SONGS 120 - 111


順位 曲名 アーティスト チャート順位
120 Something About You Level 42 US#7/86
119 JoJo Boz Scaggs US#17/80
118 Who Do You Give Your Love To? Michael Morales US#15/89
117 Roll To Me Del Amitri US#10/95
116 Time (Clock of The Heart) Culture Club US#2/83
115 Easy Lover Philip Bailey (with Phil Collins) US#2/85
114 More Human Than Human White Zombie UK#51/95
113 Marathon Rush -
112 Got A Hold On Me Christine McVie US1#10/84
111 My Guy Mary Wells US#1/64



120. Something About You - Level 42


 Level 42 は、バックトラックだけ聴いていると相当な腕利きフュージョン系グループです。複雑な動きを見せるベースラインと、かっちりとした決めフレーズ。しかしその無機質でクールなサウンドにソフトで暖かいヴォーカルが乗っかると、不思議とポップソングとして成立してしちゃうんですよね。

 UKチャートではざっと30曲近い膨大なヒット曲を持つ彼らですが、全米チャートではもっぱらこの "Something About You""Lessons In Love" の二発屋として知られています。いずれも甲乙つけ難い名曲です。結局は多少なりともポジティブなこちらを選びましたが、ほろ苦い "Lessons 〜" も素晴らしくて、その日の気分次第で逆転します。

 あとですね。
 チャートファンなら絶対覚えておかねばならない数学の公式があります。それは。

 「U2 + UB40 = Level 42

 WINTER WONDERLAND 相互リンク認定の試験に必ず出ます。マジで。



119. JoJo - Boz Scaggs


 AORというジャンルがあります。よく言われていることですが、これを「アダルト・オリエンテッド・ロック」の意味で小洒落た都会的なサウンドのロックの総称として用いるのは日本くらいのもの。米国あたりでは「アルバム・オリエンテッド・ロック」だったか、アルバム単位で作品を作るロックを指す言葉だったり。

 で Boz はその「日本的」AORの金字塔である、と。

 私は耳あたりのよい音楽が好きです。聴いていて神経がイライラする音楽や、暴れたくなったりモノを壊したくなるような音楽よりは、静かに落ち着いて聴けるものを好むようです。(もちろん例外もたくさんあります。) そういう意味で、AOR は危険地帯です。もうまさに底無しの泥沼。どれを聴いても気持ちよくて、快感の海に溺れます。なんでこんなに気持ちいいんだろ、と思ってクレジットを見てみると、あれもこれも TOTO のメンバーや、その他の腕利きスタジオミュージシャンが演奏しまくっていて。クレジット読み込みでまた数時間が過ぎていきます。

 もう少し歳をとってからのお楽しみに取っておこうかな、と思っているジャンルではあるのですが、とりあえず入門編として Boz Scaggs あたりを。この "JoJo" は必ずしも超大ヒットという訳ではありませんが、個人的にはとても気持ちのいいグルーヴです。リズムギターを刻む Ray Parker, Jr. の控えめなプレイが大好き。大昔に小林克哉さんの『ベストヒットUSA』のタイムマシーンのコーナーでビデオを見たことがあるような気がします。純白のスーツに身を包んで軽やかに歌う Boz は、ヤバかったです。とても。



118. Who Do You Give Your Love To? - Michael Morales


 「…(フェードイン)ふぅぅぅどぅゆぅぎぃぃぶよぉぅぁらぁぁぶとぅぅ!」
 この歌い出しで一発KOです。実にキャッチーで爽やか、パーフェクトな産業ポップ。中学生の英文法テストに出てきそうなぎこちない疑問文もまたヨロシ。

 マイケル・モラレスという人は1989年前後に数曲ヒットを残したシンガーで、ジャケットを見てもお分かりのとおり、決してルックスに恵まれた人ではありません。むしろカッコ悪いです。かといってミートローフほどイッちゃってるわけでもなく、中途半端な存在。最高順位も中途半端ですが、邦題まで中途半端に『ギヴ・ユア・ラヴ』。その辺がチャートファンの心をくすぐるわけです。アルバムでは中途半端に The Cars の Elliott Easton がリードギター弾いてたりもします。その他の楽器(ドラム、キーボード、ベース等)はほとんど自分で演奏しつつ歌っていたような。

 1963年テキサス州サン・アントニオ生まれ。トップ40ヒットはもう1曲、"What I Like About You"(US#28/89)。ご存知、"Talking In Your Sleep" の大ヒット(US#3/84) を持つ The Romantics の1980年49位の小ヒットカヴァー。どこまでも素晴らしいセンスの、愛すべき中途半端男でした。再評価熱烈希望。



117. Roll To Me - Del Amitri


 ズバリ、何回聴いても飽きない爽やかな曲でしょう。

 デラミトリはスコットランドはグラスゴー出身のロックバンド。全米ではこの他に、"Kiss This Thing Goodbye" (US#35/90)、"Always The Last To Know" (US#30/92) のヒット曲があります。しかしこの爽やかさは格別。しかもわずかに2分11秒。ちょっとした番組の空き時間に調整用オンエア曲として重宝されたんじゃないのかな?

 短い曲が速いテンポで展開する中にもしっかりとした起伏があって、実にお見事な構成。つい鼻歌で歌ってしまいたくなるメロディです。特異な点は、ヴァース部分における左右チャンネルの振り分けで、ドラム+ベースは左スピーカー、ヴォーカルは右スピーカーに割り振られています。言わば古臭い擬似ステレオ的に。そのおかげで、ブリッジ部分で左右チャンネルが溶け合い、まるで広大なスコットランドの大地が広がるように視界が開ける効果は絶大なもの。

♪Look around your world pretty baby
 Is it everything you hoped it'd be
 The wrong guy, the wrong situation
 The right time to roll to me


 こんな風にサラリと女の子を口説けたらいいね。



116. Time (Clock of The Heart) - Culture Club


 カルチャー・クラブで1曲選ぶのは難しいです。好きな曲がたくさんあり過ぎて。例えば "Church of The Poison Mind" には硬派なソウル満載だと思いますし、『君は完璧さ』での絶妙な似非レゲエぶりも捨て難いです。"Miss Me Blind" "It's A Miracle" の12インチメドレーがいいんだ!という少数有力説も支持したい。ついでに "Mistake No.3" の全米最高位が33位なのは何かのミステイクなのでしょうか?

 そんな中この "Time" は軟弱に過ぎる、という声があります。大いに同感。しかしまたそこが良かったりもする訳で。どんなコーラスだったかというと。

♪Because time won't give me time
 And time makes lovers feel
 Like they've got something real
 But you and me we know
 They've got nothing but time
 And time won't give me time
 Won't give me time


 あらら、本当に何も言ってないに等しいですね。でも熱い恋に身を焦がしている人ならば、何となく気持ちは伝わるのではないでしょうか? このグループは各メンバーとも割と芸達者なのですが、芯にあるのはやっぱり Boy George のヴォーカル。決してタフな喉の持ち主ではありませんが、丁寧なソウル・マナーを身につけていますよね。キャラクター的に色物扱いされてしまった部分もありますが、基本的にはとても歌の巧い人だと思っています。



115. Easy Lover - Philip Bailey (with Phil Collins)


 ご存知のようにフィリップ・ベイリーは Earth, Wind & Fire のヴォーカリストであり、フィル・コリンズは(この頃はまだ)Genesis のドラマー/ヴォーカリストです。フィリップ・ベイリーのソロアルバム "CHINESE WALL" のプロデュースを行ったフィル・コリンズは、その中でひときわキャッチーなこの男性×男性デュエット曲を制作して、空前の大ヒットに仕立て上げてしまいました。

 ドラマティックなイントロ、覚えやすいコーラス、熱いギターソロと、ヒット曲の要素がこれでもかというくらいに詰まった作品です。フィリップの攻撃的なファルセットも良いですが、個人的にはスカスカなバックトラックの中で浮き上がるフィルのドラミング。手グセ足グセ炸裂のフレーズばかりですが、メリハリの効いたダイナミックなドラムサウンドを堪能することができます。

 フィリップ・ベイリーは基本的に敬虔なクリスチャンで、この後は地味なゴスペルアルバムをリリースします。「遊び系の女」をテーマにしたこの曲の大ヒットが、彼の信仰心を大いに傷付けてしまったことによる反動なんじゃないかと。…フィル・コリンズ、お主もワルよのう、ってな感じっす。



114. More Human Than Human - White Zombie


 彼らのライヴを見ることができた経験は、一生の宝物。

 もちろん、ヴォーカルの Rob Zombie はソロで活動を続けており、サウンド的にも大きな変化はないように思われます。ホラー・パンクのデジタル系ミクスチャー? でも、White Zombie 時代はステージでのビジュアル的な映えが全然違っていて。紅一点の Sean Yseult が構えるベースギターがとにかくカッコよかったのです。94年春に Pantera の前座で一度来日しているようですが、英国はドニントンで見た野外フェスでの彼らのブチ切れぶり、広大なステージを走り回る Rob とその他メンバーの勇姿は、忘れ難い鮮明な記憶となって残っています。

 最初に出会ったのはこの前のアルバム "LA SEXORCISTO: DEVIL MUSIC VOL.1" からのシングル "Thunder Kiss '65" のプロモビデオでした。あまりにもインパクトが強すぎたので、むしろノベルティ系一発屋になるだろうと高を括っていたら、その後の全米ツアーでじわじわ人気を高めて。折からのインダストリアルブームを冗談の如く取り入れた95年のアルバム "ASTRO CREEP: 2000" には腹を抱えて笑いました。おどろおどろしいステージと、意外にも(?)まともなテクニックに裏打ちされたサウンドに、キッズも大喜びしたというわけ。

 この曲はまさしくアリーナ仕様で、キッズが大合唱する意味なしコーラスが実に良くできています。自分もすっかりみんなと一緒になって、ドニントンで頭ガンガンに振りまくりながら叫びまくってきました。



113. Marathon - Rush


 42.195km。

 円周率が「3」になってしまった今日この頃、日常生活の中で小数点以下3桁の数字を見かけるのはマラソンくらいのものでしょうか。頑なに守り続けてほしいものです。ていうか42kmに端折ったら昔の世界記録の意味がなくなっちゃうYO!

 …そうじゃなくて。

 楽しいときに聴く音楽も良いですが、皆さん辛いときに頑張るための自分の応援ソングみたいなものもお持ちでしょう。私にとって、それは間違いなくアルバム "POWER WINDOWS" に収録のこの曲。当時はストリングスの大胆な導入などが大いに話題になったものでした。

 RUSH ファンには誠実な人が多くて。しかも、歌詞を読み込む人々が多くて。自分もその末席を汚しております。そうしたファンの間でさんざん議論されたとおり、「マラソン」は色々なものの比喩として捉えることが可能でしょう。ある人にとっては受験であったり、またある人にとっては部活動であったり。はたまたある人にとっては人生そのものであるかもしれません。

 極めて高揚感のある壮大なコーラスパートに比べると、ヴァース部分は地味に聞こえるかもしれませんが、その裏ではベースが超絶技巧のリフを刻んでいます。しかも1番と2番ではまったく異なるフレーズが用意されていて。よくこんなものを弾きながら歌まで歌えるなあ、と素直に感心します。

 何回聴いてもその度に感動に打ち震え、新たな誓いを立てたくなるそんな1曲。




112. Got A Hold On Me - Christine McVie


 『恋のハートビート』

 意味なし邦題のような気もしますが、なかなかどうして楽曲の感じをよく捉えたいいタイトルです。キラキラしたイントロから、ポップで心地良いコーラスへ。ご存知 Fleetwood Mac の女性ヴォーカリストにしてキーボード弾きのクリスティン、ソロ最大のヒット曲。

 彼女の曲には特徴があるような気がしていて、それはヴァースのあとコーラスがいきなり来てしまうこと。引っ張る、とかタメる、とかジラす、という概念が全く見当たりません。とにかくさっさとコーラスへ。ムリ・ムラ・ムダは皆無。あるのは心地良いメロディと、クリスティンのハスキーで落ち着いたヴォーカルばかりなり。

 英米混成グループになった Fleetwood Mac ですが、彼女は最後まで頑なに英国女性らしさを守っていたような気がします。発音がどうしようもなくイギリス英語なのはもちろんのこと、身のこなしやキーボードのフレーズにまで英国らしいセンスを感じることがあります。タフな全米ツアー中も、午後には欠かさず紅茶を淹れてじっくり独りの時間を過ごしていたのではないか。あるいはそれができなかったが故にマックから離れていくのではないか。そんな気がしてならないのです。

 これに続く "Love Will Show Us How" (US#30/84) も前向きで綺麗な曲でした。



111. My Guy - Mary Wells


 スモーキー・ロビンソン恐るべし。
 自分にとって、Smokey の凄さを思い知らされた記念碑的な1曲。

 というのは、83年ごろから洋楽を聴き始めた世代にとって、Smokey Robinson 自身のトップ40ヒットに出会うには1987年の "Just To See Her" (US#8/87) まで待たねばなりません。いい曲だとは思いますが、続く "One Heartbeat" (US#10/87) を合わせてみても、歴史的なソングライター/シンガーとしての凄さを感じることまではできませんでした。ベテラン健在、と言われても困っちゃうのです。

 大学生になって、サークルの諸先輩たちからいろいろな音楽を教えてもらいましたが、古いソウルものの中に含まれていたのが Mary Wells のベスト盤。「スモーキー・ロビンソンの曲ってやっぱいいんだよなー」 そんなことを言いながら先輩がかけてくれたこの曲に、心底「やられた!」と思いました。

 彼氏に首ったけ、何があっても私を彼から引き離すことはできないわ、という乙女心を歌った曲。きちんと韻を踏みつつ、洒落た言葉遊びを交えた歌詞に、誰でもすぐに覚えてしまうキャッチーなメロディ。ついウキウキしてくる絶妙のアレンジ。モータウンの屋台骨を支えた Smokey の面目躍如なのですよこの楽曲は。大好きだった ABC の "When Smokey Sings" (US#5/87) が Smokey Robinson & The Miracles "Tears of A Clown" (US#1/70) へのオマージュだったと気づいたときにはもうビックリ。

 ところで Mary Wells はといえば、この後調子に乗って Motown から移籍したものの楽曲に恵まれず、これを超える大ヒットを飛ばせないまま終わります。Motown レーベルにとって初のトップ10ヒット及び初の全米1位ヒットを産んだアーティストではありましたが、育ててくれた恩を忘れて飛び出してみたところ、実は人気のヒミツは自身のアーティストパワーではなく、Smokey の楽曲であり Motown のレーベルパワーであったという悲しい現実。



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