


 サバイバーといえば "Eye of The Tiger" (US#1/82) とか、"I Can't Hold Back"(US#13/84), "High On You"(US#8/85) といったアップテンポのロックナンバーがずーっと好きだったのですが、数年前から急激にこのバラードに惹かれています。リアルタイムで聴いていた頃はどうにもダサい曲だと思って敬遠していたものですが、人の嗜好というのは変わるものですね。

 この曲は何といっても歌詞が好きで。
 夢を追いかけ奔放な人生を送ってきた男が、ある日ふと振り返って、自分のことをずっと変わることなく愛し続けてくれた女性の存在に気づき、目が覚めるストーリィです。「ずっと探し続けてきたものはここにあった / いつも一緒にいてくれたのは君だけだったよ」と告白するくだりには、クサいながらもちょっと胸が熱くなります。

 キーボードの Jim Peterik は、自分が関わった曲ではこれが一番好きだといいます。「この曲と "Eye of The Tiger" とに関わったことで人々の記憶に残りたい」というくらいですから、その他のキャッチーなナンバーとは違う深い思い入れがあるのでしょうね。



136. Girlfriend - Pebbles


 LA Reid & Babyface といえば、泣く子も黙る名プロデュースチームですが、彼らの名前を意識し始めた最初のヒット曲のひとつがこの曲だったような。

 Pebbles は TLC を立ち上げたことや、Karyn White と親戚関係にあることで知られています。個人的にはすごくキュートなルックスだと思っていて、2nd "ALWAYS" のジャケットは特に大好きです。

 この曲には印象的なパートがいくつもあって、容易に忘れ難い名曲になっています。アップテンポのリズムに絡むストリングス音、特に中盤で8連で刻むところなんかは特に印象的。1番のラストで「あいつなんかタダの犬よ!」と歌った後に犬の吠える声がサンプリングされてるあたりは凝ってます。歌詞は、ダメ男に騙されて辛い目に遭っている女の子(=Girlfriend)に対しての呼びかけで、あんな男のさばらせちゃダメよ、とアドバイスするものです。こういう女性から女性への忠告型楽曲はときどきヒットしますよね。一定の需要があるのでしょう。

 しかし何と言っても強烈な印象を残すのは、中盤で出てくる次のパート。

♪To believe or not to believe, that is the question,
 It just takes a street degree.
 You've lied your last lie and I've cried my last cry,
 I'm out the door, babe, there's other fish in the sea!


 たかがチャートヒットながら、シェイクスピアまで引用して印象的なコーラスを歌わせる LA Reid & Babyface。恐れ入りました。



135. Ai No Corrida - Quincy Jones


 『愛のコリーダ』。82年末の洋楽聴き始めの頃、主としてAMラジオでよくかかっていた記憶があります。その頃はクインシー・ジョーンズが誰なのか、どんな人なのか、もっと言うとどれだけ重要な存在なのかが全然分からなくて、この歌のボーカリストぐらいにしか思っていませんでした。全然ちゃうやろ!

 クインシーを語る時に何回も出てくる「アレンジの凄さ」も、正直言って長いことよく分かりませんでした。それは本人名義のものばかりでなく、Michael Jackson の "THRILLER" アルバムについても然りです。

 おかげさまでずいぶん色々な曲を聴いた今となっては、この『愛のコリーダ』1曲を作るのにどれくらいたいへんな作業があったのか、おぼろげながら想像することができます。弾力的なリズムセクション、浮遊感溢れるシンセサイザー、ここぞとばかりに切り込んでくる効果的なホーンセクション、一気に雰囲気を変えるミッドブレイク、そしてぐっとためるヴァースから高揚感満点のキラキラしたコーラスへ持ち込むヴォーカルアレンジメント…

 頭の中でスコアを書いて、演奏者やヴォーカリスト達を慎重に選び抜き、最高級の機材で演奏させて時間をかけて録音し、そのテープを継ぎはぎしてジグソーパズルを完成させるように組み上げていく作業。ボストンのバークリー音楽院で学んだ理論的裏付けがしっかりしており、ジャズ畑での経験を踏まえているだけに、一聴すると極めてスムースなその音楽の背後に、費やされた時間を想像するのもまた楽しいことです。

 なんてゴージャスなサウンド。なんてゴージャスなアレンジ。
 聴いていて smooth に流れていく曲ほど実は手がかかっている、ということに気付かされた今、クインシー・ジョーンズの音楽を聴くことは、この世で最も贅沢な行為のひとつではないかという気がします。



134. Voices Carry - 'Til Tuesday


 80年代前半、自分で勝手に『紅一点ロックバンド御三家』というのを意識して聴いてまして。それは例えば "Walking On Sunshine" が忘れ難い Katrina & The Waves であり、"Ways To Be Wicked""Shelter" で Maria McKee がしゃがれた喉を聴かせてくれた Lone Justice であり、そしてこの 'Til Tuesday であったわけです。

 リードヴォーカルの Aimee Mann の声には不思議な魅力があります。線が細いのに、深みがある。中低音域で淡々と歌う部分もいいし、時折高音部へふっと抜ける部分も印象的。特に'Til Tuesday にいた頃の、ベースを弾きながら淡々と歌う姿は、とても絵になっていました。

 実は歌詞的にはあまりポジティヴなものが多くないような印象がありまして、過ぎ去った思い出を後悔の念を持って振り返ったり、第三者的に距離を置いて眺めるようなものが耳につきましたが、最近は Michael Penn と結婚して私生活が充実しているせいか、現実に目を向けた前向きな楽曲が多くなりつつあるようですね。この "Voices Carry" も決して明るいテーマではなく、むしろズルい男への静かな怒りを内包しています。90年代は怒れる白人女性シンガーが台頭しました。例えば Liz Phair, P.J. Harvey, Tori Amos などなど。さらには Alanis Morissette につながる系譜。今思えば、Aimee のスタイルは早過ぎたのかもしれません。

 実際にライヴで観た彼女はひょろっとした体型で、ちっとも飾らない素朴な女性でした。その屈託のない笑顔を、僕はきっと一生忘れないでしょう。



133. Cold As Ice - Foreigner


 実は長いこと Foreigner は大の苦手だったのです。そもそも産業ロック自体避けていたところがあります。今の自分の趣味からすると信じられない話ですが。

 ロック史上に残る10週連続第2位の大ヒット "Waiting For A Girl Like You" 、ゴスペルクワイヤ導入のあざとすぎる全米1位 "I Want To Know What Love Is" など、バラードヒットにおけるくどさが苦手だったのでしょう。今でこそ Lou Gramm はいいヴォーカリストだと思いますが、あの頃はコーラスで声を張り上げるのがとにかく苦手だったのです。

 ところが。
 ロック名盤収集時代に突入した自分は、他の様々なディスクに混じって Foreigner の初期のアルバム群も安価で購入し、とりあえずデビュー作からじっくりと腰を据えて聴いてみたわけです。そうしたら。

 実にカッコいいではありませんか!
 これまで避けてきたあのダサさはどこに行ったんだYO!

 という感じで。特に非バラードのアップテンポ楽曲は、シャープなリズムセクションが心地良く、懸案だった Lou Gramm のヴォーカルも、必要以上に張り上げたり引き延ばしたりすることなくコンパクトに収まってました。なるほど、これが産業ロックの醍醐味かと。目の前の Foreigner ディスク群が急に宝の山に見えてきたものです。

 中でもこの "Cold As Ice" は、ドラマティックさという点において他に比類なきカッコよさを誇る1曲。冷たいピアノが軽快にリズムを刻むイントロから、一転して切り込んでくる "♪You're as cold as ice / You're willing to sacrifice our love" というヴォーカルラインに釘付けです。途中華麗なギターソロ、重層的なコーラスバリエーションを挟んで飽きさせません。この劇的アレンジを支えていたのがギタリストの Mick Jones であり、元 King Crimson の Ian McDonald であったこと知ると、ますます深く楽しめるのではないかと。邦題 『冷たいお前』

 Billy Squier の "Rock Me Tonite" がこの曲によく似てるという事実には、敢えて触れずにおきましょう。冷たいオレ(笑)。



132. Fly, Robin, Fly - Silver Convention


 完全にリアルタイム圏外なのですが、間違いなく幼少時に聴いた記憶があって、それがまた強烈に心に刻まれているから外せないのです。

 Silver Convention はジャケットを見るとお姉さんたちが写っているので、この人たちのグループなのかと思いがちですが、実はドイツのスタジオシンガーを集めて歌わせた正体不明の集団。ジャケ写は音とは別に慌てて撮影されたお姉さんなんだそうで。

 後追いで勉強した知識によれば、こうした音を「ミュンヘン・サウンド」と呼ぶらしく。他に Donna Summer, Bonny M などが有名ですね。独特の縦ノリと電子音に特徴があり、後のハイエナジーにつながるルーツだとも言われてます。ホントかな。

 『ディスコ』というキーワードに僕が求める多くの要素を詰め込んだヒット。ベースのうねりとストリングスのアレンジ、淡々と続くコーラス。妙に生々しさが欠如しているドライなところが、ますます怪しくて最高。この路線をキープしたままBPMを1.5倍速くらいにしてクラビネット系キーボードでアクセントを付けた "Get Up And Boogie"(US#2/76) も大好き。



131. I Surrender - Rainbow


 だ、ださい…

 いや正直自分でもそう思います。Russ Ballard のペンによるこの産業色濃いキャッチーな楽曲は、Rainbow のコアなファンの間でも賛否両論なのではないでしょうか。

 しかし「一度聴いただけで覚えられる」という点を常に評価の基準(のひとつ)にしている私にしてみれば、一体どうやったらこんなにキャッチーな曲書けるの?てなもんで、諸手を挙げて支持してしまうのです。本人名義のソロ作もありますがイマイチ冴えない Russ Ballard、個人的には Rainbow にとっての産業ソングライターという位置付けで、この曲の他に "Since You Been Gone" も実は大好きだったりして。

 "I Surrender"。男の哀愁に満ちたメロディと歌詞が、日本人の心に熱く熱くヒットするわけです。

♪I surrender, I surrender
 I'm giving up the role of pretender
 Oh be tender, girl be tender
 Can't you feel the love that I send you
 I surrender
...

 Rainbow というグループは、確かに Ritchie Blackmore の所有物であったのかもしれませんが、多くの優秀なミュージシャンが通過していった点で、英国ロックのファミリーツリーを書く上において極めて重要なバンドのひとつです。ヴォーカリストだけをとってみても、Ronnie James Dio, Graham Bonnet, Joe Lynn Turner と素晴らしい歌唄いたちがバトンタッチしていきました。Cozy Powell と Roger Glover のリズムセクションが鉄壁だったのは言うまでもありませんが、密かに Tony Carey, Don Airey, Dave Rosenthal などを擁したキーボード陣もいい味を出してましたよね。


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